第十一章「賢者」03


『それは……』
 ………言葉が途切れた。
 綾乃ちゃんもこの村には疑問を感じていたようだけれど、あたしに問われてやっと自分で考え出したようだ。
 ―――いい機会だから綾乃ちゃんにも少しは考えてもらおう。
 これまでの旅で綾乃ちゃんはあまり自分の意見を主張してこなかった。信頼されて慕われているのだと思えば嬉しいのだけれど、そうやってあたしに依存しているから、あたしの言葉ばかりを鵜呑みにして一喜一憂してしまうのだ。いざと言う時の判断まであたしに頼られ、自分の意見をもてないでいるのでは困る。
 綾乃ちゃんは魔法才能はともあれ、真面目な性格で努力家だから頭が悪いわけじゃない。フジエーダにも進学の勉強に来ていたんだし、男に戻る方法を図書館で調べる時もあたしより役に立ってくれている。ただ、物事の矛盾を見抜くのに慣れてないだけなのだ。
 ―――あれだけ調べものも勉強も出来るのに、あたしより察しが悪いと言うのもねぇ……
 あたしの場合、実家が道具屋でお客や仕入先と値切りあったり品質を疑ってかかったりと幼い頃から姉に代わって仕込まれてきたので、疑わしいところが目に付きやすいだけだ。以前はそうでもなかったけれど、ひどい目に遭いすぎて人間不信になっているんじゃないかと思うこともある。……ま、綾乃ちゃんというパートナーを守るためだから用心深いに越したことはないんだけれど、これから、まだまだ続く先の長い旅で何が起こるかわからないんだし、こう考えを経験してもらうのは悪いことではないだろう。
『………あの、間違ってるかもしれないんですけど』
「答え出た?」
『はあ……私たちがここに来た時にモンスターに襲われてたって言うのも偶然かと思ってたんですけど……そもそも、そんなときに街道の整備なんて依頼しませんよね?』
 ―――おお、当たりだ♪
『私たちがお仕事を請けた街道工事は一週間でしたけど、工夫さんたちを集めたり機材を集める時間を考えれば、そもそもの依頼は大体一ヶ月、どんなに急いでも二週間では難しいと思います。かなり安いお金で工事をさせられたようですし、交渉時間も含めれば最短三週間ほどだと思います』
「うんうん、それから?」
『村の護衛の件ですが、ギルドに依頼してすぐに弘二さんたちが引き受けたとも考えられません。私達の時の様に直接依頼されたわけではありませんし、それに………私たちは、村から町に向かう人に一週間、出会っていません』
 そう……この村のマーマンによる襲撃は昨日今日起こったことじゃない。最低でも一週間以上は前のはずだ。だとすると―――
『おかしいんです。村にとっては街道よりも村人の身の安全を確保するためにお金を使うべきなのに、工事は中止されませんでした。私たちは300ゴールドでしたけど、全体だと1万や2万ゴールド以上はかかったはずです。それを中止して依頼料に回せばよかったのに……あの村長さんは街道の工事を優先させたんですね? ギルドが調査に費やした時間を考えれば二週間は前に村の警備の依頼を出したはずです。もしかすると工事のの依頼と同時期だったかもしれません。マーマンの事を責任者の人が知ったのは本当に工事の直前だったようですし、自分たちの身を危険に晒してでも安いお金で冒険者を来させようとしていた……そこがおかしいって……先輩は気付いてたんですか!? やっぱりスゴいです♪』
「あ……うん、まあ」
 そう答えはしたものの……うん、綾乃ちゃんてあたしよりも頭いいのがよくわかった。
 あたしはただ、街道工事と村の警備の依頼を同時に出していた村長に漠然と矛盾を感じていただけに過ぎない。もし片方だけなら依頼料ももっとたくさん出せるのに……そう思いながら村長宅で話を聞いていたので、おかしいと思っていただけなのだ。
 それに、この村に冒険者に満足に払うお金がないのか……と言う部分にも疑問がある。村長宅の調度品はそれなりにお金がかかったものが多く、しかも新しかった。他人に払うお金は1ゴールドでもケチるけど自分のためになら惜しみなく使うタイプなのだと言えばそれまでだけれど、村長や村人の威圧するかのような態度に安すぎる依頼料、そして二つの依頼をほぼ同時に出した事など、他にも言葉に出来ないほど些細な違和感が幾重にも積み上げられたせいで、あたしははっきりと警護の依頼を断ったのだ。
「間違いなく何かの裏があるんだと思う。それが悪巧みかどうかまでははっきりしないけど、余計なトラブルはごめんでしょ?だからその何かが起きる前に立ち去ったほうが良いと判断したわけ」
『そうだったんですね……』
 そう言うこと。これで綾乃ちゃんも納得してくれただろうと爪先でお湯を小さく蹴り上げると、海からの風に吹かれて程よく冷えた裸体を熱い温泉へと沈めていく。
「ま、今日明日中に何か起こるってわけでもないでしょ。マーマンが襲ってきても大介や弘二が手伝うだろうし。だから今日はのんびりするだけのんびりして、明日の朝にはこの村を出立しましょ」
 いささか実力的には心配な二人が警備しているからと言って大して安心ではないけれど……ま、漁師の人たちはみんなムキムキで喧嘩も強そうだったから、大介たちに出番なんて無いかもしれない。二人とも無茶しなければたいした怪我をすることも無いだろう。
「ふぅ……」
 胸にわだかまるわずかな不安を楽観論でごまかすと、再び火照り始めた体から熱を逃がすように息を吐く。
 やっぱり一泊してよかった……湯船の中でたわわな膨らみが軽くなるのを感じながら、行儀悪く湯船に浸した手ぬぐいで首元を拭う。目の前に大海を望みながらの入浴にうっとりとしていると、今だけは身体が男とか女とかどうでもいい問題のように思えてきてしまうのが不思議だ。
 ………でも問題がなくなったわけじゃないのよね。残る問題は……やっぱりあの人。
 湯船の淵の石にもたれかかると、お尻を底にふにゅっと変形するように押し付けて両足を伸ばす。ここが男湯だという危険性はあるものの、絶景の露天風呂がかもし出す開放感には逆らいがたい。
 けれど頭の中には一人の女性の姿が思い出されている。―――ブルーカード、超一流の冒険者の証明を持つ女性、留美=五条の姿だ。
 ―――スゴい美人だったけど……何者なんだろ?
 留美さんに関しては本人の口から語られたこと以上には解らない。いきなり「依頼をしたければ一億円を用意しろ」なんていう人だ。考え方からしてあたしの常識から既に逸脱している以上、無理に結論を出そうとしてあれこれ考えても無駄な労力にしかならないだろう。
 でも問題はそこじゃない。留美さんが室内に現れるのに用いた転移魔法……「時間の概念も含めた転移魔法」と記憶の底から引っ張り出してきた正直わけのわからない一言を「75点」にしたという事は、
 ―――もしかしたら、あたしがアイハラン村からフジエーダ近郊に転移された現象を説明できる人かも……
 直接男に戻る方法はわからないままだけれど、ずっと疑問に思うだけだったものが一つ解明されるかもしれない。そう直感させるのが、転移前に感じた肌があわ立つような感覚だ。
 あれは戦闘の際に相手から受ける攻撃を事前に感じる感覚とは異なっていた。どちらかと言えば、膨大な魔力を消費する高位魔法を身近で使用された時の魔力干渉に近い。ランクにもよるけれど、Sランク(最上位)なら魔力によほど鈍感な人でもない限り、魔法使用時に放出される魔力と自分の内側の魔力とが無意識に反発を起こし、肌にビリビリとかチリチリとか言う類の違和感を感じるだろう。
 しかし留美さんの使用したのが特殊な転移であろうがなかろうが、確かに存在している生物を、生命を損なわず、肉体を損なわず、精神を損なわず、安全確実に別の場所へ“跳ばす”魔法を、呪文も唱えず、魔法陣やアイテムも用いずに行使できるとは到底思えない。常識を超えた何か別の……そう、クラウド王国王女・静香さんが古代の巨大人型魔導兵器を願うだけで呼び寄せるような特殊能力なのだろうか?
 ―――それにしたって、転移を事前に感じたのがあたししかいなかったって言うのもおかしな話よね。
 あの場には一般人だけではなく、魔法も使えるし魔力も感じられる綾乃ちゃんもいたのだ。それなのに他の人には一切感じさせない何かを、魔法使いの落ちこぼれであるあたしだけが感知できたのはなぜか、そしてそれは何なのか………どうせ考えたところでわかりやしない。
「考えるだけ無駄なことが遭ったって別にねぇ〜……♪」
 今はゆっくりと骨を休める時間だ。今は白い湯気に包まれた温泉で疲れを癒し、また明日から旅をするための英気をたっぷりと養うのだ。
 宿に帰ればお魚フルコースの夕食が待っている。魚と言えば川か湖で取れるものしか食べたことの無いあたしには、海のお魚はなかなか興味深い。ごたごたしていて昼食も食べ損なってしまって簡単な物しかお腹に入れていないので、道のお魚の料理を想像しただけで涎が溢れてきてしまう。
『せんぱ〜い、そろそろお風呂上って宿に戻りませんか〜?』
「え……まだ早くない?」
『でも私、肌が弱いからもう真っ赤になってて……私には少し熱すぎるみたいですぅ……』
 綾乃ちゃんに言われるまでも無く、ここの温泉は湯温はかなり高めだ。あたしはまだ大丈夫だけど、綾乃ちゃんには長時間入っているのは確かに少しキツいだろう。
「んじゃ、あたしはもう少し入ってるから綾乃ちゃんは先に戻ってて良いよ。太陽が海に沈むところも見てみたいし」
『え……じゃ、じゃあ、私も待ってますゥ! 一人で帰るのは怖いですよ〜!』
 そっか……入浴しながら散々「この村には何か裏がある!」と話していたのだ。不安がるのもしかたない。
 けど、せっかく海辺の漁村まで来て、いい感じの露天風呂があって、もう後一時間もしないうちに日が沈む景色をこの目で見られるのだ。でも綾乃ちゃんを外で待たせたりしたら、せっかく温まった身体も湯冷めしてしまうかもしれない。
 となると……
「ちょっと待ってて。今、ボディーガードを出してあげるから。―――蜜蜘蛛、頼める?」
 水面から上げた右手の中に現れた魔封玉。それを湯気で満ちた空間に放り投げると一瞬強い光を放ち、透明な腹部に黄金色の蜜を溜め込んだ大型の蜘蛛が姿を現す。
「それと――シワンスクナ、プラズマタートルも」
 続けて、あたしがいつでも呼び出せる契約モンスターのうち、格闘戦で最も強いシワンスクナと強烈な電撃を放つプラズマタートルの魔封玉を呼び出し、この二体は封印を解かず、魔封玉をそのまま洗い場に着地した蜜蜘蛛に手渡した。
「いい? あんたは綾乃ちゃんについていって、もし誰かに襲われたらあんたの糸でグルグル巻きにしちゃって。それからあたしにテレパスでも糸を使ってでも良いから知らせてくれればスクナたちの封印を解くから。……あ、それと、この浴場の周りに糸の結界を張っといてくれる? 誰かが糸を切ったら分かるってやつを」
 一般的にあまり知能が高くないといわれている昆虫型モンスターでも、蜜蜘蛛は別格。ちゃんとあたしの話を聞いて頷きを繰り返すと、二つの魔封玉を抱え、一足先に結界を張るために洗い場から脱衣所へと駆け出していった。
 最初はお腹に溜めている体力や魔力を回復させる蜜と相手を絡め取る糸だけが取り柄かと思っていた蜜蜘蛛だけれど、その後あたしや綾乃ちゃんのアイデアを聞き入れ、魔力を流した糸で結界を張ることで察知や捕獲トラップなどを作れるまでになっている。もちろん、糸が切れたことを察知できるのは蜜蜘蛛だけだけれど、契約モンスターはあたしから魔力の供給を受けるつながりがあるおかげで、それほど遠くに離れていなければ念話で意思疎通することができるので、蜜蜘蛛が傍にいなくてもあたしにも分かるようになっている。
 ―――どんな能力も使いようって事か。あたしも無駄にある魔力を放てるようになったしね……
 魔力属性“無”……魔力が「無」いのではなく、適応する魔法が「無」くて役に立た「無」いから“無”。この非常に稀有な才能のおかげで、村人全員が魔法を使えるアイハラン村において、あたし一人だけ魔法が使えない落ちこぼれになり、かなり暗く切ない幼少時代を過ごしてきた。
 それがどういう運命のいたずらなのか、村の祭で勇者役をやらされたかと思えば、身体が女になって、遠い南部域に跳ばされて、魔王になってて、冒険者になって、訳の分からない悪人を倒して……一年前のあたしなら信じられないような慌し過ぎる日々を過ごしている。
 ―――だけど……なんか満たされてるって感じがするな……
 冒険者になって男に戻る方法を求めて旅をしているけれど、今でもあたしは争いごとが嫌いだ。喧嘩に勝つ自信なんて欠片も無い。戦わなきゃいけない時に剣や木棍を構える手が怖くて震えた事だって何度もあった。
 アイハラン村で過ごしていた日常からすれば、今のあたしは非日常の塊だ。男の人に押し倒されるのにビクビクしながらハンマーを振り回すだなんて、あの頃にはどうやったって想像もつかない。……けれどそれが今のあたしの日常になっている。いや、なって“しまって”いると言う方が正しいだろうか。
 あのままアイハラン村で道具屋を営んでいるだけでは決して出会えなかった人に出会い、得られなかった物を得ることも出来た。その分、娼館勤めとかモンスターとの戦いとか苦労も多いけれど、こうやって思い返してみても辛かった記憶は色褪せ、楽しかったり嬉しかった思い出だけが頭に浮かんでくる。
「思えば遠くに来たもんね………綾乃ちゃんはどう思う?」
 突然話を振っても綾乃ちゃんなら狼狽するだろうか……などと思ったのだけど、垣根の向こうからは返事が無い。
 もしやと思って頭の中で蜜蜘蛛に呼びかけてみると、どうやら何度も声を掛けられたけど「あ〜」とか「う〜」と生返事ばかりで、綾乃ちゃんは「邪魔しちゃ悪いみたいね」とクスクス笑いながら浴場を去ってしまったらしい。………なんか恥ずかしい。ちょっと失態だ。
「ううう……やっぱり疲れてるのかな。お風呂で考え込んじゃうなんて……」
 身体にこもった熱が、気付かぬ内に長い時間を湯船に浸かって過ごしていたことを教えてくれる。それとは別に恥ずかしさの火照りで頭の中を茹だらせてしまうと、あたしはお湯を跳ね上げて立ち上がり、少しでも涼しい風を求めて海に面している方へと湯船の中を歩いていく。
「ふぅ……」
 息を吐き、岩に手をついて身を乗り出す。岩場の高台にあるこの露天風呂なら、裸でいてもあまり人目にもつかないし、開けている側には海しかない。だから無防備に肌を晒しても誰にも見られることは無く………ちょっぴりいけない気分になってしまう。
「そう言えば……この身体だって、“手に入れた”って言えばそうなのかもね……」
 綾乃ちゃんから教えてもらった「潮の香り」がする海からの風が、温泉の雫が伝い落ちていく起伏のある裸体を撫で上げていく。
 あたしは男でなくなったことで大切なものを股間から失った。その一方で、誰もがうらやむような美しい女の身体を手に入れている。前かがみになって下を向いたたわわな膨らみ、ほっそりと絞り込まれたウエストにキュッと引き締まった弛みの無いお尻……弘二や大介だけでなく、タオルすら巻いていないこの濡れた裸姿を見たら、十人いれば十人に魅力的だと言ってもらえる自信がある。―――もちろん、あたしが判断するとしても、だ。
 今までにも何度も姿見の前で自分の身体を観察したけれど、どう見ても本当は男だなんて自分でも信じられないほどに女性特有の丸みを帯びたあたしの身体は女性そのもの。姿形だけでなく、乳房をゆっくりと揉み込んだ時の押し返してくる感触も、擦り合わせる太ももの内側のスベスベとした感触も、そして我慢できずに股間の中心に指を滑り込ませた時の締め付けてくる感触もなにもかも、男だったときには味わえなかったものばかりだ。
 そして、そんな女の身体を全て使って、あたしは何度も女の喜びを感じてしまっている。誰にも決して言えないけれど、口では嫌がりながらもあたしは時折、その快感に身も心も委ねきってしまいたい誘惑に駆られているのだ。
 きっと男に戻るのを諦めさえすれば、どんな幸せだって手に出来るほどの魅力を持ってしまっているのがいけないのだ。独身の貴族を篭絡しようと思えば出来ないことは無いと思う。大きな街の娼館で何十何百、そして何千人もの男性を満足させて高級娼婦になるのもいい。いや、本当に男性と恋に落ちて家庭に収まるなんてのもありかもしれない。
 ………男性に戻るのを諦めるのか……
 今の“日常”が充実しているだけに、以前の自分に戻ることに抵抗を覚えているのだろうか?……一人で何度も自問自答しても、元の身体に戻ることが正しい選択なのかと不安を感じてしまう。今が満たされているほど、このままでありたいと考える自分が、あたしの本心じゃないとあたし自身へどうしても言い切れないのだ。
「決めて迷って、また揺れて……何度も決心したはずなのにな……」
 フジエーダでも旅の途中でも、出会った人たちに励まされて進み続けたから、あたしはここにいる。そんな幸いがあったからこそ、その幸いにすがりつきたくなる……そんな自分にため息を吐くと、あたしは身体がすっかり乾いている事に気がついた。
「……もう一回温まったら帰ろっかな」
 沈む夕日はまたの機会でいい。旅を続けていればいつかまたどこかで見れるはず―――そう思い、脱衣所の方へと振り向いた時だ。
「………あ、この音……」
 不意に、何処からか竪琴の音色が聞こえてくる。手ぬぐいで胸を押さえながらもう一度海の方を振り向くけれど、見える範囲には演奏者は見当たらない。どうも岩場の奥のほうから聞こえてくるのだけれど、
「………あんまり上手じゃないかな?」
 こういうと弾いている人に悪いのかもしれないけれど、素人のあたしの耳にもあまりよい演奏には聞こえない。一音一音は竪琴の弦が放つ澄んだ音なのだけれど、一つのメロディーとして聴くにはあまりにも稚拙すぎるように思える。まるで子供が練習しているみたいにたどたどしくて、少ししんみりしていた雰囲気にマッチしていなかった。
「ふふっ……でもま、このぐらいがあたしにはちょうどいいのかもね♪」
 調子が外れたせいか、気分は温泉に入る前よりも軽くなった気がする。のんびりゆっくりと一つずつ音を響かせる竪琴に笑みをこぼすと、改めてお湯に浸かろうとして、
「――――――――――――――――――!?」
 あたしは突然、背後から誰かの腕に抱きしめられていた。


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