世界が支配される中で露出三昧 −序章− 読切


 ある日、突然世界が支配されたらあなたはどうしますか?  もちろん、そんなことが出来るはずはない。だから私はいつも通りに生 活していた。  朝起きて、髪洗って、食事して、歯磨きして、家出て、学校着いて、お 喋りして、授業受けるなどなど、普通の生活を繰り返してるだけだった。  ただ少し他の人と違うのは昼休みにドキドキ露出行為をしてるぐらい。  今日は思い切って素っ裸で裏庭を隠れて移動する露出をしてたんだけど、 スタート地点に戻ってみると私の制服や下着が全て無くなっていた。 「ええぇぇ〜。ここに隠したはずなのにぃぃ〜」  慌てて制服を探す私の後ろに5人の男子生徒がニヤニヤしながら現れた。 「ひひっ、御堂ちゃん。そこに服なんてねーよ」「えっ?」 「俺たちが別のとこに移しておいたぜ。いひひっ」「ええぇっ!」 「まさか2年3組のアイドルの御堂さんが露出狂だったとはな」「ううぅ..」 「さて今度は俺たちと楽しいことしよーぜ」「・・・そんなのいやよ」  私としたことが一番やってはいけない痛恨のミスをしてしまったよぉ〜。  露出行為を男子なんかに見られちゃうなんて。  今まで499回、誰にも見つからず露出行為をした私が500回を目の前に、 こんな目に遭うなんてぇぇ〜。  あ〜ん、これからきっと私は痴女のレッテルを貼られて生きていくこと になるよね〜。まあ、恥ずかしいことが好きだから、それぐらいは諦めて 頑張って生きていくけど..  でも!こいつらに弄ばされるのは絶対っ!絶対嫌ぁぁっ! (仕方ない..裸のままで逃げるしかないわ..どっちにしたって露出行 為をしていたことはバレてしまったんだから)  が、男子生徒たちもあっさりと私を逃がすわけはなく、5人がかりで行 く手を阻んできた。 「逃がすかよ!裸で逃げようなんてとんでもねー女だな」 「さっさと手足縛っちゃおうぜ」「ああ、そうしよう」  こいつらヤル気マンマンね。冗談じゃないわ!まだ私はこれでも処女な んだからね。こんなキモキチどもに犯されてたまるもんですかぁぁ〜!    こうなったら意地でも逃げちゃる!そう思った時に奇跡?が起こった。  突然、私を囲っていた男子たちの目が虚ろとなり、ロボットのような動 きをし始めたのだ。 「???・・・いったい、何が起こったの」  一瞬にして生気を失ったような男子たち。焦点が定まらず、半開きの口 をしながらロボットのような単調な動きをし続けてる。  よく分からないけど助かったのかな?とりあえず、この場を急いで逃げ ることにした。  ただ問題は、あいつらが隠した制服や下着をどうするかだ.. 「あ〜ん、もう昼休みが終わっちゃうじゃないぃ〜。放課後まで裸で隠れ 続けるしかないじゃないっ」  ここは午後の授業を全てサボって、みんなが帰ったあとで教室に戻って 体操着に着替えるしかないと思った私なんだけど..  が、私はここでおかしな風景を目にする。  何故かみんなが校門に向かって帰り始めたのだ。 「えっ?今日って学校、午前中で終わりなのかな?いや、そんなことない わ。今日はどの学年も授業があるはず!なのになんで?」  よく見ると、帰る生徒たちはどれもさっきの男子のようにロボットのよ うな動きをしながら帰っていく。実に異様な雰囲気だ。 「???何なのよぉ〜、これってぇ〜。みんな、どうしちゃったんだろう」  気味が悪い。男も女も目を虚ろとしながら帰っていく。それも無言で規 則的な動きで校門に向かっていく。  とりあえず、ここは能天気な考えで「やった〜、体操着を取りに行ける」 って思ったほうがいいのかな?  まあ、いつまでも素っ裸でいるわけにはいかないし、さっさと体操着を 取りに行こう。  もちろん、人に見つからないように遠回りして非常階段から教室に戻ら なくちゃ。またこれで見つかったら水の泡だし..  ロボットのような動きをしながら帰る生徒たちに見つからないように非 常階段のところに何とか辿り着くことが出来た私。  ここまで来ればあとは教室に戻るのは容易いと思って上っていくと、真 上のドアが突然開いた。 (!!まずい、隠れなくちゃ!)今度は何とか死角に隠れることが出来た のだけど.. 「・・・そこに誰か隠れているんでしょ?いい線だけど影が映ってるわよ」 (!しまったぁぁぁ〜。いきなりバレたよぉぉ〜。どーしよぉ〜、ここは 逃げるしかないわね) 「誰だが分からないけど、逃げる必要はないわ。私が出てくる音にすぐに 対応できたってことは今、裸で隠れているんじゃないの?」 (なっ?何でそこまで見抜かれるのよぉぉ〜。いったい、これってどうい うこと?) 「非常階段を使ったってことは大方、制服の代わりでも取りに行こうとし たってことね。悪いことは言わないわ。あいつらみたいになりたくなかっ たら服なんて着ないことね」 (はい?な・何を言ってるの?裸でいろって..ま・まさか、今ドアから 出てきた女子も..)  おそるおそる顔を出して見てみると、何とドアから出てきた女子も素っ 裸であり、見覚えのある子だった。 「ええぇぇ〜、学年成績トップの松川さん!?な・何で裸でぇぇ〜」 「・・・その声は3組の御堂さんね..なるほど、薄々私と同じ性癖があると 睨んでいたんだけど、性癖のお蔭で難を逃れたようね」  はぁ?よく事態が掴めないないんだけどぉ〜。性癖って露出狂のこと?  それとこの異常事態が何の関係性があるっていうのよ。 「・・・こんなとこで立ち話するよりも屋上で話した方が貴女にも理解でき ると思うわ。よかったら、しばらく私に付き合ってくれないかしら?」 「わ・わかったわ..」  本当は服を取りに行きたいんだけど、裸の松川さんにそこまで言われた ら行くしかないよね..  こうして何がなんだが分からない状況で屋上に行った私に松川さんが指 で外を指した。 「指差す方向を見てみなさい。多くの人がロボットのような動きで列を組 んで歩いているでしょ。これが今の世界の”現状”よ」 「???ど・どういうこと?確かにみんなの動きが変だよ。何か規則的に 歩いているっていうか..動きも機械的だし..」 「簡単な見回りってとこかな?老若男女問わず列を組んで歩くなんて、あ れは何かに操られてるってことね。そう、おそらく世界は一瞬で何かに支 配されたようよ」 「はぁ?支配って..何よっそれ..バカバカしい。そんな凄いこと誰が 出来るっていうのよ」 「私に聞かれても答えられるわけないでしょう。私はただ、今の現状を分 析して一番近い解答を導き出しただけよ。初めは私も何かの悪ふざけだと 思ったんだけど、こんな大規模な悪戯を誰がするって言うの?それに騙す 相手は誰?私と御堂さんを騙すためにこんな大掛かりなことしてくれるの?」 「するわけないでしょ..でも世界を支配するってオーバーすぎるよ」 「TVよ。ワンセグを見なさい。ほとんどのチャンネルが砂嵐かスタジオ を映したままの画面になってるわ。ラジオも似たようなもんよ。ネットな んかブログやツイッターなどの書き込みが、ある時間を境に更新されなく なったわ」 「えっ..じゃあ、あちこちでみんながロボットみたいに?」 「ええ、おそらくは..偶然にも支配から逃れたのは、”支配する瞬間” に裸になってた人間のみ。恥ずかしい話だけど、私も図書室で露出行為中 だったわ」  何か、とんでもない状況になったような気がするよぉぉ〜。  もしかして、私が男子たちに狙われたあの時が例の支配する瞬間だった って言うの?確かに男子たちが一瞬でロボットのようにはなったけど.. 「で・でも..裸だから支配されないっていうのは私たちがたまたま裸で あって、別の理由で支配されたんじゃ..」 「・・・2人だったの..」「えっ?2人」 「図書室で露出したのは2人でやってたのよ。いきなり図書室に居た連中 がおかしくなって私たちもどうしていいか分からなかったの。・・・幸子が 服を着て教室に戻ろうと提案して、私が辺りの様子を伺ってる間に先に幸 子が服を着たのよ..」「!ま・まさか..」 「そう、服を着た幸子が一瞬で人間らしさを失ったわ。でも、まだそれだ けじゃ確証出来ないと思ってた矢先に裸の貴女と会った。私もバカバカし いと思ったけど、裸である人間が支配されないと思うしかなくなったわ」 「・・・あ・あの、じゃあ私たちはこれからどうしたら」 「そうね..迂闊に学校の外へ出るのは危険だし、今日のところは..」  ごくっ「今日のところは何を..」 「露出三昧しましょう!」「はぁ?」  なっ!何を松川さんは言ってるんだろう。世界が支配されるっていう時 に露出三昧って..ど・どういうことぉぉぉ〜? 「あ・あの..そんなことしてる場合じゃ..」 「そんなこと?御堂さん、貴女は素っ裸の女子高生2人がこの状況で何が 出来ると思うの?TVじゃ漫画の世界じゃないのよ。現実的に考えたら何 も出来ないし、もうこうなったら開き直って露出三昧した方がまだマシよ」 「そ・そうなのかなぁ..」絶対違うような気がする。気がするよぉぉ〜。  でも私1人じゃ何も思いつかないし..結局は松川さんの提案に従って、 この危機的状況で校内で露出行為を楽しむことになった。  いいのかなぁ〜。こんな楽天的な考えで.. 「御堂さん。私たちってすごくない?職員室で堂々と裸で歩いているのよ。 今から、五月蝿い学年主任の机の上でM字姿するからデジカメで映してち ょうだい♪」「う・うん..」 (うわぁ〜、松川さんのおま●こ、すっごく濡れてる..って言うか、本 当にこんなことやってていいのかな..ものすごく不謹慎な..) 「次は御堂さんの番よ。御堂さんは校長の机でストリップポーズをするの よっ!」「ストリップポーズってぇぇ〜」  もう深く考えても仕方ないかも..正直な話、私の身体も疼いてるし、 馬鹿になってやるぅぅ〜。露出狂らしく露出三昧しちゃうからぁぁぁ〜。  この後は大好きな先輩の教室で露出したり、放送室で恥ずかしい映像を 流したり、体育館で裸で遊んだり、校庭を駆け回ったりと普段では絶対に 不可能な露出を松川さんと堪能してしまった。 「はぁはぁ〜、何か私たち数年分ぐらいの露出をしたって感じね。こんな 体験、世界が支配されていなかったら出来なかったわ..」 「そりゃ、そうだけど..でも松川さん。このまま家に帰らなくていいの?」 「・・・電車もバスも動いてないし..おそらく家族も支配されてるわ.. こんな愚かなことをしてる場合じゃないのは分かってるけど..だからっ て何か出来るわけじゃない..考えたくないから..こんなことしてるの かもね..」「松川さん..」  松川さんが私に見つからないように泣いていた。そうよね。私たちに何 が出来るんだろう..きっともう何をしても無駄なのかも知れない..  露出三昧なんて馬鹿げたことだけど..そんなことぐらいしか気を紛ら わすことが出来ないよ..何で世界が支配されちゃったのよぉぉ〜。  私と松川さんが支配から逃れたからって何の意味があるのよ..  松川さんは私と違って頭がいいから、きっとこの状況を変えられないこ とを思い知らされてる。皮肉なことだけど、この苦しみから逃れたいのな ら、大人しく支配されればいいのだろう。 (でも..だからって素直に支配なんてされたくないよぉぉ〜)  もう少しだけ..松川さんが一緒に居てくれるまでは私も悪あがきを続 けよう..  露出しまくって思いっきり満足してから支配されるのも悪くない。  露出狂らしくていいじゃない。最後なんだから好き放題やってやるわ。  こうして、私たちの世界が支配される中で露出三昧が始まった。 (けど、校内で裸で寝るっていうのは、すごいドキドキだよぉ〜)  翌朝、私たちが学校を出ると辺りの風景は昨日と違って大きく変わって いた。いつもだったらサラリーマンが足早に会社へ向かい、学生たちがお 喋りしながら通学していたんだけど..  今は老若男女問わず多くの人がヨレヨレとした姿で集団でどこかへ向か っていく。  きっと、お風呂とか着替えとかしてないのだろう。命令されるがままに 動いてるようだった。 「ひどい..あれじゃみんな本当にただのロボットみたい..でも、みん などこに行くんだろう..松川さんはどう思う?松川さん?」  って松川さんがいつの間にか居ないんだけどぉぉ〜。まさか誰かに捕ま ったとか..(ええっ、それは嫌だよぉぉ〜)  慌てて松川さんを探そうとしたとき、コンビニの袋を持った松川さんが 戻ってきた。 「ごめん、ごめん。ちょっとコンビニが見えたから朝食をもらってきたわ。 はい、御堂さんの分。しかし支配された瞬間が日中で助かったわぁ〜。夜 間だったら、ほとんどの店が閉まっていたとこだわ」 「あ・あのぉ〜、コンビニって..もしかして無断で持ってきたんですか? それって泥棒じゃ..」 「まあ、昨日までなら窃盗罪ね。でも肝心の警察も法律も無くなったわ。 だから、物をいくら取ろうが全然問題はないわ」 「えっ?どういうこと..」 「取り締まる警察官も支配されて機能しないってことよ。いや、もう罪を 犯すものも居ないから警察も必要ないわ。きっと犯罪者も支配されたから」 「そうなんだ..でもやっぱお金ぐらいは..」 「お金?流通が止まってるこの世界では、こんな紙幣はただの紙くずよ」  びりびり、びりびり・・・「!ちょっと、松川さん。それ一万円札じゃ..」 「今じゃこんなの紙くずよ。役に立たないもの持っていても仕方ないわ。 それにコンビニにあるものはもう誰も手にしないわ。支配されてロボット のようになった人が、じっくり挽きたてカフェオレでも飲むと思う?おそ らく生きるために必要な最低限の水や食料を機械的に与えられるだけよ」 「そ・そんなぁ..」 「だから、賞味期限が過ぎるまでは私たちが大事に頂くことにしましょう。 逆に言うと流通が止まってるから、食料確保が今後の大きな問題となりそ うだけど..」 「そうか..もう新しいものが入るわけないよね..」  何か先のことを考えると、ますます不安になっていくよぉぉ〜。 「ダメよ、御堂さん。そんな暗い顔しちゃ。それよりも御堂さんもあとで コンビニに行った方が良いわよぉぉ〜」「えっ?どういうこと」 「裸でコンビニよ。誰も居ないのは分かってるけど、すごく興奮したわ〜。 よくコンビニで露出しましたって投稿を見たことあるけど、それを実現で きるなんて夢みたいだわぁぁ〜」「松川さ〜ん。そんなこという状況じゃ」 「御堂さん、昨日も言ったけど、私たちに何が出来る?全米が泣いたハリ ウッド映画じゃないのよ。裸の女子高生2人が世界の支配を解ける活躍が 出来るはずないでしょ。私たちが唯一出来るのは露出三昧のみよっ」 「・・・ぷっ。あははははっ..あはははは..」 「?どうしたのよ、御堂さん。急に笑い出して..」 「ご・ごめんなさい..何か私も吹っ切れたかも..そうよね。世界が支 配されたんなら、不可能な露出三昧出来るんだもん。愚かなんかじゃない。 くだらなくなんかない。私が裸でコンビニ露出なんて一生出来ないもん! それが思いっきり出来るなんて幸せだと思わなくちゃ。世界支配万歳だ」 「・・・うん、世界支配万歳ね..さあ、2人でコンビニでれっつごぉぉ〜」 「あの〜私、エッチな本見て露出するのやってみたかったの〜」 「あっ、御堂さんもそうなの。私もあれはやってみたかったのよ」  実にのん気な私たちだけど、しばらくは露出三昧を楽しむつもり。  これからはきっと、すごく大変だと思うし、こんなことやってる場合じ ゃないのは分かるんだけど..  今は全て忘れて、世界が支配される中で露出三昧をしてみようと思う。 <完>


簡単な登場人物紹介。

御堂 由希(みどう ゆき) 本編主人公。千兆高校2年生。
 ごく普通の女子高生であり、クラスの中ではアイドル的な存在。
 露出行為をしていた最中に世界が支配され、運よく支配から逃れること
に。とりあえず今はこの危機的状況で露出三昧をすることになった。

松川 美佐子(まつかわ みさこ) 学年成績トップ。千兆高校2年生。
 地元でも有名な天才女子高生。頭脳明細で眼鏡がすごく似合う女子。
 由希と同じに支配の瞬間に親友の幸子と裸で露出していたことで難を逃
れる。ただし幸子はその直後で服を着たために支配されることに。
 どうしようも出来ないこの状況で露出三昧を提案をする。

「世界が支配される中で露出三昧 −序章−」完