stage1「フジエーダ攻防戦」41


「嘘……みんな、なんで……」
 天へと伸びる円柱魔法陣の根元に当たる神殿前広場は、まるで真昼のような明るさだった。膨大な魔力が蓄えられた魔法陣は、まだ日が昇る前だと言うのに広い空間を見渡すのに十分な輝きを放ち、倒れ伏した人たちの姿を闇に隠す事無くさらけ出していた。
 地面へ倒れているのは十人にも満たない。多くは鎧姿のフジエーダの衛兵だが、円柱魔法陣の近くには街へ戻る時に助けてもらったユーイチさんとユージさんが、そして一際目立つ肥満体型なのに半裸と言う女の子には見ることさえ拷問レベルな格好をした人までもが倒れていた。
「神官長!」
 倒れているのが連れ戻さなければならない神官長だと気づくと、あたしは思わず声を上げていた。
 あたしのいる広場の入り口からでも、この声なら十分神官長に届いているはずだ。けれどうつ伏せに倒れた神官長は横幅の広い巨体をぴくりともさせない。他の人も同様だ。あたしの声で起き上がる人は誰もおらず、広場に立っているのは……ただ一人だけ。
「ようこそ。お待ちしていましたよ、ミスたくや。やはりあなたがいなければこの戦いのフィナーレは美しく飾れませんからね」
 ―――あちゃあ…もう見つかっちゃってる……
 顔は影になっているものの、フードを脱いだ姿と神経を逆なでする声は、佐野でしかありえない。しかもその声が嬉しそうにあたしを呼んだのを聞いて、顔を覆いたくなってしまう。
 我を忘れて建物の陰から飛び出しているんだから見つかっても当然なのだけれど、誰一人として無事な人がいないこの状況なら、もっとこっそり行動すべきだった……と反省してももう遅い。ここは―――
「え〜、人違いですぅ〜。あたしぃ、たくやじゃなくて明日香って言うんですけどぉ〜」
 と、可愛くぶりっ子してみる。………あああ、なんてーか、あたしのアイデンティティーが崩壊しそうだよぉ……
「ほう、それがあなたの本当の名前ですか。ですがあなたがあなたである事に変わりはありませんよ。一度見た美女を僕は決して見間違えませんから」
 う……佐野が言うと妙に説得力がある……
 見つけられた以上、逃げ出すことは不可能に近い。
 さっき首筋を刺した魔蟲の事もある。この周囲に何匹も飛びまわってあたしの事を監視していると考えるべきだ。なら、背中を見せた途端に魔法でドン……逃げる相手に遠距離まで届く魔法は致命的なまでに相性がいい。魔蟲を操る佐野ならば、どこに隠れようとも魔蟲によってあたしを発見して正確に魔法を叩き込んでくるに違いなかった。
「はあ……こうするしか無いのね……」
 慌てて隠れなおした物陰から姿を見せると、あたしは箒を手に佐野と対面した。
「先に言っとくけど、あたしの名前、明日香じゃなくてたくやだからね」
「それは残念。あなたのように見目麗しく、そして悪の象徴であるこの僕に一人で挑もうとする勇敢さを秘めた女性には、その名前はいささか似つかわしくない。僕の物にした暁には君にふさわしい名前をつけてあげよう」
「いらないわよ。今の名前、ちゃんと気に入ってますから」
 そう言うと、佐野は肩をすくめておどけてみせる。
「たいしたものだ。いや、僕は本当に感心しているのですよ。君は――」
「そんなお世辞、もう十分よ」
 対して、その態度が癇に障ったあたしは箒の掃き口を槍のように佐野に向ける。
「この箒なら、その変な魔法陣を掃き飛ばすことも出来る。大きすぎて一度に全部って訳にはいかないけど、魔法陣は一部でも欠ければ正しい効力を生む事はない……もちろん知ってるわよね」
「僕に限ってそんな事を失念するわけがない。この魔法陣は特別性でね、古代の喪失魔術を解析して僕の魔力で基礎部分を描いている。自己修復機能も組み込んだ僕のオリジナルだ。ちょっとやそっとではビクともしないよ」
 確かに、広場の魔法陣は佐野が魔力を注いだ時にだけ姿を見せた。けどそんな事は問題じゃない。それならそれで基礎部分……広場の地面に描かれた魔法陣を掃き払えばいいだけだ。
「そんなに優秀な魔道師さんが、あたしなんかに負けてることを忘れてるのかしら?」
「負ける? 僕が?」
 こいつ、本当に自分の都合の悪いことは忘れ去ってるんじゃないだろうか。
 けど、あたし一人でも倒せたのは事実。それならもう一度、箒でぶん殴ってみんなを助け出す時間さえ作り出せれば……と手足に力を込めると、
「僕は負けてなどいない。負けるはずがないじゃないか」
 佐野はそう言い、衝撃弾を放つ魔法の杖を、地面に倒れた神官長へと向けた。
「くっ……」
「さっき君に倒されたのは負けじゃない。引き分けだよ。なぜなら僕はこうしてここに立っているのだからね」
 ここで戦えば、意識を失っている神官長や他のみんなが巻き添えになる。―――つまり、この場にいる全員を人質に取られたわけだ。
 ………どうする?
 あたしの頭がそれほどいい訳ではないのは自分でも自覚している。それでも必死に打開策を考え、みんなを助ける方法を探るけれど……何も思いつかない。
 前へ進んでも誰かが犠牲になる。
 逃げ出してもみんなを見捨てる事になる。
 仮にあたしが佐野の言いなりになったとしても、待っているのは敗北に他ならない。
 見通しのいい場所でなければ逃げ回ってかく乱する事も出来るけれど、この状況ではあたしがなにかするだけで神官長たちは為すすべもなく佐野に倒されてしまうだろう。
 それならどうするか……焦って考え無しに動いてしまいそうになる衝動を抑えながら、必死に考え続けるけれど、いい考えは何一つ思いつかない。唯一可能性があるとすれば、一直線に佐野へと走っていって箒で掃き殴ることだろうけれど……それでも誰か一人、いや、佐野が広範囲に威力を及ぼす魔法を使えば全員吹き飛ばされるだろう。間に合わない危険性が多すぎる事を考えたら、あまりに無謀すぎる。
「もし君が、最初から彼らと共に僕の元へ来ていれば、また別の運命を迎えていたのかもしれないんだけれどね」
 杖の先端を神官長からはずさないまま、佐野がローブの下から腕を伸ばす。
 ―――魔法が来る!?
 全身が脈打つような緊張からか、そう判断しても体の動きがワンテンポ遅れてしまう。それでも呪文の詠唱より早く回避行動に移れる……そう思っていたあたしの手に衝撃が走る。
 右手に握っていた箒を何かが弾き飛ばしていた。ムカデのように黒い硬質の輝きを放つそれは建物の窓から伸び、続けざまに他の場所からも飛来して、あたしへと襲い掛かってくる。
「ちょ、ちょっとタンマぁ!」
 速い。空中を蛇行しながら向かってくる長い触手はこちらの足元を打ち、躱そうと前へ踏み出したその先へも執拗に追いかけてくる。二度三度と連続して足元を狙われ、避けきれなくなったあたしは前へ大きく跳び出し、石畳の上を転がって建物から距離をとる。
「切り札は最後まで見せないもの……そして見せた以上、君に勝利の二文字はありえないと思いたまえ」
 背を向けた佐野から声を掛けられるけれど魔力の高ぶりは感じられない。―――それなのに背筋を駆け抜ける寒気は急激に強くなる。
 その直感を信じ、体を起こして膝を突いた姿勢から、あたしは横へと跳ぶ。根拠も何もない行動ではあったけれど、その直後、一瞬前までいた場所に二本の巨大なモノが叩きつけられ、固い石畳が粉砕して轟音と共に砂煙が舞い上がる。
 地面を貫いたのは昆虫の……いや、魔蟲の脚だ。あたしの腕で一抱えはありそうな太さをしており、転がりながら脚が伸びてきた方へと目を走らせると、
「なっ……!?」
 見覚えのある巨大な蜘蛛……静香さんを誘拐した連中が従えていた霧状の大蜘蛛、ミストスパイダーが視界をさえぎる円柱状魔法陣の中から巨体の前半分を突き出していた。
「冗談キツいわよ……」
 ミストスパイダー一匹に殺されそうな目に会ったというのに、それが二匹。静香さんのガーディアンでもそう簡単に倒しきれなかった大型モンスターを左右に従えた佐野は、地面にうずくまるあたしを見下ろしながら、ゆっくりと魔法の杖を頭上へと掲げた。
「さあ、姿を見せるがいい、僕の研究成果たち」
 その言葉に応じて、建物の中に隠れていたモンスターたちが姿を現す。―――けど、あの姿はなに!?
 出てきたのは人と同じように二本の足で立つ亜人型モンスターだ。大きさや体つきはゴブリンとそう大差はない。遠めに見た限りではオーガやオークのように怪力を誇っているようにも見えないし、さして強いようにも見えなかった。
 だが、魔法陣の光に照らされながらあたしへと近づいてくるにつれ、その姿の奇怪さをイヤでも見せ付けられることになった。
 その一匹は右腕がムカデそのものだった。
 その一匹は左腕がハサミで、脇から何本もの節足が生えていた。
 その一匹は頭から角が生え、口が左右へ割れていた。
 どの一匹をとっても、他のものと同じ形がいない。似た様なムカデ腕をした者もいるけれど、背中に透けた六枚羽根を持っていたり、体の大部分が甲殻に覆われていたりと、異なる特徴を有していた。
 その一匹一匹を見て特徴を捉えて行くうちに、そのおぞましさに吐き出しそうになる。まるで昆虫を引きちぎってつなぎ合わせた……いや、入れ替えたと言っていいその姿は、まともなモンスターではありえない。
 複数の足音があたしに近づいてくるのを感じながらも、「誰か」の手によって作り変えられたモンスターを前にして動く事が出来ないでいた。
「君は魔法に詳しいようだが、この様な技術がある事は知らないだろう。見た前、あの姿を。あれこそが僕の永遠の研究課題である二つの生命の融合。これこそまさに神の所業、いや、魔王の力よ!」
 立ち上がり、魔蟲と融合させられたモンスターたちから距離を置く。そして、モンスターとは言え生命を弄んだ事を誇る佐野を睨みつける。
「膨大な魔道書の中からこの技術を見つけ出したとき、僕は歓喜に打ち震えたよ。新たなモンスターを生み出すこの御技は僕にこそふさわしい。いずれこの世界は、僕の手により生み出された新たなる生命によって蹂躙されるべきなのだよ!」
「だからゴブリンやオークを使い捨てにしたのね……」
「当然だろう? 僕は魔王になり、僕にふさわしい配下を生み出すのだから。あのような醜悪な者たちはもはや必要としないのだよ!」
 あまりにも自己中心的過ぎて気分が悪くなる。それを歯軋りして無理やりのどの奥へと押し込めると、あたしは両手の平へ意識を集中させていた。
 魔法の箒は弾き飛ばされて、どこにいったのかも。分からない残る抵抗の手段は魔封玉に封じ込められたモンスターの力を借りる事だけだった。
 ………あんな姿にされたモンスターたちを倒すのは心が痛むけれど……このままじゃ何も出来ずにやられるのを待つことになる。
 あたしがのぞめば魔封玉は現われる、呼び出せるのは黒装束のリビングメイルに、衛兵詰め所で契約したオーク、それにオーガ……いや、オーガの反応が弱い。あたしが呼びかけてもなんの反応も示さない。
「だったら―――」
 魔蟲と融合させられたモンスターの数は約二十匹。そして佐野の左右にミストスパイダーが二匹……この状況をどうやって切り抜けるのかなんて分かりはしないけれど、あたしは一縷の望みを手にするために魔封玉を―――
「―――――――――――ッッッ!!!」
 手の中に生まれた魔封玉が地面へと転がり落ちる。封印を解く事も出来ないままあたしはその場に膝を突き、内股に力を込めて両手で股間を押さえつけると、白い首元を反り返らせて声にならないほど大きな嬌声を放ってしまう。
「どうしたのかね? まさかこんなところで欲情でもしたのかい? クッ…ク〜ックックックッ!」
「あ…あウッ! こん、な…んゥううううううううッ!!!」
 なにもしていないのに、されていないのに、全身の神経に熱い溶岩でも流し込まれたかのように体が火照り、燃え上がる。
 股間を押さえたまま体を一直線に伸び上がらせ、膝立ちのまま腰をカクカクと震わせると、下着の中からブシャッと飛沫く音を立てて愛液が迸る。ビクビクと痙攣を繰り返す肉壁は収縮しながら激しく絡み合い、奥歯を噛み締めようとしても声を放ってしまうほどに脈打つ膣壁から強烈な快感が沸き起こってしまう。
 長いスカートの中は、まるで失禁し続けているかのように大量の蜜が溢れ、乾いた石畳に黒い染みがジワッと広がっていく。アソコだけじゃない、メイド服の内側でもねっとりとした汗が滲み出し、胸の大きな膨らみが痛いぐらいにブラの布地を押し上げている。
「こんな…こんなのって……んぁ、んぁあああっ、な…なに…これぇぇぇ!!! あたし、体が、止まんない、い…イくの、ウソ、ウソ、ウソぉぉぉ〜〜〜!!!」
 ヴァギナが一際強く収縮すると、あたしは堪えきれず、右手で乳房をこね回しながら一気に登りつめてしまう。
「ひあっ、だ、ダメぇ、ダメェ、あたし…んクゥ! なに、したのぉ! ひあっ…ふっ、ふあっ…や、イヤ、やあぁぁぁ!!!」
「なに、君に魔力に反応して快感を昂ぶらせる毒を打ち込んだだけだよ。君は僕の予想を超えてくれる人だからね。念には念を……ククッ、ククククク……」
 ―――あの時……首筋を刺してった魔蟲……
 体の異常の原因が分かっても、それですべてが解決するわけじゃない。
 メイド服のボタンがいくつか弾け跳ぶ。固く張り詰めた膨らみを荒々しく揉みしだき、直接炎にあぶられているみたいに痺れている乳首を乳房の中へ押し返すように指でほじくると、もう服を着ていることに耐え切れずにあたしはブラウスを大きく開いてブラジャーを引きちぎってしまう。
「ああぁん、ヤ、ヤァああああああああああああっ!!!」
 服からこぼれ出た膨らみは、突付けば割れるのではないかと思うぐらいにパンパンに張り詰めている。
 触るだけで痛いぐらいに敏感になっている乳房を右手で掬い上げるように揉みしだき、汗を塗りこめるように乳首を扱き上げると、喉を震わせより大きな喘ぎ声を上げ、フッ…と力が抜けた体は前へと倒れこむ。それでもまだあたしの体は勝手に快感を貪るように胸と股間を刺激し続けてしまっていた。
「いい、実にいい! やはり君は僕の想像通り、素晴らしい女性だよ。美しく、勇敢で、それでいて淫らな表情を隠し持っている。どうだね、僕の前ではしたない姿をさらけ出す気分は? 悔しいかね? 憎いかね? けれどそれらの感情を抱けば抱くほど、君はより美しくなる。そう、僕へ向けられる憎しみこそ、君が胸の奥に隠し続けている愛情そのものなのだよ!」
 服が体に張り付くほど短時間で大量の汗をかいたあたしのすぐ傍へ、高らかに声を響かせながら佐野が歩み寄ってくる。見上げたその顔には狂気が満ちていて、手指で敏感な場所を弄りながら悶え苦しむあたしへ覆いかぶさると、ローブの下から固く反り返った肉棒を取り出した。
「や…め……イヤァアアアッ!!!」
 固そう……佐野のペ○スを目にした途端、そんな事を考えてしまう。
 周囲は魔蟲と融合させられたモンスターたちに取り囲まれ、その輪の向こう側には助けなければいけない人たちが倒れている。こんな状況で佐野に抱かれる事だけは拒否したいはずなのに、スカートをたくし上げられ、続けて下着の上から恥丘を一撫でされただけで喉が詰まり抵抗の言葉を紡げなくなってしまう。
「無理をしなくていい。魔力が高い君には抗う事の出来ない強力な媚薬のはずだ。抗わずに受け入れたまえ、僕の愛と共に……」
「だからって……あ、あんたなんかにぃ……んんん〜〜〜ッ!!!」
 仰向けにさせられたあたしの胸へ佐野が顔をうずめる。胸の谷間から立ち上る濃厚な汗の香りを吸い込んで悦にひたった佐野は服から飛び出した膨らみをふもとから先端まで丹念になめしゃぶると、コリコリと硬くしこった乳首を口に含み、歯を立てながら吸い上げる。
「やっ、ああっ、ああん、やッ、はッ、はッ、やめ、んああ、んぁあああああっ!!!」
 瞬く間にあたしの胸は佐野の唾液で覆われてしまう。その上から佐野の手で、ただ欲望を満たすためだけにこね回された乳房は張り詰めた皮膚のすぐ下で血管と神経を連続して打ち震わせ、母乳を噴き上げてしまいそうなほど乳房全体に駆け巡る疼きに、どれだけ歯を噛み締めても迸る喘ぎを抑えられずにガクガクと体を震わせてしまう。
「あんたなんかに、あんたなんかにぃ! イヤ、あっ…あああああっ!! ダメ…胸で…胸だけであたしぃ――――――ッッッ!!!」
 腰が弾み、アナルまでドロドロになるほど股間から愛液が垂れ落ちる。
 心の中では、どうしても佐野を受け入れることは出来ない。あたしが受けてきた数々の仕打ちを思い返せば、湧き起こってくるのは怒りだけ…そのはずなのに、佐野が乳房から口を離し、そそり立つ肉棒を突き出すのを目の当たりにした時、あたしの体の奥から愛液よりも濃厚な射精液がほとばしり始めるのを感じてしまう。
「おびえる事はない……君が僕の物になる運命は、はじめから決まっていたのだから……」
 その言葉に…もう逆らえない。
 あたしの膝を割り開き、膨張したペ○スを押し付けて来る佐野を押し返す気力を愛液と共にあふれ出してしまったあたしは、悔しさに唇を噛み締めながら、心のどこかで挿入されるときを今か今かと待ちわび、子宮の奥を熱く疼かせてしまっていた……


stage1「フジエーダ攻防戦」42