第6話「火がない所に煙ある」


 何か気がつくと6話まできてしまい、いまだに続く事に驚きの紺屋 麻 希(出席番号6番)です。  いつもなら1年4組の教室で始まる物語ですが、今日は違った場所での始 まりとなりそうです。 【柔紀】「いいかっ、今日は社会科見学なんから、くれぐれも羽目を外さ ないように!以上」 【美紗里】「高校生になって社会化見学なんて..何か情けないわ」 【柔紀】「信谷、女子が社会化見学であることを感謝した方がいいわよ。 男子は社会科実習よ。厳しいぞ。きついぞ。臭いぞ」 【麻希】(くさいって何なのよ..) 【蘭】「先生っ、試食はまだですかぁぁ〜。ここってお菓子メーカだろ。 新作のお菓子が食い放題だよぉぉ〜。美味しいんだよぉ〜」 【凛】「今回はあうあうじゃないのか..」 【麻希】(本当だ..いつの間にか戻っていたんだ..) 【沙智菜】「蘭、ダメよ。静かにしないと」 【蘭】「ぶーぶー、だってお菓子だよぉぉ〜新作だよ〜甘いんだよ〜」 【柔紀】「お菓子なら、見学のあとで出るから我慢しなさい」 【蘭】「じゃあ、さっちん。速攻で見学すませよーぜ。そして、お菓子の 一番乗りだぁぁ〜」 【美紗里】「蘭っ!ちゃんと見て回るのよ。社会化見学なんだから」 【蘭】「固い事いうなよぉ〜、お菓子なんだよ〜、甘いんだよぉ〜」 【凛】「誰か..2組からアシカを借りてこい..」 【取り巻き】「内川さま?さっきから何じっと1点を見てるんですか?」 【内川】「な・何言ってるのよっ!別に私が新作の最中菓子を見てると思 っているのっ!」「・・・見てたんですね..」「み・見てないわよ」 【取り巻き】「話は変わりますが、今日はいつもの1号が出てこないんで すが..姿も見えませんし」 【内川】「そう言われてみると見かけないわね..いつもだと、「壱郷で す。走って見学していいですか?」って言いそうだけどね」 【取り巻き】「居なければいないで、何か不気味なものを感じますね」 【内川】「今日は全クラスの女子が集まってるから、どっかのクラスに紛 れているんじゃないの?こっちは平和だからいいけど..」  内川さんの言うとおり、壱郷さんのことだからどこかのクラスに行って そうかも..差し詰め、後ろの方で揉めている2組女子かな.. 【津栖紀】「ちょっと、何で子キリンは駄目なんですかぁぁ〜。これは決 して校則違反じゃないですよ。社会科見学にライオンや虎は持ち込むなと 書いていますけど、この子は小キリンですから」 【荷剛】「いつのまにか、ライオンや虎の記載が出来たのかよ..いった い、どんな高校だよ。ここは」 【リー】「あははははははっ、可愛いではないかぁ〜。ほら、キリンさん。 極上肉まんを投げるのダー。ちゃんと口を開けて食べるのダー」 【荷剛】「おいっ、キリンは草食動物だぞ」 【リー】「えぇぇーー、じゃあここは某国で有名なダン●ールまんかな〜」 【荷剛】「ヤギじゃないんだから、草を与えろ、草を!」 【リー】「ぶーぶー、そんなこと言うと、勝利の陣を描いちゃうぞぉ〜」 【荷剛】「や・やめろぉぉー、それは濡れまくりの陣だろぉぉーー!」 【リー】「あはははははっ、これは勝利の陣ダー、勝利の陣ダー♪」 【論愛】「ちょっと荷剛さんにリーさん、静かにしなさいよ」 【荷剛】「誰だ?お前」【リー】「知らない人ダー」 【論愛】がぁぁぁぁぁぁぁーーーんん!「そ・そんなぁぁぁーー!私は2組 の千最堂 論愛(せんさいどう ろんあ)で、学年トップ1を不動にして いる秀才で、歩く図書館とも言われているほど本が好きで図書委員をやっ ている私を知らないって言うのぉぉぉーーー」 【荷剛】「何かすっげぇ〜、初めての人にも分かりやすい説明をしてきた ぞ..論愛ってこんな性格だったか?」 【リー】「あはははははははっ、冗談なのダー。論たん可愛いのダー。特 におっぱいがぁ〜」 【論愛】がぁぁぁぁぁぁぁーーーんん!「ひどいわっ!私がカップ付特殊 ブラ、決してカップが入ってることがバレナイ自然なバストライン保障付 き、2枚お買い上げの方には1枚プレゼントを付けているからってぇぇー」 【荷剛】「いや..そんなに詳しく説明しなくてもいいんだけど。胸がア レな気持ちは私も分かるから..」 【リー】「あはははははははっ、ぺたんぺたんダー。リーはぼいんぼいん なので分かりませーん♪」 【荷剛】「リー、一度でいいからあんたを思い切り殴りたいよ」 【論愛】「それに関しては同感ね..」 【リー】「あはははははっ、校内暴力はダメだよー。もっと健全なもので 決着つけないとね〜。ねぇ〜、いつも2位の2号ちゃん」 【荷剛】「2号って言うなぁぁ〜。荷剛って言えぇぇー!明日こそはあの 1号に勝ってやるんだからっ」 【リー】「そうなんダー。そういえば、今日は1号ちゃんの姿見えないね。 4組にも見かけないけど、どうしたんだろ〜」 【荷剛】「そんなの私が知るわけないだろ。大方、後ろの6組の方にいる んじゃないのか。6組には噂のりっくりっくがいるみたいだから」 【璃紅】「今日は社会科見学だからぁ〜、ブログ更新、更新っと♪」 【才蔵】「って毎分更新はやりすぎだからっ!それに堂々と企業秘密をア ップするなよぉ〜」 【璃紅】「ちょっと才蔵、何で男子のあんたがここにいるのよ?男子は社 会科実習でしょ。居る場所を間違えてるわよ〜」 【才蔵】「お前のお目付け役として特例として選ばれたんだよ。お前を1人 で野放しにはするわけにはいかないからって」 【璃紅】「んも〜、才蔵ったらオーバーなんだからぁ〜。私のブログって 結構人気があるのよ〜。先日も某国際組織の情報をこの携帯から・・・」  ズキューーンンン!ボンッ!(携帯が撃ち抜かれた音) 【璃紅】「あれぇ〜、携帯壊れたみた〜い。安い携帯って長持ちしないね〜」 【才蔵】「それっ、撃ち抜かれてますからっ!銃で狙われる情報なんかア ップしないでくれよぉ〜」 【璃紅】「えっと、狙撃場所は向かいビルの屋上からかな〜。距離として は900ヤードってとこかな・・・」 【才蔵】「900ヤードって..820mと言ってくれっ」 【璃紅】「わるい子はぁー、わるい子はぁぁー、おまじないでドドンッだ〜」  ドドォォォーーン!!(遠くで聞こえる謎の爆破音) 【才蔵】「璃紅〜、何をやったぁぁー!あったはずの向かいビルが無くな ってるぞぉ〜」 【璃紅】「きっと解体作業か何かやってるのよ。あういうのはちゃんと人 が居ないのを確認しているからぁ〜」 【才蔵】「それ、矛盾してますからっ!さっき屋上で狙撃したって言った じゃないかぁ〜」 【璃紅】「才蔵ったら、そんなの冗談に決まってるじゃない〜。日本でそ んなことあるわけないじゃない〜。軽いジョークなんだから(藁)」 【才蔵】「かっこわらの使い方、違いますからっ!」  何かいろんなクラスで様々な問題を起こしてるようだけど..はっきし 言えるのは絶対、来年の社会科見学ではここには呼ばれないということで あろう。 【取り巻き】「内川さま、何かさっきから他のクラスで騒がしいようです が、負けずにこちらも何か騒動を起こしましょうっ!」 【内川】「何でそうなるのよ。張り合う必要なんてないでしょ」 【麻希】(私もそう思う..騒動なんて勘弁して欲しいわ) 【取り巻き】「内川さま、弱気になってはいけません。ここは是非、倉庫 を打ち壊してお菓子をばら撒くぐらいのことをしなければ!」 【柔紀】「おいっ、そこの2人。担任がいるまえで一揆の相談なんかする な。内川さんも一揆なんて起こさないでね」 【内川】「誰が起こすか、そんなものっ!」 【蘭】「一気食いなんて許さないぞ。試食品はみんなのもんなんだからな」 【凛】「その一気とは違うぞ..」 【柔紀】「まあ、一気食いなら止めはしないわ。出来るものならね」 【美紗里】「先生っ、蘭にそんなこと言ったら本気で食べますよ」 【蘭】「大丈夫〜、みんなに1個ずつ残すから」 【凛】「1個だけかい..」 【柔紀】「とりあえず、もうすぐで試食だから好きなだけ食べなさい♪本 当に遠慮いらないからね」 【沙智菜】「うわっ..すごい挑発的な言葉だよぉぉぉーーー」 【蘭】「じゃあ遠慮なく食うぞぉぉーー!内川、ここは一気食いの勝負と 行こうぜ」「するかっ!」  あの義岡さんにいくらでも食べていいなんて本当に無謀な言葉だと誰も が思ったが、試食のコーナーに着くと先生の言っていたことがよく理解し た。 【美紗里】「えっ..な・何なのよっ!この大量のお菓子の山はっ!」 【工場長】「1年4組のお嬢様方、見学御疲れ様です。今日は皆さんが満 足できますように沢山のお菓子を用意させていただきました」 【沙智菜】「たくさんって..限度があるような..」 【蘭】「わぁぁーーいいっ♪お菓子の山だぁぁーー!いっぱい食べれるぞ」 【凛】「お菓子の山というよりは..テーブルがお菓子の山に埋もれてい るぞ..どういうことだ?」  無数のお菓子がこれでもかというぐらいに大量に置かれており、正直い って異常すぎる数だった。  まるで過剰な接待を受けているような感じで工場長の腰の低さも尋常じ ゃない気がする.. 【工場長】「もし、お菓子が足りないようでしたら、すぐにラインから持 ってこさせますので遠慮せずに食べてくださいね」 【美紗里】「いや..これ食べきれるレベルじゃないんだけど..」 【蘭】「さあ、食べるぞぉぉー!無くなったら即たのもーぜ」 【凛】「これを食い尽くす気か..だるまのように太るぞ」 【蘭】「あははっ、大丈夫だよ〜。あたしっていっぱい食べても太らない からぁぁー」  一瞬、義岡さんの方へ何人かの女子の殺気の視線が向いたような..  けど食べても太らないなんて羨ましいよぉぉぉーーー。 【取り巻き】「内川さまっ、こういうものを見かけましたよっ」 【内川】「これは新作の最中菓子っ!もしかしていっぱいあるの?」 【取り巻き】「結構、あちこちにありますよ。どうしますか、内川さま?」 【内川】「急いで1つ残らず集めてきなさいっ!」「御意ですっ」 【麻希】(いや..集めるまでもなく、たくさんあるんだけど..) 【蘭】「何そんなに最中ばっかり集めてるんだよ。そうだ、これちょっと 火を通すと美味しそうかもぉ〜」 【凛】「火を通すってどうする気だ?」 【蘭】「暑姫(しょき)っち。これ、ちょっと焼いてくれないかぁ〜」 【暑姫】「いいですわよ。少し焼けばいいのかえ」  そういって義岡さんから受け取った最中を手にした女子が、いきなり手 のひらから火を出してきた。  もちろん、これはマジックで出す火ではなく正真正銘の炎を手のひらか ら出したのだ。  最中を手のひらの上で焼いている女子は暖々堂 暑姫(だんだんどう  しょき)さんと言い、実は超富豪の1人娘である。  けど、お金持ちである割には鼻につかない女子であり、成金とは違う 真の令嬢というステータスがすごく合うんです。  そして、令嬢に相応しい美貌・才能をもっていることからクラスの男 子たちの大半のハートを奪っており、男子たちの間にはショキちゃんフ ァン倶楽部が出来ている。(そのせいで他の女子がもてないんですが)  ここまで完璧な女子であるが、たった1つの欠点が彼女の長所を全て 台無しにしていた。  それは尋常じゃない異様な能力をもったせいで普通の生活が出来なく なってしまい、今まではなるべく人と接しない生活を続けていたみたい なんです。  その異様な能力が今、手のひらで炎を出したものであり、暑姫さんは 映画や小説などで出てくるパイロキネシスの体質だった。  自在に発火できる能力を生まれながらに持ったせいか、暑姫さんの髪 は赤髪混じりの白髪となっており、せっかくの容姿が髪のせいで少し損 している。まあ、それでもモテモテなんだけど..  前は黒く染めて必死に能力を隠していたようだけど、この1年4組に 来てからは隠す事をしないで有りのままの自分を出すようになったみた い。まあ発火ぐらいじゃ、このクラスの女子は動じる事はないし..  って言うか。それだけこのクラスの異常さが半端じゃないってことな のかも知れない..  この私がますます普通に見えるのも我ながら納得してしまうわ。 【蘭】「美味しいぃ〜。少し焼いた方が美味しいぜ、みんなも試しに暑 姫っちに焼いてもらった方がいいよ〜」 【取り巻き】「内川さま、ああ言ってますがどうしましょうか?」 【内川】「何ぼさっとしてるの!さっさと焼いてきなさいっ!」 【美紗里】「ん〜。確かに少し焼いた方が美味しいわっ」 【沙智菜】「暑姫さん、ありがとう。すごく美味しいよ」 【暑姫】「どういたしまして。工場長さん、この最中どうやら少し焼いた 方が良いと思うかえ」 【工場長】「ははぁっ!これは有難しお言葉を!すぐに本社に報告して、 その様にしておきますゆえ。あと、これからも是非、暖々堂財閥としての お力をお貸しください」 【暑姫】「大丈夫じゃ。これだけ美味しいものを作るんかえ。これからも スポンサーとして協力を惜しまないのじゃ」  あっ、そうか。ここのお菓子メーカーさんの大型スポンサーを暖々堂財 閥がやっているから、過剰な接待を受けているのね..  おそらく、クラスメイトのちょっとの不満で暑姫さんの機嫌を損ねない ように大量のお菓子を用意したのであろう。  まあ、暑姫さんはすごく性格がいいから普通に試食品を出したとしても 全然、大丈夫なんだけどね。 【蘭】「どのお菓子もサイコォォー。今日は腹いっぱいになるまで食べ尽 くすぞぉぉぉーー」 【凛】「本気で食べ尽くすつもりか..」 【勇衣萌】「まあ、いいんじゃないか。僕たちには食べきれないから」 【内川】「あぁっ♪麗しの勇衣萌さまぁ〜。この焼きたての最中をどうぞ〜」 【勇衣萌】「ありがと(キラリ)。これ、とても美味しいよっ」 【内川】ボンッ!「も・も・もったいないお言葉ですぅ〜」 【取り巻き】「内川さま、気持ち悪いです・・・」 【内川】ボカッ!「うるさいっ!」 【柔紀】「!あれっ、勇衣萌?何であんたがここにいるのよっ!」 【勇衣萌】「母さ・・・じゃなくて先生。女子は社会科見学だろ?」 【柔紀】「そうだけどぉ〜、あんた男子と同じ実習がいいって申請出して いたから承認したはずよ。だから何でここにいるか聞いたのよ」 【勇衣萌】「はぁ?申請って..そんなの出してないぞ」 【柔紀】「うそっ!ほら、ちょうど申請書の写し持ってきたから見てみな さいよ。ちゃんと真堂 勇衣萌の名前で申請してるでしょ!」 【美紗里】「先生..それ”堂”の字が”・”になってますが..」 【沙智菜】「それって真・勇衣萌ってこと?」 【柔紀】「真・勇衣萌..壱郷さんの仕業ってことね..はぁぁぁ〜」  なるほど!どうりで壱郷さんの姿が見えないと思ったら男子の社会科実 習をかき回しに行ったんだ..  ちょうどこの頃、男子たちが実習に行った場所からは阿鼻叫喚が響いた ということだが聞かなかったことにしよう。うんうん。


【人物紹介】E
真堂 勇衣萌(しんどう ゆいも)出席番号:10
 スカートを穿かずに男子の制服を着て登校している男装女子。
 沙智菜、美紗里と仲良くさせたくない母親(柔紀)の強いトラウマから
ズボンを穿かされているが、本人もスカート嫌いのため内心は喜んでいる。
 母親が自分のクラスの担任になったが、学校内では他人行儀の間柄。
 膝まである長い髪で男装しているせいで学校中の女子からモテている。

<おまけ>
【壱郷】「今日はおまけでしか登場のない壱郷です。男子の社会科実習は
学校近くの天然温泉施設での職場体験実習です」
【男子たち】「へへっ、壱郷さん。実習後に皆で温泉に入るのも参加する
気かい?」
【壱郷】「そうですね..非18禁ですが、ここは一肌脱いで裸の付き合
いといきましょう」「「「おおぉぉぉぉっ!」」」
【壱郷】「では、さっそく男子の皆さんには”私の作った”溶岩風呂に入
ってもらいます」
【男子たち】「おおっ、溶岩風呂かぁ〜。じゃあ、早く入ろうぜ」
 ガラガラッ!どろどろどろぉぉ〜〜。
【男子たち】「い・い・壱郷さんっ、溶岩風呂って..これは..」
【壱郷】「早く入らないとムフフなイベントが発生しませんよ。床が溶岩
で溶けるまでに入ってください」
【男子たち】「入れるかぁぁっ!わぁぁぁーー逃げろ、逃げろぉぉー」
 このあと天然温泉施設から腰タオル一枚で一斉に逃げ出す男子たちの姿
が見えたのであった。

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