]]]]T.緊縛


「へへへ…いい格好じゃないの、メイドさんよぉ」 「できればもうちょっと足を開いてもらいたいんだけどな〜〜。ちょっとは俺たちにもサービスしてくれよぉ〜 〜、ぎゃはははははっ!」 「胸デカいなぁ。ほんとにこの間まで学生だったのか? いったいどれだけの男に揉まれたらあんなに大きくな るんだろうなぁ。あぁ〜、俺も早くあれに顔うずめてぇなぁ〜〜!」 「む、むぅぅ〜〜〜……」  こ、こいつら……人が動けないからって言いたい放題………  部屋が明るくなった後、あたしのか弱い抵抗も虚しく窓際と二つの和室の中央に位置する柱にあたしは両腕を 上に上げた格好で縛りつけられた。抵抗したんだけど、元男とは思えないほど非力なあたしが大の大人の男性に 効くわけもなく(一番小さい人はひるんでたけど…)、柱の根元に座った状態で動けなくされてしまった。  腕を引き抜こうとしても力を込めても細い手首に縄が食いこむだけ……はだけた胸元を隠す事も乱れたスカー トを直す事もできずに、白い乳房や肉付きのいい太股に男たちのイヤらしい視線が絡みつくのをグッと耐えるし かなかった……  ほんと…これからどうなるんだろう、あたし……まぁ、いつもの事と言えばそうなんだろうけど……  今までにも複数の男性に同時にエッチな事をされた事がなかったわけじゃない……松永先生に騙されて保健室 で学生相手に…痴漢バスの中でオジさん相手に…学園にいた頃は何度か(いやいやながらも)経験しているけど、 今回はそれとはまったく違う気配を感じていた。  もしあたしを犯すのが目的だったらさっきの布団の上でそのまますればよかったはずなのに、電気をつけてか らは柱に縛りつけて動けなくして……まるであたしを拘束する事の方が目的のように思えた。拘束して…一体ど うするんだろう……  ものすご〜〜く…イヤな予感がする……女の子が縛られたら…ねぇ……せめて声さえ出せれば……  当然その辺は相手も抜かりなく、口の中の布切れは今もそのままで喋るどころか呼吸をするのも困難なあたし は軽く酸欠に掛かっているのか頭がぼぉ〜〜っとしていた…それでも男たちの視線から逃れようと必死に太股を よじらせ、身体を右に左にと横に向ける。 「ひゅ〜ひゅ〜、色っぽいじゃねえか。もっとよく見せろよぉ、身体くねらせてさぁ」 「あの胸の揺れ見ろよ、たまんねぇぜ! まだガキだってのに、これから先が楽しみな身体してやがるなぁ!」 「こんな事ならもっと早くに捕まえときゃよかったよな。そしたら毎晩だぜ、毎晩。あのデカ乳でご奉仕しても らえたのに…残念だな〜〜ほんとほんと」  そんなあたしのいやがる動作がお気に召したのか、左右にくねる身体や動くたびに小さく揺れる胸を見ながら ニヤニヤと笑い…… 「なぁ、俺たちばっかり見てるのもなんだと思わないか?」 「そろそろ準備に入るか? へへへ……姉ちゃんにもたっぷり見てもらうか」 「こう言うのは趣向も大事だよな。久しぶりに別の女なんだしよぉ」  そして示し合わせたかのように次々と浴衣を脱ぎ始めた!  や、やだっ! そんなの見せないでよぉ〜〜!!  男たちは浴衣の下にパンツを履いておらず、腰紐を解いただけであたしの目に股間の肌色と黒色が飛びこんで きた!  きゃあああぁぁぁあああああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!! 変態、変態、変態!! うら若き乙女(?)にいきな り何見せるのよ!!………って……あれ? 「おい、どうした? まさか処女でもないのに男のチ○ポを見るのは初めって言わないだろうな」 「違うだろ? 俺たちのデカさに驚いてんだろうぜ。ま、お前は除いてだろうけどな」 「うるせぇ! この女は突っ込まれれば誰だって感じちまうようなエロ女だぜ? 要はテクだよ、テク、な?」  ――って、あたしに聞かれても…………………………でも…ねぇ……  咄嗟に目を閉じてはいたものの、すぐ近くで何か動く気配がすればこんな状況では自分の身に何か起こるので はないかと気になってしまう。そんなわけでちらりと見て…………あたしの中で何か拍子抜けしてしまった…… しかも、おもいっきり。  まるであたしに見せつけるように突き付けているけど、三人の大きさは遙くんどころか隆幸さんや真一さんの 足元にも及ばない普通サイズ。身体の一番小さい男なんて、上を向いているから勃起はしているんだろうけど亀 頭は少し見えている程度な上に、細いし短い、はっきり言って小さい。一番身体の大きい人がやっぱり一番大き いけれど、それでも男だった時のあたしよりも……まぁ…あたしも結構大きい方だったから……  きっとあたしが男性器を見て恥じらったり、今から犯される事への恐怖で怯えるところでも見たかったんだろ うけど、ここ数日は巨根相手ばっかりだったから余計に小さく見えてしまう……だってデデンッ!て迫力がない んだもん、デデンッ!って。  そんなわけで自分たちの欲望にいきり立っている肉棒を平然と見つめるあたしの態度を驚いて動けなくなった のと誤解した男たちに―― 「………ふっ」  ささやかな逆襲にと、鼻を鳴らしながらそっぽを向く。特に小さい人に向かって。 「!! こっ…このアマぁ!!!」  それまで余裕の態度を見せていた小柄な男が顔を硬直させながらあたしに向かってきた。よっぽど他の二人と 比較して自覚していたのか、あたしの態度を自分に向けられた物だと思っていきなり怒ってしまったみたい…… って、それだとあたしが危ないじゃないの!! やだ、あっち行ってよ、暴力はんた〜〜い!! 「待てよ。あんな事で怒るんじゃねぇ。落ちつけって」 「どけっ! こんな小娘がどんなにスカしたって、一発殴られりゃ大人しくなるんだ、あの時みたいによぉ!」  ふ、ふんだ、あたしは殴られたって絶っっ対あんたみたいなヤツなんかに…なんか………あれ?  咄嗟に横から手を伸ばした二人に小男は止められ、あたしの身体に触れる事はできなかった。それでも見開い た目であたしを見つける顔は……何かイヤなものを思い出させる……何かはっきりとは思い出せないけど、厳重 にしまわれた心の奥の方から少し顔を覗かせただけで柱にもたれた背筋に冷たい震えが走るような…… 「へへへ…犯してやるぜぇ…今度もたっぷりと犯してやるからなぁ……一晩中、泣き喚くお前を犯してやる、犯 してやるさ……てめぇの腹の中をもう一回俺のザー○ンで溢れさせて狂い死ぬまで徹底的に犯してやるぁ!!」  ……あの時……今度も……もう一回…それにこの声……何処かで…聞いたような……  男の言葉は前にもあたしに乱暴をした事があるように言っている。でも……そんな事はない…なかったはずな のに……やけに心に引っかかる……その声をどこで聞いたのかを考えつづけるうちに、胸が苦しくなってくる…… 「小林、もういいだろ、いいかげん落ちつけよ」 「くそ、くそっ、くそぉぉぉ〜〜〜!! 泣いても許さねぇ、お前の尻もマ○コも犯しまくってやるから覚悟し やがれぇぇ!!」  身体が小柄な分プライドが高いのか、ほとんど狂気じみたように男――小林が大声でまくし立てる。その声を 聞きながら、あたしは必死で考える、考えて…いた――  今日のトイレの前での……違う、あの時あたしに変な事をしたのは隣の二人で、この人は見張りしてたから……  じゃあ昨日の夕食の時……あの時、あたしにまたがった人って誰なんだろう…あれがこの人?…でも、あの時 あたしは叩かれてない。口の中にビール瓶を突きこまれて服を破かれたけど、その後は松永先生に助けられたし……  じゃあ……いったいいつ…この人に乱暴な事を………あ……あった……乱暴されて…ぶたれた事が……  男たちがあたしに絡んでこない間に、あたしはゆっくりと時間を遡ってエッチな事をされた事を思い出してい った……そして…思い当たる事が一回だけあった。  二日前の…布団部屋……  そう…この声…この声よ。あの時、あたしを押し倒したヤツはこいつだったんだ!  暗闇の中…思い出したくもない記憶……光の指しこまない密室の中で、あたしは何度もこの声になじられ、あ の欲にぎらついた視線に見つめ続けられてたんだ……  不確かだった記憶が全ての符号と一致した事で確信へと変化する。  それと同時にあたしは頭を跳ね上げた。自分の記憶が本当なのかどうか、確かめるために  ――けど…… 「いいかげんにしろ!」  バキッ!  ひっ!……な、なに…いまの……  顔を上げたのはいいけれど、視線が目の前の光景をはっきりと見る前に響いた怒声の迫力に、あたしは思わず 首をすくめてしまった。それは小林って言う男とは別の人の声で、それどころか怒鳴り声が聞こえた後は小男の 喚きは聞こえなくなっていた。  改めて恐る恐ると片目ずつ開けると……あたしにお尻を向けるように浴衣姿の誰かが立っている。ひょっとし てあたしを助けに!?と思わず考えてしまったけど……上げた視線に映ったのはこの人たちの親玉、夏目の眼鏡 をかけた横顔だった。  視線を元に戻すと、あれだけ叫んでいた男が急に黙ってしまったのは何故だろうかと思って前をみると、頬を 押さえて後ろに倒れていた――浴衣がはだけて丸出しになった小さな男根を隠さずに。どうやら夏目に殴られた ようで、唇の端からは赤い血が一筋流れ落ちていた。 「か…かひょう…はんで……」  殴られた際に舌を噛んで上手く喋れていないけど、その顔にはどうして自分が殴られなければならないのかと いう疑問と、いきなりの自体が理解できないと言う困惑の表情が浮かんでいた。 「うるさい。お前が叫んだせいでせっかくのムードが台無しだろうが」  ドカッ  静かな声を発した夏目は足を振り上げて右足の踵で倒れた男の肩に蹴りを入れて後ろに完全に倒すと、そのま ま腹筋の上に足を踏み降ろした。 「たかが小娘だろうが、考えも無しにいちいち騒ぐんじゃねぇよ、だからお前はいつも下っ端なんだ、この馬鹿 が」 「うぐぅ、ぐっ、うっ、す…すみま、ぐぇ!」  なんなのよ…いったい……恐い…ものすごく恐いよ…この人……  怒っている様子も、いらだっている様子も後姿や声色にはほとんど見えない、ただ感情の含まれていない冷た い声で喋りながら一定のリズムで男の腹を固い踵で踏み続ける。そのたびに聞こえてくる男のくぐもった声にあ たしの恐怖心をさらに煽りたてられる……  あたしも……言う事を聞かなかったらこんな目に……  そう思うと、背中に冷たい物が流れ落ちていく…… 「――夏目課長…もうやめてください……それ以上やると小林さんが……」  いつまでこんな行為が続くんだろう……そんな事を考えながら目の前の暴力シーンを見つめていたあたしの横 手から……最初に夏目がいた辺りから女性の声が聞こえてくる。当然その声は……遼子さんしかいない。  恐いが故に目を離すことができなくなっていたあたしはその声で我に帰り、心の中で胸を撫で下ろしつつ、そ してあたしを騙した張本人へのわずかな心の重みを感じながら首を巡らせる。  ……遼子さん………  衣類を一切身につけず、座りこんでいる遼子さんの姿はあたしのイメージにある気弱さそのもののように思え た。肩は疲れたように左右に落ち、顔にも疲労の色が浮かんでいる。あんなに綺麗だと思っていた長い黒髪も色 がくすんでいるようにさえ感じられた……  こんな男たちと一緒にいるんだから、今までもどれだけひどい事をされてきたんだろう……考えてみれば長い 間いっしょに宿泊してたんだから、その間ずっとひどい事をされていたに違いない。それをあたしは全然気付か ずに、そのくせ余計なおせっかいを焼いて……  遼子さん……なんでこんな人たちと一緒にいるんだろ…… 「遼子、ひょっとして俺よりもこいつの方が大事だって言うのか? 一ヶ月も抱かれ続けて情でも移ったか?」 「あっ…いえ……そんな事は………」  振り向いた夏目に睨まれ、怯えながら顔を背け……遼子さんのほうを向いていたあたしと目が合ってしまう。 「んぐっ……」 「あっ……」  それに気付くと、あたしたちは同じようなりアクションを見せながら互いに顔を反対に向けた。  騙されたあたし…騙した遼子さん…一時はそう思ったけど、今は全面的に男たちが悪いと理解しているので、 元々嫌いではなかった遼子さんにはそれほどの悪意はもっていない……それでも目をあわせると言い様のない意 識が胸の奥にわだかまってしまう…… 「……ふんっ」  そんなあたしの様子を眼鏡越しの冷たい眼差しで一瞥した夏目は、ようやく足を下ろしてその場に屈みこんだ。 「おい小林、あの女に手を出したのか?」 「うぇ…げほっ………は…はい……」  夏目の問いに小さな身体を震わせながら男が答えを返した。 「俺が遼子を貸してやった時に面倒事を起こすなと言ったはずだな、忘れたか?」 「い、いえ、ちがうんです、これはあの男が――」 「言い訳はいい。この役立たずの能無しが……さて――」  今までに何度か夏目の話している声を聞いた事はあるけど、ここまで冷たい声は聞いてない……  小林に履き捨てるように能無し韓国をした後、そのあとしばらく黙り込んでいた夏目は、やおら立ちあがると あたしの方に振りかえった。  思っていたよりも迫力のない顔で、怒りも何も表情に浮かんでいない。それどころかあたしを見下ろす顔には 笑顔さえ浮かんでいる……でも目の前で行われた冷酷な暴力を見ていたあたしには、その笑顔が逆に恐い物に思 えてしかたがない…… 「小林、今からこいつの部屋に行って荷物を全部持ってこい。こんな事もできないようだと……」 「わ、わかりました……」  あたしを見つめたまま振りかえらず、まるでそうするのが当然のように命令すると、畳の上にうずくまって動 けなかった男はお腹を押さえながらふらふらと立ちあがり、襖を開けて外に出ていった。 「それじゃあ気を取り直して始めるか。たしか……相原、たくや、だったな」 「……………」  笑みの中でもそこだけは笑っていない、背筋が冷たくなるような目つきをあたしの顔の高さにあわせて覗きこ んできた夏目は、まるで思い出すように区切りながらあたしの名前を呼ぶ。  その行為に身体の芯から湧きあがってくる恐さをグッと我慢しながらうなずくと、目の前の男はレンズの向こ うの相貌を細め、品定めするような眼差しであたしの胸や股間を見つめながら唇の端を上げて小さく笑った。 「……織田、廊下にビールが置いてあるだろ。部屋の中に入れとけ。今から面白い物が見れるから、それで一杯 飲むぞ」 「分かりました。じゃあ俺が最初ですね」 「違う、坂本、お前じゃない。最初にこの女を抱くのは――」  抱く……順番に犯されるのか………どうしよう……何処かに逃げる方法は……  中背の男があたしのそばに寄ろうとしてあたしは身体を縮めて最後の抵抗をしようと身構えるけど、それを遮 るように夏目の声が室内に響く。 「遼子、お前がこの女を犯すんだ。俺たちの目の前で、楽しめるようにな」


]]]]U.脅撫へ