エピローグ


「も〜、中には出さないでって言ったのにぃ」 「いや、それは悪いと思ったけど、でもあの状況じゃあ……」 「それに人の事、散々淫乱とかいやらしいとか言って……すごく恥ずかしかったんだから」 「……その割にはお前も楽しんでいたよな」 「何か言った?」 「いえ、別に……」  あれからしばらく身体を休めた私は、向かい合って座っている彼に文句を言っています。 さすがに彼も調子に乗りすぎたと反省しているのか、ばつが悪そうに視線をそらしていま す。  あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。  私の名前は河村 瞳。青城高校の二年生で、演劇部に所属しています。  で、さっきまで私とエッチしていた彼は、同級生の今井 晴彦。私と同じく演劇部に所属 しており、中学の時から交際している男の子です。  彼とは去年に夏に初体験を済ませ、それからも時々エッチをしているのですが、少し困 った事があります。  そう、今回のようなコスプレ(?)エッチです。  最初にしたのは去年の冬。その時は、単に体操服を着てエッチしただけだったのですが、 どうやらそれが彼のツボにはまったらしく、今ではかなり頻繁にそういうエッチをしてい ます。  しかも最近では、演技の練習だという名目で、細かい設定までつけてくるのです。  もちろん彼の作る設定など、実際の演劇ではできるはずもない、いやらしいものばかり です。しかも毎回違う設定、よくもまぁネタが尽きないものだと感心すらしてしまいます。 「うぅ……」  ジト目で睨まれている彼は、私が放つ無言のプレッシャーに押されるように、うめき声 を出しています。先ほどまでとは、完全に立場が逆転した形です。  とは言え、私もさっきみたいなエッチが嫌いなわけではありません。むしろ普通のエッ チよりも興奮できるので、今更なくなるのも困るというのが本音です。今日も最後まで楽 しむために、できるだけおねだりを我慢したのですから。それに中出しも、ちゃんと危険 日とかは調べているので、それほど心配もしていません。  だから私は、彼を調子に乗らせないように不機嫌そうな顔をしながらも、ちゃんとその 辺りの気持ちもまじえながら自分の要望を告げました。 「もう、本当に反省しているんだったら、次は優しくエッチしてよね」 「あっ、あぁ! ちゃんと次はお前の望むようにするよ!!」  途端、身を乗り出してくる彼。  その顔には、許してもらえたという喜びと、次々回のエッチに対する期待がありありと 浮かんでいました。  次は優しくする。  これは裏を返すと、次の次はまた今回のようなエッチをしてもいいという事です。それ が先ほどの私の言葉に込められた、本当に意味です。  はたして彼が、私の本当の気持ちに気付いているかは分かりません。が、ぱっと見では 全然気付いておらず、私の言葉尻を取ったと思っているような顔です。  もちろん、それで構いません。彼は次々回のエッチまでに、私の望みどおり、また面白 いシチュエーションを考えてきてくれるでしょうから。  さて、それじゃあその時まで――もちろん、次回の優しいエッチも含めて――、またい つもの楽しい日々を過ごしましょうか。


<完>