第四話


「質問を続けるよ。君はオナニーする時、何をオカズにするのかな?」 「え、オカズ……ですか?」 「そう。君はオナニーする時、何を見て興奮しているのか、って事だよ。例えばエッチな 本とかね」 「あ、それは……」  今まで少し詰まる事はあっても、即座に質問に答えてくれていた彼女だが、久々に答え に窮している。  この態度と今までの答えから考えると、彼女のオカズは秋月 由香里で間違いないと思う。 だが、さすがに先輩になるかもしれず、しかも憧れていると言った人をオカズにしている とは言いにくいのだろう。さて、どういう風に答えてくれるかな。 「あ、あの、好きな人の事を考えてオナニーしてます……」 「好きな人?付き合っている人はいないって言っていたけど、片思いなのかな。それとも 単に憧れているだけとか?」 「どちらかと言うと、憧れている人です……」  できるだけあいまいな答えを返してきたけど、視線の動きなどから彼女が動揺している 事がうかがえる。失敗を隠している子供のような不安そうな目をしている彼女は、幼げな 容姿とあいまってボクの保護欲と被虐心をかきたてる。  こういったばれるかもしれない隠し事をしている時の苦しさというものは、ボクもよく 分かる。早めに解放してあげるとしますか。 「憧れている……ねぇ。ひょっとして君がオカズにしているものって、由香里ちゃんに関 係しているのかな?」 「えっ、なんで分かったんですか!?」  さっきまでのおどおどした表情から一転、目を見開き、驚きを隠す事すらできなくなっ ている。そしてまたすぐに、自分が憧れの人をオカズにしていた事を告げた事に気付き、 恐怖と羞恥の入り混じった複雑な表情となる。  こういう表情を浮かべるだろうとは予測していたけど、ボクが見たい顔ではない。ボク が見たいのは、羞恥や快感の表情だからね。とにかく質問を続けて、恐怖を取り除いてあ げなきゃ。 「なんで……って半分ヤマカンみたいなものだったんだけどね。そうか、当たっていたん だ。それってやっぱり水着の写真とかを見て、興奮してオナニーしちゃうのかな?」 「……はい、そうです。雑誌や写真集に載っている水着の写真とか、あと秋月さんがミニ スカートで躍っている所とかを見たり思い出したりして、私オナニーしています……」  恐怖こそ消えたものの、どこか諦めたような表情と口調で質問に答える彼女。そこには 最初の頃に見せてくれていた、少女らしい恥じらいは感じられない。もうオナニーに関す る事で、隠し事はしないみたいだ。まぁ既にほとんど聞いてしまっているんだけどね。  とは言え、こんな落ち込まれた状態で面接を続けても面白くは無い。まぁもう少し聞い ておきたい事もあるし、とりあえず質問を続けようか。 「そうかい。じゃあ今回の面接用に送ったあのビデオでも、君はオナニーしたのかな?」 「あ、はい。特にあのビデオを見てると、その、いつもよりエッチな気持ちになってきて、 何度もオナニーしました」 「そうかい。あのビデオ、何回くらい見たのかな?」 「詳しくは思い出せませんが、十回以上は見たと思います」 「そうかい。じゃあ君は十回以上、あのビデオでオナニーしちゃったんだ」 「はい、そうです……」  ボクが言っているビデオとは、秋月 由香里のプロモーションビデオだ。これは前回の面 接終了後に彼女に送ったもので、今回の面接でそれに関する試験が出るので、よく見てお くようにとしていたものだ。  それは一見市販されているものと同じビデオだが、実は随所に淫らな映像と文字をサブ リミナル的に入れており、催淫効果を持たせている。彼女が普段よりいやらしい気持ちに なったのも当然の事だ。それにその効果はある程度の持続性を持っている。十回以上見て くれたんだったら、今日もまだその淫らな熱を残していると見ていいだろう。    さて、充分に彼女のオナニー癖と、あのビデオを見ていてくれた事は分かったから、そ ろそろ彼女にやる気と羞恥心を取り戻してもらいましょうか。 「なるほどね。ところで新藤さん。さっきから暗い表情しているけど、それがもしさっき したオカズの質問のせいだとしたら、気にしなくていいからね」 「え?」 「時々ああいう質問をするんだけど、君みたいに答える女の子って結構いるからね。だか らそんな事で落としたりはしないよ」 「本当ですか!?」  ボクの言葉に、彼女が身を乗り出すようにして聞いてくる。その表情には今までの暗さ は無く、安堵と希望に満ちている。  どうやらやる気は取り戻してくれたみたいだね。それじゃあ羞恥心の方も取り戻しても らおうか。 「本当だよ。まぁ芸能界で活動するには不利かもしれないけど、そういうのは慣れもある からね」 「慣れ……ですか?」 「そう。君、恥ずかしい姿とか肌の露出を見られてエッチな気持ちになっちゃうんだろう。 露出狂みたいに」 「え!?ど、どうして……」  全く予想できなかったであろう言葉を投げかけられ、彼女は戸惑いを隠すことすらでき ない。だが、同時にその表情には先ほどまでは感じられなかった羞恥も滲み出しており、 頬を赤らめている。うんうん、やっぱり女の子はこういう表情じゃなくっちゃ。 「どうして……って違ったのかい。ボクは君が由香里ちゃんの写真やビデオを見て、もし 自分がこういう風に水着姿を大勢の人に見られたら……っていう想像をして、エッチな気 持ちになったんだと思ったんだけど、違ったかな?それともまさか、単に由香里ちゃんの そういう姿を見てエッチな気持ちになっちゃったの?先輩になるかもしれない人なの に?」 「あ、それは……」  我ながら強引な理屈だが、それを聞いた彼女は一層顔の赤みを増しながら俯いてしまう。 どうやらボクの説明に対し、どう答えるか考えているようだ。  それも無理は無い。今のボクの説明では、秋月 由香里という人間をオカズにしていたら、 マイナス評価を下すと言っているようなものだ。かといって、自分が露出癖を持っている と答える事も、女の子として以前に人間として抵抗を覚えてしまうだろう。しかも実際に 見られなくても、想像するだけでいやらしい気持ちになるなど、かなりの変態と言えるか もしれない。  だが、彼女はこのどちらかを答えなくてはならない。憧れから遠のく答えを取るか、そ れとも自分を貶める答えを取るか。  そんな事を考えているうちに、彼女の答えは決まったようだ。目元を赤く染めながらも、 しっかりとした意志を宿した表情で口を開いた。 「はい。私、自分が秋月さんだったら、って思いながらオナニーしていました」  当然ではあるが、彼女は自分を露出狂だと認める答えを選んだようだ。俯いてボクから 視線をそらしたいのだろうけどそれを必死にこらえ、恥辱に耐えながら言葉をつむいでい る。  それほどまでに彼女はボクのところに来たいのだろう。その事に感心しながらも、ボク はさらに彼女を辱める言葉を言い続ける。 「そうかい、やっぱりね。じゃあ新藤さん、プールとかで水着着た時とか、エッチな気分 になったりするの?」 「は、はい、そうです。私、そういう姿見られただけで、いやらしい気持ちになるんです」 「なるほど。それで、具体的にはどうなるのかな。想像だけでエッチな気持ちになれるん だから、実際に見られたらどうなっちゃうのかな?」 「それは……その、大勢の人に水着姿を見られて、ち、乳首が硬くなったり、アソコが疼 いたりします……」 「ふぅん。じゃあ泳がなくても、水着が濡れちゃったりするんだ」 「っ、はい……見られただけで、アソコを濡らしたりもします……」  もちろん彼女の言っている事は本当の事ではない。  だが例えそれが全くのウソだとしても、彼女の感じている恥辱は今までの比では無いだ ろう。何せ自分が公共の場で欲情していると告げているのだ。年頃の女の子にとって死ん でも認めたくないであろう事を、自発的に言わなければならない。そんな羞恥と屈辱で真 っ赤に染まった彼女の顔を見て、ボクは自分の目論見が上手くいった事を確認した。  そしてもう一つ。彼女は本当は認めていなくても、自分の口で見られる事で感じると言 ってしまった。それは、あの催淫ビデオを見続けた彼女の深層にも作用するだろう。今後 の試験を楽しむためにも重要なことだ。  まぁとにかく、これで質問は終わり。そろそろ次の試験に移りますか。


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