はじめての露出ー伊吹頼子ー


 伊吹頼子は自分の名前が嫌いだ。

 親は「頼りになる子」になって欲しいと願いを込めて「頼子」とつけたらしいが、捻りが無い……と言うか直球すぎやしません? お父さん、お母さん?
 今時名前に「子」がついているのも好きになれない。全国の「○子さん」には申し訳ないが、あくまで頼子本人としては古臭く感じてしまう。周りを見れば「凛」やら「優愛」やら「藍那」など皆今風の名前ばかりだ。なので仲のいい人には「ヨリ」と、それ以外には苗字でしか呼ばせない。
 まあ、「名は体を表す」と言う言葉があるように、頼子は自分でも「頼もしい子」だと思う。勉強も学内10位に入るし運動神経も抜群、去年の陸上部の大会で県内2位の成績を収めた。顔は学校でもベスト10には入っている自信はある。(非公式!)。どれもまだ1番は取れていないが、いずれは全て1番になるつもりだ。
 無理かもしれないが最初から諦めていたら出来るもの出来なくなるし、努力しがいが無い。小さい頃から嫌いな名前であるだけに、それに負けない様努力を続けている。
 そのせいか、常に「優等生」タイプとして周りから見られるが、その通りだと思う。逆に自分が優等生でなければ、誰が優等生だと言うのだろう? でしゃばりだの口うるさい、目立ちたがり屋などの声も耳にするが、女子だけに限らす男子を含め、教師まで学校内で頼子の顔と名前を知らない人間はいない。


 勉強にしろ、スポーツにしろ結局自分の為に役立つものだし、「優等生」で在ることも苦に感じたことは無い。少々自惚れにすぎるかもしれないが、伊吹頼子はそんな「何処にでもは居ない」人間であると自負しているし、そうあろうと努力をしている。


−*−


「さすがに……ちょっと勇気がいるなぁ……」
 誰に聞かせるでも無く頼子は呟く。
 場所は夜の公園。見渡す限りでは人影は無い。公園へと続く道には一定の間隔で街灯が設置されているが古いのか薄暗く、光が消えているものまであった。公園内にも街頭はあるが、入り口付近をぼんやりと照らすだけで、薄暗い夜の色に染め上げられている。住宅街であるこの場所は、近場にコンビニ位しかなく夜11時をまわればほとんど人道りは無い。
(昼と夜では随分印象が変わるなぁ……)
 子供の頃はお気に入りの場所だった筈なのに、あれから何年と経っていない今は学校帰りに横切るぐらいだ。夜風が短くカットされた髪をなびかせ、少々ノスタルジィに浸りながら震える身体を両手で抱きしめる。
 夜とはいえ8月の夜はまだまだ暑い、頼子の身体の震えは寒さから来るものでは無い。
 こんな夜更けに、しかも水色のタンクトップにデニムのミニスカートと言う自分にしては大胆に肌を露出した格好でこの時間に外を出歩く、しかも1人で。
 今までに無い体験が頼子の身体を震わせていた。
(なのに……こんなに震えているのに……)
 震える身体に反して身体の芯が熱く火照る。
 これからする事への期待と不安は頼子に初めて陸上の公式大会に出場した時の事を思い出させる。
―――全てが一発勝負のあの緊張感……。
 ドキドキと早めの鼓動を刻む心音に、小さめながらもしっかりと丸みを見せる乳房を波立たせる。眼下に見える胸の隆起は身体にフィットするタンクトップによって、必要以上にラインを強調させられている。あまりにも露骨に身体のラインを引き出すので友達とノリで買ったはいいが、一度も着たことのないままクローゼットの奥に終っていた物だ。
(うわぁ、あまり大きくないのに……こうやって見るとなんかヤらしい……それに……)
 クラスでも大きい方では無いお饅頭サイズの胸は、ぴったりと張り付いた生地に形を浮かべて、頼子の呼吸に合わせて微かに上下する。
 押し上げられた胸の部分は、このような服を着るのであれば当然考慮すべき、頼子の小指大の先端の形までくっきりと浮かんでいる。
 生地への密着度が高いので、身体を動かすたびに少々大きめの乳首が肌触りのいい生地に擦れ、むずむずとした刺激は胸からお腹の下へと伝わっていく。
(誰かに見られたら……ノーブラなのが絶対わかっちゃう)
 人影の無い薄暗い夜の公園で頼子は頬を朱の染めながら、それでも見せ付けるよう堂々と公園内へと入っていった。


 頼子は優等生であることを苦に感じたことは無い。それでもやはり日々のストレスは溜まる。完璧であればあろうとする程、小さく細かいストレスが発生するものだ。
 そんな頼子が覚えたストレス解消方法が自らを慰める事だった。
 頼子は特に意識しない内から自分を慰めることを憶えていた。早熟で性の目覚めも早かったのだろう、随分小さな頃から触れば気持ちよくなれることを何となく分かっていた。
 それがオナニーと呼ぶ行為だと知ったのは小学校高学年で、中学校に進学すると自分の指で絶頂することを覚えた。イライラが溜まれば溜まるほど回数も増え、どんどんと激しくなり、いつしか絶頂に至るまで止められなくなってしまった。
 今ではストレスに関係なくオナニーをする事が日課になってしまい、さすがにこんな毎日続けているとマズいのでは? と本気で心配したが生真面目な頼子は没頭しても必要な事を疎かにする事は無く、逆に勉強もスポーツも順調に記録が伸びていったが、さすがに最近マンネリ気味は否めない。
 そう思いながらも入学祝いに買ってもらったPCで夜な夜なネット上でオカズを探してはお気に入りのサイトを見ながら絶頂を迎える毎日を繰り返していたある日、今まであまり興味の湧かなかったジャンルをふと覗いたことがこうして深夜の公園へ出かけるきっかけとなった。
(羞恥系…って……そんな趣味は無かったんだけど……)
 あるサイトで見た露出系のお話を見ているうちに、あるキーワードが頼子の頭に引っ掛かり何日経っても残ったままだ。
―――開放感。
 自分でも時々息苦しいなぁ…と感じる生き方ではあるが、別に開放されたいとは思わない。ただ「開放感」と言う言葉が頼子の頭にこびりついて消えないのも事実だ。


(何事も経験!)
 無駄な経験など無い、が頼子の持論だ。
 それに興味を持ってしまったのであれば仕方が無い、何日も思い悩んで時間を無駄にするより―――
(実践あるのみ!)
 頼子にしては少々思慮に欠けるが試してみなければ止まらない。
 ノーブラで外へ。この時点で頼子にとっては充分羞恥であったのだが、わざわざ外に出るのだ、もうワンステップ行ってみたい。
 ゆっくりと重い足取りで公園を歩く頼子。視線の先には彼女には少々小さすぎる滑り台のついた遊具がある。
(懐かしいなぁ……小さい頃はよくここで遊んでたっけ……)
 無邪気に遊んでいた頃の自分を思い出すと頬がほころぶ。しかし、今から自分が使用としている事はある意味、楽しかった頃の思い出を冒涜する行為なのかもしれない。
 昔はあんなに遊び尽くせぬ程に広く感じた場所は、今の頼子にとって何の変哲も無い普通の公園にしか感じない。
(成長した…ってことなのかな……)
 何となく寂しいものを感じながら、頼子は自分の背丈程度しかない小さな滑り台を登ると、高めになった視点から公園全体を見渡す。
 人影は無い、少なくとも見る限るでは。付近の家を見ても明かりの点いてる窓にはしっかりとカーテンが降りている。熱帯夜だ、どの家でも締めきってクーラーを使っているのだろう。
 頼子は大きく深呼吸すると立ったまま、両手をスカートの中へ入れ大事な箇所を隠すショーツの両端に指を掛ける、わずかに汗ばんだ太ももへ指が触れ、どくんどくんと自分の心臓の音か体内に木霊している。
(想っていた異常に緊張するぅう!! これは…何も考えずに一気にいかないと……)
 指に感じる頼りないショーツの感触。自分の部屋ならいざ知らず、野外で下着を脱ぐと言う行為にここまで緊張するものかと頼子はからからになった喉奥へと無理やり唾液を送る。
 ごくんっと、自分の喉が鳴る音が聞こえたのをきっかけに、何も考えない! と自分に言い聞かせ、勢いよくショーツを下ろして、手早く足首から抜き取る。わずかにまくれ上がったスカートを急いで元の位置に戻すが、肌に夜の空気を直接感じて頼子は身体を強張らせた。
(脱いじゃった………)
 ぼんやりと熱に浮かされたように火照った頭が、まるで他人事のように今の状況を分析する。夜の公園で若い女がわざわざ目立つように滑り台に立ってショーツを脱いだ。下半身を締め付けるモノの無い、頼りない感触に足先から頭まで震えが駆け抜けていく。
「はぁ………ふぅううう……」
 新鮮な空気を肺に送り込み、火照った頭を冷やそうと大きく息を吸うと、右手に握られたままのショーツに気付き、慌ててまだ温もりの残るそれをポーチへと隠した。
「あっ……」
 その瞬間、何処か現実感の無かった自分の行動をはっきりと自覚した。
 公園内の一番目立つ場所でわざわざショーツを脱いだ。
(変態だ……)
 身体から熱い汗が噴出す。どくどくと全身の巡る血流の音まで聞こえている気がする。寒さでは無く、緊張と興奮に身体を震わせながら頼子は背筋をぴんっと伸ばして再び滑り台の上から全体を見渡す、先ほどと風景はまるで変わらないのに何故か新鮮に見える
 変ったのは風景では無く、頼子自身。
(もし…今パンツを脱いだところを誰かに見られていたら?)
 頼子にとって最悪のパターンを想像する。
(きっと、最低の変態ってクラス中…ううん、学校中に広まってしまう。私が今まで積み上げてきたものが全部……こんな変態行為の所為で無くしてしまうんだ……)
 絶対に避けなければならない事態を想像すると下腹が熱くなり、荒い呼吸に合わせて秘部内の肉は、まるで何かを求めるよう収縮を繰り替えす。
(私……濡れてる?)
 ずくんっと疼くお腹の感じは自分を慰めている時に感じる興奮の証だ。
 触れば…今なら誰も見ていないのでスカートの中に指を入れればわかる、―――そう誰も居ない。
 ぷっくりと先ほどよりはっきりと布地を押し上げる乳房を震わせ、頼子はスカートの両裾を掴んでゆっくりと持ち上げていく。
(私……何してるんだろう?)
 濡れているのを確かめるのであれば、スカートを持ち上げる必要は無い。それどころか目立つ滑り台の上で確認する必要は無い。目的は達成したのだ、危険な火遊びは終りにして公園内のトイレや、自室に戻って確認すればいい……のに頼子は見せ付けるよう滑り台の上で完全にスカートを捲くった。
 自分の目で秘所がどうなっているか確認する勇気が持てないまま、スカートの両端を持ったまま、ただ立ち尽くす。
 暗い公園内で、大事な部分が見えるほどスカートを持ち上げたままの少女の斜め前で、突然ガサリと音が聞こえた。
「ひっ!!」
 頼子の喉から小さな悲鳴が漏れる、慌てて向けた視線の先に動くものは無い。おそらく風に揺れた木々の音なのだろう。緊張のあまり口内は水分を失っていた為、大きな声を出せずに済んだのは幸いだった。
「はっ…はは…ふぅ……」
 安堵のため息と共に気付かぬうちに笑っていた。
(おかしくなっちゃったのかなぁ? 私。今の音……誰かに見られたと思ったのに……何で隠さなかったんだろう?)
 いまだスカートを持ち上げたままの両腕、緊張のあまり固まったままだったのか……それとも――。
(誰かに見られるのを期待した?)
 突然浮かび上がる馬鹿な考えを、首を振って否定する。そう、これはあくまで興味本位であって、
(私は露出趣味なんて無い!)
 自分に言い聞かせながらも、滑り台の上でスカートを捲くったまま動けない頼子の太ももをむずむずとした感触が伝う。
 わずかに広げた足の付け根からどんどんと溢れる濡れた感触は確認するまでもない、秘唇から滴る頼子の愛液だ。
(何で!? ……あの時?)
 物音がして誰かに見られたと思った瞬間、お腹からお尻に駆け抜けたような感覚。
 今思えばあれは「快感」だったのだろう。あの瞬間を思い出すだけで身体か震えて、滴る愛液の量が増える。
 頼子は呆けたように宙を見ながら足が崩れないよう何とか踏ん張っているが、まるで痙攣しているかのようにがくがくと震える両足に力が伝わらない。
(だめぇ……!!)
 力が入らないのは足だけではない、足の震えは瞬く間に全身へと伝わり頼子は顎を跳ねあげて声にならない嗚咽も漏らす。気を抜けば崩れ落ちそうな中、呼吸をするように収縮と弛緩を繰り返す膣内部だけは、力強く何かを求めるように次々と愛液を滴らせて口を開いている。
(はぅっ!!!)
 かくんっ! と膝の力が抜けて腰が落ちる。慌てて震える膝に力を込めると後ろにお尻を突き出したような情けない体勢だが何とか硬い感触の床にお尻を付けずには済んだ。
(やだ…この格好って……)
 あまり体験した事は無いがまるで和式のトイレで用を足すような格好。しかしトイレであれば無様な姿を隠してくれる四方の壁があるが、今の頼子は自分だけの淫靡なステージの上だ。壁どころか公園内で一段高い滑り台の上。本来隠されるべき場所は自らショーツを脱ぎ、スカートを持ち上げて晒している。
(今……もし誰かが通ったら……)
 身体が固まったように動かない。今誰かが後ろに居たらまだ肉付きの薄いお尻どころか慎ましく口を開いて粘液を滴らせる秘唇、自分でも見たことすら無い排泄に使用する窄まりまで見られてしまう。
 汗ばんだ肌全体を羞恥の紅に染めながら、いやいやと首を振りつつも体勢は突き出すようにお尻を高く持ち上げる。
 腰を頭よりも高く上げお尻を上へと突き上げる体勢。
 太ももを伝い、足首まで濡らす愛液はその量を増し、持ち上げた秘所から直接床へと水滴となって、ぴちょん…と水音が頼子の耳へと届く。
(何で……触っても居ないのに……こんなに濡れているの!?)
 絶頂の感覚は知っている。でもそれは指で刺激を続けた末の快感だ。今、頼子が味わっている恥ずかしさに身を焦がす感覚は知らない、しかもそれはもどかしくはあるが、快感となって全身を疼かせる。
 触れてもいない膣内部が蠢き、下腹の奥が少し重くなった感覚も今まで感じたことは無かった。
 本人の自覚が無いまま、着床を求める子宮が少しでも多くの子種を受け入れようと降りてきたのだが、子種どころか肉棒すら迎え入れた事の無い膣内に喪失感と欲求を燻らせて膣内部の柔肉が蠢く。
「……! …… !!! ぎぃっ!!!」
 自らの子宮に強制的に発情させられながらも、快楽を求める本能は更なる刺激を頼子の理性に求めてくる。
「こんな…かっこで! ……こんな…ところで!! ……オナニーなんて…ただの…変態じゃないのぉ……っつ!!」
 自分に向かって叱咤する。本当ならばスカートを離し、自由になった指をそのまま内部へと侵入させたい―――が、伊吹頼子は「頼もしい子」であると同時に「負けず嫌いの意地っ張り」でもあるのだ。
 今回はあくまで「露出とやらを試してみよう!」と決めた。それ以上の行為は自分に負けたと感じる。
―――負けるのは嫌いだ、他人にも、自分にも。
 止まらぬ愛液を滴らせながら、快楽を求め子宮を疼かせる本能に理性が牙を立てる。
「くっううう!! はぁ! はあぁがっ! あああ!!!」
 戒めの反動に全身の神経が鋭敏になる。
 触りたい! 触ってはいけない! と相反する想いにいつもの数倍に跳ね上がった性感は、乳首に感じるざらざらとした布地の感触を、まるで指で転がしているように強い刺激へと変える。濡れそぼった恥丘も同様、ひんやりとした夜の空気を感じるだけで、自らが触ったときのような甘い痺れを感じてしまう。
(家に……帰ろう…、自分の部屋でなら……)
 歯を食い縛り耐える頼子。戒めはあくまでこんな場所でオナニーをしない事であって、快感を求めないことではない。露出の「開放感」とやらも少し分かった気がする、後は今の感覚を思い出して家で自分を慰めれば少々マンネリ気味であったオナニーでも直ぐにイけるだろう。
(帰ろう……帰って……から……なら好きなだけ……)
 本能と理性が一つの答えに合意する。心を焼かれるような疼きもゴールが見えたお陰で多少和らぐ。
(そう……家なら…おもいっきりイっていいから……私なら我慢できる………)
 自分に言い聞かせると、あれほど感じていたもどかしい感覚が消えていく。火の着くような羞恥も消えた。
 緊張からの解放に安堵したその瞬間、
「………あれ?」
 屈伸途中のような体勢、肩幅近く広げた足の間からちょろちょろと音を立てて流れ落ちる水流。
 じんわりとした暖かさと、開放感を伴う排尿の感覚に頼子の腰が震える。滴る愛液とは違い、びしゃびしゃと派手に床を濡らす音は静まり返った公園に響く。
(あれ? れれれれ? えっ?)
 状況が飲みこめない。
 味わったことの無い緊張と、8月末とはいえ夜風に下腹部を晒していたのだ。こみ上げてくる排尿感は止まること無くゆるやかに、水音を立てて流れ落ちる。
 元々排尿の予兆はあったのだが、緊張と快楽から来る震え、自慰の我慢にばかり気を取られ頼子は認識できなかった。
 「帰ろう」と決めた安堵に、身体は膀胱を弛緩させ我慢させるのをやめた。
 あれほど踏ん張っていた膝が崩れ排尿を続けたまま、自分が作った水溜りに座り込む頼子、足からお尻まで温かいはどんどんと広がっていく。
「あは……あはははははは…」
 笑い声がこぼれる、視界には床に収まりきれなくなったおしっこが、スロープから下の砂場へと流れていく様子が写る。
(気持ちいいなぁ……おねしょってこんな感じだった気がする……)
 絶頂程の激しさは無いが、じんわりと広がる心地よさ。
 なるほど……これは確かに気持ちいい、開放感とはよく言ったものだ。
 ほうっ…と安堵の吐息を漏らし、こうなれば何時止まるかも分からない自分のおしっこを待つしかないと、蕩けた頭で空を仰ぐ。
「うわぁ〜〜♪」
 星、星、星…満天に広がる夜空に綺羅星が瞬いている、考えてみればゆっくり星空を見上げるなんて久しぶりだ。
(綺麗………。私、随分余裕を無くしてたんだなぁ……)
 苦にしていないと思っていた優等生の生き方だが、夜空の星を見る余裕すら忘れていたのだと思い知る。
(考えてみればとんでもないシチュエーションだけど………)
 満天の星空の元、近所の公園の滑り台の上でお尻を自分の尿溜りにつけたまま星を眺めている自分の状況が信じられない……けど、そう悪くないんじゃない? そう思うと再び笑いが込み上げてくる。
 下半身に感じる暖かな感触に浸り、吸い込まれそうな星空を眺め続ける。
「あはは♪ …ふぅ……っ…よい……しょっと…」
 自ら作り上げた尿溜りからお尻を上げる、おしっこが止まったのだ。
(もう少し…冒険してみる?)
 スカートから手を離そうと思ったが、せっかく汚れずに済んだのだ。尿に濡れた肌に触れぬよう、裾を捲くって腰の部分に巻き込む。汚れないよう固定したが丸いお尻や尿を滴らせる恥丘の陰りは丸見えになる。
 自らの尿の上を滑り降りて公園の片隅にあるトイレへと向かう。さすがにこのままでは家には帰れない。
 ハンカチを水で濡らして尿で汚れた肌を拭いていく、自分では麻痺しているのか匂いは感じない。
(何て言うか……すごかったなぁ……)
 あの時の不思議な感覚。頼子の知る言葉で言えば開放感が一番しっくりくる。何故あそこまで濡らしてしまったかはわからないが気持ちよかったのは確かだ。
(もうっ!)
 折角綺麗にしているのに、新たな滴りが太ももを伝う。
 貪欲な自分の身体に呆れながらも一通り綺麗に拭き終わり捲り上げたスカートを降ろす、もう少しの冒険としてショーツは履かないままだ。
「まぁ、とりあえず……」
 スカートから白いお尻が除くのも気にせず、奥の棚へと向かいバケツとモップを取り出した。
「さすがに……後始末はしないとね……」
 あの遊具は明日も子供たちが使うのだろう、おしっこで汚したままでは申し訳ない。
 まぁ、星空の下のお掃除もそう悪くないんじゃない? とスカートをゆらゆらと揺らし滑り台へと戻る。
(ちょっと癖になるかも……)
 下半身が短めのスカート一枚である頼りなさと開放感は痺れとなって身体を疼かせた。綺麗にしたばかりなのに下腹に熱い蜜が溜まっているのがわかる。


 きっとまた、頼子はここに戻ってくるだろう、でもその時は? 同じ刺激では満足できそうもないが、とりあえず家に帰ってこの身体の火照りを慰めたい。
 今日で自分の中で何かが変わったことを頼子は感じていた。
 
 
 ―――次はどんなことをしよう? きっと自分が知らない、気持ちいい事はまだまだいっぱいあるだろうから……。