第3章「−5」第1話


「きゃあ!?」  あたしが外に飛び出すと――そこは壁だった。 「び…ビックリしたぁ………あれ?」  突然目の前に出現したコンクリートの壁に両手を突き、顔を打ち付けるのを回避して安堵したあたしは「いつ の間にマンションは改築したのよ?」と思いながらも足を階段の方へと向けようとして、すぐに周囲の異変に気 がついた。  なんで…屋上にいるの?  振りかえると、あたしが出てきた扉は影も形も無くなって、代わりに平らなコンクリートの床と青空が広がっ ていた。それほど遠くない空と床との境界近くには金網のフェンスまで設置されている。後ろを振り返って、さ っきぶつかりそうになった壁を見やれば、それは屋上に出てくる階段へと繋がる扉のついた建物で、上には給水 タンクも取り付けられている。  どこかで見たような……ひょっとして――ここって学校の屋上?  ヴォン……ヴォン…… 「? あれ、この板って…タイムマシン…だっけ?」  とりあえずフェンス際に近寄って下が運動場かどうか確かめようと思ったあたしの足元から振動音が響いてく る。まだ足になじまない靴越しにも伝わってくる小刻みな揺れに目を下に向けると、そこには千里の開発した機 械――おそらくはこれがタイムマシンなんだろう――があった。  壁の近くにおかれているそれはあたしが最初に発見した時のように光こそ発していなかったけど、どうやら今 も動き続けているようだった。  ………もしかして、これに呼び戻されたのかな?  原理や理屈は分からないけど、千里の作った機械なら何が起きても不思議じゃない。爆発しないだけまだマシ よね。それよりもここが学校ならちょうどいいわ。早く「拓也」にあって女になら無いように注意しないと。 「……よしっ」  改めて気合を入れたあたしは下に降りようと扉に向かって振りかえる。  そしてその時、あたしが足を踏み出すよりも早く、カチャリと音がして扉がこちら側へと開こうとしていた。 「ほら、グズグズしてないで早く上がってきなさいよ」 「ま…待って……息が切れて…ハァ、ハァ……」  誰か来たのかな? こんな朝は焼くから一体誰が……あっ、急いで隠れなきゃ!  そ知らぬ顔をしていれば同じ宮野森の生徒なんだし会釈程度で通りすぎれたかもしれない。でも来たのがあた しの知っている人だったら……一度佐藤先輩と顔を合わせて困った事になった経験から、人に見られたらダメだ と思いこんでいたあたしは慌てて建物の影へと身を潜めた。 「誰もいないようね。出てきてもいいわよ」 「は…はい……」  よかった…見つからなかったみたいね。それにしてこんな時間に屋上へ何の用だろう?  声からするとやってきたのは男女の二人組。女性の方は気の強そうな声で、もう一人の男の子の方をリードし ているみたいだった。  ………ちょっと見てみようかな?  気の強い女性と気の弱い男性。その組み合わせにちょっと興味が沸いたあたし(自分もそうだから…)は物陰か ら顔の半分を出して、そぉ〜…っと二人の様子を盗み見る。 「んんっ! んぐっ、んぐぅ!! んんん〜〜〜〜〜!!!」 「チュ…んム……ハァ……んんっ……」  !? な…いきなりキスぅぅ!? 何をしてるのよ、あの二人は!?  そしていきなり、重なり合った二人の横顔をおもいっきりしっかりはっきりとその目で目撃してしまったので ある!  しかも迫ったのはあたしと同じ制服を身につけたポニーテイルの女の子の方みたいで、こちらも宮野森をきて いるけど女性側よりも背の低い男の子を出入り口近くの壁に押しつけ、頭に手を回して熱烈な口付けを交してい た。 「ん…んんっ」 「……!」  頭の後ろで縛った髪を揺らしながら少女が首の傾きを変える時、相手の口に舌が入りこんでいるのが見て取れ た。そして再び隙間が見当たらないほど唇を密着させると、目をキツく閉じてジッとしていた少年の体にビクッ と震えが走る。  あ…あんなディープキスをこんなところで……とんでもないところに居合わせちゃった………  そのキスの濃密さと言えばAV女優顔負けだった。見てはいけないと思うんだけど、時折聞こえる男の子の荒 い鼻息や舌が絡み合って爆ぜる唾液の音に、ついつい視線をそちらに向けてしまい、生唾を飲み込みながらじっ くりと凝視してしまっていた。 「ふぅ…ふぅ……んむぅ…!…あっ……ハァ……」 「どうだった、ファーストキスの味は? 女の子にいきなり迫られて奪われたなんて、一生の思い出に残っちゃ うかもね」 「そ、そんなぁ……ハァ……」  け…結構ひどいなぁ……それにしても……どこかで見たような……  キスが終わって二人の顔がようやく拝めるのかと思いきや、女の子の方は長い髪が邪魔してここからだとよく 見えない。それでも形よく膨らんだバストやヒップは制服の上から見て取る事ができ、学生にしては早熟ではな いかと思うほど十分発育していた。それでもあたしほどじゃないんだけどね…… 「でも、これからが本番よ。さっきのキスが霞んじゃうぐらい気持ちよくしてあげるからね」  さっきのキスが霞むって…まさか…本番!?  そのあたしの予想を裏切らず、女子生徒はハァ…と一つ熱いため息を漏らすと、男の子の胸に自分の制服の膨 らみを押し当てた。 「も…もうやめて…許して……んっ!」  身長差のせいで肩や顎の辺りに二つの柔らかい膨らみを押しつけられた男の子は気の毒に思えるほど顔を真っ 赤にしてこれ以上の行為を拒もうとする。でも、そのか弱い抵抗は女の子が学生ズボンの上に右手を這わせるだ けで途切れてしまった。 「そんな事言っても、ここは大きくなってるじゃないの。小学生みたいな顔をしてるのに、チ○ポはすっかり大 人よね」 「や…やめて……そんなトコ…触らないで……」 「そんなとこ? そんなトコって、あたしに触られて大きくなったこの節操の無いチ○ポの事かしら?」 「ひうっ! やっ…やめてぇぇ……」  女の子が手を動かしてズボンの上からおチ○チンを弄り出すと、男の子の息はますます荒くなり、押し返そう としているのか、それともしがみついているのか、両手で女の子の腕を掴んで顔を快感に歪ませている。 「だ〜め。これからが楽しいんじゃない。きっとやみつきになるわよ。あたしの口ってスゴいんだから」  脅えるように震える男の子に見せるように舌先を小さく突き出した女の子は、胸を押しつけたまま体を下へと ずらし、床へとひざまずく。ここでも身長差があり、男の子の腰は彼女の顔よりも少し下に位置していた。  でもそんな事は気にすることでもなく、自然な動きであっという間にベルトを外し、ズボンのチャックを開け ると、両手でズボンとパンツを一緒にずり下ろした! 「へぇ…皮かむってるけど結構大きいじゃない。これなら少しは楽しめそうね」 「やだぁ〜〜〜!! やめて、お願いだからもうやめてください! これ以上は本当に――」 「うるさいわね! 人が気分盛り上げてるんだから黙ってなさい!」  自分の性器をさらす事の恥ずかしさに男の子は両手で自分のモノを隠そうとするが、それまでおチ○チンを見 つめて唇を舐めて湿らせていた女生徒はそれよりも一瞬早く、右手で少しだけ大きくなった男性器を力いっぱい 握り締めた! 「ひいいぃぃぃ!!」  うっ! あ…あたしもなんだか変な気分……おチ○チンついてないのに……すっごく痛そう…… 「やめて、やめて、おチ○チンが、千切れるぅぅぅ〜〜〜!!」 「あたしは別に千切れちゃっても構わないわよ。そしたら別の男を探すだけだし。でも、許してあげてもいいわ よ。君があたしの言う事をなんでも聞くならね」 「聞きます! 聞きますから離して、離してぇぇ〜〜〜!!」 「そうそう、最初から素直にしていれば痛い目を見ずに気持ちよくしてもらえたのにね。分かってると思うけど、 これからはあたしの言う事を何でも聞くのよ」  自分の大事な場所から込み上げる痛みにお尻を壁に当てたまま体を女の子に覆い被さるように折り曲げて泣き 叫ぶ男の子。その口から悲鳴と一緒に服従の言葉が聞こえてくると、女生徒は髪をかき上げて口元を淫靡な笑み で歪めた。  ………? どこかで見たような……  その光景をどこかで見たような気がして注意が逸れたあたしを放って、あっちの二人の事態はさらに進展して いく。 「それにしても綺麗な足ねぇ。まるで女の子みたい……」 「ヒッ!」  あたしのいる位置から見ても白くてすべすべな太股へ女の子が顔を寄せていく。指先を滑らせながら、唇から 突き出した舌先でぷりぷりの太股から脚の付け根にまで這いまわらせ、光に反射するほど大量の唾液を塗りつけ ていく。 「はぁ……物足りないかと思ってたけど…いじめてきたくなっちゃう……」 「やぁぁ……くすぐった……ひぅ!」  何とかこんな事をやめてもらいたいけど、さっきみたいにあそこを握られたら…そんな男の子の葛藤が女の子 の頭の上でいったりきたりを繰り返す小さな手から読み取れる。今まで女の子にこんな事をしてもらった事なん て無かったんだろうけど、その仕草はあまりにもかわいそうで……もうちょっとぐらいは苛めてあげてもいいか な? 「んっ……」  男の子の苦しそうな顔を見ているうちにゾクゾクするような危ない興奮を感じ始めていたあたしは、まるで自 分が男の子の太股を舐めているような、そして同時に自分の太股も舐められて指で触れられているような錯覚に 陥り始めていた。  ……昨日は…一度もイかせてくれなかったし……気付かれてないんだから…少しぐらいならいいよね……  女の子の舌と唇と指が内にも外にも這いまわるのを見ているだけで、あたしの同じ部分にも鳥肌が立つような 淡い喜悦が這いまわる。  とうとう堪らなくなり、あたしがその場に屈みこんでスカートの中に手を差し込むと、そこはムワッとする熱 気に包まれており、ナイロンのパンティーは触れただけで指先に愛液が付着するほど湿り気を帯びていた。  股間の覆い布をずらして指をキツき角おマ○コに入れてみたいという欲求に襲われるけど、さすがに二人が近 くにいてはそこまですることはできない。その代わりと言うわけじゃないけど、少しだけ濡れた指先をおマ○コ のすぐ近くから膝へ向かって内太股の上を滑らせてみる。  んんっ!…こ、声が…出ちゃいそう……  あの男の子のように舐めまわされているところを想像しながら指を何度も往復させる。時折爪で線を引き、一 番感じちゃうところでクルッと指を一回転させると、昨晩の快感が一気に噴出してきてしまい、段々とエッチな 事しか考えられなくなってきてしまった。 「んっ…んんっ……んっ!」  指の動きを止められない。左手の指を噛んで声を上げまいとする一方で、右手が動くたびに太股から股間へビ リビリと快感の小波が走り、肉の花びらが自分が分泌した愛液でドロドロになりながらヒクヒクと痙攣し始める。 そこからこぼれ出した粘液を指で掬い取ると、滑りのよい太股の上をさらに滑らかに指が動き、体育座りをする 足と一緒に開かれた割れ目にブルッと喜悦の痺れが走り抜け、スカートを持ち上げるように肉の詰まったお尻が ビクンと跳ねあがる。 「さ、それじゃメインディッシュといきましょうか」 「だ…だめ……もうだめ……変になりそ……も…ゆるして……」 「ここまで来て終わりまでいかない訳ないじゃない。ほら、皮を向くわよ」  それまで太股を触っていた女の子の手が不意に勃起して持ちあがったペ○スを握り締めると、そのまま根元に 向かって手を引き降ろした。 「! うあああああっ!!」  手の動きと一緒に、先端まで覆っていた分厚いおチ○チンの皮が引っ張られ、真っ赤に充血した先端部分が吐 き出しになる。  激痛を伴う大人への階段昇りに男の子は叫ぶだけでなく、体全体をガクガクと震わせる。太股への愛撫ですっ かり足にも力が入らなくなっているみたいで、今は壁に押しつけたお尻だけが彼の体を支えていた。 「結構汚れてるわね。いきなり居れようかとも思ってたんだけど、こんなに恥垢が溜まってるんじゃ、まずは綺 麗にしないとね」  く、口ですか!? とうとう口でしちゃうんですか!? わ〜〜わ〜〜わ〜〜〜!!  女の子の口に男の子のペ○スが入る瞬間を見逃すまいと目を見開いていたあたしの胸は、世紀(性器?)の一瞬 を目撃する緊張感でドクンドクンとうるさいぐらいに胸が脈を打っている。右手もこの時だけは動きを止め、真 っ赤にはれた亀頭に唾液で淫靡に濡れ光る唇が近づいていくのを目を見開いてジッと見つめていた。  だけど――  キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜〜ン……キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜〜ン…… 「あ、いっけな〜い、もうこんな時間なの?」  突然鳴り響いたチャイムを聞くと、女の子は接近を中断し、その場にすっくと立ちあがった。 「残念ね。続きは放課後、たっぷりとしてあげるわ。それまで待っててね」 「……うっ…グスッ……グスグス……ウウゥ……」  それまでのムードも消し去って立ちあがった女の子とは反対に、男の子の方は壁に背中を預けたままズリズリ と床に座りこみ、顔に両手を当ててシクシクとまるで女の子の様に泣き出してしまった。  かく言うあたしも、いいところまでいったのに中断されてしまって、またしても欲求不満……はぁ…二人がい なくなったら一人でしちゃおうかな……  見つかる前に顔を引っ込め、床に座りこむ。大きく息をして緊張を解くと、あたしの全身にうっすらと汗が滲 み出している事に気がついた。 「それでさぁ、悪いんだけどあなたには次の授業、欠席してもらうわね」  ん? なんだろ……  額の汗を手の甲で拭ったあたしは、まだ続いていた会話が気になり、もう一度顔を覗かせる。 「ど…どう言う事ですか? もう終わりじゃないんですか!?」 「出席日数が足りてたらこのままヤっちゃったんだけどね。さすがに留年はまずいのよ。それにこのまま返しち ゃったら戻ってこないでしょ? だから放課後になるまで、君にはここで待っていてもらうのよ」  目の前に立つ女の子の雰囲気に飲まれた男の子は裸のままの下半身を隠そうともせず、両手で体を抱いて震え ていた。女生徒はその様子に笑みを浮かべると、ポケットから何かを取り出した。  よく見えないな……でもこれ以上頭を出すとばれちゃうし……  日の光を反射するから鏡とか金属とかだろう。それがなんなのかを確認したかったけど、危険と判断して頭を 引っ込めようとする。 「…や…やだ……そんなのやだ……」 「そんなに嫌がらなくてもいいんじゃない? 別に一人でって訳じゃないんだし。ねぇ、覗き魔さん?」  あたしの視界から二人の姿が隠れるよりも早く、女子の方がはっきりとあたしの方に顔を向けた。その瞬間、 あたしは驚きで心臓が止まりそうになってしまった。 「出てきなさいよ。出てこなくたって別にいいけど、屋上から出れなくなっちゃうわよ」


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