第十一章「賢者」裏8


「………おいで」
 射精のし過ぎで体力を失った体は重いけれど、魔力の方はエリンの股間を前にして、むしろ昂ぶり、増大さえしてしまっている。
 擬似男根が擬似精液を生み出す元は魔力。ズキッとするぐらい疼きだしたヴァギナの奥から魔力を吸い上げたディルドーは、多すぎる魔力を先走りの透明な汁に変えて先端から噴き出すほどに、エリンと……幼なじみによく似た年上の女性とSEXすることに興奮を覚えていた。
 ―――そう言えば、あたしに似たアリアって子は……
 饗宴に参加してこないマーメイドたちのほうへと目を向けると、ショートヘアの女の子最前列にいてすぐに目に付いた。視線が合うと、殺意のこもった視線であたしを睨みつられ、一瞬ひるんでしまうけれど、赤らめた顔に切なそうな表情を浮かべて下唇を噛むエリンの姿に、頭の中で再度何かがプツンと弾けて切れた。
『………っ!』
 そもそも服を着る習慣のマーメイドたちは、服の下に下着を身に付けたりしていない。衣服を引き裂かれてこぼれ出てきた確かなボリュームの膨らみを前にして完全にスイッチの入ってしまったあたしは、陰唇をクチュクチュとなぞり上げながら、たわわな膨らみをネットリと舐め上げていた。
『―――、〜〜〜〜〜〜っ!』
 軽く膨らみかけている先端を唇で挟んでチロチロと舌先でくすぐれば、声にならないエリンの嬌声がマーメイドたちの間に響き渡る。
「我慢しなくていいんだからね。イきたかったら……みんなの見ている前でイけばいいんだから……」
 わざと羞恥心を煽る言葉を囁くと、エリンは一瞬表情を強張らせ、あたしの手を締め上げるように太股に力を込める。けれどどんなに腰を揺すっても自分の太股で挟み込んだあたしの手から逃れることはできない。他のマーメイドたちの類に漏れず、敏感すぎる下腹部の快感を持て余したエリンは細いノド元をさらすように首を仰け反らせ、スカートに覆い隠されている下で愛液をお漏らししながら身悶える。
「こんなに…濡らして……」
 掻き分けた花弁の奥からとめどなく溢れてくるマーメイドの蜜に、あたしの頭の中では幼馴染の明日香もまた、同じように濡らしている姿を妄想するのが止められないでいた。あたしの言葉に何か言い換えそうにも言葉を出せないエリンが、今にも泣き出しそうなほど瞳を潤ませて訴えてくるけれど、あたしの目は彼女ではなく、ここにはいない幼馴染の姿へと向いてしまっていた。
 ―――今だけは、明日香の事を忘れなくちゃ……そうじゃなきゃエリンに悪いから………
 だからあたしは、明日香を見てしまう瞳を閉じると、唾液でぬめるエリンの胸の先端に自分の胸を押し付け、今までのお詫びをするような濃厚な口付けを交わす。何人ものマーメイドに嘗め回され、愛液の噴射まで浴びたあたしの身体の湿り気が潤滑液となり、ボリュームのある四つの膨らみがひしゃげあうように絡まりあう。
「ん……んむっ……ぅうん………」
『……ッ、ッ…ッ、ッン………!』
「ねぇ……気持ち……いい?」
 たっぷりと唾液を交換すると、ズルッ…とあたしはエリンの口内から舌を引き抜き、瞳を開く。
 するとエリンは恥らいつつもこくりと頷く。それを受けてもう大丈夫だと判断したあたしは、スカートの中から引き抜いた手を彼女の目の前へと突き出した。
「ほら見て。指の間にこんなに糸が引いてるんだよ?」
『………ッ』
 彼女の眼前でトロッと滴り落ちる濃厚な愛液。
 それを見ているのはエリンとあたしだけではなく、周囲を取り囲んでいるほかのマーメイドたちと、もしかすると事の成り行きを放れて見守っている綾乃ちゃんや希代香さん、そして饗宴に参加しようとしないマーメイドたちにまで、自分が淫らに感じてしまった証を見られているかもしれないのだ。
「ふふっ……今からもっと気持ちいいことしてあげるからね。そしたらどれぐらい濡れちゃうのかな……♪」
 口をつぐんでも、あたしの手にまとわりつく愛液から目をはずせないエリンの見ている目の前で、あたしは手首にまで伝う淫汁をレロ…ッと舐め上げる。他のマーメイドの拭いた絶頂液で濡れた顔にさらに塗りつけるように手を顔に寄せ、指の一本一本にまで舌を絡みつかせてねめ上げると、マーメイドたちの中からゴクッと、誰かのツバの飲む音が聞こえてくる。
「さあ……いやらしい者同士、たっぷりと楽しみましょう……♪」
 最後に唇の周りの愛液を舐め取ると、エリンは今にも泣き出しそうなほど顔を歪ませていた。赤面した表情には死んでしまいそうなほどの恥ずかしさがありありと浮かび、けれど逃げるそぶりも見せない。
「足、閉じててもいいからね」
 そう言うと、あたしはキツく閉じあわされたままのエリンの両脚を抱えあげる。柱を立てるかのように彼女に張りのある二本の美脚をそそり立たせると、あたしはぴったりと閉じ合わさっている二枚貝を人差し指と中指とで“くぱぁ”と割り開き、ビクンビクンと脈動を繰り返して肉棒の先端を愛液で濡れた内粘膜へと押し当てる。
『っ………!?』
「男と女の愛し合い方を、たっぷりと教えてあげる」
 力を込めて腰を突き出すと、ずぶずぶと肉棒の先端がエリンの膣内に押し込まれていく。
 膣内は想像以上に狭いものの、さらに想像以上に吸引力で初めて迎え入れるペ○スを包み込む。その膣内がもたらす快感に腰にゾクッとする震えを駆け巡らせたあたしは、処女幕が左右へ引き伸ばされる痛みを堪えようとシーツを握り締めるエリンの両脚を両腕で抱え、はち切れんばかりに膨らんだ肉茎に体重を乗せて斜め上から突き進むと、不意に弾力のある肉の壁がペ○スの先端をさえぎった。
 ―――処女膜だよね……
 これほどの美人なのに、獣のような寺田やスケベ大魔王のエロ本に監禁させられていて、よく無事だったものだ……けど、ここまで来てしまったあたしの股間のモノは止まれない。そのまま一気に突き入れて乱暴に純潔を引き裂いてしまいたい暗い欲望を堪えながらも、大きく呼吸を繰り返すエリンが息を吐き、全身の力を緩めるタイミングを見計らい、
『っ……、………! ……ッ、〜〜〜!!!』
「男ってね……エレンみたいな美人を前にして止まれるほどお行儀よくないんだから!!!」
『ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
 腰を沈めこむと、純潔の証を引き裂かれたエリンが背中を跳ね上げ、長い髪を振り乱すようにして悲鳴を上げる。
 ―――ごめん、やっぱり痛いよね。
 自分が暗い森の中で純潔を引き裂かれたことを思い出してしまうけれど、ためらいを覚えるには遅すぎた。既に中ほどまでエリンの膣内へと押し込まれた擬似男根は、キツく締め付ける人魚の膣壁を押し広げ、薄い膜が破れる感触を亀頭の先端で感じ取ってしまっている。
 もう後戻りは出来ない……けれど、端正な美貌を歪ませながら苦しげに喘ぐエリンを抱えた両脚の間から見下ろしていると、強引にでも犯そうと思っていた心が萎えていく。
「大丈夫……絶対に気持ちよくしてあげるから」
 痛みの記憶しか残らない初体験なんかさせてあげたくない。
 あたしが両手の戒めを解くと、エリンの両脚は力なく左右に開かれる。そして自由になった両手をくびれたウエストからじわじわと胸の方へと這い上がらせていくと、
 ―――う、うわ、中でうねって……!?
 見下ろせば、結合部からは赤い血がにじんでいる。それは確かにエリンが処女であった証明のはずなのだけれど、柔らかく弾力のある媚肉は吸い付くかのように肉棒に密着し、細かい肉ヒダと肉ツブとで処女を奪ったばかりの肉棒を擦り上げてくる。
 ―――これってやっぱり人魚だから…なのかな?
 気を抜けばあっという間に射精まで持って行かれそうな蜜壷のうねりに歯を食いしばって耐えながら、あたしは白い肌を撫で上げ、エリンの胸を手の中に納める。指先に力を込めず、肌に浮いた汗の雫を塗り広げるように手の平を動かすと、自ら性行為を求めてきたマーメイドは恥ずかしげに顔を背けてしまうけれど、
『………ッ!』
 あたしの唇が乳房の先端に触れると、たまらず熱い吐息を唇から迸らせる。腰も緩やかに前後左右に動かし、初めてなのに男を喜ばせるツボを心得ている淫らな蜜壷を丹念に突きほぐしていくと、次第に吐き出される息もせわしなくなり、膣壁の収縮も小刻みになっていく。
『ッ……、ッ〜〜、……、………ッ!!!』
「全部……入っちゃったね………男と女ってね……こうやって一つになるんだよ……」
 声の出せない今のエリンに、あたしの言葉が通じているかはわからない。けれどあたしは、興味心身に男女の結合の瞬間を見つめているマーメイドたちのことさえも思考の外へと追い出すと、年上のように見えてまるで少女のように初体験の痛みと快感とに酔いしれ始めているエレンの唇に吸い付き、興奮の火照りを帯びた唾液まみれの舌で口内をネットリと舐め上げる。
 そして、他のマーメイドたちが見ているのにも構わずに、エリンの股間からグチュウ…と粘つく音が鳴り響いた。
『…………………っ』
 絡まりあった舌を引き剥がして唇を離すと、お互いに突き出した舌と舌の間に唾液が白い糸を引き、すぐに切れたその糸はエリンの顔へと垂れ落ちる。
 覆いかぶさるあたしを蕩けた眼差しで見上げ、恋人同士でもしないような濃厚な口付けに酔いしれた唇は喘ぎながらも小さな笑みを形作っている。そんなエリンの腰の下へと手を差し入れたあたしは、挿入しやすいように彼女の身体を浮かせながら、蜜と熱とに満たされた処女孔へと擬似男根の抽送を開始する。
『………、ッ………、〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
 誰もが固唾を飲んであたしとエリンの性行為を見つめている食堂の隅々にまで、いきり立った肉棒と濡れそぼった媚肉とが擦れ合い、下腹部同士がぶつかり合う音が響き渡る。
 まるで吸盤にでも突き入れているかのように肉棒を吸い上げ、締め上げるエリンのヴァギナは、生まれ持っての名器である分だけ感度もいい。突けば突くほど膣の奥からあふれ出す透明な愛液はあたしたちの下半身をびっしょりと濡らし、他のマーメイドたちの愛液の染み込んだ布団の上に新たなシミを広げていた。
『〜〜〜〜〜、――――――――――!!!』
「エリンのおマ○コの中、スゴく気持ちいいよ、ほら、わかるでしょ、あたしのおチ○チンがビクビクしてるのが……」
『ぁ……、ッ……、……………………、〜〜〜♪』
 言葉を交わさなくても、エリンの体の高ぶりはあたしに手に取るように伝わってくる。胸元を引き裂かれた服からこぼれ出た豊満な膨らみはストロークにあわせて悩ましく前後に揺れ、先ほどまで処女だったはずのヴァギナは子宮に先端が届くたびに奥へ奥へと誘うように蠢動を繰り返している。その締め付けの心地良さに肉茎を脈打たせ、精液が根元から先端に向けて込み上げてくるのを感じ始めていると、
「エリンばかりずるいわよ。一人だけ気持ちよくしてもらって……!」
 周りで見ていたはずのシルヴィアさんが……いや、シルヴィアさん一人だけじゃない。何人ものマーメイドが布団の上で喘ぎ泣いているエリンへと身をよせ、揺れ弾む乳房に口をつけながらクリトリスやアナルにまで、その指先を伸ばしていく。
『ッ、ッ、ッ、ッァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
 子宮口をこつこつと疲れるたびに反射的に浮き上がろうとする腰の下を潜り抜けた指先は、愛液をたっぷり吸ってふやけたお尻の窄まりを、擬似男根の真下でくすぐるように弄んでいる。羞恥心と言う枷を付け忘れているかのような痴女集団と化したマーメイドたちは、一番最初に初体験を迎えたエリンの乳房を掴み、吸い上げ、すぐさまお互いの肌と手足を絡ませあうような淫靡な光景が目の前で繰り広げられる。
 ここは地獄か天国か……そんな考えが頭をよぎるけれど、淫らな人魚たちに囲まれながらもあたしに出来ることは腰を振り続けることだけ。エリンの濡れ素ぼった下腹を強引に引き寄せ、あたしの魔力から生成された擬似精液がたっぷりと詰まった男根を、もはや吸い付いて離してくれないエリンの膣奥へ向かって突きたて、もう処女であったことが信じられないラビアの内側を攪拌して奥の奥まで抉り抜いていた。
 もう絶頂が近い……二人して我慢の限界がすぐそこまで来ていることを感じながら、同性の口付けを唇だけでなく全身に受けてよがり泣いているエリンのヴァギナへ、愛液を押し出す水鉄砲のように野太い擬似男根を捻じ込む。―――そしてその瞬間、
「もう、もうダメェ! あああ、いいんです、気持ちよすぎて、わたし、こ…こんなの初めて、ダメ、初めてでぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 突然、エリンの唇からあられもない声が迸る。見れば、先ほどまでエリンと濃厚な口付けを交わしていたマーメイドが、悪戯っぽい笑みを浮かべている。……どうやら、ずっとあたしの精液を口の中に含んでいて、エリンにまで飲ませたらしい。
 ―――だけど声を聞いたら……もう、こっちまで止まんなく……!!!
 新たに練り上げられた濃厚な精液が尿道を這い上がり、射精口のすぐそこにまで達していた。○腕針先で噴射工をこじ開けられるような鋭い痛みを伴い射精欲求を堪えながら、あたしも自分の乳房を揺さぶるようにラストスパートをかけ、大きく背中をのけぞらせて最後の瞬間を迎えようとしているエリンのノドから艶やかな歓喜の嬌声を迸らせる。
「あっ、ああァ、ああああああああああァ!!! ひあぅ、ひぅあああァああああああァ―――――――――!!!」
 長い髪を布団の上になびかせ、引きつるような声で泣き叫んだエリンの子宮を、あたしの肉棒が深く抉り抜く。そして頭の後ろが灼熱と化して飛び爆ぜるような強烈な衝撃に声さえ失ったあたしは、幼馴染の面影を持つマーメイドの美女の膣奥を強引にこじ開け、大量のザーメンを彼女の胎内へと撒き散らす。
「ッ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
 カリ首を擦り上げるエリンに膣孔に搾り取られるように、あたしの精液は絶頂を迎えて打ち震えている子宮の内側へと勢いよく叩きつけられる。
 本来ならマーメイドに存在しない赤ちゃんを宿すはずの場所は、あたしの膨大な魔力を吸って大量に作り出された擬似白濁を全て受け止めきることが出来ずに結合部からあふれ出させながらも、続けざまに昇りつめ続ける。そして長い時間を掛けて精液を吐き出し終えると、いまだオルガズムが引ききらないエリンはピクピクと身体を痙攣させながら布団に沈み込んでしまった。
「エリンってば、すっごく幸せそう♪」
 マーメイドの誰が言ったのかまでは解らないけれど……処女の膣内を白濁液で満たされたエリンはどこか満たされきった満足の笑みを浮かべて荒い呼吸を繰り返していた。その表情を見ていると、
 ―――いや、だから明日香は関係ないんですってば。別に、あたし、明日香のことなんてなんとも思ってないんだし……
 あたしの気持ちがどうであったとしても、今はまあいいとして……問題は、あたしの身体にすがり付いてきているマーメイドだちだ。
「ねえ……私にも同じ事をしてぇ………」
「うちらのここっておチ○チン挿れると気持ちええん?」
「見てたらなんだか……アソコがムズムズして収まらないよォ……」
「おチ○チン挿れるのって嘗め回されるのとどっちが気持ちいいの?」
 すっかり精液好きになってしまったマーメイドたちも、さすがにエリンの膣内に射精されて溢れてきている精液にまで口をつけるのは躊躇う一方、自分の膣内に弾性を迎え入れる行為に興味を持ち、我先にと性行為をせがんでくる。これはこれで男としては羨ましい状況なのだけれど、相手は三十人以上のマーメイド。一度に相手することは出来ないし、したら搾り取られすぎて死ぬし、て言うかまずは休憩を入れさせて欲しい。
 ―――ずっとエッチのしっぱなしでお腹も減ったし、クタクタだし、休んでからじゃないと次なんて出来っこないよォ……
 叶うことなら、エリンの横にあたしも倒れて朝までぐっすりと休みたいところだ。けど、無防備な姿をさらした途端、絶対に仰向けにされて股間のモノをおもちゃにされてしまうのは目に見えている。かと言ってディルドーをあたしのヴァギナから引き抜いても、それはそれで三十人の痴女人魚に弄ばれてしまう気がする。
 どこまでヤれば気が済むのかなど解るはずもなく、人生最大のモテ期にありながら、あたしの口からは憂鬱なため息がこぼれ出てしまう。
「………んのわァ!?」
 ふと気を抜いた直後、あたしは左右にいたマーメイドを突き飛ばし、いきなり頭上から振り下ろされた包丁を必死に身をよじって躱していた。
『……………』
「あ、アリア……さん?」
 攻撃を事前に察知するあたしじゃなければ、間違いなく突き刺さっていたであろう包丁を振り下ろしていたのは、エリンと姉妹のように身を寄せ合っていたアリアだった。
 ―――顔立ちはあたしに似ているのに、やることがなんて過激な……!
 彼女のあたしを見る目には完全に殺気が宿っていた。そこまで恨まれるようなことを何かしたのかと自分に問いかけると、先ほどエリンの処女を奪った上に膣内射精案でしたことが原因だとすぐさま思い至ってしまう。
「まずは手にしてる物騒なものは置いて、落ち着いて話し合わない? 冷静になってさ、ね? ね?」
『……………』
「か、勝手にひとんちの物を持ってきたら泥棒って言うんだけどさ……だからその包丁、元会った場所に戻してきた方がいいよ♪」
『……………』
 ―――応えてくれない上に、無言で包丁振りかぶられたァ!!!
 まるで凍りついているかのような表情で包丁を振り上げるアリア。殺意以外の感情が見えないだけに余計に怖さを感じながらも、
 ―――ちょ、ちょっと待って、腰にキてるから避けられない、タンマタンマタンマ――――――ッ!!!
 長時間のエッチで体力が底をつきかけている身体は、立ち上がることさえままならないどころか、気力も振り絞れずに尻餅をついたまま動けないでいる。
 しかも下手に身をよじって逃げれば、
 ―――横にはエリンが寝てるって言うのに……!
 もはやあたしを殺すことしか考えられていないかのようにはアリアには、身を寄せ合っていたエリンの姿さえ見えていない。もしかしたら、あたしを肌を重ねたことを浮気や裏切りと思っていれば、彼女もアリアの攻撃対象に入っているのかもしれない。
 避けることに危険が付きまとうのなら、ゆっくり頭上まで振り上げられた包丁を防ぐ手立てはモンスターの召喚以外に思いつけない。疲労で集中力が欠けている今、果たして間に合うかどうか不安があるものの、手の平に意識を集中し始める。
 ―――うわ、全然出てくる気配がない!?
 魔封玉を呼び出せる手応えが感じられないことが焦りを生み、その焦りが集中力を乱して召喚を阻害する。
 こうなると残された手段は……と次の手を考え始めた時には、アリアの手にした包丁はまっすぐあたしに向けて振り下ろされ始めていた。
『……………ッ!』
「えい、けたぐり!」
『―――――!?』
 剣よりもずっと短い包丁を倒れているあたしの胸や顔に落とそうと思えば、飛び込んででもこない限り、こちらの足の届くところまで踏み込んでこなければならない。
 もともと陸上を歩くことにすらなれていないマーメイド。不意打ちでバランスを崩されたアリアは、バランスを保つことが出来ずにそのままつんのめる。
 その拍子に手から離れた包丁はあたしの顔の横へ突き刺さる。そして後を追いかけるように、今度はアリアがあたしの上へと覆いかぶさってきた。
『……………ッ!?』
「あぶなっ!?」
 刃物のすぐ傍に女の子を転ばせるわけにもいかず、反射的に腕を伸ばして受け止める。
 ―――殺されようとしていた事は忘れよう。これが男だったら、さっさと避けていたところだけれど。
 でも転倒した驚きで目を白黒させていたのもつかの間、アリアは目の前にあたしの、顔があることに気がつくと、殺気で目を光らせ、問答無用であたしの首に手をかけてきた。
「さ、殺害方法が過激すぎやしませんか!?」
 待てと言っても待つ相手じゃない。締められるよりも早く手を引き剥がしたけど、彼女を受け止める時に下になっていたあたしは完全に馬乗りになられてしまい、アリアの手がこちらの首にかかるか、それともすぐ傍に刺さっている包丁に気がつくのかは、どちらにしても時間の問題になってしまっていた。
「こ…の……!」
 こうなれば破れかぶれとばかりに、あたしは残っているなけなしの力を振り絞ってアリアの手を左右に広げる。下手に魔力へ気で吹き飛ばそうものなら大怪我をさせてしまうので……こうなるともう、大怪我させずにこの場を乗り切る手段はただ一つ。
「みんな、ちょっと手伝ってェ〜〜〜!!!」
『……………っ!?』
 悪いんだけど、周りを取り囲んでいるマーメイドたちはどちらかと言うとあたしの味方だ。呼びかけると、むしろ嬉々としてアリアに背後から抱きつき、
「乱暴はあかんで。ほら、こんな布を身体に巻いとらんと、うちらみたいに裸でお付き合いしよーや♪」
『………、………、〜〜〜〜〜〜〜ッ!?』
「心配しなくても、あなただってすぐに虜になっちゃうんだから……いえ、虜にしてあげよっか?」
『……ッ! ―――――ッ! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?』
「怖がらなくてもいいのよ。力を抜いておとなしくしていれば、私たちみんなで可愛がってあげるから……」
『――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!?』
 薄々感じていたことではあるんだけれど、雌性体、つまりメスしかいないマーメイドたちは、ほとんどがレズの気のある人ばかりだ。みんな嬉々としてアリアを裸にひん剥き、あたしの目の前で恥ずかしがる彼女の脚を二人がかりで大きく左右に開くと、胸と股間にそれぞれ別のマーメイドが吸い付いて覚えたばかりの舌技で彼女を翻弄し始める。
 ―――よし、これでもう大丈夫♪
 十人がかりで指の一本一本に至るまで舐めしゃぶられ、氷のような表情をしていたアリアも次第に甘い声を上げ、腰を震わせる。その様子に一安心と汗を拭っていると、なぜかあたしの胸にも背後から手が伸びてきて、弾力のある膨らみをこね回されだしてしまう。
「ねえ、今のうちに私にもエリンと同じ事……してもらえます?」
「で、できればまた後日にしてもらえるとありがたいんですけどォ!!!」
「そんなつれないこと言わないで……」
 ―――あああああ、お、オッパイが、吸い付くようなオッパイがあたしの背中でムニムニとォ!……て、やめ、扱くのは反則だって……んんっ! 耳は弱くて……う、うなじも、鎖骨も、ダメだってば、や、やぁあぁぁぁ〜〜〜!!!



 重ねて言っておくけれど、マーメイドはレズっけのある人が多い。
 下半身が尾鰭だから股間とかを攻めたり攻められたりするのには不慣れだけれど、反面、上半身は人間とそう変わらないので、胸や首筋を愛撫するのは非常に上手い。
 で、アリアと一緒にそんなマーメイドたちに捕まり、完全に主導権を握られてしまったあたしがどうなったかと言うと、
「この人たち、マーメイドじゃなくてサキュバスだよ……」
 そう悟りを開いたのは、30時間耐久47人抜きリレーの中盤に差し掛かる前だった。
 マーメイドこわいよ、マーメイドこわいよ……


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