]]Z.事後
「も…だめ……もう…なんも…出ない………ぷはぁ〜〜〜〜〜〜」
俺は全身汗だくの身体を無け無しの全力で起こすと、そばにあったソファーの肘掛の下に背中を預け、足を
投げ出して姿勢を固定すると、首を後ろに倒しながら長い長い息をついた。
頭の先から流れ落ちてくる汗を手のひらでうっとうしく思いながら拭いさり、テーブルの上にあった飲み掛け
のミネラルウォーターに手を伸ばし、キャップを外すと半分以上残っていた生ぬるい水をあっという間に飲み
干した。
「ふぅ……」
肺の中に溜まっていた熱い空気をもう一度外に吐き出す。しかし、入ってくる空気も暖かく湿っていて、あまり
意味は無かった。
そういえば……二人は大丈夫かな?
ふと気になって、首をよっこらしょっと起こすと、あゆみとたくやちゃんは行為の跡そのままに、汗まみれの
見事な裸体を重ね合わせたまま、少し離れた俺のところに聞こえるぐらい荒い息を繰り返していた。二人の
斜め後ろに座った俺からは、好意の余韻でプルプルと震えるたくやちゃんの柔らかそうなお尻や、絨毯の上に
広がる愛液の染みなんかがはっきりと見える。
まぁ……普通ならかなり興奮する光景なんだろうけど……
「ふぅ……」
またため息をつくと、ペットボトルを持ち上げていた腕が脱力して床まで落ち、透明のプラスチックの容器が
手のひらから色あせた絨毯の上をコロコロと転がっていった。
しかし……たくやちゃんは一体なんなんだ? これでも体力には(特にエッチに関しては)かなり自信のあった
んだけど……
はっきり言って俺は女性経験は豊富だと自負している。学生から大人の女性まで、旅館に泊まりにきた女性客
と何回もエッチしてきた。時に客室で、時に林の中で、ボートの上で、温泉でと、時間と場所をほとんど選ばず
にチャンスがあれば(避妊を考えずに)大抵エッチしてきた。今日みたいに三人で…なんて言うのもあったし。
でも、たくやちゃんはエッチに関しては今まで体験したものとはまるっきり別物と言う感じがした。
胸の形や大きさ、張りなんかはそれ以上の人と関係した事はあるし、あゆみだって爆乳である。
だが、股間のアソコは……はっきり言ってものすごい名器である。
俺の大きな息子を挿入した瞬間、収縮したおマ○コに奥へ奥へと誘うように先端から根元まで隙間無くやさしく
包み込まれて、熱い肉ヒダが強く絡みついてくる。その上で強烈に締めつけながら内部がざわめくけど、たっぷり
と潤ってるからそれほど狭すぎる感じもしない。まるで無数の舌に同時に舐めまわされるような快感に、腰を動か
すだけで射精してしまいそうな快感が背筋を駆け上ってくる。これに比べれば、あゆみのおマ○コは締まるだけで、
少し硬い感じさえしてしまう。
ちょっと前までは最高だと思って犯しまくってたのに……上には上がいるもんだなぁ……
最初の処女のような初々しさに、後半の痴女のように肉棒を求める淫らさ。俺が激しく、強く付き捲るたびに
たくやちゃんのおマ○コも………うっ…いかんいかん。
頭の中でたくやちゃんの体内の感覚を想像した瞬間、俺の下腹に鈍い痛みが走る。すでに5・6発は射精して
るので、勃つ元気は無いと思っていた息子が充血しようとしたせいだ。
もう今日は勘弁してくれ……でも、明日から………
「ふ…ふふふ……そうだ…俺は…俺は勝ったんだ……」
別に今だけじゃない。既にたくやは俺のものになったんだから、これからはいつだって――
明日から始まる旅館主人と奴隷メイドの淫らな日々、それが次から次へと俺の頭の中に映し出されていく。
「俺は…俺は勝ったんだぁ!!」
と、勝利を確信するために、起きあがってこないたくやを再び確認しようと顔を上げ――
「どうしたの、隆ちゃん?」
「どうせエッチな事でも考えてたんでしょ……ふふふ♪」
「な…なっ…なぁぁ〜〜〜〜!!」
ど、どうして二人とも俺の目の前にいるんだぁ!? さっきまであそこに、あそこにいたじゃないか!!
完全に気を抜いていた俺はいきなり現れた(俺が気付かなかっただけ?)眼前の二人に完全に虚を付かれた!
「うふふふ♪ そんなにエッチがしたいなら、休憩はもう十分よね♪」
「え?…あぅ!」
俺のものは固くなっていなかったけど、たくやちゃんの手に握り締められて数回扱かれると、見る見るうちに
容積を増し始めた。
「隆ちゃん……大きくなってきた………」
「隆幸さんのエッチ。奥さんの目の前なのに、あたしの手でこんなに大きくしちゃって……ふふふ♪」
「うぅ…だったら、擦るなぁ!!」
さっきまで自分の中に入っていたチ○ポを優しく握りながら、たくやちゃんはカリの裏に、裏筋に、肉茎に、
袋に、軽く、それでいて巧みに指を這わせて、力を無くした肉棒に徐々に活力を与えていく。しかし……俺
には結構キツい。自慢の息子は度重なる酷使で表面が真っ赤になっていて、ある程度までは大きくなった
ものの、いくらたくやちゃんが類い稀なテクニックを持っていても、固くならなくてだらんとしていた。
「もう……隆幸さん、早くおっきくしてよ。これじゃ入れても気持ちよくない!」
「そ…そんな事言われても……もう今日はだめだって……」
「いや。あたしは今すぐエッチな事がしたいの。だから……ね♪」
「う…うん……」
俺のペ○スに元気が無い事でむくれていたたくやちゃんが横を向いてウィンクすると、今度はあゆみが恥ずか
しそうにこっちへ近づいてきた。
「あんまり…見ないでね……」
そう言うと、俺の股間に身をうずめ、早く思う存分揉み回してみたいと思っていたあゆみの柔らかな爆乳が、
俺のチ○ポを左右からやんわりと包み込んだ!!
ズチュ…グチュ…グチャ……
あゆみが胸を寄せ、重たそうに下から持ち上げて前後に動かし始めると、胸の谷間を流れ落ちてくる液体が
挟まれているチ○ポにたっぷりと絡みつき、乳の動きがより滑らかになっていく。
「あゆみ……うぉ!」
「あ…大きくなってきた……気持ち…いいの?」
「あぁ……いいぞ…ぐっ!」
心の中では拒否しながらも、俺の息子は与えられる快感に敏感に反応し、最硬ではないが、それでも十分大きく
なった。しかし、あゆみの乳房を押しのけるように勃起したはずなのに息子の先端すらあゆみの胸の中から出て
こない。
「ねぇ…もっと強くしたほうがいい? どのぐらい力を入れたらいいかわからないから……」
いつも俺が馬乗りになって胸にチ○ポを挟みこまされていたせいで、あゆみは加減がわからず、それでも徐々に
左右の圧力を増し、身体全体を動かして、胸の谷間で固いものを扱いていく。
「うう……い、いや…もういい、やめていいぞ」
「えっ!? それじゃあ……やっぱり気持ちよくなかったの?」
俺の言葉に慌ててあゆみが身体を起こして、疲労感に溢れた顔を覗きこんできた。
「違うって…どんなに気持ちよくても……今日はもう出ないから……ま、また明日、それでいいだろ?」
あゆみの胸から開放された液体まみれの俺のチ○ポは、ビクビクと震えているもののいっこうに射精する気配を
見せていない。確かにあゆみの自分からしてくれたパイズリは気持ちよかったが、それ以上に射精できないモノ
の中で快感が暴れまわって、はっきり言って痛いぐらいである。
「二人とも、今日はもう疲れたから明日か…夜にでもゆっくりと、な、それでいいだろ?」
夜まで時間があれば、スッポンドリンクの十本や二十本飲んででも相手をするが、従業員室には置いてないし……
ここはひとまず引いて体勢を立て直すべし。
そう思ったが――
「「だ〜め♪」」
な…なんで二人そろってそんな事言うんだ〜〜〜!! 俺はもう今日はエッチできないのに〜〜!!
「今すぐエッチしましょ♪ ここはもうこんなに準備万端なんだからぁ♪」
「私も……隆ちゃんには今すぐ気持ちよくなってほしい……夜になっちゃうと…気持ちが変わっちゃうかもしれ
ないし……」
で…でも……
「次はあゆみさんの番ね。隆幸さんのおチ○チンってものすごく気持ちいいから、あゆみさんだったら物凄く乱れ
ちゃうんだろうなぁ……」
「あ…でも私……赤ちゃんが……」
「そっか………だったらアナルに入れましょ♪」
「アナルって………お、お尻〜〜!? だめ、ここは汚いからダメ!!」
「大丈夫。そこにあるコンドームを付ければ関係無いですよ。それに、あたしも何度かお尻で犯されたことがある
んですけど……慣れると結構病み付きになるかも……」
「そ…そうなの? た、たくやくんがそう言うんなら……」
「あゆみさんの綺麗なお尻なら絶対隆幸さんも満足してくれますよ」
「うん……わ、わかった……お尻でしてみる……だから…隆ちゃん……」
「隆幸さん」
「は、はい……」
それまであれやこれやとエッチの仕方を話し合っていた二人がこちらを見る。母乳にまみれた美しい顔立ち、
今にもしゃぶりつきたくなるような乳房、様々な体液で濡れ光る肌……それらを見た瞬間、俺の中で首をも
たげてきたものは――
「「優しくしてね♪」」
――二日前の体験のトラウマだった………
「あぁん! き、キツい!! お尻が、お尻が裂けちゃうぅ〜〜!!」
「そんな事言って……もう根元まで飲みこんじゃったくせに……うふふ♪」
「し…締まる……これがあゆみのアナル……う、おおぉぉぉ!!」
「ひゃあん!! た、隆ちゃんダメェ!! そんな、激し、ああっ、はああ……んっ、はぁ!!」
「あゆみが、尻で感じる、スケベな女だったなんてな!! そら、もっとこうして欲しいんだろ!!」
「んはぁ!! そんな、そんなに、奥に、入って、んんっ!! はぁぁ!! あああああっ!!」
「最高だ!! あゆみの尻の穴は最高だ!! 熱くて、俺のチ○ポに食いついてきて、とにかく最高だぁ!!
イくぞ、このままイくぞ!! お前の尻の中にたっぷりぶちまけてやる!!」
「あ、あ、あ、あ、あ、あぁ、あぁ、ひぃ、はぁ、あぁ、あぁぁああぁあああぁあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「あゆみ…あゆみ…あゆみ、あゆみ、イくぞ、あゆみ!!」
ビュク、ブシュ、ビュル……
「隆幸さぁん…どう? 四つのおっぱいにおチ○チンを包まれた気分は?」
「はぁぁ……や…柔らか……胸が…絡みついてくる……」
「隆ちゃんの……スゴく大きくなってる……」
「はぁ……ほんと……おっぱいの先っぽに…熱いのを感じちゃう……それに…ものすごく暴れてるし……」
「ぐぅぅ……おおおおっ!!」
「出したいんなら出しちゃっていいんですよ。あたしのおっぱいにたっぷりかけて……」
「あ、たくやくんずるい……私も……」
「ま…待ってくれ……お…おおおおおおお!?」
ピュク、ブルッ、ピュッ……
「これが…たくやのおマ○コか……」
「綺麗なピンク色……たくやくん……とっても綺麗な形してる……」
「み…見ないで……そんな…奥まで…恥ずかしい……くぅん!!」
「嘘をつくな。見られてるだけなのに、腰を震わせて愛液をこんなにお漏らししてるのは誰だ?」
「あ…あたし…あたしです! 相原たくや、あたしなんですぅ!! だから、早く入れてぇ〜〜!! もう、
もう焦らされるのはイヤぁ〜〜!!」
「隆ちゃん…ほら…たくやくんのここ……ヒクヒクしてる………」
「いやっ、あゆみさん、見ないでぇ!!」
「そ…それじゃいくぞ………うっ、おぅぅ!!」
「はぁん、はいってぇ、おチ○チンが、入ってるぅ〜〜!!
ピュル…ピュピュ……ピュ……
「ねぇ…隆幸さぁん……どうしたのぉ……早くぅ…早く勃ててぇ……」
「隆ちゃん……もっと…もっとお尻におチ○チンちょうだい……身体が…スゴく火照ってるの……」
「…………………………」
「もう…寝たふりなんかして……だったら…ふふふ♪」
「たくやくん……ボールペンを持ってきてどうするの?」
「これはねぇ……こうするの♪」
グリッ
「〜〜っ〜っ〜〜!!〜〜〜〜っ〜!〜〜〜〜ぁ〜〜〜!!!」
びゅる
「あ…隆ちゃん…射精しちゃった……んん…はぁ…隆ちゃんの…おいし……」
「次はコンドームをつけた指で……ふふふふふ♪」
「隆ちゃんも……お尻の穴で感じちゃうんだ………じゃあ…私もしてみる」
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
ぴゅる………ぴっ……………ぴゅ………………
…………………
……………
………
…
くいっ
廊下を歩きながら、首を右に倒す。
くいっ
今度は左。
ぶるんぶるんぶるん
両肩を動かしてみるとまるで重さを感じないみたいに、軽く腕が回り始める。ついでにブラの中に押し込めら
れたおっぱいも一緒に弾んじゃったり……
「たくやくん、身体の調子は大丈夫なの?」
「あ、はい。もう全然大丈夫みたいです」
「そう。よかった。たくやくんが元気になってくれて」
あたしの身体は、今日の昼に自分一人ではまともに立つ事ができなかったのが嘘のように、思いっきり絶好調。
今なら旅館中に掃除を一人でしても全然疲れないのではないかというぐらいに元気いっぱいになっている。
これって……松永先生の薬のおかげなの…かな?
あの後、どうも意識がはっきりしないまま、あゆみさんとシャワーをいっしょに浴びてたみたいで、ぬるめの
温水を全身に浴びながら、あゆみさんにタオルで汗まみれの身体を擦られて、その気持ちよさに潮を噴いた後
に徐々に目が覚め始めた。あゆみさんに触られてるだけだったのに……微妙な力加減が気持ちよくって……
で、お湯の温かさと相俟って、身体がとろけちゃいそうなけだるさにうっとりとしているうちに、されるがまま
になって――
「たくやくんって……すごく綺麗……」
あちこち触られちゃったり、
「わぁ……私のおっぱいよりも大きいみたい……」
揉まれちゃったり、
「こんなに大きいのに…たくやくんは母乳は出ないの?」
吸われちゃったり、
「ここって……こんな風になっちゃうんだ……お汁が止まらない……」
最後には開かれて覗きこまれながら指を入れられちゃったりして、隅々まで綺麗に気持ちよくさせられて…………
だぁ〜〜!! なんて事を教えてるのよ、隆幸さんは!! 自分の奥さんに…あんな…エッチな身体の洗い方を
教えるなんて!!
――なんて思ってたら……は…ははは………思い出すんじゃなかった……全部思い出しちゃった…はっきりと……
隆幸さんと…あゆみさんと……
「あ……あのね、たくやくん……」
「は、はいぃ? な…なんでしょうか!?」
いけない……変な事考えてたら、声が裏返っちゃった……
慌てて咳をして、喉の調子を整えながら声のした方を振り向くと、あゆみさんは歩みを止め、廊下に立ったまま、
今にもはちきれそうなメイド服の胸元の前で右側の三つ編みの先端をもじもじと恥ずかしそうに弄くり回していた。
アレを…揉みまわしてたのよね……唾液でベトベトになるまで舐めたりもしたっけ……なんだか手のひらにその
温かい感触が……
「あのね……今日は…その……き…気持ちよかったから……」
「えっ?……あ…あの……」
「わ…私……妊娠してから…あんな事はしてなかったんだけど……」
あんな事って………あんな事よね…当然……
「で、でもね! 前はあんな感じじゃなかったの!! 隆ちゃんは私の事、ちゃんと気持ちよくしてくれたし、
他の人ともエッチな事はした事ないの!!」
「わぁ!! あゆみさん、声! 声が大きい!! ここ、廊下なんだから!」
「あ……ご…ごめんなさい……」
感情が高ぶったせいか、急に顔を上げて大きな声で話しはじめたあゆみさんは、あたしに止められると、さら
に顔を真っ赤にして、スカートの端を握りながらまたまた俯いてしまった。
あう……目の前でこんな態度を取られちゃうと、あたしまで恥ずかしくなっちゃうわよ……ここはなんとか
話題を変えないと……
で、目に付いたのが――
「そ、そういえばおっぱいはどうなったんですか?」
……って、ああああああああああ!!! あ…あたしって、もしかしてとんでもない墓穴を掘っちゃった!?
でも、だって、あゆみさんが腕を前にこうギュ〜っとしてるから胸がムギュ〜ってなっちゃって、どうしても
そこに目が行っちゃうんだもん!! あたしが悪いわけじゃ…悪いわけじゃ………え〜ん、あたしが悪いん
ですよ〜〜!!
などと、自己弁護しながら、さらに深みにはまっていく……あぁ…悪循環……
「あっ、あの……私の…おっぱいは……えと…その……た、たくやくんが……んと……いっぱい…吸って…搾って
くれたから……今は…大丈夫………」
「そ…そうですか……それはよかった…あ…あはは…ははははは……」
「うん……あ…またおっぱいが張ってきたら…たくやくんに吸ってもらおうかな?」
「えっ!?」
「あっ!」
あゆみさんが慌てて口を押さえるけど………
…………………………………………………………
………………………………………………………………
………………………………………………聞いちゃった。
………………………………………………………………
…………………………………………………………
さっきまであたしたちの声が響いていた廊下に、まるで時間が止まったかのように無音の静寂が流れていく。
お…重い……空気が重い……あゆみさんも話題を明るくしようとしたんだろうけど……冗談にならないですよ………それ……
「あ………そ、そうだ、時間、あゆみさん、早くしないと夕食の準備の時間が始まっちゃいますよ!!」
「う…うん、そうね、急がないと真琴さんに怒られちゃうね」
「そうですそうです。あたしだって廊下に正座して梅さんの嵐のようなお説教は御免ですよ。さ、急ぎましょ」
「うん♪」
何とかさっきの言葉をごまかして、顔を真っ赤にしたまま再び調理場に向けて足を動かすあたしたち。
で、それでもやっぱり気まずくて、二人とも視線を合わせないように歩きながら、調理場のすぐ近くまで来た時――
「くぉら、タカ坊!! てめぇ、昼からサボって何処で油を売ってやがったぁ!!!」
「あ…あゆみさん……今の声って……」
聞き間違えるはずも無い。ちゃんと女性の声なのに、異様にドスが効いてて恐怖に駆られちゃう怒りの声……
「たくやくん、行ってみましょ!」
「ま、待ってください、あゆみさん!」
怒鳴り声が聞こえてきたのはすぐ近くの玄関の方。あたしたちが廊下にパタパタとスリッパの音を響かせて玄関
に行ってみると――
「こちとら旅館中を探し回ったんだぞ!! おら吐け!! 吐きやがれ!! 仕事も全部あゆみに任せて何して
たんだ!! この嫁さん泣かせのろくでなし男の甲斐性無しが!!」
「ひ…ひはう……はゆみ……いっひょ………」
どう見ても午前中に比べて痩せた上に、吹けば飛びそうなほどに真っ白になっちゃってる隆幸さんが真琴さんに
襟首を持たれて宙吊りにされていた!!
「体調崩してたタク坊はいいとして……従業員の数が少ない上に、あゆみやタク坊が仕事が辛いのはわかってん
だろうが!! そんな時に気合入れずに遊びまわって、どこが主人だ、言えるもんなら言ってみやがれ、こるぁ!!」
「はぅ……ほぉ……ふぇ……」
怒り心頭の真琴さんに身体を揺すられるたびに、宙に浮いた隆幸さんが紙切れみたいにぺらぺらと揺れている。
さすがに……これは助けなきゃいけないよね。原因はあたし……と、あゆみさんのせいなんだし。
そう思って飛び出そうとした瞬間、メイド服の肘のあたりを引っ張られる感触がした。みると、あゆみさんが
摘むようにあたしの服を握り締めていた。
「あゆみさん、隆幸さんが危ない――」
「あ、あのね………また…三人でしようね」
「へ?」
その時のあたしの顔はかなり間抜けだったに違いない……
「……じゃ、仕事に戻ろうか。真琴さ〜〜ん」
突然の言葉にあたしが呆然としている間に、あゆみさんはいつもの笑顔に戻ると、隆幸さんを殺しかけている
真琴さんの方に駆けていった。
あたしはその背中を見送りながら――
あゆみさんって……けっこう逞しいなぁ………
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