第3章「−5」第4話


前回までのあらすじ――  科学部の後輩、マッドサイエンティスト予備軍の千里が屋上に作った巨大な機械によって過去の時代へとやっ てきてしまったようなあたし、相原たくや。  昨晩はなんと女になる前のあたし…つまり男の自分である"拓也"とエッチをしてしまって……今にして思えば、 あたしは自分で自分の童貞を奪っちゃったことになるのよね……  そして翌日、再びタイムスリップしたみたいで(風景がいっしょだからいまいち実感が…)、いきなり学園の屋 上に戻されたあたしの前に現れたのは、童顔の男の子(一応同じ学園なんだから歳は近いんだけど…)の股間に顔 をうずめる我が義姉、夏見だった。  その光景を目撃していたことがばれたあたしは、逃げ出さないようにと手錠(なんでこんなのを持ってるのよ …)で下半身を裸にされた男の子と一緒に屋上の壁の雨どいにつながれたんだけど……今度は男の子があたしに 告白!? なんでこう次から次にいろんな事が起きるのよぉ!!  ――で、話は戻るけど……どうしよう……まさかいきなり「好きです」なんて言われたら……  お日様の下で屋上の床に座るあたしのすぐ目の前には、自分が思わず口にしてしまった言葉を思い出してか、 顔を真っ赤にして座っている男の子がいた。  あたしは左手を、男の子は右手を手錠でつながれているので、二人の距離は手を伸ばすまでもなく、体を少し 動かせば肩がふれあい、向きを変えればあたしの胸の先端が男の子に触れそうなぐらいの超至近距離。  そんなに近くにいると、男の子のしぐさの一つ一つが細かく見て取れてしまう。  耳まで赤く染めてうつむいていたかと思うと、不意にあたしを見上げて何か言おうと口を開く。けれど何も言 えずに口をぱく付かせ、再び顔を下に向けるとあたしの目から自分の性器を隠すように左手で押さえ、女の子の 様に足首を外に向けて正座している太股の間に押し込んでしまう。その時に擦れたせいか、んっと短く声をあげ、 それに気づくと肩をすくめて身を小さくし、あたしに見られていると言う羞恥心に耐えるために眉をしかめ、顔 はさらに真っ赤かに……  これって……かわいそうだけど……なんだかかわいいかも……  もしあたしが一年前の……女になる前に気弱なときのままだったら、きっとこんな感じだったのかもしれない。 昨日のあの間抜け振りは忘れるとして……目の前の男の子に自分と似たところがある――あった、と言うべきか もしれないけれど――のを感じ、同情の念を抱くと同時に心のどこかで彼があたしに言ってくれた「好き」という 想いに答えてあげたいと思い始めてしまう……  でも―― 「ねぇ……本当にあたしのことが…その…好き、なの?」  あたしの声にまるで小さな動物のようにビクッと身を震わせると、男の子の目が恐る恐るとあたしの顔を覗き、 それでもはっきりと頷いた。 「………ありがとうね。あなたの気持ち…うれしいよ。だけど、あたしは……恋人がいるから」  頭をよぎる明日香の笑顔――それを思い出しては男の子の言葉に答えてあげることはできない。  それに、この過去の時代であたしが彼と付き合っても、さっき家を出たときのように唐突な別れが待っている。 だったら…最初から期待させないほうが良いと思う。 「そ…そうですよね。お姉さんみたいな…先輩みたいな綺麗な人だったら恋人がいたっておかしくないですもん ね……」  お姉さんから先輩か……あたし、ひどい事しちゃったな…… 「きっと僕みたいな泣き虫じゃなくて、素敵な人が……ひっく…う…うぇぇ……  いや、彼氏じゃなくて彼女――と思うよりも先に、男の子は顔をクシャッとゆがませると、きつく閉じた目の 端からぽろぽろと大粒の涙をこぼし始めた。  あたしの左手の近くで金属の擦れ合う音が鳴る。あたしにふられてもこの場を去ることもできず、下半身をさ らけ出したままと言う恥ずかしい姿のままで座っていなくてはいけない。  恥ずかしくて、情けなくて、悔しくて……いろんな感情を涙と一緒にこぼれさせても、男の子は大きな泣き声 をあげたりはしない。綺麗な形を下唇に歯を立てて声をあげまいとするのは、あたしにそんなところを見られた くないからなんだろうか…… 「………だからね」  自由な右手がスカートの上から涙の伝う男の子の頬へと伸びていく。温かく、そしてやわらかな頬を手のひら でさすってあげると、ぐしゃぐしゃの泣き顔がゆっくりと上がってきて、潤んだ視線とあたしの視線とが少しず つ絡まり合う。  男の子の目に、あたしはどんな風に映ってるんだろうか……涙で溢れている目に映らない自分の顔を思い、唇 の端に苦笑が浮かぶ。  これは興奮か…きっと違う。似てるけど、なんだか違う気がする……  胸の鼓動が全身に伝わっていくほど大きい。トクンと一つ脈打つたびに、あたしの体は内側から広がっていく 心地よい緊張と熱気に満たされていき、吐息を吐くたびにまた一つ、大きな鼓動が胸から響いてくる。 「だからね……今だけ…今だけだから……」  あたしは男の子を安心させるようにやさしく微笑んだ……微笑んだつもりだ。松永先生を思い出してやっては みたけど、自分がしようとしていることへの緊張か、頬のあたりの筋肉がなんだか硬くて……それでも、あたし は精一杯、男の子だけを見て笑みを浮かべる。  いつのまにか男の子の涙は止まっていた。まるで夢でも見ているかのような瞳であたしを見つめているうちに、 あたしは右手を彼の頭へと回し、それほど長くはないけれど柔らかい黒髪に指を絡ませながら引き寄せる――あ たしの方に。 「今だけ……君の恋人になってあげる」  その言葉を言い終わった直後、まだ音の余韻が残る半開きの唇を男の子の口に押し付けた。 「んっ!」  予想はしていただろうけど、それでも男の子の頭に触れていたあたしの手に大きな震えが伝わってくる。  女の子にエッチな事をされた事が無い……だったらキスの経験だってほとんど無いか、もしかしたらこれがフ ァーストキスかもしれない。おそらくは後者だろう。だって、一度でもした事があるんならこんなに体を震わせ て脅えたりはしないだろうから……  まだ夏美にされた強制フェラのキツい記憶が残っているんだろうけど、あたしもキスをやめようとはしなかっ た。その代わり…と言えないかもしれないけれど、腕を彼の首に巻きつけて体ごと触れ合う様に……高鳴る乳房 の先端を男女の制服を挟んで男の子の薄い胸板に押し当てて、二つの膨らみを密着させる。 「んふぅ……」  胸の先端から伝わってくる熱さに、思わず鼻息が漏れてしまう。  あたしが身をよじれば一番強く圧力を受けている乳首がブラの中で上下左右によじれ、湧きあがる淡い疼きが 鼓動の響く弾力のある膨らみを隅々まで刺激する。 「うんっ……んっ…んんっ……」  胸の切なさに甘い声を漏らし、あたしは首の傾きを逆に変えて再び濃厚にキスを交わす……男の子がくぐもっ た声をあげるのを聞きながら、あたしは触れ合う唇から唾液がツツッと伝い落ちていくのも無視し、吸うだけで 頭の芯が蕩けそうな感触を持つ少年の唇を貪っていく……  そろそろ…頃合かな……  長い時間のキスの交わりで、性体験のほとんどない男の子は四肢を震わせ、呼気を荒くしながら薄い唇をわず かに開き始めた。それを感じ取ったあたしは決心すると、尾も一騎って唇の隙間に自分の舌先をねじ込んでみる。 「んんんっ……んふぅ……んくぅ!」  クチャッと唾液の音がはぜる…熱くて粘つくあたしの舌が男の子の口内をかき混ぜると、それと同じリズムで 男の子の小さな鼻からも呼気が漏れ出ている。 「んっ…チュッ……んむぅ……」  あたしの舌が奥の方で縮こまって震えていた少年の舌を絡めとる。そしてお互いの舌の上に溜まっていた唾液 を粘つく音を立てながら混ぜ合わせると、舌の裏を嘗め回し、震える内壁をなぞり上げる。 「んんっ、んんっ、んんんんんっ!!」  やだ…ものすごくかわいい声をあげてる……聞いてるだけであたしまで興奮してきちゃう……  男の子は体を緊張させてはいても、あたしの舌を拒もうとしない。あたしの制服をぎゅっとつかんで今まで味 わったことがない甘美な刺激に耐える彼に触れ合うあたしも、自分が男だと言うことも忘れ、いたいけな少年を 弄ぶ快感に少しずつはまり始めていった…… 「んっ……ハァ………」  一度、腕に力をこめて強く男の子の唇を吸い、交じり合った二人分の唾液を軽くすすり取ると、あたしはやっ と戒めを解いてお互いの唇を離していく。  唾液で淫靡に濡れ輝くあたしたちの唇の間に唾液の糸が張られていく。舌で舐め切ろうかとも思ったけれど、 その前に放心している男の子の顔を見とれてしまう…… 「ハァ…ハァ……んっ!?」 「………んんっ……チュ…」  我慢できず、糸が切れるよりも先にもう一度唇を重ねてしまう。終わりだと油断していた男の子が驚きの声を あげるけれど、それすらも飲み込むぐらいに激しく、そして胸のうちからこみ上げる温かい感情を押し付けるよ うに唇を密着させ、溢れる唾をコクコクと喉を鳴らして飲んであげる……彼の唾を…一滴もこぼしたくない……  そして、最初のキスよりも短いとはいえ、優に一分以上……唾液もイきも全部あたしにすすり上げられた男の 子は、あたしの唇から開放されると同時に大きく、それでいて熱い熱気を帯びた呼吸を繰り返した。 「ハァァ……ハァ……ハァ……」  すべての力を使い果たし、あたしの胸に頭を預けて目を閉じている男の子を安心させるように、手錠につなが れた左手で男の子の右手をやさしく包み込み、右手で呼吸のたびに軽く上下する男の子の小さな背中を上下に撫 でてあげる。  なんだか…母性って言うのを感じちゃいそう……だけど、あたしはこれからこの子の初めての……  この男の子は、年齢的にも、肉体的にも、そして精神的なものまで明らかにあたしよりも幼い。「男の子」とつ い呼んでしまうぐらいの彼に女を…性の悦びを教えてあげようと…… 「んっ……はぁ……お…姉…さん……」  ある程度呼吸が収まり、男の子がなんとか上げた顔を見たあたしの背筋にゾクッと熱い震えが駆け上る。  いけない事をしている……穢れを知らない男の子を汚すのはこんなにも…震えるほどの快感なんだろうか……  けれどそれを顔に出さないように、あたしは男の子に微笑みかける。 「ねぇ……大丈夫だった?」  あたしの問いかけに男の子は無言で顔を肯かせる。 「じゃあ…気持ちよかった?」  この問いには数秒間を置いたけれど、こちらを見ないように視線を下げてやっぱり肯き。  や…やっぱり可愛い……こんなことで照れちゃうなんて………この子の爪の垢を弘二にも飲ませてやりたい… …  一年前――あたしが今いる時間だと未来のことになるんだろうけど――、同じくこの場所であたしに童貞を奪 われた後輩の姿を思い浮かべ、あの時のことを思い出してみる……弘二も最初のときは震えていたけれど、この 男の子の可愛さにはぜんぜん及びもしない。  もっと…もっとこの子にいろんな事をしてあげたい…… 「ねぇ……あたしとじゃ…だめ?」 「……えっ? な、なにが……」 「………初体験……」  言葉の意味は知っていたんだろう……あたしがそう言うと、男の子はさらに顔を真っ赤にして俯いき、黙り込 んでしまう。けれど、その視線の先は大きなあたしの胸……それに気づいてはいても、あたしと顔を合わせるこ とができないぐらいに恥ずかしがっている男の子は、じっと乳房の豊満な膨らみを見つめている。 「ついさっき…あんなにひどい事をされたのはわかってるけど……だから優しくしてあげたいの」  あたしの右手が、首のリボンを解かずにブラウスのボタンを一つ一つはずしていく。  男の子も顔を動かさない。少しずつ、少しずつ、彼とキスしているうちに火照り、ほんのりと汗の香りを漂わ せる乳房がブラウスの隙間から露出していくのを、まだ経験のない男の子は食い入るように見つめている……  胸の前のボタンをはずし終えると、飾りの少ない白のブラが露わになる。もう二日目かな…昨晩"拓也"に抱か れたときの汗も染み込んでいるかもしれない下着と、触られることを待ち望んでいる乳房の膨らみが彼の目にさ らされ、恥ずかしさのあまりにあたしのアソコまでジンジンと痺れてしまう…… 「ねぇ……力を抜いて」  すっと男の子の首に右手が伸びる。肌が触れたことに気づいているだろうか……あたしが何を言っても身じろ ぎしない男の子にそう語り掛けると、あたしは腕を引き寄せながら、男の子の視線によりさらけ出すように胸を 突き出していく。 「あっ……」  頼りない一言を残し、男の子の顔はあたしの胸の谷間に埋められてしまう。 「痛くしないから……ね……」  そう言うあたしの胸は、男の子の顔が触れ、鼻や口から漏れる吐息にさえ、これからの事を期待して高鳴って しまっていた……


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