Bもうひとりのマネージャー
待ちに待った土曜日。
青田が猪俣学園のグラウンド近くにある駐車場に車を止めると、すぐに出迎えの女が現れた。
「青田先生ですよね」
「ええ・・」
「サッカー部マネージャーのマキといいます。時田監督がお待ちです。どうぞこちらへ」
ジャージ姿のその女は、背が低く小太りで、まるで化粧をしていない中年のおばさんのようだった。
(なんだこの女は? マネージャー?)
運動部の部室が並ぶクラブハウスに入り、「こちらです」と案内されたのは、サッカー部の部室ではなく、練習試合などに訪れる他校の選手用に作られたロッカールームだった。
「やあ先輩! お久し振りです」
時田が元気に屈託なく挨拶する。
青田の大学時代の後輩である時田は、有能なサッカー選手だった。筋肉質で背も高い。昔流行ったテレビ番組でラグビー部の熱血監督を演じた俳優に感じが似ている。
二人が談笑を始めると、マキは「冷たいお茶を買ってきます」と外へ出た。
「なんだ、あの女は?」
「ああマキですね。彼女は香澄と同じマネージャーで、ああ見えても僕にとってはかけがえのないパートナーなんですよ」
「パートナー? あのオバサン・・・いや失礼、彼女はあれで高校生とは驚いたな。あれじゃ近所の肉屋の・・・、まあそれはいいが、時田のパートナーだと?」
「そうです。マキはマネージャー兼、香澄のお目付け役、といったところです。サッカー部が香澄の“協力”を得られるのも、彼女のおかげなんですよ」
「それはいったいどういう意味だ」
青田が先を促す。
「実は・・」
時田が事情を説明し始める。
マキは香澄と同じ高校2年生で、サッカー部のマネージャーだ。
マキの父親はクリスチャンだったが、事業に失敗し、借金を苦に止むに止まれず1年ほど前に自殺した。
マキの父親が足繁く通っていた教会というのが、なんと香澄の家だった。神父である香澄の父親も、当の香澄も、自分たちの力が及ばずに最悪の結果になったことを悔やむしかなかった。
そんな時、香澄が留学生のカルロスにレイプされそうになった。
事態の収拾に頭を悩ませていた時田は、もう一人のマネージャーであるマキにだけはことの成り行きを告げ、今後について相談をした。
するとマキは、「私に任せてください」と、事態の収拾に買って出たのだ。
そして香澄は、マキの説得でラグビー部をやめないことや、事件を口外しないことを決めたのだった。
「カルロスはね、ブラジルのとても貧しい家を飛び出し、サッカー選手をめざして日本に来たの。貧乏な家族を支えることが彼の夢なのよ。だから今、帰るわけにはいかないのよ。香澄ならその家族愛というのが分かるでしょ。だからお願い、カルロスを許してあげて! そしてもう一度、みんなで強いチームを作りましょう。全国大会に出てカルロスの実力を世間に知らしめて、プロの選手になれるように私たちも力を貸してあげましょう」
父親を亡くしたマキから家族愛という言葉が出たことが嬉しかった。香澄はマキと一緒にサッカー部で頑張ろうと気持ちが固まったのである。
「そのあとはもうとんとん拍子ですよ」
「手コキまで・・・?」
「そう。チームのため、カルロスをプロにするためって、ほとんど何でも応じてくれるようになりましてね。すべてが彼女の自主的な“協力”のもとにね」
「しかしまぁ理由はともあれ、レイプ未遂の張本人を今では必死に応援するなんて、こりゃかなり重症のお人好しだな・・・」
そこへマキがペットボトルのお茶を持って戻ってきた。
「マキさん。だいたいの事情は聞かせてもらいましたよ。しかし君、本当は香澄を恨んでいるのかな?」
「いえ、そんなことはありません。ただ・・・、あんなに可愛いくてスタイルも良くて・・・、そこに焼きもちを焼いているのは事実です。死んだ父が教会で香澄を見かけた日、お前もあんなふうに生まれてきてたらなぁ、なんて言うんですよ。もう悔しくて・・・」
時田が時計に目をやり、「そろそろいいか・・」とマキに聞く。
「今、ちょっと部室を覗いてきましたが、キャプテンの吉田さん、もう発射寸前だったから、もうそろそろ・・・」
発射寸前という言葉に青田は股間をピクリとさせ、思わずニンマリとする。
「青田先生。もう我慢できないって顔ですね・・・」
「いや、そのー」と照れる青田。
「時田監督から聞きましたけど、昔からかなりエッチだったとか・・・」
それを受けて時田が
「もう先輩は昔からどスケベで有名でね。それにデカマラでも有名で・・・」
「キャハハ、ならフェラの練習台にはもってこいですね」
マキはまったく動じず、むしろ楽しそうに言う。
「でも青田先生。いくら気持ちが高ぶっても、本番を強要しちゃ絶対にダメですよ。うちの部員には腕と肩以外は触っちゃダメってルールも作ってるんですよ。それに部員は15分以内という時間制限もあります」
「そのルールに私も従えと?」
「今日は時間は気にしなくても大丈夫です。愛に満ちた“協力”を受ける部員と、それを覗く部員も、そろそろみんな帰りますからね。まぁ、多少のタッチは大目に見ますけど、本番は絶対厳禁です」
「はい、わかりました」
高校生相手に圧倒され気味の青田だ。
「まぁいろいろルールは必要だろうね。でも、若いヤツは暴走しやすいから、思わず襲ってしまったりとか・・」
「そんな部員がもし出たら、みんなで半殺しにして退部させる。それもルールなんですよ。みんなもう香澄の裸とか手コキにメロメロだから、退部の道を選ぶことは彼らにとって天国から地獄へ突き落とされるようなものです。協力があるから練習もみんな熱心で、全国を狙えるところまできましたから、おそらく今後も退部者は出ませんよ」
ドアの隙間から廊下を覗いていた時田が
「どうやらみんな帰ったようだな。先輩、いよいよですよ・・・」
と青田にひじ鉄を食らわせる。
青田は股間に手をやり、少しおどけて時田に聞く。
「彼女の手コキってそんなに凄いのか・・・」
「ええ、そりゃあもう。毎日のように励んでますからね」
「今日はそれも味わえるのか?」
「もー、このスケベおやじが・・・、もう好きにしてくださいよ」
「ヒッヒッヒー・・・そうこなくっちゃな。・・・ところで時田、お前はどうなんだ。いつもやらせているのか?」
時田に代わってマキが答える。
「時田監督は部員が帰ったあとにね・・・。練習だとか、反省会だとか理由をつけて・・・」
「お前、立場を利用してやりたい放題か?」
「人聞き悪いこと言わないでくださいよ先輩。本当はオレもゆっくり独り占めしたいんだけどね・・・、いつも見張られてるんだよ、マキに・・・」
マキは少し口を尖らせて
「当たり前でしょ。私は香澄のマネージャーも兼ねてるんだから・・・」
(この女、なかなか手強いな。オレのも見られてしまうのか? まぁ仕方ないか・・・)などと青田が考えていると
「じゃ行きましょう、青田先生。香澄がでっかいチンポをしゃぶる姿をはやく見てみたい・・・。カルロスとどっちが大きいかな・・・」
と、そんな開けっ広げなことまで言うのだった。
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