第57話「名歯亀の定年」


 名歯亀の定年がこのまま予定通りになるか校内で騒がれる中で、定年に 追い込もうとしていた2年5組のマドンナ教師、久遠字が夜遅く使われてな い体育倉庫で裸にされて囚われていた。 「あれだけ辱めたのに懲りずに、この絶対権力教師の我輩を定年に追い込 もうなんて激甘、地獄甘、サタン甘だべぇ〜」 「名歯亀先生っ、こんなことして許されると思っているんですか?」 「久遠字ぃ〜、お前がずっと1年の女子たちを陰で扇動してたのも、この 我輩にはお見通しなんだべぇぇぇ〜。もうこれ以上の抵抗は許さんだべぇ ぇ〜」 「わ、私を..どうするつもりなんですか..」 「お前を1年女子たちと同じように我輩の従順な牝犬へ調教するのだべぇ ぇぇ〜。春の始業式で男子共の前で全裸宣言させるのも醍醐味だべぇ〜」 「何てひどいことを..」 「今じゃマン汁垂らしまくって求めているんだべ〜。そして久遠字、貴様 もこの我輩の愛の三角木馬で堕ちるのだべぇぇ〜。これで快楽の虜になら なかったものは居ないのだべぇぇぇぇ〜」  そう、久遠字は今、全裸で縄に縛られて三角木馬の上に乗せられていた。 全身には超媚薬をたっぷり塗られており、拷問具で責められているにも関 わらず甘い吐息を吐いていたのであった。  どうやら、明後日の定年予定日に名歯亀を強引に定年させようとした久 遠字の策に気づいた名歯亀が先手を打ってきたらしい。  久遠時を上手く旧体育倉庫に誘い、あとは完全復帰した絶対権力教師の パワーで久遠字を裸に剥いて、両手を封じ、痛々しい緊縛姿にしたあとで とどめの三角木馬に乗せたようだ。 「どうして、またこんな酷い教師に戻ったの?昔、懲りたことを忘れたん ですか?」 「我輩にはこの厄除けの番傘があるのだべぇぇ〜!これを四六時中!10年 間、片時も離さずにいた我輩に敵は居ないのだべぇぇぇ〜」 「お願いですから、このまま定年してもらえませんか?そうしてもらえた ら私は先生の牝犬となっても構いません。どんな恥ずかしい命令でも聞き ますから」 「何馬鹿なこと言ってるのだべぇぇ〜。そんな生意気なことが言えないぐ らいに堕ちてもらうだべぇぇ〜!我輩はぁ絶対権力っっ、無敵の最強教師 なのだべぇぇぇーーーっ」  全く身動きが取れない久遠字の願いを聞こうとはしない名歯亀。  そんな久遠字に更なる追い討ちを名歯亀がしてきたのだ。 「そうそう、この倉庫にある我輩の罰ロッカーは返してもらうぞ!もうす でに鍵も取り返しておいただべぇぇぇ〜」 「それは笛地先生に..いや正人にあげたんじゃないの?」 「奴にはずっと世界中を転勤してもらうだべ〜。何度も言うが絶対権力教 師は二人も要らぬだべぇー!定年はずっと延期し、我輩は恥辱の限りを尽 くすだべぇぇぇ〜」  その言葉を聞いた久遠字は、ここで葉須香の罰について質問してきた。 「それじゃ、須和さんの罰はこのまま継続するの?あれ以上、過激なこと をさせるつもりなんですか?」 「もちろんだべぇぇ〜!罰はもっと過激にするだべぇぇ〜。実はのぉ〜、 終業式に忘れ物をしたら3年の春からは全裸登校の罰をしてもらうだべ〜! もうすでに本人の承諾済みだべぇぇ〜」 「・・・・・・そんな酷いことさせたら男子たちのタガは外れるわよ。いや、あ の裾部も手の付けられない酷い教師になってしまうわ」 「それがどうしただべぇぇぇ〜。奴もようやく我輩に近づいてきたのだべ ぇぇ〜。この学校をこれからも恥辱まみれにしてやるのだべぇぇぇ〜!」 「須和さんはただ忘れ物の癖を治したいだけなのよ..もうこれ以上、罰 を過激にするのはおかしいわ」 「生意気な言葉だべ〜。あともう少しでそんな口も利けないように堕とし てやるんだべぇぇぇ〜!」 「・・・もう1度聞いていいかしら?定年して平和な老後を暮らさなくていい のですか?」 「平和な老後、そんな退屈なもの、まっぴら御免だべぇぇぇぇ〜」 「・・・そう、後悔しないってことね」「何だべ。我輩の辞書に後悔などい う言葉など存在しないだべぇぇぇ〜」 「・・・・・・」 「まあ、葉須香は特別だから、お前が思うような堕とし方はしないだべ〜 それ以外はもう面倒くさいから全裸くぱあの罰で他に任せるだべ〜」 「・・・名歯亀先生も..須和さんのこと、下の名で呼び捨てにするのね..」 「?それがどうしただべぇぇ〜。我輩の可愛い生徒だから当然だべぇぇ〜。 目の中に..いいやチンコの中に入れても痛くないのだべぇぇ〜」 「それじゃ、10年前のことも..すっかり忘れたってことよね..」 「あれは忘れないだべぇぇ〜。我輩の痛い教訓として、これからも覚えて いるのだべぇぇ〜」 「嘘つき..まったく覚えていませんよ」 「はあ?何を言ってるのだべぇぇ〜。さて、そろそろ調教の再開だべぇぇ」    名歯亀が新たな拷問具を用意していた中、突然名歯亀の携帯が鳴り響い た。 「この着信音は裾部か..彼奴め、何かトラブルでも起こしたのだべか?」 「・・・・・・」 「少し待っているだべ。彼奴のメールを確認するのだべぇぇ〜」  携帯を確認した名歯亀がメールの差出人を見て、急に顔を青ざめた。  何故なら、そのメールを出したのは近くで三角木馬に乗っている久遠字 からであった。 「馬鹿な..裾部の着信メール音をいつ変更したのだべ?ん?定年はいつ ですか?いったいどういう意味だべ?そんなの明後日だべぇぇ〜」 「そうかしら?明後日?明日でもいいんじゃない?そうそう、今23時59分 ね..」 「明日?何ふざけたこと言ってるのだべぇぇ〜、我輩は定年などしないの だべぇぇぇ〜!って、久遠字が居ないだべ!?」 「いい加減、きついから抜け出たわ。貴方の後ろに居るわよ」すっ.. 「抜け出るとは小癪だべぇぇ〜。が、絶対権力教師の我輩から逃れられな いだべぇぇぇ〜!何度でも何度でも捕まえてやるだべぇぇぇ〜」  もう1度、久遠字を捕らえようとした名歯亀であったが、自分の手に何 か無いことに気づいた。 「・・・・・・なっ..我輩の..わがはいのぉぉ..」 「くすっ、先生。番傘どこ無くしたんですか?須和さんの忘れ癖、うつり ました?」「く、く、久遠字、貴様ぁぁぁぁ〜」 「先生♪0時になったわ..」「!!!!!!!!!!!!」ビクンッ! ゾクッ!ドクンドクンドクンッ!「・・・お、お、思いだした..」 「くすっ、番傘の場所ですか?」  ボーン..ボーン..  校舎の時報を聞いた名歯亀が何かを思い出したかのように激しく狂乱し てきた。 「あああああ!!!うう!!おおおおおおおおお!久遠字久遠字久遠字〜 久遠字久遠字久遠字久遠字久遠字久遠字久遠字久遠字久遠字久遠字〜〜〜 久遠字久遠字久遠字久遠字久遠字くおおおんんじぃぃ〜!」 「!!ようやく思い出したんですね?名歯亀先生、お久しぶりです♪」 「な、な、何故..我輩は..忘れてただべ..こんなことを忘れるなん て..ありえないだべぇぇ〜」 「忘れるなんて駄目ですよ。先生にも..わすれんぼの罰..与えます!!」 「ま、待て!まてぇ..せめて..我輩の我輩のぉぉ〜、ば、番傘返すだ べ..ば、ば、番傘番傘ぁ、わがはいのぉ〜ばんかさああぁぁぁぁ〜!」 「あ・と・で♪返しますっ」  ボーン..ボーン.. 「ふ、笛地も..ふぇ..ちも..」「さて?何のことかしら..」 「・・・くぉ...んん...じ..ぃ」「先生、定年ご苦労様です..」  ボーン..ボーン..  0時を知らせる音が鳴り響く中、久遠字が名歯亀にこう声を掛けてきた。 「いつか先生の定年祝いを盛大にやりますから。その時を楽しみにしてく ださいね..」  そう言って久遠字は1人、旧体育倉庫を出て家路についた。  朝となり、学校のFAXには絶対権力教師の名歯亀があっさりと定年を 受け入れ、そのまま湯治にいくという連絡が入ってきた。その事を知った 裾部だけが悲鳴みたいな意味不明な言葉を叫んで職員室から飛び出してい った。  かっての笛地につづいて、名歯亀までも黙って定年して消えてしまうな んて何かおかしいと男子たちが怖がっている中、葉須香だけはちょっとホ ッとしていた。 (これで..卒業式で裸にならなくていいんだよね..さすがに罰だから って全校生徒の前では脱げないし..)  そう、名歯亀や裾部が居なくなった為、全ての罰は中止され、卒業式も ごく普通に行われ、そのまま3学期を終え、終業式を迎えた。  この日は4組の男子たちにとって一番来て欲しくない日だったろう。  これで、もう葉須香の罰が見れなくなり、下手したら葉須香とクラスが 分かれてしまうからだ。  まあ、今の状況じゃ葉須香と同じクラスになっても罰が見れるかどうか も怪しいとこなのだが..  どちらにしろ、終業式は普通に終わり、この日も忘れ物をした葉須香は 罰をせずに制服姿のままで過ごせて、名歯亀との約束が無くなったことに 心からホッとしていた。 (よ、よかった..今日、忘れ物したら..始業式は..全裸で登校だっ たわ..そんなのは絶対やりたくないっ!) 「でも..こんな罰があるのに..忘れ物をしたことには反省しなくちゃ。 うん!猛省しなくちゃ!」  終業式を終えた葉須香は家に帰ることにした。本当なら罰として、簡単 なお別れ会に参加するはずだったが、それをする必要もないからだ。  どうやら、名歯亀が定年前に企画していたものであり、この天然温泉で スペシャル打ち上げをするつもりだった。  本来なら忘れ物をした罰として葉須香がやってきて一緒に温泉に入る予 定であったが、肝心の葉須香が来ることは絶対に無い。  けれど、諦め切れない4組の男子たちが1組、3組、5組のクラスの男子た ちを誘って一緒に近くの天然温泉に向かった。  1組の男子たちが悔しさからか防水のカラオケ機材を持ち込んで何故か 軍歌を熱唱している。  4組の男子たちも来るはずの無い葉須香を今でも期待している。 「なあ〜俺たち..いつまで野郎ばかりで風呂に浸かっているんだ..」 「まあ、心のどこかで葉須香ちゃんが来るのを信じているのかもな..」  そんな中、まさかの事態が起こった。それは奇跡と言っていいのだろう。 「お、遅れて..ごめんなさい..」  何と葉須香が本当に温泉に入ってきたのだ。それも葉須香の手には何も 持っておらず、裸のままで恥部を隠さずに現れた。 「み、みんな..今日はやっぱ忘れ物をしたので..猛省する意味で.. 大胆だけど、このままの姿で..打ち上げに参加します」 「うおおおおおおお〜」「か、神よぉぉぉ〜」「奇跡だぁぁ〜奇跡だ!!」  男子たちが感涙しガッツポーズを取っている中、更なる奇跡が起こった。 「なんか私たちが入りにくいんだけどぉ〜。お邪魔だったら帰るよ」 「む〜、本当に4クラスの男子が集まってたんだね〜」 「!!ま、ま、マジかよぉぉぉ〜。3組の相崎と飯倉が裸できだぞぉぉ〜」 「あれが噂のWビックボイン!!すげええええええ〜、ぶるんぶるんだあ」 「お、お、俺たちの前に6つのぱいぱい..ぱいぱい〜ぱいぱいだぁ〜」 「・・・飯倉、ちょっと一緒に揺らしてみ」「む〜、いいけど〜」  ブーーー!!!何人かの男子が思い切り鼻血を噴出した。 「な、何やってるんですか!2人とも」ぶるんぶるん。  相崎と飯倉に怒ってきた葉須香だが、一番おっぱいが揺れていたらしい。  少し興奮が収まってきたところで男子が相崎と飯倉に質問してきた。 「コ、コホン..えっと、何で相崎と飯倉も裸で?」 「って言うか、こんな野郎だらけの中に葉須香1人に出来ないわよ」 「む〜、私たちが葉須香ちゃんを守るんです〜」  いや、かえって火に油を注ぐような状況じゃないっすか?と子羊が3匹 に増えただけで飢えた狼たちにとってはご馳走が倍増した感じだ。  が、至極の幸福はここで潰えた。最後に入ってきた女性を見て、男子全 員の顔が一気に青ざめた。 「みんな〜、裸同士だからって羽目を外しちゃ駄目よ♪」と裸の久遠字が 保護者として同伴してきた。  名歯亀のことでいろいろと噂になっていた張本人を見て男子たちが震え だすのを見ると、どうやら相当、とんでもない噂話が校内に飛び交ってい たのだろう。相崎と飯倉もその真相を知るために恥辱を覚悟して参加した らしい。  ちなみに相崎と飯倉は事前に葉須香に対してこんなことを話していた。 「葉須香、今日の馬鹿げた打ち上げ行く気があるなら、私たちを連れてっ てくれないか?」 「い、いや、まだ行くとは決めてないけど..」 「けど、葉須香ちゃん..今日、久遠字先生に打ち上げに行く気があるな ら、保護者して同伴するって言われたんでしょ..確か」 「うん..名歯亀先生の企画したものだけど..最後まで忘れ物をしたこ とに反省したいし..久遠字先生も一緒なら..」 「その名歯亀のことなんだけど..あいつ専用の絶対権力教師ロッカーが 笛地のときと同じに移動されたのを知ってるか?」 「うん、知ってるよ。罰で使うものが入ってるロッカーだから移動するっ て久遠字先生がちゃんと言ってきたから」 「まあ、別に私たちにとってもあんな奴のロッカーなんて見たくないから いいんだけど..問題はそのロッカーの近くに置いてあったものなの」 「何が置いてあったの?」 「番傘だよ。あいつが絶対に肌身離さず持っていたもんだよ。葉須香じゃ あるまいし、置き忘れするのは変だと思わないか?」 「・・・・・・」 「それに何か名歯亀のロッカーは開けられない様に頑丈な鍵ついてるし、 古い体育倉庫も入れないようにしてあるみたいよ」 「そうなんだ..」 「だから真相を知りたいんだ。あのロッカーの中には本当に罰の道具しか 入ってないかを..」 「!そ、そんなことあるわけ..」 「男子たちがずっと噂してるわ..笛地もあれからまったく連絡くれない し、あの名歯亀が定年して湯治にいくわけないと..やっぱロッカーに..」 「そ、そんな怖いこと言わないでっ!優しい久遠字先生が..ひどいこと するはずないわ..ドラマや漫画じゃないんだから..」 「ともかく、葉須香が心配だから絶対についていくからな」 「うん、わかったわ..」  こうして、相崎と飯倉が一緒に打ち上げに参加することになったが結局、 誰も久遠字に真相を聞くことが出来なかった。  いや、何だかんだ言って、男子たちが久遠字を囲って上機嫌で踊り盛り 上がっている。「あいつら、久遠字を怖がってたんだよな?」「むー」相 崎と飯倉が呆れて男子たちの心変わりに溜息を吐いていた。  久遠字も酒を飲んで酔っているのか、葉須香に罰の踊りをさせたりと男 子たちと一緒に最後まで明るく騒いでいたらしい。  まあ、男子たちの久遠字への誤解が解けたということで、打ち上げは無 事平穏に終わり、これで高校2年生としての葉須香の幕が下りた。    春休みとなり、葉須香は2年生の罰を振り返り、もうこれで恥辱から開 放されるんだと、何か心にポカンと穴が空いたような気もした。  そして、3年の始業式を迎え、やっぱりわすれんぼの罰は一切無くなっ たのである。相変わらず、忘れ物をしてしまい、焦った葉須香だったが、 誰かに服を脱がされることもなく制服を着たままで始業式を終えた。  校門を出る際に風の悪戯か葉須香の耳に笛地と名歯亀の言葉が聞こえて きた。 「葉須香!明日から新しい罰だぞ」「葉須香、明日は新しい罰だべぇぇ〜」  けど、それは空耳で葉須香の瞳からひとしずくの涙が頬を伝った。 (何で..私、涙が..罰が無くなったんだから..嬉しいはず..)


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