■第四話


街中で全裸の公開オナニーをやってしまってから1週間。
軽くトラウマになってはいるものの気を取り直して元の生活を送っている。
中和剤を飲んでからは体が急に疼きだすことも無く、なんの変哲も無い日々が過ぎていた。

「んー・・・」

学校も充実しているし、望にはキツめのお灸を据た。現状に不満はないのだが。

「体が寂しい・・・」

薬のせいではない。欲情するのではなく、人肌が恋しくて切なくなる事は以前からあった。
そんな時、いつもは軽めの自慰をして鎮めるのだが、

「・・・・・・・」

それをしようとすると、望に襲われた事や公開オナニーが頭を過ぎる。
なんとなくその気になれず、欲求不満を無理矢理押さえ込んでいた。



「体調が悪いんですか?」

休日の午後、望に呼ばれてお茶をしていると、突然そう訊かれた。

「そんなことないよ」
「でも最近元気無いですよ?」

望のせいで散々な目に会ったのに、今でも仲は良い。
まあアタシの自業自得な部分も無いではないし、その辺は気にしない事にしている。

「ちょっと調べてみますか」
「う・・・・いや、いい。遠慮する」

また怪しげな薬でも飲まされたらたまったものではない。

「大丈夫ですよ。体調を調べるだけで体にはなんの影響も与えませんから。私も毎朝の健康チェックに使っています」

そう言って取り出したのは聴診器のような物が繋がった機械。
言うが早いか、望は聴診器をアタシの額にペタリとあてた。まだ心の準備が!

「はい、完了。あとはモニターに表示が出ますので」

もう終わったらしい。いらぬ心配だった。
モニターに『解析中』と表示され、それが消えるといろいろな表示が流れた。

体温:36.6 平熱
脈拍:80 正常
血圧:120、83 正常
 :

我ながら健康体のようだ。
先週の事で気分的に少し落ち込んでいるだけだろう。多分。
やれやれと溜息をつきながら紅茶を啜る。

2週間の自慰回数:6回
内訳:2/30、5/68、5/62、5/67、5/75、6/82(日/快感値)
欲求不満度数:86%

ぶっ!!
表示された文字を見て吹き出した。

「快感値82なんて凄いですね、平均で30〜40程度なのに」
「ちょっと! 何よソレ!?」
「でも私と体を重ねた時より衆人監視での自慰の方が上なんて・・・」
「そんな事まで知ってるの!?」
「お姉さまの事で私の知らない事なんてありません」

体に小型の発信機でも埋め込まれてるんじゃないかと少し怖くなった。

「そんな事より欲求不満が高過ぎです。禁オナニーも度が過ぎれば体に毒ですよ?」
「だって・・・・」
「確かにある程度我慢した方が快感も増しますけど」
「そんな理由じゃないわよ!」

一体誰のせいだと思っているのか。
・・・・まあ透明になって調子に乗っていたアタシも悪いけど。

「なんにしてもあまり我慢はしないように。コレを使いましょう」
「嫌よ。何出されても飲まないから・・・・!?」

望が出したのは薬ではなく、昔のアニメにでも出てきそうな光線銃のような物だった。
嫌な予感しかしない。

「何ソレ?」
「百聞は一見にしかず」

ビビッ

身の危険を感じて咄嗟に避けた。
光線は壁に当たったが焦げ目などは付いていない。

「ちゃんと当たって下さい!」
「ヤダってば!」

アタシは脱兎のごとく部屋から逃げ出した。
自分の部屋も危険そうなので(合鍵くらい作っていておかしくない)外へ逃げる。

「待って下さい!」
「待つもんですか!」

当然望も追ってくる。
全力で逃げていると、追いつけない事に焦れた望は光線銃を連射してきた。

「うわわわっ!?」

必死に避ける。と、その中の一発が通りすがりの女の子に当たってしまった。

「きゃあ!」

小さく悲鳴を上げてその場にへたり込む女の子。

「何なのよそれは!」
「当たってみればわかります!」

ビビビビビッ

次々に撃たれて避けきれなくなり、ついに一発が体に当たってしまった。

「ひゃああ!?」

なにこれ・・・気持ちいい・・・

「この『アクメガン』に当たれば誰でも一撃で絶頂させられるんですよ」

得意気な顔で望が言う。そんなモン作るな!

「さあ、存分に欲求不満を晴らしてください」
「ちょっ・・・待って待って!」

それほど人通りが多い場所ではないがそれでも通行人がちらほら見える。
ここでイキまくれと? そりゃ前の全裸オナニーよりはマシだけど!

カチ!
・・・・・・

「あれ?」
「おかしいですね。電池はまだ残ってるのに」

どうやら壊れたらしい。それなら安心。

「このっこのっ、肝心な時に!」

ガンガンガン!
乱暴に銃に拳骨を喰らわせる望。

「あはは、もう諦めなって」

ガン!
ビビビビッ!

「きゃああああああーーー!?」

突然、銃から光線が迸った。

「あああっ・・・・ちょっ・・止め・・・・っ!」
「あれ? 今度は止まらない」

ビビビビ・・・・

「あああっ、横っ・・・・せめて横に向けっ・・・・ちょっ・・・ああっ!」

絶え間なくイキ続けて動けない上に声もろくに出せない。

「どうなってるの? もう!」

ガン!
ズビビビビビビビビビビッ!!

「ふああああああああああああーーーーーっ!!!」

目が眩むくらいの光を浴びて、アタシは頭の中が真っ白になるくらいの絶頂を感じた。
しかしそれは一瞬ではなく延々と私を攻めつづける。

「あああああっ! ちょっ! 止めっ! 止めてえええっ!!!
「完全に壊れちゃったかな・・・」

アタシの要求を無視して銃をいじる望。
銃がこちらを向いたままなのは狙っているのか偶然なのか。

プシュ〜・・・

「あ、止まった」
「はふぅ〜・・・・」

ようやく解放されてアタシは気を失った。



気が付くとアタシは望の部屋で寝かされていた。

快感値:102
欲求不満度:1%

「おお、100超え! 欲求不満も解消されたようで何よりです」
「あんたねえ・・・」
「あ、アクメガンはもう直りましたよ。充電も完了して新品同様です!」
「ふーん・・・・」

机の上にそのアクメガンが置かれていた。

「そろそろ晩御飯の時間ですから食べて行ってください。今準備しますね」
「あ、ちょっと待って」
「はい?」

ビビビビビビビビビ!

「ひゃああああああああああーーーーーー・・・・・」

望の嬌声はそれから数分間響いていた。