第4話「猛烈お母さん」(挿絵:奇界皇帝さん)


※時々CGと文字が重なる場合がありますので、その時は1回再読み込みしますと直ります。

 里奈穂が恥ずかしい覚悟をしてから2日後、ついに里奈穂が補欠で出演 する”はちゃヤリ”の1回目の収録が始まった。  里奈穂の設定はこのはちゃヤリに補欠として入るのを、あるコーナーで 宣言することになっていた。  そのコーナーとは今”はちゃヤリ”で名物コーナーとなっている学楽ば んびの加山がメインとしてやっている「猛烈お母さん」と言うコーナーで あり、猛烈お母さん役の加山が家族役のメンバーと一家団欒してる中、新 人のアイドルが訪問して自分のCDや番組をPRするものであった。  もちろん、単純にはPRは出来ず、PRする時は猛烈お母さんである加 山を怒らして、加山がかけるジャイアントスイングで回されてる間だけP R出来るのだ。  ここでの売りは新人のアイドルがスカート姿で回され、パンチラなどが 放映されるところが見どころであろう。  そう、里奈穂はそのコーナーに挨拶しに来てレギュラーになる試練とし て回される設定なのだが、意外にも里奈穂の姿はスカート姿ではなく普段 ”はちゃヤリ”メンバーが着ている番組ジャージでいいとの事だった。  けれど、注文もいくつか出されておりジャージの下は下着のみの着用と 言われていた。  まあ、里奈穂もこれぐらいは予想していたので素直に下着の上にジャー ジを着たのだが、あるトラブルが発生してしまった。 「!!何?このジャージ?私の寸法計って作ってないの?うそー」  何故か、渡されたジャージは里奈穂の寸法とは違く、上は手がだぼだぼ になるほど大きかった。 「まさか下もだぼだぼじゃないよね。うん。こっちは大丈夫だけど少しき ついわ」  下は少しきつめだったが、回される事を考慮すればこれが丁度良い感じ がした。  けれど上は明らかに作為的な物があり、寸前で渡された台本を急いでチ ェックしてみた。 「あーやっぱり」里奈穂は大声を挙げた。  何と、台本には里奈穂が回され続けてる間にだぼだぼの上のジャージが めくれて、ブラが露出するとはっきり書かれていたのであった。 (ショーツじゃなく、ブラの方を晒すということね..)  しかし、これぐらいは予測していただけに仕方ないと思い、そのままの ジャージ姿で収録をする事にした。 *******チャララーラランララン(本番)******  猛烈お母さん「さあご飯よ。今日もいつものステーキよ」  長男(エイエイ鹿村)「お母さん。今日新しい家族増えるって本当?」  お父さん(永峰)「うむ。実はいろいろな事情で施設に預けてた娘が戻 ってくるんだ」  次男(泣きっこ浜耳)「けっこう可愛い子みたいだよ」  少しの間メンバーによるコントが続き、里奈穂が現われ挨拶をした。  里奈穂「こんにちは。お母さん会いたかったよ」  猛烈お母さん「おお、里奈穂すっかり大人になっちゃって」  お父さん(永峰)「さあ、一緒にステーキを食べましょう」  簡単な挨拶の後、またしばらく里奈穂への簡単な質問へとコントは台本 通り続いていた。  お父さん「ところでうちの家族になるって事はレギュラーになるのか?」  里奈穂「はい。あっと言う間に番組の看板娘になっちゃいます。あはは〜」  猛烈お母さん「カチン!みんなフォークをおきなさい」  台本どおりいつもの加山のセリフが始まった。  猛烈お母さん「ひとぉぉーつ!加山家家訓っ!」  全員一同「「加山家家訓っ!」」  猛烈お母さん「あっさりレギュラーになれると思う娘は競馬でウインナー 1本、馬に投げるであります」  全員一同「「馬に投げるでありますっ!」」  猛烈お母さん「それじゃ!いくぞぉ〜」    猛烈お母さんのわけのわからない家訓でスタジオが軽く笑い、晩御飯が 乗ったちゃぶ台をどかした後で、いよいよメインのジャイアントスイング が始まった。  里奈穂はさっそく台本通り寝転び、両手を後頭部にあてスイングで回さ れるのを待つ。あとは加山が台本どおり里奈穂の両足をがっちりと掴んで きて回すだけである。 「よーし行くぞ。これがはちゃヤリの試練だー」 「はいっ、お願いします」 「おりゃぁぁぁ〜、おりゃおりゃぁぁぁ〜」ぶんぶんっ。 「きゃぁぁぁ〜、きゃぁぁぁぁぁ〜」(結構、このスイングすごいわ)  里奈穂が加山によって思い切り回された。だが意外な事にだぼだぼのジ ャージがあまりにも大きすぎたせいで、なかなか台本どおり里奈穂の上着 は捲られなかった。 「おりゃおりゃおりゃぁぁぁ〜」(まだ捲れないのかよぉぉ〜)  ぐるんぐるん〜ぐるんぐるん〜 「きゃぁぁぁ〜、きゃぁぁぁぁ〜」(えっ?まだ捲れないのぉぉ〜)  一応、ここはお約束で里奈穂の上着が捲れてブラが丸出しになるのが決 まってる大事なお色気サービスシーンなので、加山は捲れるまで回し続け るしかなかった。 「まだまだだ..はぁはぁ」「頑張れ、お母さん」  メンバーの応援を受けて、必死に回し続けた加山だが、身体の方が疲れ きっており、限界に近づいていた。 「まだまだ..」(嘘だろ..まだ捲れないのかよぉぉ〜)  息を切らしながらも、何とかして台本通りになるまで回し続けようと思 っていた加山だったが.. 「もーだめだ」加山は身体の限界がきてしまいそのまま諦めて里奈穂を放 り投げてしまい、ふらふらとした千鳥足で、セットのタンスに頭をぶつけ て倒れたのであった。  失敗した加山だが、上手く頭をぶつけた事で笑いがくると思っていたが、 何故かスタジオ内では笑いとは違う黄色い歓声があがったのであった。  加山が不思議そうに里奈穂の方へ向くと何故か下半身が丸出しになって る姿が目に入ってきた。 「うぉっ?な・なんで下半身がすっぽんぽんなんだぁぁ〜!」  里奈穂の方も顔を真っ赤にしてお尻を丸出しにされた姿に動揺しており、 どうしていいか分からずパニックになっていた。 (ぁぁっ..どうして..お尻が?えっ?ええぇぇぇっ)  そんな里奈穂を見て、加山自身もどんどん慌てる中、エイエイの鹿村の キックが加山の顔面に炸裂したのであった。 「こらー加山!何するんや。こりゃほんましゃれにならんで。ばか加山」 「おい、何するんだ。おれが何したって言うんだよ!」 「自分の掴んでるもの見ろや。どあほ」 「うわあ、何だこりゃぁぁ〜」  そう、加山が掴んでいたのは里奈穂の下のジャージであった。そう、放 り投げる時、間違えて掴んでしまったのであった。 「これは事故だよ。いいじゃねえか。ジャージの下ぐらいよー」  加山がいいわけするとまた鹿村のキックが飛んできた。 「あほ!よくそのジャージ見ろや。ほら、ちょっと振ってみい」 「あーー何なんだよ。振ってどうするんだ?意味ねえな」とりあえず軽く 振った加山の前にとんでもない物体が落ちてきたのであった。  そう、一見ただの布切れに見えたその物体は何と里奈穂のパンティであ り、どうやらズレ防止にきつかったジャージがそのままパンティを引きず って下ろされてしまったのだ。 「!!うわぁぁ〜まずいっ。こりゃ、やべーよ。鹿村ぁー」  ようやく事の真意を知った加山が慌て始めた。  しかし、加山の反応は遅すぎであり、他のメンバーやカメラには投げた 時にジャージの下がすっぽり抜け下半身丸出しで吹っ飛ぶ姿を見ていたか らだ。 「うぁぁー!やべーよ。やべーよ」急に困惑してきた加山を見てスタッフ が収録を中断しようと来た時、意外な展開が起こったのであった。  何と下を脱がされた里奈穂がタオルを巻いて加山の前に座っておじきを してきたのだ。 「お母さん。回してくれてありがとうございました」  恥ずかしいハプニングがあったにも関わらず、里奈穂が台本通りに続け て見せてきた。  加山はそんな展開に一瞬驚いたが、里奈穂の必死な努力に応えるために 芸人魂でその場を続かせる決心をした。 「・・・ううん。あなたも良く頑張ったわね。ごめんなさいね。下脱がしち ゃって。ついパンティも脱がしてしまったわよ〜」 「・・・いえ、そんなこと気にしないでお母さん。私、お母さんの娘なん ですから」 「・・・」(おいおい、いい受け答えしてくるなぁ〜)  少し加山が間を置いてしまったが、里奈穂の頑張りに芸人として応えな ければいけないと思った。 「さすが私の娘だわ。それじゃ、続行しても構わないかしら?嫌ならここ で止めるわよ。まだ脱げるかも知れないし」 「いえ、ジャージと下着を返してくれれば大丈夫ですよ」とにっこりと里 奈穂が返事を返してきたところで.. <カーット!!はいOK!!>  進行どおりの台本のカットが入り、加山がひと休めする為に収録は一時 休憩に入った。  それと同時に加山と鹿村がすぐに里奈穂の前に行って土下座をしてきた のであった。 「ごめん。里奈穂ちゃん。俺そういうつもりで投げたんじゃないんだ」 「俺からも謝る。加山はそういう器用なやつじゃないんや」  真剣に謝る2人を見て里奈穂は少し笑いながら、こう言ってきた。  クスッ。「顔あげてください。さっきのが事故なのはわかってますよ。 私もウブじゃないのであれぐらい気にしないで下さい」  本当は加山に対して怒ろうと思った里奈穂だったが、先にこんな真剣に 謝ってくる加山を見て悪気が無い事がわかったのであった。  その上、直接関係ない鹿村の謝る姿を見て意外にここの人達の根が真面 目である事がわかったからである。  スタッフの方も里奈穂が思ってた人達とは違い、真剣に謝罪をしてきて おり撮り直しをしようと言う案も出てきた。  里奈穂自身も撮り直してくれるならこれほど嬉しい事はなくその案に乗 ろうとしたのだが.. 「あのーもし良かったらさっきの収録内容見せてもらえませんか?」  なぜか撮り直す前に自分の初のコントの出来を見たくなった里奈穂。  収録した映像が流れるとスタッフは遠慮してその場を少し離れてくれた。  里奈穂は一人で映像を見ており例の箇所が流れると思わず吹いてしまっ たのであった。 「ははは、これおもしろい。あははは」  そう意外にも、恥かしいはずの自分のシーンが滑稽に見えてしまった。  映像が終わり、しばらく里奈穂は考えるとプロデューサーにとんでもな い提案をしてきたのであった。 「あのーさっきの映像、使っていいですよ。正直おもしろかったですし、 お尻ぐらいなら出されても大丈夫ですから」 「!?いいのかい?お尻と言っても下半身が出ているんだよ」 「くすっ。いいですよ。危ない所だけ、きちんと処理してくれるなら2回 目もこれでいいですよ」 (あれ?私何を言ってるの?あれ?なんでこんな事を?)  里奈穂はなぜか自分の内心とは違う事を言ってきたのであった。 「そうか!実はな。僕もさっきのはすごく良かったと思ってたんだ。君が そう割り切ってくれるんならこれほど嬉しい事はないよ」 「は・はあ...」(え?何かまずい気が。) 「みんなーちょっと聞いてくれ。台本変更だ。加山くん、さっきのとって も良かったよ。里奈穂くんもさっきの気にいったとの事で2回目以降もこ れで行こう!」 「いいんすか?里奈穂ちゃん?」 「・・・ええ、よろしくお願いします」 (ちょっと?私、なに口走っているの?) 「あっ、そうだ!里奈穂くん。わがままついでに1つお願いしたい事があ るんだが...」 「お願いですか?」 「ああ、ちょっと耳を貸してくれないか?」  プロデューサーはある提案を里奈穂にしてきたのだが、それを聞いた里 奈穂は一瞬にして顔を真っ赤にしたのであった。 「ええっ?そんな恥かしい事を?」(ドキッ!) 「そうだよな?でも面白そうなんだけどな...」プロデューサーはちら っと里奈穂の顔を伺った。 「・・・・・・・で・でも...」(ドクンドクンッ) 「ここは何とかお願いしたんだよ...」 「・・・わ・わかりました...番組が盛り上がるんならば...」 (わ・私?な・何を言ってるの?どうしてこんな事を?)  里奈穂はプロデューサーが提案した台本変更に素直に承諾してしまった。  本来、台本では1回目のスイングで里奈穂の上が捲れ、ブラが見える予定 で進んでいたので、2回目の投げるきっかけは加山の「何カップかい」の質 問に里奈穂自身が上着を捲って「これぐらいです」とブラを見せて加山を 怒らせる流れとなっていた。  つまりはブラが見えなかったことにより、次の上着を捲るシーンも変え ざるを得ない。  そこで上着を捲るところを取りやめて、ブラをジャージを着たままで外 してもらって、直接ブラを加山に見せる変更を出してきた。  これを承諾するということは、里奈穂は2回目のスイングをノーブラの ままでしなければならず、最悪はおっぱいまで晒すことになってしまう。  普通なら断るのが当然なのだが、里奈穂は番組が盛り上がるなら、おっ ぱいが出てもいいと言ってしまったのだ。 (どうして..こんな恥ずかしいことをOKしちゃったんだろう..)  里奈穂は自分自身を疑った。これじゃ自分から望んで次々と恥ずかしい 目に遭いにいってるようなものだ。  どうやら、この撮影によって、里奈穂は奥底に隠されたものを徐々に呼 び起こされているようであり、このことに気づいたのはずっと後のことで あった。


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