「羞恥の街の記憶探し」序章


「あら、ここは」 私は知らない場所にいた。ああ、申し遅れました。私は谷岡 直代(たにおか なおよ)といいます。あら、あんな 所に女の人が・・・、聞いてみましょう。 「すいません、此処は何処でしょうか?」 「此処は、葉塚市よ。」 「葉塚市・・・ですか?」 私には聞き覚えのない市だった。何処の県にあるかも知らない。 「あなた、どこから来たのよ?」 女の人が逆に質問してきた。私は言おうと思い・・・自分が名前以外わからないことがわかった。 「私・・・わからないんです。名前しか・・・」 「あら、それじゃあ大変ね。私の家にいらっしゃいよ。でもその前に市役所に行かなきゃね。」 「市役所ですか?」 何故市役所なんかに・・・記憶喪失である私を病院に連れて行くならわかるけど・・・。 「そう、市役所よ。この市では市役所に行っておかないと色々なサービスが受けられないのよ。だからね。」 「そうなんですか。わかりました、よろしくお願いします。」 変わった市だなぁと私は思いながらついて行った。市役所に行く途中色々不思議な物が見えた。そう、他の市なら 『目指せ!!交通事故0都市』と書いてありそうなところに、『絶対!!羞恥都市宣言』と書かれていたり、トイレ の入り口には『立ち式』『犬式』とか書いてあるし・・・ 「あら不思議なの?」 女の人が話しかけてきた。 「ええ、初めて見た物ばかりで・・・」 「そうなの??じゃあ、あなたはこの街外から来たのかもね。」 「そうかも、知れませんね。」 「そうだ、私あなたの名前聞いてなかったわね。私は南井 貴子(みなみい たかこ)と言うのよ。」 「あっ、すいません。私は谷岡 直代と言います。」 「直代さんってお呼びしてもいいかしら。私のことは貴子でいいわよ。」 「はい、貴子さん。」 「ふふふ、よろしくね。直代さん。」 「はい、よろしくお願いします。」 私は貴子さんに連れられて市役所に向かっていった。これから我が身に起こる恥ずかしい日々があるとも知らずに・・・


続く
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