焦がれる制服 第二部 2
(この人、何を考えてるのよ……電車の中でこんなものを取り出して……)
薫は両手で握り締めているものの感触を確かめる。
ラバーは白。その形は男性の性器と同じようでありながら、くびれは凶悪な形になるまでに強調され、グリップ近くでは大小無数のイボがびっしりと生えていた。
痴漢の男から手渡されたのは世間一般ではバイブレーターと言う、いわゆる大人の玩具だ。薫は気付いていないが、グリップの端にはスイッチもついており、それを挿れれば低く唸るようなモーター音を響かせて肉茎を震わせ、先端が何かをかき回すように円を描く。もしも薫がその動きが女性にどういった快感をもたらすかを知っていたら、きっと手に握り事すら出来ずに電車の床へ取り落としていただろう。
(こんなものを……電車の中でアソコに挿入しろだなんて……出来るわけが無い、そんな変態みたいなこと、私には出来ない!)
けれど、薫はバイブレーターから手を離せなかった。ほんの少し指から力を抜けば、淫らな行為にしか使わない器具は満員電車の床に落ち、他の乗客の注目を集めれば痴漢行為がばれる以上、男もそれ以上何かを用いた行為は控えるはずだ。……それなのに薫は淫具を握り締めたまま両手を下半身へと降ろし、あまつさえ、その先端をヒクヒクと震える自分の秘所へ押し当てようとしていた。
(だめ……手を止められない……!)
「ツッ……んゥ………!」
体を押し付ける扉にはめ込まれたガラスの向こうには、隣のホームで電車を待つ大勢の通勤通学客の姿がある。ゆっくりと電車が停止しようとする中、それらの人々を涙目で見つめ荒い呼気を吐き出しながら、薫は男に言われるがままに秘唇の入り口を太い異物で上下に擦りたてた。
「あぁ……んっ……くァ………!」
こんな恥ずかしい姿を人前に晒したいとは思わない。電車の扉に隠されて下半身は隣のホームからは見えはしないだろうけれど、電車の中で、人前で、男性器よりも淫靡な形をした器具で秘部をまさぐるなんてことは元来羞恥心の強い薫にはあまりに酷な辱めだった。
けれど……にじむ視界に人の姿を捉えながらバイブの先で濡れる花弁を捲くり、挿入しやすいようにかツルンとした亀頭で膣口の周囲を圧迫すると、腰が抜けそうな快感の波が押し寄せ、全身からムッとするほど熱く湿った汗の香りが立ち登ってしまう。
手にしたバイブを小刻みに動かすたびに股間から湧き出る透明な液体が音を立てて白く泡立ち、ドロドロとストッキングを脱がされた太股の内側を伝い落ちる。薫の唇から漏れる吐息の艶かましさはブレーキの音にまぎれてかき消され、薫はゾクゾクする恥ずかしさと興奮に鼻を鳴らし、太股の間でバイブと腰とを動かしていた。……の、だが、
「手伝ってやるよ。のんびりしてると駅に着いちまうから……な」
背後から延びた男の左手が薫の口を塞ぎ、同時に薫が握り締めたままのバイブの柄尻に右手が掛かる。そして電車が完全に停止するのと同時に、
「―――――――――!!!」
バイブレーターは薫の肉の中へ無理やり捻じ込まれ、、二股に分かれたクリ用のローターが淫核に押し付けられるほど深々と突き刺さった。
(……ぁ……入っ…ちゃっ…た……ゴリゴリこすれて…子宮に当たって……こ…こんなの……電車の中でだなんて………ぁ…ぁぁぁ……こんな…ことぉ………)
背後で電車の扉が開き、ますます扉へと押し付けられながら薫は全身を伸び上がらせ、バイブに押し出された淫蜜を丸く押し広げられた膣穴から垂らしていた。
男の手で動かされ始めたバイブは突き入れられたまま動きを見せないものの、強烈な突き上げを子宮に直撃されて何も考えられなくなった薫には、口を塞いでいた手が自分の胸を這い回っている事にすら気付けていない。ブラウスのボタンをはずされ、下着に包まれた膨らみが人がごった返している隣のホームに向けて曝け出されていても、叫び声一つ上げられず、今にも崩れ落ちてしまいそうな快感に肩幅に開いた足を踏ん張っていなければならなかった。
「はぁ…ぁぁぁ………」
「見ろよ。向こうの連中、お前がやられてるのに今ごろ気付いたようだぜ。分かるだろ、携帯のカメラを構えてるのが」
痴漢男に耳元で囁かれ、潤んだ瞳を窓の向こうへ向けてみると、確かに何人もの人が薫の方に顔を向けているのが見て取れた。
「や…ぁ……ダメぇ………!」
「いいじゃねェか。あいつ等にもサービスしてやろうぜ、な?」
薫の胸を揉みしだいていた左手が今度は薫の目元を覆う。もし写真を撮られても誰だと言うのが分からないようにした上で、薫の膣内から愛液にまみれたバイブレータがズルッと引き抜かれ、いまだ離せない薫の両手と共に上下に動いて激しい抽送を開始しだした。
「んッ、んッ…ぃ……だめぇえええ……声が……ぬ…抜いて…お願いだから…あぁああぁぁぁ……!」
頭を振り、長い髪を揺らしながら唇を噛み締める。だが大きく張り出したバイブの亀頭がヒクヒクと蠢く膣の天井を強烈な摩擦で擦りあげ、根元のイボイボが収縮する膣の入り口に食い込み責め立てる。
乗客の声とアナウンスの声とが充満する電車の中で、薫は羞恥心に身を焦がし、整った眉根を歪ませる。けれどどんなに下半身に力を込めようとも、バイブが出し入れされるたびに捲り上げられ押し込まれる陰唇からは飛沫のように愛液が飛び散ってしまっていた。
「電車の床がビチョビチョだぜ。こんなに汚して、痴漢されてるって自覚、ないんじゃねェか?」
「だって…だて……きゃウ、ゃあ…抜いて…もう…抜いて、こんなの、や…あ、あ、あ、あ…あぁぁぁ………!」
目隠しをされていても、冷たく硬い扉の向こう側から突き刺さる無数の視線を感じてしまう。バイブの先端が身動きの取れない薫の子宮を突き上げるたびに、ピクッと震える体は視線から逃れるように男と扉の間で左右に捩れ、それでも逃れられない恥ずかしさに肌を赤く染め上げていく。
(こんな場所で……こんな犯され方って………)
けれど膣の奥をかき回すバイブがニチョニチョと粘ついた音を響かせるほど、肉穴を穿たれる快感に薫のメスの本能は酔いしれていた。どれだけ拒んでも無数に折り重なる肉壁はバイブをより奥へ飲み込もうと蠢動を繰り返し、だらだらと愛液を滴らせてはイボまみれのバイブの根元をキュッキュッと締め上げてしまっている。電車の外で鳴り響く発射を知らせるベルを聞きながら、カクカクと壊れた人形のようにアゴを上下させ、熱い吐息を漏らす。
「ほら……見てる人たちにサービスしろよ。発射の前にイって見せてやれよ」
「ヤぁ…ヤダぁ……見られたくない……恥ずかしいの……そんなのイヤぁぁぁ………!」
だが言葉とは裏腹に、動き出した電車の中で薫の膣は痙攣が収まらないでいた。「イけ」と言った男の手で思いきり奥深くに突き入れられたバイブを、恥ずかしがりながらも締め付け、バイブの先端を膣奥の子宮と擦り合わせるように腰を蠢かせてしまっている。
「はぁぁぁ…あァァァ……あ、奥に…当たって……んッ、んァ……ダメ…本当に……んんんゥ〜〜〜〜〜〜!」
徐々に速度を上げ始める電車。もう薫の痴態に気付いていた男たちからは見えない位置にまで移動しただろうけれど、薫は存在しない視線を感じながら膣内を収縮させる。もし挿入されているものが本物の男のペ○スであったなら、射精へといざなう肉壁の蠢きに薫の膣内でイき果てていただろう。……だが、電車の中と言う非日常的な場所で薫を犯しているのはイく事などありえないバイブレーターだ。その果てる事を知らない剛直にヴァギナをかき回され続ける薫は、それでも少しでも早く終わらせようと、下半身全体を絞り上げてバイブを登りつめさせようと必死になって蠢かせていた。
「んんんゥ……んグゥううううううっ………!」
唇を噛み締めていなければ、ここが電車の中である事を忘れて淫らな喘ぎを迸らせていたことだろう。行く寸前の薫はバイブの動きに合わせて腰を揺すり、張りのあるヒップの谷間に押し当てられた男のペ○スを知らず知らず上下に扱き上げていた。
「もう、もうダ…ダメェ……わたし…イっちゃう……と…とまらな…いィ……!!!」
バイブが膣肉に完全に埋没し、薫が歯を食い閉める。今までに無い強烈な全身痙攣に襲われる体を、そして子宮を揺さぶられ、まるで失禁したかのような大量の愛液を結合部から噴出してしまう。
電車の中でイってしまう……もう何も考えられず、今にも子宮口を潜り抜けそうなほど押し付けられているバイブをただただ締め付け続ける。……そんな激しい絶頂を迎えて戦慄いている薫の背後で、不意に痴漢男は動きを変えた。
「ひゃうッ……!」
緊縮したままアクメが収まらない子宮をバイブでグリグリと押し込みながら、男は腰を振り、ヒップの谷間に沿ってペ○スを滑らせた。突然のアナル周辺への摩擦に薫は身を震わせ、唇を噛み締めた。
「グッ………!」
薫に遅れること数分、瑞々しい尻の谷間にペ○スを擦りつけた男は淫靡な快感の震えを抱きしめる薫に伝えながら、発射寸前に射精口をアナルの窄まりへ押し当て、そのまま精液を迸らせた。
(うっ……おチ○チンが…精液が……私のお尻に……)
男の精液が二つの膨らみの間に溢れかえり、そのまま舌へと垂れ落ちて太股の内側で愛液と混ざり合う。自分の愛液よりもずっと濃厚な精液の感触に、瞳を虚ろにさせ、今までに二度だけ経験した性経験の記憶を思い返してしまう。
「水無月……お前本当に淫乱だな。こんな風に痴漢されて嫌がりもしないなんて」
「え……?」
名前を呼ばれた。……痴漢が薫の名字を知っているとは思ってもみず、一瞬の驚きの後、我に帰って振り返ろうとするが、
―――ヴィイイイイイイイイイイ……
「きゃふぅぅぅん!」
ヴァギナに深々と突き刺さったバイブが振動を始め、絶頂を迎えてからずっとヒクヒクと震え続けていた膣腔が一斉に緊縮してしまう。それと同時に、今まで堪えてきた喘ぎ声が艶かましく唾液に濡れる唇から迸ってしまい、慌てて口を塞いでみるも、薫の周囲では何事かとざわめきが沸き起こり始める。
「もうすぐ駅に着く。バイブを切りたかったらトイレまで我慢するんだな」
「――――――!!!」
薫が振り返る前に人ごみへまぎれようとする痴漢。その手が去り際に膝近くまでズリ下ろしていた下着とストッキングを乱暴に引き上げ、薫の膣口から飛び出したまま暴れていたバイブのグリップをしっかりと押さえつける。
「くっ…あああぁ……なっ、なに…これェ……んんッ!」
顔をしかめ、下腹部に力を入れて押さえつけようとするけれど、最初から“強”に入れられたバイブの振動は収まるどころかますますくっきりと薫の膣壁へと伝わってくる。下着もスカートも元に戻されては、苦しげに身を震わせる薫へ注目している乗車客の前で手を差し入れてスイッチを切るわけにもいかない。あと数分で駅に着くと言うのに、足には力が入らず、下着の内側ではわだかまる精液と噴き出る愛液とがバイブの振動に耳を塞ぎたくなるほど卑猥な音を立て、グチャグチャに濡れそぼってしまっていた。
(このままじゃ……駅に着く前に、また…また、イっちゃう……!)
痴漢男がどんな思惑でバイブを残していったのかは分からないけれど、その強烈な振動に負けないほど痙攣しているヴァギナからは愛液がとどまる事無くあふれ出し、濡れたストッキング以外はスーツをまとった普通のOLにしか見えない薫の全身からオスの性欲を刺激してやまない濃密なフェロモンを立ち上らせていた。
「――お嬢さん、大丈夫かい?」
「あっ……す、すみません、なんでもない…ひゃうん!」
後ろにいたサラリーマン風の中年が心配そうに声を掛けながら薫の尻を撫でていた。薫が思わず悲鳴を上げて、スーツに包まれたボディーラインをくねらせると、それを皮切りにしたかのように左右から、そしてまた後ろから、次々と別人の手が伸びてきて、快感に打ち震える全身を撫でさすってきた。
「やぁぁぁ……やめて…やめてください……わたし…そんなつもりじゃ……んあッ!」
弱々しくも抵抗する薫だが、開いたままのブラウスに気付いた手が胸元へ滑り込んで、ブラの内側から膨らみに指を食い込ませると、懇願に近かった声が突然鋭い強制へと変化してしまう。
「お願いだから…もうやめっ……あ…あぁ……先っぽは………ひあッ! そ、それは、触っちゃ―――」
慌てた声を上げ、薫がスカートの中にもぐりこもうとしていた誰かの手を両手で押さえつける。……だが遅かった。下着とストッキングの股間部分を押し上げている硬い物体の存在に気付いたその手は、“それ”を強く握り締めてしまう。
「きゃふぅうううううう〜〜〜〜〜〜!!!」
ほんのわずかに出入りしてしまうバイブ。……だが、アクメ寸前だった薫にはほんの少しの引っかかりでも、登りつめてしまう引き金としては十分だった。両肘を扉へ突いて、その間に顔をうずめ、面白い玩具を弄ぶような無数の手に全身を這い回られながら絶頂を向かえ……それでも動きを止めない男たちの手は、小柄な薫をいい様に弄び、硬くなった乳首を、肥大したクリを、指で摘んで乱暴にひねり上げる。
「ひあぁっ、許して、許してくださいィ……! それ以上されたら、私、お…おかしく……んあぁあああっ!」
誰かの手がバイブを押し込んだ。もう子宮口に食い込み、それ以上はいらないのに限界を越えて突きいれて、
ヒクヒクと震える薫の膣内で円を描くように先端をかき回した。
「やめてやめてって言ってるけどさ……こんなにグチョグチョのドロドロに濡らしてたら、犯してくれって言ってるようなもんだぜ」
誰かのささやきが薫の耳に届く。
「こんなに濡らして、感じてたんだろ? もっとして欲しいんだろ? だったら次の駅で降りてさぁ―――」
「か、感じてなんかいません……私は…ひゃうっ…! んあ…くぅぅ……先っぽ…がぁぁ……!」
震えるバイブが子宮の入り口を抉る。
「そんなにされたら、頭の中、ま…真っ白になっちゃいそう……だから…もう……や…やめ………」
弄ばれるだけ弄ばれ、全身に力が入らなくなった薫の目が、降りるべき駅のホームに電車が滑り込んでいくのを捕らえていた。けれど下着の伸縮を利用するかのように小刻みにバイブを引き抜かれては子宮をゴツンゴツンと振動する先端でノックされ、全身を無数のゴツゴツした手に撫で回されながら、脳裏に収縮するヴァギナのイメージが鮮明に浮かび上がるほど生々しく下腹部をうねり、登りつめさせた。
「―――――――――――――――ッ!!!」
とっさに手の甲に噛み付いて、アクメの声を社内に迸らせるのだけは回避する……が、ヒクヒクと緊縮しているアナルを揉み解され、乳首は激痛が走るほど強烈に揉み潰される。ストッキングに包まれた太股に押し付けられた二本のペ○スは先走りの液体を塗りつけながら裏筋を擦りつけ、白く濁った汚液を電車の床に撒き散らしていた。
(あッ、アッあッあああああッ、イく、イく、イっちゃう! あああ、ああ、あ、あ、あッ、イっちゃう、イっちゃうぅぅぅうううううう〜〜〜〜〜〜!!!)
全身からスパークのように快感がはじけ、薫の下着の中で大量の愛液が戦慄く膣口から噴き出した。頭の中は真っ白くドロドロに蕩けてしまい、ビュクビュクと粘液を噴いてしまう開放感の中で、繰り返し繰り返し、子宮に押し付けられているバイブをヒクつく膣壁で食い締めてしまっていた―――
「ハアッ! ハアッ! ハアッ! ハァ…ハァ……ぁ……んっ………」
トイレの便座に座り込んだ薫の足元で、スイッチを切っていないバイブレーターがヴヴヴ…と音を立て、表面に纏わりつかせた愛液を撒き散らしていた。
どうやってトイレまで辿り着いたのかの記憶がすっぽり抜け落ちている。幸い誰も入っていなかった駅の女子トイレの個室と言う安心できる空間に身をおけたのに、体の震えはまだ収まらない。足首から抜き取られたぐしょ濡れの下着とストッキングは床のバイブのすぐ傍に丸めて放られていて、とてもでは無いけれどこのまま会社へ履いて行ける様な状態ではなかった。
「はぁ………ぁ…………どうしよう……今日……」
バイブを引き抜いたばかりの膣からはトロッとした液体があふれ出していた。体調が悪いとでも口実をつけて会社を休んでしまおうか……褒められた事では無いけれど、思い返すだけで涙があふれ出そうな辱めを受けて、何事もなかったかのように出勤できるわけがない。ここで心が落ち着くまで休んでいるとしても、下着も履かずに仕事をするなんて……
「んっ……」
ノーパンで仕事をしている自分を想像すると、何故か勝手にヴァギナがヒクッと震え、思わず唇から声が漏れてしまう。
(あんな目にあったばかりなのに……興奮しちゃうなんて……)
自己嫌悪したくなるような自分の性欲に悲しい気分を抱きながら、とりあえず会社に連絡を挿れようと携帯を捜す薫。その時、
「あれ? ポケットに何か入って……」
ジャケットのポケットに入っていた硬いカードのような感触に気付き、、何気なく取り出してみる。……だが、
「きゃああああっ! な、なんでわたしが裸なんですか!?」
もし薫以外の人がトイレにいたら再びひと騒動起きそうな言葉を発するほど驚く薫。
ポケットに入っていたのはなんと言う事は無い、一枚の写真だった。だがそこに映っているのは風景でもアイドルでも寺社仏閣でもない。―――会社の制服を淫らに着崩して床に倒れている薫自身の姿だった。
(こ、こんなはしたない姿で写真を撮られた記憶なんて……)
どう見ても行為後の姿を撮られた写真を両手で握り締めて凝視し、必死に記憶をたどると……思いのほか早く撮影された記憶を思い返すことが出来た。
………今は左遷された元課長に犯された時だ。
弱みを握られた薫をいい様に弄び、以後も逆らわせないようにする為に携帯電話のカメラで撮られてしまった写真だ。
「そんな……どうしてこの写真がポケットに……」
ならあの痴漢は課長だったのだろうか?……と思い、薫は首を横に振った。後日、課長が撮影に使った携帯は壊れた状態で薫の机の上に置いてあった。誰が置いたのかは分かっていないけれど、壊れた携帯からこの画像を呼び出すことは出来ないはずだし、動かないのだからと薫は携帯電話をお風呂に沈めて完全に使用不能にしてからゴミの日に捨ててしまっている。誰かが拾っても、絶対に治せないはずだ。
「じゃあ……いったい誰が……」
一体誰が、何の目的で薫のジャケットに写真を忍ばせたのか? そしてもう一つ気になること……それは薫の名字を痴漢が知っていたことだ。
相手の正体がわからないまま困惑する薫。いくら写真を見つめても答えなどどこにも見つけられず、胸を締め付けるような不安を抱えながら写真を裏返してみる。すると、
「……嘘でしょ、こんなの……」
白い裏地には黒いマジックでメッセージが書き添えられていた。そこには―――
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