プロローグ


 わすれんぼの葉須香。  これが、須和 葉須香(すわ はすか)の代名詞であり、その名が示す 様に葉須香はわすれんぼが多い女の子であった。  小学校の頃からその忘れ癖がひどく、どんな手をうっても効果ない程ひ どいものであり、中学・高校と進んでもその癖が治らなかった。  中学の時は何度か、そのわすれんぼのせいで恥ずかしい目にも何度があ ったが、それでも忘れ癖が治ることはなく、今に至るわけである。  ちなみに中学でどんな恥ずかしいことをやったかと言うと、それは夏の 頃になると何度か繰り返していたものがあった。 「葉須香ぁ〜、見てみて♪もう、着てきたわよ」「美佳も着てきたんだ」 「美佳だけじゃないよ。私も着てるよ。葉須香」 「じゃあ、みんな下に着てるんだ」  葉須香たち女子たちが水泳の授業に備えて、すでに制服の下に水着を着 ていて、それをスカートを捲って見せ合っていた。  もちろん、葉須香も下に水着を着ていたので、みんなの前で思い切りス カートを捲ると、全員の目が点になった。 「どうしたの?みんな..」「葉須香..また忘れてるわよ..」 「えっ?きゃぁぁぁっ」  何と水着を着てくるのを忘れて、思い切り丸出しの下半身を見せてきた 葉須香。  そう、水着を付け忘れてしまうことを夏になると何度かやってしまう。  1番恥ずかしかったのは市営プールで、水着を着てると思って、思い切 りTシャツを捲って、おっぱいを出してしまった時があるのだ。  これが1度だけの過ちなら可愛いものだが、毎年繰り返すのだから、相 当の忘れんぼと言えよう。  ただ、おっぱいを出したと言っても一瞬のことであり、すぐに顔を真っ 赤にして逃げていくので、この子が葉須香だと分かるものは居るはずはな いだろう..  だが、もしこれを毎年、偶然に見てる男が居たとしたら凄いことであろ う。  いや、1人だけ居た..と言うより毎年、同じ忘れ物をしていたので葉 須香の顔を覚えてしまったのかも知れない。 「また..今年も水着を着けるのを忘れたのか..懲りない子だな。この 調子だと今年の夏もあと2・3回、成長するおっぱいが見れそうだな」  その男は毎年、プールの監視員のバイトを副業としてこっそりしていた 者であり、本業は近くの高校で教師をしていたのだ。 「あんな子が俺の生徒になったら、先が思いやられるな..あんなひどい 忘れ癖は見たことがないぜ」  おっぱいを毎年出す少女に呆れ顔を見せる男だが、まさかこの男が居る 高校に葉須香が入学して、本当にこの男が受け持つクラスの生徒になって しまうとは誰が想像できるであろうか。  だが、このめぐり合わせが葉須香にとって今後の羞恥な高校生活を呼ぶ ことになっていくのであった。


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