第50話「周兄さん」
ふにゃぁぁぁぁぁぁ〜〜〜
昨日から幸せいっぱいで何にも考えられない沙智菜です。
一体何がそんなに幸せかと言うとぉぉ〜〜
やっぱり言えないかもぉぉ〜
もう、本当にどうなっていいぐらいの幸せなんですぅ〜
そんな私に、きっと周兄さんはこう言ってきます。
「今日も朝から幸せいっぱいな感じだな?」
「それほど俺が来たのか嬉しいのか」
「まあ、俺としては嬉しい限りだがな」
きゃはぁぁぁ〜〜んっ♪
そう、今日の周兄さんの声は心の声じゃないんですっ。
正真正銘のリアルな周兄さんが私に話しかけてきてるんです。(ふにゃぁ〜)
実は海外に留学していた周兄さんが休みを利用して日本に帰ってきて、
それも周兄さんの両親が運悪く旅行中ということで、私のところで世話に
なる事になったのです。
つまり、これって同居生活であって、1つ屋根の下で一緒に住んでいる
んです。
さらにはお父さんが今日から出張に行くので、もしかして何かイケナイ
発展をしてしまうかも知れません。
けど、実際はそんな勇気もなく、周兄さんを見ただけで蕩けてしまう私
が過激なことが出来そうにありません。
(それでも満足かもぉぉ〜。こうして一緒に食事するだけで幸せだよぉ〜)
「じゃあ、沙智菜に早知華ねえ。俺はそろそろ出かけるから」
「いってらっしゃい〜周兄さん〜」「周くん、晩ご飯には帰ってくるのよ♪」
「わかってるよ、早知華ねえ。じゃあ行ってくるよ」
(ぅぅ..私が周兄さんって呼ぶのは分かるけど、お母さんを姉と言うの
は何か納得いかないよぉぉ〜)
「ふふ、私が早知華ねえって呼ばれるのが嫌っぽいみたいね」
ぎくっ「別に..昔からそうだったし..」
そう、周兄さんが小さい頃からお母さんとはお隣同士であり、歳が8つ
離れてるとこから姉と弟ような関係だったらしい。
昔からすごく仲が良かった事から、もしお父さんと結婚してなかったら
周兄さんと結婚してる可能性もあったのかも知れない。
(お父さんが周兄さん..それも嬉しいけど何か複雑な気分かも..)
「沙智菜ちゃん、何考えてるの?もしかして私に嫉妬かしら?」
「そんな馬鹿なこと考えないわよ」
「そういや、今夜からお父さんも居ないから3人だけになっちゃったわね〜」
「そうね..」
「もしかしてお母さんもどっか行った方がいいかしら?」
「...ううん。そんなことないよ」(お母さんが居なかったら逆に困っ
ちゃうかも)
「そう?それじゃチャンスを逃しちゃうつもりかしら?」
「チャンスって何よ」
「ロストバージン♪」
「ぉぐ!!」グホゲホッゴホッ!!(何とんでもない事をさらりと言うの
よ!!)
「あらあら、沙智菜ちゃん。行儀わるいわよ」
「しゅ・周兄さんに聞かれたらどうするのよっ!」
「もう家から出てるわよ。周くんも実はあの歳で童貞だから丁度いいわよ〜♪」
「ど・ど・ど・どぅてぃって..どうして、そう言えるのよっ!」
「留学するまで一番近くに居たから分かるのよ。周くんと女の子が付き合
ったとこを一度も見た事ないしね。まあ、そこが周くんの欠点かしら」
「欠点って..すごく真面目でいいじゃないの」
「馬鹿ね♪あんだけのルックスでスタイルいい男が真面目というだけで周
りの女がほっとくと思う?」
「ぅぅ..確かに..」
「私、周くんが居た大学サークルのOBだったから、どんな大学か分かる
し、真面目な男なんて居たら、色んな子が狙ってくるから」
「それって周兄さんがモテモテだったとか..ぅぅ」
「いや、むしろ嫌われていたかも。まあ、あの3人組に近づく女はなかな
か居ないわね」「3人組?」
「周くんと、まさっちゃんと、さっくんの3人組は有名だったからね〜」
「まさっちゃん、さっくん?お、男の人だよね?」
「そうよ。周くんは大学卒業後、海外の大学へ留学中。あとNPOにも参
加してるかな〜。まこっちゃんは高校教師。さっくんはアイドルのマネー
ジャをやってるわ」「高校教師って、もしかして私の高校?」
「違う高校よ。まこっちゃんのことだから、何かすごいことやってそう」
「す、すごいことって..まさか、お母さんが好きそうなもの?」
「そうよ、まあ私はその頃は大学OBだから、聞いた話ばかりだけど、ま
さっちゃん勝手に大学で色んな罰をつくって、女の子たちを辱めてたみた
いよ」「いや、それは不味いでしょ」
「まあ、さっくんも色んなエロイベント開催して楽しんでたから、いいん
じゃない?」「えっと、そんな2人と周兄さんが同じなの?」
「う〜ん、周くんはまあ、むっつりって感じだから何かをする感じではな
いわね。まあ、周くんの周囲は色んなラッキースケベが多発するぐらいか
な?」「何よそれ..」「まあ、周くんは周知さまって呼ばれてたかな」
「周知さま?あっ、周兄さんの名前、周知(しゅうち)だったよね」
「そうそう、周くんって海外のNPOで色んな紛争を平和解決に貢献した
って噂を聞くから、真面目といえば真面目かもね。けど、ヌーディストピ
ース連盟の名誉会長にもなってるから、何とも言えないかも♪」
「いや、その恥ずかしい連盟は何なの..」
何か海外では、周兄さんのことを、お周知さまと称えているみたいだけ
ど、それは聞かなかったことにしよう。
「まあ、真面目ってことにしといて、それだと沙智菜ちゃんが迫っても何
の反応も示さないってことよ。正直、裸で迫っても平然としてるかも知れ
ないわよ」
「ぅぅ..それも何かツライ..」
と言うより、私の知り合いで全然、女性の裸を見ても感じない玄くんが
居るから、玄くんと周兄さんが同じタイプであったら相当手強いかも知れ
ない。
でも玄くんは番頭で女性の裸に慣れた原因があるけど、周兄さんもそう
いう環境だったということなの?
「やっぱ、私がいろいろからかったのが真面目になった原因かしら♪」
「か・からかったって..まさか周兄さんに裸を見せたんじゃないでしょ
うね!」
「それは当然じゃない♪お風呂にだって何度も一緒に入った仲だしぃ〜」
「お・・お・お・・おっ・・おふろおひゅろってぇ..」
「そんなに動揺するほど、危ないことをしてないわよ。大体、姉弟のよう
な関係だったし..そういうエッチな発展もしなかったし〜」
「いや..発展されても困るんだけど..」
ううぅ..周兄さんがあそこまで真面目なのは、お母さんがいろいろや
ったせいってこと?もしそうだったら、ちょっとお母さんを軽蔑しちゃう
かもぉぉ〜。
「あらっ?何か言いたそうな目ね。いっとくけど、原因の大元は他にも心
当たりあるから、お母さんだけ悪者にしないでね♪」
じぃぃぃ〜「その話、本当ぉ..」
「んもぉ〜母親を信じなさいっ。ほら、沙智菜ちゃんも見覚えあると思う
けど、周くんと仲がいい悪友が何回も一緒に遊びに来てたでしょ?」
「!!ま、まさか、それがさっきの3人組!?」
「ピンポーン!大正解っ」
「いやいや、ちょっと待って!少し危険な感じぽかったけど、真面目に高
校教師とアイドルのマネージャーをやってるって周兄さんが言ったし..」
「あっ!そういえば、まさっちゃんって、はっちゃんと同じ高校よね」
「そうだよ!そんなアブナイ教師がはっちゃんと同じ高校だなんて..」
「あの子なら、まさっちゃんの罰受けてそうかも」
「そんな事言わないでぇぇ〜。はっちゃんって結構、抜けてるとこあるん
だから〜。プール行くのに水着全部忘れる子なんだからぁぁ〜」
「でも、さっくんは何人かの清純アイドルのマネージャーをやってるから
真面目なんじゃない?」
「そ、そうかな..いっちゃん最近TVで恥ずかしいことしてるし..」
まあ、レギュラー番組増えてるから、結果的には良いみたいけど、そん
な2人の学校や芸能界には行きたくないかも..
「まあ、そういうことだからお母さんを疑っちゃだめよ♪沙智菜ちゃん」
何か責任転嫁された気もするけど、あんまり突っ込みたくないから、こ
れ以上は聞かないことにしよう。
「まあ、私も少しぐらい原因となってるし..やはり姉のような立場の私
としては、いつまでも童貞の周くんに責任を感じてしまうのよね..」
「童貞って..」
「でもでも!母親の責任を娘が解消してくれそうだから安心できそうね♪
沙智菜ちゃんの処女をあげるということで」
「お・お母さんっ!そんな簡単に言わないでよ」
「あら♪バージンは周兄さんのものなんだからぁぁ〜って、よく言ってな
かったかしら」
「げほげほげほっ..」
「んも〜、そんなにむせる事ないわよ」
(誰がそうさせてるのよぉぉぉ〜)
「ど・ど・どこで私がそんな事、い・言ったのよっ?」
「しいて言うとオナニーの時かしら..それともピンチになった時あたり
かな♪」
「ぅぅ..」(どこまで知ってるのよぉぉぉ〜ぅぅ..こわいよぉぉぉ〜)
「今日からお父さんも居ないから、目をつぶってあげるわよ♪ここはさっ
さとやっちゃいなさい」
「そんなこと出来ないよっ!」
「ちぇっ、言ってくれればベットも一緒にしてあげるのに〜」
いったい、どこの世界に娘のロストバージンを勧める母親がいるのよぉ
ぉぉぉぉ〜〜
ここで私が頷いたら本当に一緒のベットで寝かされそうだよ..
(一緒のベット..周兄さんと一晩いっしょいっしょいっしょぉぉ〜)
ぼっ!そんな音が出るかのように私の顔が真っ赤になってしまった。
「はぁぁ〜、やっぱ駄目そうね..その調子じゃ..」
ため息をはくお母さんを見て、悔しい気持ちにもなるが確かに駄目かも
知れない。
正直、周兄さんと一緒に寝れるだけで幸せいっぱいで何も出来なくなっ
ちゃうから..
だが、これでお母さんが素直に引き下がるわけでもなく、この後で本当
に洒落にならないことを仕掛けてきたのであった。
お母さんのせいで朝っぱらから顔を真っ赤にして学校にいく羽目になっ
た私。
でもそんなことは幸せいっぱいの今の私にはどうでもいいかも知れない。
何せ、家に帰れば周兄さんが居るし、今日は私の手料理をご馳走するつ
もりなんだもん♪
(ぅぅ..今日が6時間目まであるのが恨めしいよぉぉ〜)
キンコーンーカンコーンー。放課後の鐘と共に急いでデパートへ買い物
に向かう。
周兄さんへの手料理の食材を買うためであり、ここはしっかりと吟味し
なくちゃ。
(これで準備ばっちりだわっ!)
食材も揃えて、すぐに家に帰った私だが玄関に周兄さんの靴がないこと
に少しがっくりとしてしまう。(まだ帰ってきてないんだぁぁ..)
まあ、今のうちに食事を作ればいいだけの事だし、ちょっと早いけど台
所に向かうとお母さんがニヤニヤしながら私に話しかけてきた。
「おかえり〜沙智菜ちゃん。今日はいつもより材料が高めみたいね〜ふふ」
「いいじゃない。今日は私の料理の腕を見てもらうんだから」
「はいはい、私はその分、ゆっくり楽できそうね〜♪」
そういって居間の方にいってTVを見始めるお母さん。
邪魔されるかなと思っただけに、何か拍子抜けした感じ..
とりあえず、これで料理に集中できるし、早く作らなくちゃ!
こう見えても料理には自信があるし、周兄さんが好きな和食系はほとん
どマスターしているから、今日は和食のオンパレードにする事にした。
買った魚の背と腹の両方に包丁を入れ、中骨を切り離しながら下ろして
いく。
周兄さんが舌鼓を打つぐらいの料理をご馳走してあげるんだから♪
こうして料理を次々と完成していき、後は周兄さんの帰りを待つだけだ
が、なかなか帰ってこない周兄さん。
晩ご飯前には帰るって言ったのに..そろそろ帰ってきてほしいんだけ
ど..
時計を見て心配している脇で、いつの間にかお母さんが私の作った料理
をどんどんとつまんで食い始めていた。
「周くん遅いわね〜それにしても美味しいわね。こっちもなかなか♪」
「お母さん、どんどんつまみ食いしないでよっ!大人しくTVでも見てな
さいよ」
「暇なんだもーんっ」「暇だからってつまみ食いしないで」
「わかったわよ。しょうがないから先にお風呂に入ってこよ♪」
「ちょっとお母さんっ!食事の前にお風呂入るつもり?入るの早すぎるん
じゃない」
「そうね..じゃあ周くんが帰ってきたら一緒に入ろうかな♪」
「お・お母さんっ!」「半分だけ冗談よ♪」「半分って..」
何か本当にやりそうな気がしたので、ここは周兄さんが帰ってくる前に
お母さんを風呂に入らすことにした。
「わかったわよ。入ってきていいわよ。でも周兄さんが帰る前に出てきて
よ」
「OK!じゃあ料理ももうほとんど出来てるみたいだから沙智菜ちゃんも
一緒に入ろ♪」
「何で私まで入らないといけないのよっ」「ああ〜もしかして周くんと入
るつもり!」「入らないわよっ!」
「うそうそ〜こっそり狙って入るつもりでしょ。「きゃあ、周兄さん入っ
ていたの」って感じで♪」「しないわよっ!」
「じゃあ、私と先に一緒に入っても問題ないよね〜」「・・・わ・わかっ
たわよ」
こういう時の悪戯心いっぱいのお母さんは、ほっとくと何をするかわか
らないので、ここは素直に入った方がいいかも知れない。
冗談抜きでお風呂の途中で周兄さんが帰ってきたら、わざとタオルを巻
いて出迎えようとしそうだからだ。
「じゃあ、先に入ってるから早く入ってきてね♪」「とりあえず、もう少
しだけ料理をしたら行くから」「待ってるわよ♪」
何か変な企みがありそうな気もするけど、周兄さんが帰ってくる前に済
ませないと余計にとんでもない目に遭いそうと思った私は区切りいいとこ
ろで料理を終えて、お風呂場に向かった。
すでにお母さんが中に入っているらしく、籠にはちょっと派手な下着が
脱ぎ捨てられていた。
「これって勝負下着じゃない..何でこういうのを普段穿いてるのかな..」
服を全部脱ぎ、真っ裸の状態でガラス戸を開けて風呂場の中に入る私。
ガラガラガラ..「お母さん、あの下着派手すぎるわよ..」
「ん?沙智菜?」「えっ!?」
目の前のお風呂に入ってる人を見て目を疑ってしまう。
お母さんにしては身体がゴツゴツしてるし..何せ、おっぱいがない..
顔を見るとそこにはどう見ても周兄さんにそっくりな..いや周兄さんの
顔をしてる人が..
「ええええええええぇぇぇっ〜〜〜な・な・な・何でなんでなんでぇーー」
とりあえず、よくわからないけど、ここから出なくちゃ!
そう思って閉めたガラス戸を開けようとすると何故か開いてくれない?
「えっえっ..これ内側しか鍵がないのに何でなんでなんでよぉぉぉ〜〜」
ガチャガチャガチャ...「う〜ん、最近の防犯グッツは凄いわね〜♪」
お風呂場の外側から聞こえる中に入ってると思われた母親の声が聞こえ
る。
「お・お母さんっ!何で外に?そ・そ・それに何でなんでしゅ・しゅ・周
兄さんが」
「そんなに驚く事ないわよ。周くん、とっくに帰っていたのよ」
「うそっ!だって玄関に靴が..」「あっ、それ私が片したから♪」
「何ですって!周兄さん帰ってないって言ってたでしょ!」「そんなこと
言ったかしら〜」
(は・はめられた..これが目的だったのね..それにしても実の母親が
こんなとんでもないことしていいのぉぉぉーーー)
お母さんの策略にまんまとはまって一緒の風呂場に裸で入れられてしま
った私。
こ・この後、いったいどうしたらいいのよぉぉ〜〜
ああぁぁ〜もうお尻は見られちゃったじゃないのぉぉぉ〜〜〜
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