「羞恥都市・・・あるツーリングライダーの体験(その1)」
バイクのスピードメーターは時速80キロをさしていた。
スピードメーター下の走行距離計は、300キロを表示している。
そろそろ給油しなければならない。
俺は、特に行き先を決めずにツーリングの旅に出ていた。
ビジネスホテルに泊まることもあれば、温泉旅館でちょっとだけ贅沢してみたり、キャンプ場で寝たり、深夜の
バス停で野宿したり…気ままな一人旅を満喫していた。
こうしてバイクで旅していると、日本も結構広い事に気付く。
俺は適当にバイパスを降り、一般道路に出ると、見知らぬ町に入っていた。
「んっ!」
橋を渡って市街地に入る寸前、俺は軽い耳鳴りを感じてうめく。何かキーンという甲高い音が聞こえたような気が
するのだが、それはすぐに治まっていた。少し先に見えたガソリンスタンドで給油を済ませ、昼飯ついでに市街地
を散策してみる事にする。
何の変哲もない街でも、微妙に他とは違う所があるものなのだ。
その街は、どことなく奇妙だった。
街並みはどこにでもある普通のものなのだが、何か違和感みたいなものを感じる。それが何なのか具体的には判らぬ
まま、俺は近くにあったファーストフード店に足を向けていた。
「ん? …エロドナルド…変な名前…」
あまり見かけた事の無い店名だった。ローカルのハンバーガーショップなのかもしれない。しかし、意外とこういう
見せに美味いものがあったりするのである。
「あ…いらっしゃいませ・・・こちらでお召し上がりですか?」
妙に色っぽい表情をした可愛い女子店員が訊いて来る。結構好みの顔立ちだった。
「うん。…トリプルチーズバーガーのコンボセット。ドリンクはコーラで…」
「はい。…只今キャンペーン中で、この三角くじを引いていただく事になっています。一枚どうぞ…」
妙に恥ずかしげな表情で彼女は言った。その表情もなんだか色っぽくていい感じだ。
グラビアモデルになれそうな見事なおっぱいと、ちょっと幼い顔立ちがアンバランスで、なかなかいい感じである。
「はい…」
俺は差し出された箱の穴から手を入れ、適当に一枚摘んだ。
「失礼します…」
女の子は俺が引いたくじを受け取り、開いていた。
くじの中を見た女の子の顔が、ぱあっと紅潮する。
「当たり?」
俺が尋ねると。
「えっ! …あ、はい…二等です…」
物凄く恥ずかしげな表情で、女の子は言う。一体、何がそんなに恥ずかしいのだろう?「て…店長! スペシャル
二等出ました…」
女の子は少し声を上ずらせながら店の奥に向かって叫ぶ。
「おお! お客様、おめでとうございます。由利ちゃん、しっかりご奉仕するんだよ」
店の奥から出てきた若い店長は、そう言ってにっこりと微笑んだ。
ふうん…由利ちゃんか…可愛い子だなぁ、こういう子が彼女だったらなぁ。
などと考えてしまう俺の脳裏では、健康な男子なら誰でも想像してしまうであろう、エロエロの妄想が展開していた。
「はい…お客様、ご注文の品をお持ちいたしますので、お二階の特別室でお待ち下さい。これが部屋のキーになってます」
彼女はそう言って、金色のカギを俺に手渡してくれた。
「え? 特別室? …なんだか凄いなぁ」
由利ちゃんからカギを受け取った俺は、二階席の片隅にあった『特別室』と書かれたドアの鍵を開けていた。
「おっ! …なんだかビジネスホテルみたいだなぁ…なんでファーストフード店の二階にこんな部屋があるんだ?」
室内には座りごこちが良さそうな椅子とテーブル、更に、なぜかベッドがあった。ユニットバスまで付いていて、
まさにビジネスホテルの一室みたいだった。
「ここ…だよなぁ…」
俺はもう一度、特別室のプレートを確認し、部屋に戻って考え込む。渡されたカギでドアが開いたのだから間違いは
ないはずなのだが、ファーストフードショップの二階にあるとは思えない設備にちょっと不安を覚えてしまう。
もしかして、無料宿泊サービスなのだろうか? それなら一泊分の宿代が浮くから、俺的にはラッキーなのだが…。
ノックの音がした。
ドアを開けると。注文したコンボセットの載ったトレイを持った由利ちゃんが、恥ずかしげに微笑みながら立っていた。
「失礼します…」
「あの…さっき言ってた二等って、ここに宿泊とか出来るわけ?」
部屋に入ってきた由利ちゃんに、俺は尋ねていた。
「えっ? …あの、お客様、よその町からいらしたんですか?」
「うん。そうだけど…」
「ああ…それで…」
なにやら納得したらしい由利ちゃんは、おもむろに着ていた物を脱ぎ始めた。
「えっ! …何をしてるの?」
内心、思いっきり期待しながらも、そんな言葉が勝手に出てきてしまう。
「これが二等のサービスなんです…あの…お口とおっぱいで…」
「はぁ!?」
心の中では判ってるくせに、何でこんな裏返った声を出してしまうんだろう?
頬を染めながら、由利ちゃんが胸元をはだけ、清楚な感じの白いブラを見せる頃には、俺はこの状況に、不自然さを
感じなくなっていた。なんだか凄くご都合主義的な、エッチな夢の中にいるような気分だ。
「あの…お客様?」
「はっ! はいっ!」
「シャワー、一緒に…」
俺が妄想に耽っている間に、由利ちゃんはいつの間にか全裸になり、大振りのバスタオルを身体に巻いていた。
なんだか物凄く損をしたような気分になる。
俺はギクシャクと立ち上がり、由利ちゃんを外に待たせておいて、狭いユニットバスの中で服を脱いでいた。
ざっとシャワーを浴びて汗を流し、備え付けのシャワーソープで、既に臨戦体制になっている股間を丹念に洗う。
何せ、お口でして貰うのだから……。
「……お客様、御免なさい」
ドアの外から由利ちゃんが声をかけてくる。
「え?」
「私、まだ不慣れで……もっと上手に裸になれたら良かったんですけど・・・」
「あ!?……ああ……気にしてないよ。由利ちゃんと、その……こうしているだけで幸せだから……」
自分でも物凄くクサいことを言っているのはわかっていたが、なんだか思考が上手くまとまらない。
やっぱり、夢の中にいるような気分だった。
もし、これが夢なら、覚める前にやれる事はしっかりやってしまおう。
続く
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