第十一章「賢者」裏3
「んああッ! イく、イくゥゥゥ!!! そこよ、もっと、もっと強く突い…ふァああああああぁん! イッ、くゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
誰もが眠りに突いた深夜の露天温泉で、あたしは恥丘を突き出しながら身体を震わせ、あられもなくイき狂ってしまっていた。
―――あぁ…感じてる、あたし…ポチと、小さな男の子とSEXして……あッ、ク、クる、おマ○コとお尻を犯されて……また、あたし、またァ……!!!
月がなく、蒼い夜空に撒き散らされた星の瞬きの下で乳房を弾ませ、体中がバラバラになるようなオルガズムを連続して味合わされているあたしの下から、アナルの窄まりへポチが肉棒を突き立てていた。そしてあたしの上から覆いかぶさり、膣痙攣かと思うほどに緊縮しているおマ○コへ肉棒を突き立てているのもポチ。
―――なんで二人になっちゃったのかなんて解らないけど……
そんなこと、今はどうだっていい。薄い肉の壁で隔てられているだけの二つの穴に捻じ込まれるたびにあたしの内股には生暖かい感触が飛び散らせ、獣人の少年たちの情熱的なピストンの前で何度なく絶頂へと押し上げられてしまっていた。
―――ダメ……こんなのダメェ……あたし、男なのに……受け入れてる、おチ○チンを受け入れちゃって…か、感じちゃってェ……!!!
二人のポチの精力に限界はない。あたしの膣と直腸の奥へドロドロの精液を幾ら撒き散らしても、それ以上の魔力があたしからポチたちへと流れていってしまう。それは二人の精力になって再びあたしの身体へとペ○スを突き立てる。何度しゃぶっても、何度パイずりしても若い肉棒は萎えるということを知らず、ヴァギナとアナルに二人合わせて二十回以上射精しながら、それでも何度も何度もあたしの身体にしがみついては二本に増えたペ○スを捻じ込んでくるのだ。
―――二人に増えて……精力まで倍になったら……よ、四倍?
そんな単純な計算にゴクリとノドを慣らした直後、息を合わせて二穴を犯し抜いていたポチたちのペ○スがビクンッと跳ねる。それが射精の前兆だと身体の隅々で感じて覚えてしまっていたあたしは、口元を淫靡に歪ませると、身体は小さくても獣人であることを誇示するかのような強烈なバネの腰で突き込まれた二本のペ○スに体内から押し上げられる快感に絶頂潮を噴きながら強制を迸らせる。
「んゥああああああン! あ、あたし、も、ひ…ヒィんんんぅ〜〜〜!!!」
『『アウ、アウ、ワウゥゥゥ〜〜〜〜ンン!!!』』
「ポチ、が…我慢できない、イっちゃう、二本のおチ○チンで、狂っちゃう、から、ポチ、ポチ、ポチィィィ!!!」
もう手も足も床についてなんていられない……正面にいるポチ一号があたしの両脚を持ち上げて恥丘に腰を叩きつけながら、下敷きになっている二号が背後から絞りあげた乳房の先端にむしゃぶりつく。そして二つの亀頭にヴァギナとアナルから圧迫された肉壁を息を合わせて扱きたてられると、あたしはケダモノの様に泣き悶えながらよだれをダラダラと滴らせてしまっていた。
『ワウゥン、ワウゥン、ワ…ワウゥウウウウン!!!』
『アオ、アオォン、アオォォォォォンンンッ!!!』
「いいわ! イって、いいよ、出して、一緒に、同時に、あたしの、中に、ザーメン、して、してェ―――――――!!!」
もう何を叫んでいるのか自分でも解らない恍惚の中、限界にまで膨れ上がったポチたちのペ○スが緊縮するあたしの二つの穴を押し広げながら亀頭を捻じ込みながら、完全にオルガズムのスイッチが入ってしまいガクガクと打ち震えだした腰の奥へ圧倒的なまでの量の精液を同時に噴出させた。
「イッ…イックゥゥゥウウウウウウウウウウ………ッ!!!」
まるで鉄を溶かす坩堝のようにドロドロに煮えたぎったヴァギナとアナルの奥で精液が爆ぜると、あたしは二人になったポチの激しすぎる愛情と肉欲とに耐え切れず、股間から熱い飛沫を迸らせる音を響かせてしまう……失禁。あまりの絶頂の凄まじさに、潮どころかオシッコまで迸らせながら奥歯を噛み締める。
「ま…た、イく……ッ! ゆ、るし…てェ……あたしのしきゅー…も…ザーメン……はいんな…い、イィ……!!!」
しゃくりあげるように緊縮と弛緩を繰り返す膣口とアナル。その二穴を塞ぐ肉の楔のように根元まで押し込まれた肉棒と一緒に股間へ密着している二人の玉袋が、もう気が狂ってしまいそうなほど膣出し絶頂を迎えているあたしに恐怖を抱かせるぐらいに力強い脈動を繰り返す。獣人の少年に挟まれる喜びと我慢すら覚えていない子供のように放尿を押さえ込めない恥ずかしさで唇を大きく開いてよがり泣くあたしの頭の中も身体の中も白濁色に染め上げられていく。
「あ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――っっっ!!!」
放尿音さえかき消すほどの噴出音を響かせながら、蜜壷と直腸から逆流噴出する大量のザーメン汁。
女の喜びを受け入れて発情しきったボディーを前後から抱きしめられる温もりに、感じてはいけない満ち足りた気持ちを味わいながら浸りきってしまう。
「く、ふぁ……あ、あ……ああぁ………♪」
何度も股間からオスの精液を迸らせながら、長く続くダブル中出しアクメの余韻にイヤらしい身体は震えが止まらない。……けれどその震えは、薄い肉壁一枚を隔ててヴァギナとアナルを埋め尽くしている肉棒が萎えることなく、まだそれぞれの肉穴を押し広げたままだからだ。
「………まだ……できちゃうの……?」
問いかけると、あたしの豊満な胸に顔を埋めて震えていたポチが、湯気と汗とよだれとにまみれた顔を挙げる。体力までは回復しておらず憔悴した顔であるものの、あたしと視線が合うと、二人タイミングを合わせて勃起ペ○スであたしの直腸と膣内ををえんを描くようにこね回しながら乳首や肩甲骨の裏に舌先を滑らせてくる。
「んッ………!」
小さな手、小さな唇、小さな舌先……それらが何度も汚されて汗だくになったあたしの身体の上を這い回る。くびれたウエストから脇へとくすぐるように指先が這い上がってきたかと思えば、充血して固くなりすぎた乳首を摘まれながら、いくつもの淫液にまみれた太股の内側を撫でられる。
―――そ…そんなにやさしくされた…ら……ァ………!!!
いつもならくすぐったさを感じてしまう場所だ。だけど絶頂の余韻で満たされた身体はそれすらも新たな絶頂への糧にしてしまう。子宮口の周囲の感じやすい場所と何かを受け入れるようには出来ていない直腸の奥を振動するかのように小刻みに動く肉棒でこね回され、情けないぐらいに蕩けきったアヘ顔を浮かべて
『『ワ…ウゥン……』』
「や…こりこり…されたら……あたし……おマ○コが…きもち…い…ィ……♪」
激しい二穴SEXの直後の優しすぎる愛撫の波に揺られ、年下の少年に弄ばれる恥ずかしさと快感にあたしの括約筋は何度となく痙攣を繰り返す。二人のポチがあたしをイかせようとしているのは明白……なのに、それに抗えぬままに何人もの男たちに開発され陵辱されてきたヴァギナとアナルが純粋すぎるほどの性の喜びに、もう抑えきれないほどの愛情を沸きあがらせながらドクン…と身体の奥で熱いものを弾けさせてしまう。
「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………!!!」
そして再び打ちつけられる二人の重くて濃厚なザーメン……頭の奥で何度も乳白色の閃光が瞬きながら、あたしはうっすらと瞳を開き、潤んだ視界の中にたたずむ黒髪の少年をいとおしげに口にした。
「ポ…チィ……♪」
『『『アオン……♪』』』
気のせいか……なぜか二人じゃなくて三人いるかのように声が聞こえたけれど、あたしは微笑を浮かべながらゆっくりと幸せの闇に意識を委ねてしまう……のだけれど、
「もうそろそろ満足したんじゃないのか? いい加減にしてくれないと、いつまで立っても私が湯に浸かれないんだがな」
「ふ…え……?」
身を仰け反らせ、逆さになった視界にたたずんでいたのはポチ一人ではなかった。そもそも、まだあたしのアソコとお尻でつながったままのポチが視界の中に立っているはずがなかったのだけれど、その傍らには、手ぬぐいで身体の前面を覆い隠している留美先生までもが立っていた。
「留美…しぇん…しぇ〜……?」
「私も一緒に付き合ってやる……冷たいシャワーで頭を冷やせ」
留美先生が指を打ち鳴らす。ただそれだけであたしの全身の皮膚があわ立って一気に意識が覚醒し、その直後、下から覗くように見上げる留美先生の内股に白く濁った粘液が幾筋も滴っているのを目にしてしまう。
「まさか留美先生、そのポチと……」
「言うなっ!」
暗い露天温泉に留美先生の怒ってるような恥ずかしがっているような声が響くと、空から巨大な水の塊が降ってきて、その場にいた全員を強制的に冷水の中へと飲み込んだ……
「くしゅん!」
留美先生の魔法で降らせた水が流れ込んだせいで、温泉のお湯が生温い。
南部域の温暖の気候であれば、この程度でも普段なら十分温いと思えたかもしれない。けれど冷水の固まりに飲み込まれて身体の芯まで冷えるハメになってしまったあたしには物足りなず、肩までお湯に浸かりながらまだブルブルと震えていた。
―――で、自分も付き合うとか言って水を降らせた留美先生が平然としているのは、なんか納得がいかない。
恨みがましい視線を横へ向ければ、髪を束ねて結い上げた留美先生も温泉に入っている。しかも地下から湧き出るお湯の注ぎ口周辺を自分の陣地にしていた。
―――ううう…温泉をぬるくしておいて温かい場所を独り占めするなんて、鬼だ〜!
一応、なぜか三人に増えたポチが温泉の隅っこのほうで集まって、
『『『わう〜……』』』
とゆったりのんびり浸かりながら、肌が赤くなるほど高めた体温でお湯を温めてくれている。
正体が炎の獣だけにそんな芸当も出来るようだけど、あたしが温もりを求めて近づくと、たちまち興奮を昂らせてお湯が熱湯に変わるので裸のままでは不用意に近づけない。
まあ、ポチには人間湯沸かし器ならぬ獣人湯沸かし器としてあたしの身体があったまるまで頑張ってもらうとして、あたしはお湯の中で疲れ果てた身体を伸ばしながら大きくため息を吐き出した。
「エロスが悪いとは言わんが、オープンエロスもほどほどにしておけよ。丸見えだぞ」
「いいじゃないですか……留美先生のほう見てるわけじゃないんですし、他に誰もいないんだし」
「だったら遠慮することはないだろう。こっちの方が温かいのだから、こっちに来ればいい」
いけるか―――!……と叫びたくなるけれど、冷たい身体を温めたいってのもあるし、留美先生と裸のお付き合いと言うのもうれしはずかしのドキドキものだ。本当はお誘いに乗って留美先生の傍に行ってしまいたいが、
「んっ……中に出されたのがこぼれてきた……」
「ブッ!」
「馬鹿、ちょっとした冗談だ。汚いからお湯に唾を飛ばすなよ」
「る、留美先生が変な冗談言うからじゃないですか!」
心に邪(よこしま)な気持ちを抱いていたせいで、対応力にあまり余裕がない。水面から浮き上がっている見事な双球から視線を切り、身体を脱衣所のほうへと向ける。
「ははは、気を悪くしたなら許せ。私も今日はいささか疲れている。今日のように魔法を連続使用したのも数十年ぶりだしな」
「数十年て……」
嘘か真か、留美先生は何事でもないかのように口にするけれど、どう見たって「数十年」などと口にするような年齢に見えない。それだけに昼間の騒動で耳にした話で沸きあがっていた疑問が再び頭をもたげてきてしまう。
「知りたくはないのか、私のことが」
「へ……?」
“機先を制される”と言うのはこういうことか……色々と考え出し始めた途端に、タイミングを見計らったかのような一言に飛んできてギクッと身を震わせてしまう。
「今日は色々と話したい気分だが……たくや、そこの息子たち、封印して消すことは出来るんだろう?」
「む、息子って……なんでポチがあたしの息子なんですか! 外見は“これ”でも、ホントは炎の獣なんですよ!?」
「そんなにそっくりなのに関係なし?……実はお前、あまり鏡を見ていないだろう。いや、昔から見ていなかったな?」
「どうでもいいじゃないですか、そんなこと〜……」
確かに以前は鏡をあまり見ていなかったけど……最近は特に見ようともしない。“女”としては身だしなみ整えたりするべきなのだろうけれど、鏡の向こう側にいる女になってる自分の姿を見るのに慣れてきてるのに気づいた時のショックといったら……言葉ではそう簡単に言い表せない複雑な気分だ。
どうせ町や村の間を移動するだけなら人と顔を向かい合わせることもないし、ちょっとした寝癖とかなら一緒に旅してくれてる綾乃ちゃんが直してくれるし、自分が女になってることを否応なしに認識させてくれる鏡なんで、別にこの世から無くなったっていいんじゃないかと言う話だ。
―――けど言われてみれば、ポチはあたしと髪の色も同じだし、顔立ちにあたしの面影があるといえばあるのかも……で、でも、絶対にあたしの子供じゃないよ? 子供なんか絶対に作らないからね!?
留美先生に指摘されるほどポチがあたしに似ているのは、元々コボルトだったのがあたしの魔力を吸収して変化してしまったからだろうか? そもそも亜人認定されている獣人とどう見たってモンスターの炎獣と言う二つの姿を持っている上に今現在三人に分身してしまっているポチをどう捉えるべきか、首を考えてみると……どうにもわからない事だらけだ。
「そもそもモンスターは“因子”を中心に大気中の魔力が集まって肉体を得た存在だ。マーメイドのような中位以上のモンスターの中には、長い生活の間に受肉してより確立した身体を形成し、“因子”を奪われても存在を維持し続ける種族もいる。逆に犬や猫など通常の生物が瘴気に汚染されてモンスターとなる場合もあるが」
「???」
「解らなければそれでもいい。単に、昼間のマーメイドたちは人間と変わらない姿をしていても、マーメイドであることに違いはないと言うことだ」
突然マーメイドのことを説明されても、いまいち理解力が追いつかないんだけれど……ともあれ、ポチがコボルトから今の姿に変化した際にあたしの魔力が使われたのだから、あたしに似てしまったというところだろうか。
………血のつながりはなくても、あたしと“つながり”はあるわけで……でも息子って言うのは……
もし“息子”扱いなら、さっきのエッチだって近親相姦扱いになってしまう。しかも3Pだ。禁忌の香りは倍増どころで済みはしない。
―――そう言えば、あたしとエッチしたがるのはわかるけど、何で留美先生にまでエッチなことしたんだろ?
獣人になった直後に綾乃ちゃんや静香さんと一緒にエッチしちゃったことはあったけれど、それ以後はあたしの言うことをよく聞き、他の女性に手を出したりはしていない。
「………留美先生とエッチしたのは誰?」
『わうっ♪』
気になって問いかけてみると、三人のポチのうち一人が元気よく手を上げる。
「なんでそんなことしたの?」
『くぅ〜ん……わうわう、わン、ワンワンわ〜うワん!』
「なになに? 気づいたら目の前にお風呂場を覗き見してる留美先生がいて? 後ろへ突き出した股間を指でまさぐってて? そこからあたしの魔力の匂いがしたから我慢できなくなって? クンクンしてペロペロしてゴクゴクしてズボズボしてドピュドピュしてって、あんたはいったいなにやってんだ―――!?」
『わんっ♪』
覗き見してオナニーしていた留美先生にも問題ありだけど、後ろから股間に顔を埋めて秘所をザラザラの舌で嘗め回して愛液噴き出るほどイかせた挙句に、留美先生が入れてと言うからエッチして膣出ししちゃうなんて……どうやらあたしの教育がいけなかったようだ。
ため息混じりに頭でもコツンとして反省させよう……ま、あたしの残り香がしたとは言え膣内射精七回は多すぎる。今後このようなことが内容に叱っておこうと思った直後、湯気を切り裂く空気の弾丸が背後からあたしの真横を突き抜け、ポチ三号の眉間に直撃した。
「余計なことはしゃべるな、このバカ犬が!」
攻撃したのはもちろん留美先生だ。『わんわん』という言葉では脱衣所で何があったのかとあたしに知られることはないと高(たか)をくくっていたのだろう。目を回してお湯に沈むところを一号二号に支えられた三号から後ろへと視線を振り返らせると、留美先生はお湯の温もりとはまた違う火照りで顔を真っ赤にして立ち上がっていた。
「だ、だからっていきなり魔法で攻撃することないでしょ!? まだ子供なのに!」
「子供だからといって分別をわきまえなくていいということはない! これだから子供は気に入らんのだ! 妊娠なんて気の迷いだ!」
「いやいや、妊娠しちゃったら気の迷いじゃすみませんよ!?……も、もしかして留美先生、ポチの子を!?」
「それを貴様が言うのかたくや!!!」
温度が下がってうっすらとしか立ち上らなくなった白い湯気のヴェールが続けざまに弾け、その向こう側に留美先生の裸体が見えたと思った瞬間には、あたしの眉間へ続けざまに空気のつぶてが叩きつけられていた。
「あいたー! ひ、酷いじゃないですか、あたしにまで攻撃って。いきなりだったから視覚的にもビックリしましたし…って、またあいたー!」
股が開いたわけじゃないので念のため。喋ってる途中で再びあたしの眉間に衝撃が突き刺さり、あたしは連続してデコピンをくらったようにヒリヒリする額を手で押さえて仰け反った頭を起こす。
「岩ぐらいなら砕くんだぞ!? それが「あいた」ですむ貴様はどれだけ石頭だ!?」
「その前に、そういう魔法をいきなり人に向けてぶっ放す留美先生の性格に問題ありだと、あたしは直訴したいんですけれど!?」
半泣きになりながらもポチたちを背後に庇うと、なぜか「ぽんっ」と小さな爆発音がする。気になって後ろを振り返ると、
「あれ、また一人?」
『きゃうきゃうきゃうん!!!』
他の二人は……と言うか、三人いても居あたしと意思疎通していたのは一人だけ。さらに「と言うか」を続けると、そもそも一人分だった……と考えるべきだろう。
三人に分かれていても意識は一つ。好きなときに分身できて、三人のうちどこを基点にしてでも元に戻る事の出来る能力……昼間の戦闘で怪我を負った際にあたしが飲ませた血から得た新しい能力なのだろうけれど、そのことを深く考えるよりも前に後頭部を空気の弾丸が襲い、前のめりにお湯の中へとひっくり返ってしまう。
「………る、るみぜんぜぇ!!!」
「敵を前にして油断を見せる貴様が悪い! なにかを守りたければ一瞬たりとも気を抜くな!」
「お、温泉に入ってる時まで気を抜くなだなんて、どんだけむちゃくちゃ言うんですか――――――!?」
身体を起こしてすぐに叫んだことで、鼻や口に入ったお湯を一気に排出。中の方まで入ったらしくて鼻の奥が痛むけれど、このままだったらせっかくくっついた骨がまたバラバラにされそうだ。
―――気を抜くなって言うんなら……!
手持ちの武器はなく、まだ魔力も万全じゃない。魔封玉だけでどこまでお怒り中の留美先生相手に抗えるか……そうやって必死に頭の中で計算をめぐらせていると、
「留美、あまり自分の教え子はいじめないほうがいいんじゃないですか?」
しっとりとした大人の雰囲気の黒髪の美女が、タオルで胸元を隠しながら浴場に入ってくる。
そしてそちらに気を取られると、
「希代香か」
入ってきた女性の名を呼びながら留美先生が放った空気の弾丸が、あたしのこめかみに直撃した―――
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