「電柱になった少女」


 あなたは”物”になりたいと思ったことはありませんか?  もし、それを望むのではあればきっと貴方には私の姿が見えるでしょう。  あっ、紹介がまだでしたね..  私の名は夕夏 結羽歌(ゆうか ゆうか)と言います。名前には深い意 味はありませんのでご承知を。  ふと”物”になりたい..そう思う人の為に私は存在しています。  私には人を”物”に変える力を持っています。もちろん、永遠に”物” になる事はありません。貴方が”物”になって何かを得られるアドバイス を与え、その何かを得れば貴方は人に戻る事ができます。  ただ残念な事に私の力は女性にしか効きません。ごめんなさい。  えっ?いくらですって。安心して下さい。お金も見返りも何もいりません。  貴方が”物”になって何かを得る事が出来れば、それが最高のプレゼン トとなりますので。  あらっ?早速、私が見える女性があらわれたようですね…… 「はぁぁぁ・・・どうして、こう失敗ばかりするんだろ..」  彼女はどうやら名門演劇部に所属している女子高生のようです。 「せっかく、もらった人柱の役も満足に出来ないなんて...」  ふむ・・・どうやら劇中で出てくる人柱の脇役すらも彼女は失敗した感 じですね。 「こんな脇役も出来ないなんて..もう次失敗したら役はこなくなっちゃう..」  彼女は劇中で足がすくんでしまって劇を台無しにしてしまったそうです。 「どうして..震えるんだろ..練習ではこんな事ないのに..」  本番で震えてしまう。これは大衆に見られることを怖がってますね。 「どうすれば震えが止まるの..いっその事、本当の柱になれば楽なのに..」  なるほど柱になれば震えは止まるけど、家の柱じゃ意味はなさそう。 「みんなに見られる柱..そう、電柱になってみたい...」  彼女、伊藤 菜祐はふと目の前の電柱をじっと見た。その電柱には小学 生ぐらいの背の小さな女の子が立っており、その子が彼女に向けて微笑ん できた。 「こんにちは。お姉さん」 「こ・こんにちは..?あ・あの・・・私、どっかで会ったかしら?」 「はじめてだよ。でも私は貴方を知っているわ。伊藤 菜結さんでしょ?」 「!!えっ?ど・どうして私の名前を?」 「私が見える人の事は全てわかっちゃうの。あっ、紹介まだでしたね。は い、名刺♪」 「名刺?」  菜結は小さな女の子から名刺を受け取ると、そこには、こう書かれていた。   [”物”になりたい方への案内人。 ゆ〜かゆ〜か。] 「ゆ〜かゆ〜か?」 「正確には夕夏 結羽歌ですが、私としてはゆ〜かゆ〜かが気に入ってい ます」 「はぁ...」(何かのごっこ遊びかしら?でも、どっから私の名前を?) 「お姉ちゃん、今!”物”になりたいなぁ〜と思ったでしょ?」 「・・・ええ..電柱になれればと..」 「良かったら私に詳しく話してみてください」ゆ〜かはにっこりと微笑ん できた。  こんな、ごっこ遊びをしてる子に悩みなんか言っても無駄だと思ってい た菜結だったが、何故か真剣に悩みを話し始めてしまう。  ごっこでもいい..誰かに悩みを聞いて欲しかったかも知れない。  自分が今、瀬戸際であること..演劇が本当に好きであること..どん な役でも精一杯やりたいこと..  いろんな思いを菜結はゆ〜かに話し ていったのであった。  菜結が全ての悩みを打ち明けると、ゆ〜かはにっこりしながら、こう言 ってきた。 「要は電柱になりたいということだね」 「・・・?べ・別にそういうわけじゃ..」 「ともかく電柱にしてあげる♪」 「えっ?」 「ぱやぱややばぁぁぁぁっっっっっーーー!」バシュュュュューー!  ゆ〜かが謎の言葉を発すると同時に菜結の周りが眩しい真っぴんくに染 まっていく。  そして真っぴんくの奥底深く身体全体が吸い込まれる感じであった。 「はっ!」菜結はようやく目を覚めて辺りを見回す。 (今、何が起こったんだろ?夢?そうよね..夢よね..)  菜結は意識が覚めるにつれて自分に何か異変が起こってることに気がつ いてくる。 (!?あ・あれ?身体が動かない?そ・それに言葉が出せない?どういう事?)  まるで全身が金縛りになっている感じであり、ふと視線を下に向けると.. (きゃぁぁぁぁぁーーーー!!な・なんで裸になってるの?ちょっとぉぉ ぉーーどういうことぉぉ!!)  そう、いつの間にか菜結は生まれたままの姿にされており、両腕は共に 手を高くあげた感じで固定されていて直立不動の状態で固まっている。  それも周りを見ると通行人が多く通っており、完全に自分の裸体が晒さ れた状態となっていた。 (いやぁぁぁぁぁ!!見ないでぇぇーーー!!お願い、私の身体を見ない でぇぇーー!!)  菜結は心の中で思い切り叫んだ。だが、その声は誰にも届く事がなかった。  少し落ち着いてくると何か菜結の中に1つの疑問が浮かんでくる。 (・・・・・・?ど・どういう事?誰も私のことをじろじろ見ない?)  そう、全裸の女子高生が街中で立っているにも関わらず通行人は平然と 気にせずに歩いている。  男性の方を見ても特に身体をじろじろ見てる感じもせず、普通に通り過 ぎるだけであった。 (?私..裸だよね?もしかして私にだけ裸に見えるの?そうよね。さっ きまで服を着てたし..) 「違うよ。お姉ちゃん。お姉ちゃんは間違いなく裸のままだよ」  菜結の近くでさっきの子の声が聞こえた。そう、ゆ〜かが再び姿を現し た。 (あなた、さっきの女の子!これは、どういう事なの?私の声は聞こえるの?) 「大丈夫だよ。お姉ちゃんの声ははっきり聞こえるから。でも周りの人に は聞こえないけど」 (あなた一体私に何をしたの?それともこれって夢なの?) 「夢じゃないよ。お姉ちゃんは望み通り電柱になったんだよ♪」 (電柱!?ちょっと待ってよ!そんなの望んでないわよ!) 「心の中で望んでたから間違いないよ♪お姉ちゃん、電柱になれて楽しい?」 (何が楽しいのよ!私を晒し者にしてどうする気よ!!) 「お姉ちゃんは晒し者じゃないよ。確かにお姉ちゃんは裸だけど皆の目か らは電柱にしか見えないから」 (えっ?ど・どういう事よ?じゃあ、みんなからは私の裸は見れないのね)  自分の裸が見られてないと説明されてほっとした菜結だったが、それは 大きな間違いであった。 「少し違うよ。お姉ちゃんのおっぱいも下のお毛々も皆の目にははっきり 見えるよ」 (えっ!?) 「簡単に言うと皆の概念を変えたってことだよ。これは電柱だと概念を皆 に植え付けたってことだよ」 (そんな・・・じゃあ、本当に丸裸で立ってるってこと?) 「そうだよ。じゃあ、電柱になったって事で私はそろそろ帰るね♪」 (ちょっと待って!!まってぇぇ!!こんな姿でほっとかないでぇぇぇぇ!!)  菜結は大きく叫んだが既にゆ〜かは姿を消してしまった。  全裸としての電柱にされてしまった菜結...  身体を動かそうとしても、やはりビクともしない硬直状態であった。 (いつまで、このままにさせる気なの?ねえ!!誰か答えてぇぇ!!) (・・・本当にこれは現実なの?もしかして夢なのかしら?) (そうよ!いくら何でも素っ裸の女性が街中で立っているのよ。概念が変 わったって言っても裸で立ってて気付かないはずはないわ!) (・・・でも?概念が電柱ってどういう意味?裸で立ってる女の子をどう やって電柱に見立てる気?)  菜結はいろいろ考えながら1つの疑問を抱いた。  そう、皆の目にはどういう風に見えるのか?概念が電柱でも実際は真っ 裸の女子高生。  いくら両手をあげたからって電柱の高さとは比べ物にならない。  この姿を電柱と言うには無理があるんじゃないかと.. (あはは...そうよ。どう考えても電柱に見えるわけないじゃない.. 見えるとしたら私の身体が折れた電柱にでもなってる感じよね) (電柱にバケてるってことよね。そうよ。あの子の言ったように胸やあそ こが見えるわけないわ)  菜結は自分の出した答えにほっと一安心をした。だが次の瞬間、その答 えが大きな誤りだと思い知らされてしまうのであった。  菜結の前から大学生風の男が4人程、こちらに歩いてくる。 「なあ、昨日の女最高だろ?」 「ああ〜また合コンのセッティング頼むぜ」 「ん?なんだ?あの電柱?色が変じゃねーか?」 「本当だな。なんだ?肌色の電柱かよ?それも電線張ってねーじゃねーか?」 (えっ?肌色の電柱!?まさか本当に私の裸が?)  菜結は戸惑うが動かせない身体ではどうする事もできず、ドキドキしな がら彼らの動向を伺うしかなかった。 「本当だ。肌色の電柱って悪趣味だな。その上、何かデコボコしてねーか? これ?」 「これ?電柱として使えるのかよ?変な形の電柱だぜ」 「おい?ちょっと、これ触ってみろよ。これコンクリじゃねーぜ。何だこれ?」 「今、流行りの吸収材ってとこじゃねーのか?変なとこ金かけてんだな」  彼らは菜結の身体をあちこち触り始めた。だが、彼らの行動を見てみる と、この電柱が女性であることに全然気付く様子がなかった。 (どういう事?お尻や顔や髪の毛を触られても気付かないって?普通なら 像みたいな答えがかえってきてもおかしくないのに?) 「ん?なんだ?このコブみてーなもんは」むぎゅぅぅ〜 (きゃあぁぁ!胸を揉まないでっ!)1人の男性が何と菜結の胸を思い切 り掴んできた。 「こっちにもコブがあるぜ。それもこのコブすげー柔らけぇぜ!」 「ゴムボールみてーに柔らけーな」 「俺にも触らせろよ」  彼らは私の胸をおもちゃのボールを揉むかのように無茶苦茶に揉んでく る。私の自慢だったDカップの大きい乳房が彼らの手の中で無様な姿へと 変化していく。 (ぁぁっ...誰にも揉まれたことなかったのに..)  そう、まだ菜結は異性に揉まれたことはなく、それ以前に見せてもいな い胸を男達に平然と揉まれていくのであった。  それも、彼らはこれを胸だとは思ってない為、せっかくの豊満な形のよ い乳房がにぎりつぶされる感じで揉まれている。 「何か、このコブすげー気持ちいいぜぇー」 「お前もそう思ったか。俺も同じだぜ。すげーいい感触だぜ」  彼らは乳房を揉んでるという事には気付いていないが、どこか深層心理 の中ではこれを乳房だとわかっているかも知れない。  結局、彼らは菜結の胸を20分近くも弄んでいたのであった。 (・・・・ぁぁ..なんで、こんなことに...)  菜結は愕然とした。あの子が言った概念がようやく理解したからである。  そう、例え顔があっても、おっぱいが出ていても私以外はイビツな電柱 としか見られないのである。  こんな屈辱的なことをいつまで続けなければいけないのだろうか..  けど、不思議に悔しさがわかず、何故か快感が次々と襲ってくるのであ った。 (これは..どういうこと..何で気持ちよくなってくるのよぉぉ〜)  その問いに答えるかのようにゆ〜かが再び姿を現した。。 (やっと出てきたわね。そろそろ、元に戻しなさいよっ!私に何の恨みが あるのよ) 「う〜ん、まだ気づいてないようだね。早すぎちゃったか..」 (あなた何をいってるの?早すぎるって..何のことよ?) 「実は”物”に変えるのはある目的を導くものなの〜。お姉ちゃん、自分 が露出狂の気があるってことが分かってないでしょ?」 (露出狂!?ちょっとふざけないでよ!誰がそんな破廉恥なことを!) 「心の奥にしっかり潜んでいたから間違いないよ♪お姉ちゃん、本当はこ ういう恥ずかしい役がしたかったんでしょ?でも、性癖を隠したい理性が 演劇の邪魔をしてしまったんだよ」 (ど・どういうこと!?) 「足がすくんだり、震えたりしたのは大衆に見られることを怖がってるの じゃない。見られたいことを知られたくない理性がそうさせてしまったか らだよ」 (えっ..) 「この”物”の魔法で徹底的にお姉ちゃんの性癖を引き出してあげる♪そ うすれば2度と足が震えることはないよ。まあ、代わりにおま●こが疼く けど、それは名演技に結びつくから安心して」 (そんなの嘘よ。ありえない!絶対ありえないわぁぁー)  ゆ〜かに向かって、そう叫ぶ菜結だが、おま●こは濡れまくっていたと ころから、すでに露出癖が起き始めてしまったのだろう。  この後のことは言うまでもないだろう。  露出癖に目覚めてしまった菜結だが、ゆ〜かの言ったとおり大胆な演技 が平気で出来るようになり、次々と賞をとり始めた。  後々に大女優となった彼女が記者にある冗談を言った。 「今の演技なんてまだまだよ。私は電柱と見分けがつかない演技を目指し ているから」  結果として1人の少女を救った?ゆ〜かゆ〜か。  だが、まだまだ彼女の物語は始まったばかりだ。  次なる露出癖を心に潜ませてる少女のもとへ向かうゆ〜かであった。 <おわり>


「電柱になった少女」完
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