第2章「−1」第8話


「どういう事…なのかしら?」  あたしは体を起こすと、満面の笑みを浮かべて「拓也」に問いただした。 「い、いや、これはだね、その…気持ちよすぎて我慢できなくって、つい……は…ははは……あ、そうだ。ティ ッシュ、ティッシュ」 「そんなのはどうでもいいんだけどね」  顔は笑顔でも声には抑揚がなく、慌ててベッドの側に落ちていたティッシュを拾い上げた「拓也」をニコニコと 見つめているのは、自分でもかなり不気味な怒り様であった。なにしろ、せっかく諦めて「拓也」に犯される事を 我慢して受けいれようとしていたのに、その矢先に擦れただけで暴発するなんて……怒りや呆れがごちゃ混ぜに なって、もはや笑みしか表情を浮かべる事ができなくなっている。人間があまりのもどうしようもなくなった時 になくか笑うしかないって言うのは本当だったのね。  しかももう一度トライしてこようと言う度胸も甲斐性もないらしく、何故かティッシュを膝の上に乗せて床に 正座している「拓也」の態度はあまりにもふがいなく、自分の事ながらふつふつと苛立ちが沸きあがってきてしま うのを抑えきれなかった。  まったく、なんてヤツなのよ。夢だと思って無理矢理襲いかかってくるし、人を脅して股間を舐め回してきた のにイく寸前でやめちゃうし、おチ○チンだって入り口にまで当てておきながらなんで入れられないのよ! あ たしなんか、明日香と初めてした時でもちゃんとできたわよ(男に戻った時ね)。それなのにどうしてあたしが相 手の時には挿入失敗で精液暴発なんてさせるのよ!  さっきまで「挿入だけは断固阻止!」と言う態度を取っていた事も忘れ、目の前で体を小さくして座っている「 拓也」の悪いところばかりが頭に浮かんでくる。気が弱いとか軟弱とかエッチが下手だとか優柔不断だとか…自 分もそうなんだけどね……  さてと……これからどうしてくれようか……もう帰っちゃおうかなぁ…… 「……はぁぁ………」  もうどうでもよくなって、大きく溜息を突く。その音に脅える「拓也」はビクッと、まるで子犬のような反応を 見せる。  ……でも、あまりにもひどいわよね。こんなのがそのうち明日香と……やっぱりあたしみたいに女になって少 し性格変わったほうがいいのかな……それとも――  いつの間にか笑みも消え去り、ジト目で「拓也」を見つめているあたしの胸に、とある思いが浮かんできてしま う。それは一番最初の目的とはあまりにもかけ離れていて、あたしが一番したくなかった事とつながっている事 だった。 「………ねぇ、ティッシュくれない? アソコの回りを拭きたいんだけど……」 「…え……あ、うん。ど、どうぞ」  したに向けた視線を時々上げてあたしの様子を見ていた「拓也」は声をかけられるとは思っていなかったんだろ う、あたしが話し掛けても少しボケっとし、それから慌ててティッシュの箱を両手で差し出してきた。 「ありがと。それから、今から拭くけど……あんまり見ちゃダメよ……恥ずかしいんだから……」  暗くてよく見えないけど、今の「拓也」はどんな顔をしているだろう……あたしへなかなか顔を向けてくれない から判断しにくいけど、どうせ泣きそうな顔をしてるわよね。だって「あたし」なんだし。なんでもう少し我慢で きなかったのかって事故嫌悪してるのかも……ふふふ…結構可愛いのかもね。  そんな「拓也」に悪戯っぽい笑みを向けると、あたしは右手の指先で三枚のティッシュを抜き取って、足を崩し て膝を立てる。スカートを下に敷くようにお尻を床に突き、その体勢でアソコの回りを拭こうとすると……当然 膝は左右に開き、スカートはめくれあがって、目の前に向けて女の子の秘所をさらけ出す。 「………!…………あっ……」  見てる見てる。やっぱり…見たいのかな? あんなに目を見開いちゃって……  体勢を変えるときの衣擦れの音を聞いて視線を上げた「拓也」はあたしの格好を見て、バネ仕掛けのように顔を 勢いよく上げ、少しでもよく見ようと首を前に伸ばしてくる。  まるで挑発するようなポーズを取ったあたしは、「拓也」が見ているのを確認してから太股の間を通らせて右手 に持ったティッシュの束を濡れそぼった股間へと近づけていく。 「んっ……ふぅぅ……」 「お…おおっ!?」  薄く、柔らかい感触の紙が肌に触れた瞬間、あたしはわざとらしく鼻から甘ったるい声を漏らす。当然「拓也」 もそれに過剰に反応し、ティッシュの箱をベッドの上に放り投げると四つん這いになって、部屋が暗い性でよく 見えないあたしのアソコに近づいてくる。 「あん……ダメよ。今度はそこで見てて」  そのままなにも言わなければ、再びアソコを舐めまわされていたかもしれない――それほどまでに獣状態にな った「拓也」だったけど、暴発のショックを引きずっているのは当然理解済み。あたしが手を伸ばして頭を抑える と、言葉にしたがって勢いをなくし、すごすごと引き下がっていく。それでも窓からのわずかな光しか入ってこ ない部屋の中でも分かるほど目をらんらんと光らせていて、まるで「待て」をされている犬のように、あたしが合 図するだけですぐにでも飛びかかってきそうだった。  だけど…あんなに早い人にはちょっとお仕置きしないとね。 「はぁ…はぁ……んっ……あぁ……」  重病ほど間って「拓也」が挑んでこないのを確認すると、ティッシュをゆっくりと動かし始める。愛液でベトベ トの割れ目の上を拭かず、その回り、アナルへと続く敏感な縦のラインや「拓也」の涎が伝い落ちた太股のむっち りとした肌の表面を拭っていく。 「んんあぁぁぁっぁ……」  ティッシュを握った指が肌をくすぐるだけで、全身に鳥肌が立つほどピリピリとした喜悦が体の中を駆け巡っ ていく。  膝の方から太股の付け根へ、おマ○コの舌の端から蟻の戸渡りを通って床に押しつけられてむっちりと閉じ合 わさっているお尻の谷間の入り口をくすぐり、中指をスッ…と触れるか触れないかの所で上に滑らせると、「拓 也」の前だというのに、今すぐアソコに指を突き入れて掻き回したいと言う欲望に取りつかれるほど感じてしま う。 「ふぁぁ……んくっ………あっ!」  あたしの顎が跳ねあがる。その拍子に水分を吸ったティッシュが指から落ちるけど、あたしの手の動きは停ま らない。それどころか、後ろに手をついて腰を突き出すと、あくまでも割れ目の中心部分には手を触れず、左右 に分かれた陰唇の膨らみを爪の先でくすぐり、クリ○リスの皮を根元まで引き降ろす。ピンッと飛び出てきた赤 い真珠はあたしが触らなくても、股間に漂う熱い空気に触れているだけでも勝手にピクッピクッて震え、子宮の 奥から熱いモノがこみ上げてしまいそうだった。 「あん♪……ね、ねぇ…見えてる? あたしの女の子……さっき拭いたばかりなのに、こんなに濡れちゃってる の……」  スカートから解き放たれたしなやかさとむっちりさを併せ持つ右太股がつま先を床に触れさせたまま、ゆっく りと伸びていく。その中心は淫らな汁できらきらと濡れ輝いていて、それをモロに見てしまった「拓也」は首が千 切れるんじゃないかと思うほど勢いよく頭をブンブンブンと上下に振った。 「じゃあさ……もう一度…あたしの中に入れてみたい?」  ブンブンブンブンブン 「クスッ……いいわよ。あなたとエッチしてあげる。その代わり――」  あたしは姿勢を戻し、すぐ近くに正座していた拓也へとしなだれかかる。緊張の汗が滲む胸板にブラウスに包 まれたEカップの膨らみを押しつけ、口を彼の首筋に近づける。 「あっ…あっ……む…胸が……息がぁ……」  あたしの吐き出す快楽混じりの甘い吐息がうなじに触れるのが男でもそんなに感じるのか、あたしが口を開く たびにビクッと体を震わせる。その反応が何故か気にいってしまったあたしは、胸の膨らみが押し潰れるほど「 拓也」に抱き着いて、体を上下に小さく揺する。そして下でも、お互いに剥き出しの太股を擦りつける。 「ふ、膨らみが…二つ…三つぅ……ううっ!」  段々と顎が上がっていく「拓也」。左右に開いた両腕をプルプルと震わせ、あたしを抱き締めようかどうか悩む 姿が、あまりにも情けない……どうしてこう抱き締めて「今夜は離さないよ」とか言いながらキスの一つもできな いのかしら……でも、そこがなんとなく可愛いんだけど…♪  もう「拓也」の事を自分自身だと考えるのをやめたあたしには、女の子特有の柔らかい体を摺り寄せている相手 はただの気弱で、どことなく母性本能をくすぐる男にしか見えなかった。だからって、あたしもすぐにエッチし たいって言うわけじゃなくて―― 「ふふっ……ここをこんなに大きくしちゃって……そんなにあたしが欲しいの?」 「んんっ!?」  少し右へ体をずらし、「拓也」の腕を胸の間に挟むように抱き着いて、肘から肩へと二つの膨らみで擦り上げる。 「拓也」のまるで女の子のような可愛い喘ぎをあげるけど、しているあたしも胸がグニッと押し込まれてちょっと だけ気持ちよく、パンパンに膨らんだ秘唇の間から愛液がビュクッとあふれ出てきてしまう。  そしてその間に左手は下に――一度出して柔らかくなったはずなのにあたしのオナニーのような後始末を見て、 あたしの手には納まりきらないほど大きくなっている男根の棒を手のひらで包み込み、人差し指と中指で精液を たっぷりと溜めこんでいる精嚢を揉み解す。親指の付け根の膨らみで裏筋に垂れてきている先走りをグリグリと なすりつけ、袋の中の玉を二つ、二本の指でコロコロと弄び、細い指先でシワをなぞり上げていく。 「ちょっ!…ま、まって……それ以上されたら……あうっ!」  あたしの五本の指が絡みついた「拓也」のペ○スは爆発寸前で、さっきからビクンッビクンッと不連続に跳ねあ がり、それに合わせてペ○スが張り詰めていく感触が手のひらに伝わってくる。  ここらが限界と判断したあたしはペ○スの握り方を変え、カウパー線液でベトベトの先端のくびれを人差し指 と親指で作った輪で擦り上げるように激しく扱きたてる! 「こんなにしちゃって……スケベ」  耳たぶに触れそうなぐらいにまで唇を近づけて、「拓也」の耳に甘く囁く。その間にも痙攣し始めたペ○スの射 精口を塞ぐように手のひらを移動させて、指と指の腹を使って大きく張り出したエラの裏側を隅々まで弄りまく る。 「あっ……うあああっ!!」  ビクンッ!!  前触れもなく、「拓也」のお尻が数cm浮き上がり、それと同時にあたしの手のひらの中に熱くてネットリとし た液体が上下左右に暴れるおチ○チンから放たれる。ひょっとすると最初の射精の時は出さないようにと我慢し ていたのかもしれない。射精中もずっと先端を弄っていたあたしの指の間からも飛び出るほど大量の精液は、凄 まじい勢いだったけど床へは一切飛び散らず、爆発しても今度は全然衰えてない「拓也」の肉棒に絡みつきながら 垂れ落ちていく。 「は…はあぁぁぁぁぁ………手でしてもらうだけでこんなに気持ちいいなんて……」  下半身全体を震わせながら最後の一滴まであたしの手の中にはなった拓也は、後ろに手をついて天井を仰ぎ見 ながら荒い呼吸を繰り返している。  だけどあたしはまだ責め手を休めない。白濁に包まれた肉棒に一度視線を落とすと、再び握り締めてヌチャヌ チャ音を立てさせながら手首の上下運動を繰り返す。 「あうううっ!」 「まだ終わっちゃダメ。今度はあたしの番なんだから」  射精したばかりで敏感になっている亀頭部分を何度も擦り立てられて「拓也」がうめくけど、それを気にせず、 あたしは言葉を続けた。 「今度は……あたしがあなたにエッチのし方を教えてあげるんだから……」  あたしの指が「拓也」の開ききった射精口を穿つ。それと同時に肉棒の中に残っていた濃厚な精液が指先に付着 し、あたしが手を離すとしたに向かって弧を描く長い糸を引いて付いてくる。  その糸が切れるよりも先に足元へと移動したあたしは、精液まみれで変な匂いがしていてもソコだけは男らしく そそり立っているペ○スを…精液が髪に付着しないようにかき上げながら、大きく開いた唇の中に飲みこんだ。


第2章「−1」第9話へ