プロローグ「新人研修前日」
☆新人研修前日☆
「さあ、新入女子社員のみなさん。明日からは都会とは無縁の生活になる
ので、今夜はおいしいものを食べておきましょう」と私たち12人は高級
レストランでご馳走になった。
「弥生。これ美味しいよ」「さつき、これもなかなか美味しいよ」
私たち12人は楽しく食事をし、その後、豪華なホテルに1人1部屋で
泊めさせてもらった。
「うわぁ、広いー。見て夜景も綺麗よー」「こんないい所、泊まれたの始
めて」
そう、12人ともこの崎長商事に入って本当に良かったと思っていた。
新人の研修にここまでおもてなしをする会社など今のこの不況の中どこ
にもなく、自分たちへのあまりの待遇に誰もが心から感謝していた。
だが、これはとんでもない社員研修の嵐の前の静けさにすぎなかった。
翌日、私たちは朝5時に起こされ、みんな眠い目を擦りながらロビーに
集合していた。
「さあ、みなさん。バスが待ってます。すぐに出発しましょう」
「え?まだ荷物が部屋にあるんですが」
「荷物?それは当社の方で研修が終わるまできちんと預かっておきますの
でそのままにしてください」
「え?でも携帯も部屋に...」
「これから行く研修場所はみなさんにも知らせた通りお寺に行きます。だ
から携帯などの俗物は全て持ち込み禁止にさせてもらいます」
「あのーもしかして化粧品もだめなんですか?」
「服はいいんですよね。1週間も同じ服じゃ」
「化粧品やアクセサリは禁止です。あと服はお寺さんの方で用意しますの
で無用です」
「他にはどんなのがだめなんですか?」
「時計、ラジオ、ドライヤーなどの機器も禁止です」
「わかりました...」
「じゃあ、みなさん。バスに乗る前に私に時計やアクセサリを全部外して
渡して下さい」
私たちは素直に時計やアクセサリを全て渡して身1つのままバスに乗り
込んだ。
「ねえ、美奈?これかなり本格的じゃない?」
「洋子もそう思う?やっぱお寺だからなのかな?」
「でも何も持たないっていざという時まずくならない?」
「そうよね。携帯ぐらいは持たせて欲しいわ」
「美奈、洋子。そんなに心配する事ないわよ。参加するのは私だけじゃな
いし..」
後ろからふみが洋子らに話し掛けてきたのであった。
「そういえば、男性社員も参加するんだよね?でも新人の男子はないって
変よね?」
「ないと言うより、このお寺の男子参加定員の100名があっという間に
埋まったからって」
「ふみちゃん。私もそれ聞いた。何かいつも参加倍率30倍ですって!!」
「30倍って言ったら男性社員がほとんど応募してるって事?そんなにい
い研修なのかしら?」
「でもでも、昨日の食事やホテルから予想すればその数は納得できそうじ
ゃない?」
「じゃあ、そんな辛くない研修かもね」
12人の新入女子社員はみんな気軽に今回の研修を考えていた。
だが、ここで考えるべきであった。なぜ男性社員がこんなに応募してく
るかを。
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