第十一章「賢者」17


 マーマン三体と弘二との戦闘が始まった………のだが、
「弘二、そこをどいて!」
 と、まとめてふっ飛ばしたいあたしが怒鳴ると、
「ここは任せて、先輩は安全な場所に!」
 と、勘違いした弘二が振り向かずに左腕を真横に伸ばして、親指を立てる。
 ―――このバカごと吹っ飛ばしてやろうかしら……!
 ただのマーマンであれば、炎獣のポチによる火炎攻撃かプラズマタートルの雷撃攻撃で簡単にけりが付くのに、勘違いしているのか格好をつけているのか、弘二は単身、ロングソードを手に切り込んでいく。
 ―――まずはマーマンが来たことを村に知らせる事が肝心なのに!
 警備に男衆が借り出されている以外は平和な日常生活を送っている村人に、マーマンの襲来を伝えて警戒するように呼びかけなければならない。
 それにはあたしと弘二のどちらかが向かわなければいけないのだけれど、弱っちい弘二を一人で残して死なれでもしたら目覚めが悪い。それならここはモンスターを召還して多人数戦闘が可能なあたしが残り、弘二に村まで走ってもらうのがベストな選択のはずなのだ。
 ところが、弘二はそれがさっぱり理解ってない。多分、最初のマーマンの鉄砲水攻撃であたしが負傷したと思っているのだろうけれど、
「いいからさっさとどきなさい! あんたが足手まといだって事がわかんないの!?」
「分かっていますとも、先輩が自分ひとりを犠牲にして僕を逃がそうとしていることぐらい! それが分かっているから、僕はここらか逃げるわけにはいかないんです!」
 ………うわ、本気でふっ飛ばしたい。なんかもう、あたしとの因縁ごと海の藻屑にしてしまいたい!
 ともあれ、弘二があたしの言葉を聞かずに突出してしまった以上、放っておくわけにもいかない。剣は持ってても鎧を着ていないし、弘二の実力がさっぱりなのはよく知っている。もう弘二とマーマンの戦闘が不可避になった時点で、あたしは魔封玉を左手に呼び出して援護の用意をする。
 ―――のだが、
「ハッ!」
 横薙ぎに振るわれる弘二のロングソード。それを二体が左右に跳んで躱し、中央の一体が上空へと跳躍する。弘二の頭の高さを超える跳躍力に驚きはするものの、あたしの目は身体を反り返らせて“溜め”を作っているマーマンに体勢に向けられていた。
「弘二、上!」
 あたしが叫んだ直後、逆向きに身体を折り曲げたマーマンの口から勢いよく水が打ち放たれる。
 直撃する―――あたしの脳裏に頭部にダメージを受けて倒れこむ弘二の姿がイメージされるけれど、そのイメージを超え、弘二は身体を回すステップで最小の動きを持って鉄砲水を回避。
 そして剣を振り抜いていた両腕を巻きつけるように全身を一回転。身を沈め、横から縦に軌道を変えた剣が膝を伸ばす動きで加速を得て、水を吐いて空中で硬直しているマーマンに襲い掛かる。
「まずは一体!」
 どんな跳躍力を持っていても、マーマンに翼は無い。落ちようとする所へ弘二の斬撃が交差し、硬い鱗を切り裂かれてわき腹から鮮血が迸った。
「次っ!」
 全身を伸び上がらせた弘二が次の行動に備えて身を回し、縮めながら叫ぶ。それに合わせた訳ではないだろうが、左手に跳んだマーマンが今しがた斬り倒されたものと同じように身体を反らせ、鉄砲水の発射体制をとる。そして弘二を挟んでほぼ反対側にいる三体目のマーマンも、体を沈め、水掻きのついたて指の先に付いた鉤爪を構えて全身を前に跳躍させる。
 それに対して弘二は、左手でポーチからすばやく抜き出した煙玉を地面に叩きつける。着火不要、地面に打ち付けられた衝撃で割れ砕けた煙玉からは、弘二の姿を一瞬で隠すほどの白煙が溢れ出る。
『―――――――――――――――!!!』
 マーマンの口から迸る鉄砲水……三度目になるその攻撃は白煙を貫通こそしたものの、またしても弘二を捕らえられない。
「僕のブーツは鉄板入りィ!」
 弘二が姿を現したのは、マーマンの足元。前かがみになったマーマンのさらにその下だ。
 三体目のマーマンは突然の煙幕に続いて突然の弘二の出現に攻撃のタイミングを狂わせる。あわてて振った鉤爪も弘二の頭上でむなしく空を切り、足首まで覆う頑丈そうなブーツでのスライディングキックを膝に喰らってもんどりうつ。
『ゲゴオッ!!!』
 なんとなくカエルにも似た悲鳴を上げて突き出た顔から地面に倒れ転がされたマーマン。ただの蹴りとは言えカウンターで間接に攻撃が入ったのでダメージはかなり大きい。しかも鉄板が仕込まれた安全ブーツとくればなおさらだ。いくら硬い鱗に全身を覆われたマーマンでも立ち上がることは出来ないだろう。
「これで二体。残るは一体!」
 大量の水を相手を吹き飛ばすほどの勢いをつけて吐き出すのは、体格では人間とそう変わらないマーマンにとってもかなりの力が要るはず。鉄砲水を打ち出す前に全身を反り返らせてまで力を溜めるのがその証拠だ。
 当たれば必倒の一撃だけれど、躱されれば無防備な姿をさらすことになる。
 けれど次弾になるだけの水を体内に蓄えていられるはずもなく、連携を取れる仲間もいない。マーマンの最後の一体は、蹴りを放った仰向けの体勢から身体を回して逆方向にいる自分の方へとすぐさま突っ込んでくる弘二に対し、明らかに反応が遅れていた。あと三歩の距離にまで弘二が迫り、ようやく腕を振り上げる。
 ―――弘二、いつの間にかこんなに強くなってたんだ……
 あたしの知らぬ間に、あの貧弱だった弘二が一人前の剣士に成長していたことに驚きが隠せない。
 記憶の中にいる弘二は、弱かったり、捕まってたり、後はエッチな事ばかりしてくるスケベなヤツと言う印象しかない。娼館で無一文になるまであたしを指名したりして……とても格好いいなんて思える相手ではなかった。
 ―――それなのに……今は胸がドキドキしてる。
 弘二は言ってくれた。「あたしを守る」と。それはつまり……あたしを守れるように強くなったって、考えてもいいんだろうか。
 ―――そうだとしたら、なぜか物凄く嬉しい。
 本当なら、あたしは頑張れるような人間じゃない。誰かを引っ張って行動できるようなリーダーシップなんて持ち合わせていない。綾乃ちゃんと二人で旅をしてきて、無意識に張り詰めていた責任感が急速に解け、弘二に頼ってしまいたいと……そんな気持ちが胸から溢れ出てきてしまう。
 ―――ば、馬鹿なこと言わないでよ! あたしは、べ、別に弘二のことなんか……!
 あたしにはやらなければいけない事がある。男の身体に戻ることもそうだし、弘二の記憶を奪った竪琴の音色の正体だって突き止めないといけない。
 だから今は、そんなことを考えてちゃいけない………そう自分の心を戒めたあたしの目の前で、弘二はマーマンの鉤爪に胸を切り裂かれた。
「………こ、弘二!?」
 勝てたはずだ……間違いなく、弘二が最後の一体を切り伏せて戦闘は終わるはずだった。
 それなのに最後の最後で油断したのか、弘二は反応が遅れたマーマンの振り上げるその手で攻撃を受けてしまった。
 胸を押さえ、その場で崩れ落ちる。
 手の中の剣が地面に落ち、イヤなぐらい澄んだ音を響かせる。
「ウソ……でしょ?」
 弘二がうつ伏せに倒れると、マーマンは飛びのき、まだ息のある二体を抱えて海へと飛び込んだ。戦っていた一方が逃走し、もう一方が倒されたことで戦闘が終わりを迎えると、あたしは痺れの抜けない右腕に眉をしかめながら弘二に駆け寄り、抱き起こした。
「弘二、しっかりして、弘二!」
「うっ……せ、先輩……よかった……ご無事で……」
 よかった、まだ生きてる……あたしの呼びかけに弘二が苦しそうに返事を返してくれると、弘二が死んだのではないかと言う恐怖が一気に安堵へ変わり、胸を撫で下ろす間もなく涙が一気に溢れ出してくる。
 ―――そんなに弘二が死んだって思ってたのが……大きくて、嫌な気持ちだったんだ……
 だけどあたしは弘二が大嫌いだ。そんな相手を心配しただなんて……なんとなくイヤな気持ちだ。その気持ちをどう処理していいのか分からず、胸を押さえて苦しげな笑みを浮かべる弘二につい、荒げた声を上げてしまう。
「このバカ弘二! 死んじゃったらどうするのよ!」
 泣いている声を聞かれたくなくて、思わずそう怒鳴りつけ……泣き出した顔を見られたくないから、あたしの腕は弘二を抱きしめていた。
「あたしを守るだなんて言っといて、一人で突っ込んで死んだらバカみたいじゃないの!」
 身体全体で感じる弘二の温もり。それが今もまだ残っているのを確かめて安堵してしまうと、そう叫ばずにはいられない。
「僕は死にませんよ……大丈夫です。先輩をずっと守るんです……ボクは……」
「だからあんたはバカなのよ……死んじゃったら……なんにもならないじゃないの……」
 格好いいところをあたしに見せるために一人で突撃なんてするバカには、いくら言っても言い足りる事はない。だけど……弱々しく弘二の手があたしの背に回されると、まだ言いたいことは山ほどあるはずなのに込み上げた感情がノドを詰まらせてしまう。
「いいんですよ……先輩が、ボクのことをそうやって気遣ってくれるだけで満足です。はは……先輩に抱きしめられてるのに…何も出来ないなんて……」
「弘二……」
「あの……最後に一つだけ……お願いがあるんです……」
 最後だなんて縁起でもないことを言わないで……無言のまま、その気持ちを込めて腕に力を入れてしまっていたあたしの肩を弘二が軽く押す。今の弘二に力なんてほとんどないはずなのに、あたしたちの身体は離れ、涙に濡れている顔を見られてしまったのに、あたしは力なく微笑む弘二を見つめたまま続く言葉をじっと待ってしまう。
 そんなあたしに弘二が向けたのは、今にも消えてしまいそうな儚い微笑み。あたしの胸はギュッと締め付けられてしまい、本当に何も言えなくなってしまうと、
「唇を……」
 あたしの肩を押した手があたしの頬に触れる。その手の上から自分の手を重ねると、わずかな恥ずかしさに頬に熱がともる。
 けれど、小さく頷いてしまっていた。あたしを守って倒れた弘二の願いがそれなら……
「弘二………」
 今、目の前にいる相手の名前を唇の間で呟く。聞こえたかどうかも分からない呼びかけは、ただ、あたしの胸の鼓動を速くさせる。
 ―――あたしは……
 気持ちの整理が追いつかないのに、あたしの顔が弘二にかぶさっていく。
 唇を本当に許してもいいのかだなんて……一時の気の迷いに決まっているのに胸を突き上げる気持ちに抗えず、吸い込まれるように弘二の唇に自分の唇を重ね合わせようとして、
「………ちょっと待て」
 あと数センチと言う距離にまで顔を近づけた瞬間、あたしは弘二の顔を鷲掴みにして強引に自分の身体を引き剥がした。
「これ……どういうことなのかしら?」
 にこやかに……あたしの出来る最高に優しい笑顔を浮かべ、唇をムチュ〜と突き出している弘二にあるものを指差してみせる。
 それは弘二の股間なのだけれど、そこはとても死に掛けてたり重傷を負った人間とは思えないほどモッコリしていた。さっきまで気が動転していて気がつかなかったけれど、マーマンの鉤爪に引き裂かれたと思っていた弘二の胸も、血や傷はおろか衣服が破れてすらいない。
「チッス……し、死ぬ前に先輩の熱いチッスで唇を〜」
「あっはっは、何が唇突き出してチッスだ、このバカタコォ!!!」
 恐怖から安堵へと変換されていた感情が、今度は火山が噴火したかのように激しい怒りへと変わって脳天から突き抜けた。下が硬い岩場とか関係ない。よい子は真似しないようにと心で祈り、あたしはこめかみに青筋を浮かべた笑顔を顔に貼り付けたまま、弘二のお腹に容赦なく拳骨を叩き込んだ。
「ゲホアォ!!! は、腹と背中でダメージが二倍………」
「ぶ、無事なら無事ってちゃんと言いなさいよ! あたしが本気で心配してるのに、あんたってヤツはァ〜〜〜!!!」
「いや、僕は言いましたよ、「死にません」って! 勘違いしたのは先輩じゃないですか!」
「………う、うるさぁ〜〜〜い!!! あんたなんか、あんたなんか〜〜〜〜〜〜!!!」
「うわ、あの、胸に一撃喰らったのはホントなんで、だから、カクカク揺さぶるのはァ!」
 ―――そんなの、知ったことか。
 勘違いして勝手に一人で気分が盛り上がってしまったのを指摘されて、恥ずかしさは倍増している。弘二の襟首を掴み、前後に左右に上下にと激しく揺さぶりたててしまう。
「人の気も知らないで、キスしてくれってせがんで、なに考えてんのよ!」
「そんな、だって、ご褒美、うわぁ、世界が回…き…キボチわるい……」
「誰が……誰が弘二なんかにキスなんて――――――!!!」
 そうだ、弘二となんかキスしてやらない。してやるもんか。顔が近づいてきたら頬をひっぱたいて石を抱かせて海に沈めてやるんだから……そう硬く決意したあたしは弘二の襟首から手を離すと、頭をフラフラさせるほど目を回している弘二の首に飛びつくようにしがみつき、唇を押し付けてしまっていた。
「んっ…ふぅ……ん、んんっ……ぅ………!」
 あたしの気持ちが今、何に変わってしまっているのかが分からない。
 弘二のことはまだ怒っているけれど、無事だったと知って安堵だってしているし、だまされたのが悔しくもあり、あたしのために戦ってくれたことを嬉しくも思っている。
 ただ分かっているのは、唇から弘二が確かにここにいるのだという温もりが伝わってくると、白布の水着で締め付けている胸が切なく疼き、腰が震えてしまうことだけだ。恥ずかしさで顔から火が出そうなのに、何度も顔をよじって、驚きで硬直している弘二に唇をムニムニと押し付け、今まで感じたことがないぐらいドキドキしている胸を擦り付けてしまっている。
 ―――やだ……ものすごく濡れてる……弘二に抱いて欲しいなんて思いながら……
 ようやく弘二の手が恐る恐るあたしの背中に回される。するとジャケット越しに抱きしめられているはずなのに、頭の天辺から爪先までの全身のありとあらゆる血管と神経が震えてしまい、水着から染み出してしまいそうなほどに愛液が触れられてもいない割れ目から滴り出してきてしまう。
「んぅ……んふぅ………!」
 艶かましく鼻から息を洩らすと、大きくうごめいた膣の奥から愛液が興奮の火照りと共にドバッと迸る。このままだと抱きしめられてるだけで達してしまいそうなほどの興奮の昂ぶりに自然とキスのほうまで激しくなり、お互いの口内を凌辱するように舌を押し込み、いやらしい音を響かせて唇をよじり合わせてしまっていた。
「だ…ダメ……こんなんじゃ……!」
 強引に唇を引き剥がすと、あたしと弘二は同時に動き出していた。
 弘二が立ち上がってズボンからペ○スを引き出している間に、あたしは首の後ろの水着の結び目を解く。胸の前で一回転よじっていた布がパラッ…とほどけて地面に落ちると、あたしは丸々と張り詰めた乳房を惜しげもなく晒して、弘二の股間に熱を帯びた視線を送っていた。
「先輩……いいんですよね!?」
 興奮を隠しきれない弘二の声が荒くなり、同じぐらい興奮していたあたしは水着の下で淫裂を開閉させながら大きく顔を頷かせる。
 今すぐ弘二が欲しい……それがどうしてか分からないまま、すぐに考えることはやめた。
 太陽が暑く、身体はそれ以上に熱い。海から吹き寄せる潮風に火照った体を煽られながら、あたしのノドの置くめがけて弘二の太く逞しいペ○スが突きこまれ―――





『ダゴン様、見つけたキ、見つけたキ! 人間にいい女を見つけたキ!』
『オッパイ大きいキ。ダゴン様の好みに直球ストレートだキ!』
『魔力タップリだったキ! いい子供を何個も産めそうだったキ!』
 そこはマーマンの住処となっている深い深い海の底。
 弘二と戦って傷を負って逃げ帰った三体のマーマンたちは、玉座のような岩に腰をかけた巨大なマーマンの前で陸上で見聞きしたことを水にたゆたいながら報告していた。
 ダゴンと呼ばれたマーマンは通常のマーマンに比べて三倍か四倍ほどの巨体で、ジャイアント(巨人)にも引けを取らない体格をしている。その顔は獰猛で、住処の周囲を旋回している全身傷だらけの巨大サメたちよりも鋭い牙が唇の隙間から覗き見えている。
 さらにダゴンを凶悪に見せているのは、その右手だ。人間なら持ち上げるのもやっとと言う太い鎖を幾重にも巻きつけて手甲のように固めている。そしてその先端はダゴンの傍らの岩に突き刺さった巨大な錨につながっている。
 錨もまたダゴンに合わせたかのように巨大だった。人間やマーマンよりも長く、そして重い。黄金に似た材質で出来ており、日の光もほとんど届かない深い海底にあっても鈍くではあるが魔力の輝きを燐光のように灯し、表面に刻まれた細かな古代文字を浮かび上がらせていた。
『そうか……我らの“母体”足りえるメスが人間の中にもいるギか……それは面白いギ!』
 喋るだけで周囲のマーマンたちがビリビリと震えるほどに海水が振動する。けれどそれがダゴンの喜びであることを知るマーマンたちは恐れることなく、むしろ人間たちとの戦いの予感を感じて一斉に意気を昂ぶらせはじめる。
『これより人間どものあのちっぽけな住処を襲撃するギ! オスは要らないから殺すギ! メスは全員孕ませるギ! 繁殖期の我らの精を恨みを込めてタップリとぶっ掛けてやるギ!』
 鎖を巻いた右上をジャラジャラと鳴らしながら振り上げると、マーマンたちも全員右腕を振り上げ、海の底から沸き起こるような雄たけびを上げる。
『オスは殺すキ!』
『メスは犯すキ!』
『オスは殺すキ!』
『メスは犯すキ!』
 誰も彼もが人間を恐れることなく、海底にとっては天とも言える海面に向けてコブシを突き上げる様子に満足そうに頷いたダゴンが岩から腰を上げ、大錨を地面から引き抜いた。
『そうだギ、あの村はお前たちの好きにするがいいギ。我らの“宝”を奪った怒りを思う存分思い知らせてやるギ!』
『『『ダゴン様、オレたちやってやるキ!』』』
『ならば皆の者、行くんだギ! そして我らの“宝”を今日こそ取り戻し、逆に奴らから“魔曲”を奪い去るんだギ!!!』



 この後、漁村にはマーマンたちが押し寄せて男衆と戦いを繰り広げることになる。
 だがたくやは未だ、自分とマーマンたちの出会いがその引き金になったことも、戦いとなる未来の事も知り得る場所にはいなかった―――


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