リレー小説04


「――はぁ…とりあえずはこれでいっか。急に気絶するから焦ったわよ、ホント……」 「うううううっ……」  十分に睡眠を取っていたのに、起きて直ぐの気絶。これって結構症状が酷いんじゃないかと思う。でも、食事 を食べてくれないと薬も飲めないし、あたしに出来る事なんて……  う〜ん……こんなに苦しんでる先生を放って帰るって言うのも気が引けるなぁ……どうしよう?  外はすっかり暗くなっている。布団に入ってからうなされ出した先生の横にちょこんと正座して、窓の外を見 つめれば星も見えないぐらいに真っ暗で――  ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!! 「な、なに、この音!? あっ…もしかして!?」  一斉に家の周囲から大きな音が…いや、小さな音が幾重にも重なった音の奔流に、あたしはイヤな予感がして 慌ててたちあがって窓に駆け寄る。  するとさっきまで何にも付いていなかったガラス窓の表面には、バケツの水をぶちまけたかのように分厚い水 の層に覆われていて、流れ落ちるその表面にさえ細かい波紋が次々と叩きつけられている。  あああっ!! なんでこんなに大雨が降るのよ!! さっき洗濯物を干したばっかりなのにぃ!!  部屋に散乱していた洗濯物は庭に置いてあった洗濯機をフル稼働させ、錆び付いた物干し台一面に夜干しした のに…あぁ〜ん、あたしの二時間の苦労がぁぁぁ〜〜〜!!  洗濯物は台無しになったけれど、このまま放っておくわけにもいかない。掃除で一番大変だった洗濯の結果が 一瞬で無駄になったことに気落ちする暇も無く、あたしは自分のみが濡れる事も構わずに隣の居間の大きな窓か ら庭に飛び出した。  で、数分の後…… 「あ…あううう……」  頭の先からつま先まで、あたしは全身濡れ鼠になってしまっていた……  幸い、物干し台が軒下に近かったのと、雨に濡れたとはいえ元々濡れていた洗濯物、被害はそれほど大きくは 無かった。ただ、洗濯籠から大きくはみ出すほどに山盛りになったこの洗濯物を干す場所が……はぁぁ…… 「グウウッ…ウウッ……」  胸に溜まったやるせない気持ちを長い溜息と一緒に吐き出していると、先生が眠っている部屋から呻き声が聞 こえてくる。  ………はぁ…この雨じゃバス停まで歩いていくのも無理だし、先生を放って帰るわけにもいかないし…しょう がないか。  あたしは洗濯物の一番上に乗っていたタオル二枚を軒下でギュッと搾り、足元に滴る水を一枚で拭き取り、も う一枚を冷たいけれど頭に載せて髪の毛の水分を取りながら、あたしは居間においてある電話機(しかもダイヤ ル…)を手に取った。  ジ〜コ…ジ〜コ…ジ〜〜コ…… 「こんなに古い電話機がまだあるなんて……………………あ、もしもし、義母さん? 実は…うん、そう、こっ ちでも雨が酷くて…迎え? タクシー台が高くつくわよ。あたしの財布は軽いんだから…それに先生もウンウン うなされてるから今日はこっちに泊まって行くね…えっ? そんな…大丈夫よ、だって起きても直ぐに倒れちゃ うぐらい酷いんだもん…うん、あたしも風邪を移されないように薬を飲んでおくから。出来たら明日の朝に一度 家に寄るから…は〜い、分かってます。うん、それじゃ切るね」  ガチャン  これで外泊許可はOK。ま、うちは元々放任主義だし、今回は人助けだもんね。さてと、それじゃ――  受話器を置き、一息ついてから改めて自分の体を見下ろすと、大き目のYシャツもスラックスも水を大量に吸 い、あたしの肌にぴったりと張りついている。  うわぁ…乳首なんて色が好けてるし、ポッチリが丸見え……さっき、先生に押し倒された時に……  くっきりと浮かび上がったボディーライン……最近、女で長くいすぎるせいか、さらに発育している豊満な膨 らみが、そのボリュームを強調するかのように前に突き出た曲線を描く。そしてその頂上付近は一段大きく膨れ 上がっていて、今にも布地を突き破ってしまいそうだった。  ふぅ…と息を吐いて指を先端に触れさせる。触ったからと言って直ぐに感じてしまうわけじゃないけれど、先 生の胸板に押しつぶされた感触と、異様に熱い体温の温もりが思い出され、胸の芯にジィ〜ンと痺れるような疼 きを伝えてしまう。  もしあの時、先生に意識がちゃんとあったら……今ごろどうなってただろう……  胸に触れた指先をそのまま唇に押しつける。そして色々と想像して……あたしの顔はあっという間に血が上っ て真っ赤になってしまった。  あたし…ひょっとしてものすごく大胆な事をしてるんじゃないかな……  雨に打たれて冷たくなった手を火照る頬に当て、その熱を冷まして少しでも冷静にと勤めながら改めてあたし のしている事を考えてみる。  最初は軽い気持ちでお見舞いに来ただけなのに、掃除したり洗濯したり、トドメに一晩二人っきり……それに、 お見舞いで二人が急接近していい関係になっちゃうのってマンガやゲームじゃお決まりのパターンで、あたしの 行動はとっくにフラグが三つか四つぐらい……あ…あわわわわ…それはちょっといろんな意味で危険過ぎるわよ。 ほら、一応あたしたちは生徒と先生の関係なんだし……でも…はうぅ………  かじかみそうなほど冷えていた指の感覚が急速に戻っていく。その一方で、あたしのほっぺたは冷めるどころ かさらに熱くなり、頭の中の想像であたしは先生と…その…… 「……と、とりあえず、お風呂に入ろうかな。このままじゃ本当に風邪を引いちゃうし……」  絞ったタオルを頭に乗せたまま下を見れば、思いっきり透けていて乳房の色もかたちも丸分かりのブラウスは 服としての機能をまるっきり果たしてくれていない。解くにそこだけ色が違って見えている乳首の部分にはどう しても目が行ってしまい、先生は隣の部屋で寝ているからこっちを見ていないと分かってはいても、ものすごく 恥ずかしい……  もう畳が濡れるとかを気にして入られない。頭の天辺から湯気がたちそうなほど恥じらうあたしは、タオルで 必死に胸を隠しながら脱衣所に向かってかけ出した――


リレー小説05へ続く