エピローグ
今日もわが家ではいつもの光景が朝から始まっている。
明日葉とお母さんが大喧嘩を繰り返していたのだ。
「たまには朝ごはんぐらい作れ。バカヤロー」
「ぅぅ..実の母親をこき使おうなんて、ひどい娘だわぁぁ〜」
「それは私のセリフだ!ミサリ姉さまに何でもやらせてるだろ」
「それはそれよ。今日も実力で思い知らせる必要がありそうね」
「そうか..それなら2階で勝負だ」
「くくっ。望むところぉぉ!思い知らせてやるわぁぁ」
「ちょっとぉぉ〜、お母さんに明日葉。いい加減、喧嘩をやめてよ」
「大丈夫です。ミサリ姉さま。これはいつもの修行ですので」
「ええ、そうよ♪だから美紗里ちゃんは先に学校行ってていいわよ」
「どうみても、ただの喧嘩でしょ。都合のいいときだけ信建忍流のこと、
出さないでよ」
「美紗里ちゃん、私は十三代目継承者として明日葉を立派な継承者にしな
くちゃいけないのよぉ〜」
「そうだな。私も十四代目継承者として、ぐーたらな先代に印籠を渡さな
くちゃいけないからな」
「あら?先代に勝てるっていうのかしら?」「余裕だよ」
お互いの目を見ながらバチバチと火花を散らしながら今日も2階で大喧
嘩をする2人。
もう、止めるのも面倒だから学校行くことにすることにした。
だけど、実はこの2人は大喧嘩をするために2階に行ったのではなかった。
私がこの事を知るのは、ずっと先のことであった。
======【美紗里の知らない会話】============================================
2階に行った魅由梨がいつもとは違う真剣な目をして明日葉に話しかけ
てきた。
「明日葉。最近、美紗里ちゃんのことを調べてるネズミがいるみたいだけ
ど..何とかならないかしら」
「ああ、そのことか..その件で今日もわざわざ私を2階に呼んだのか?
ミサリ姉さまが不審を持ったらどうする気だ」
「大丈夫よ♪美紗里ちゃんは信建忍流をただの形だけの継承としか思って
ないから。まあ、主君がいないから宝の持ち腐れだけどね〜」
「寝てばかりいたら、役には立たないと思うが..それは置いといて、嗅
ぎ回ってる奴は調査済みだ。ルン・パステルというアメリカ人の女子高生
がミサリ姉さまのことを調べてるみたいだ」
「ああ..あの子ね。確か明日葉が通ってる中学の伝説の先輩の1人じゃ
ない?何でそんな子が美紗里ちゃんのことを?」
「ミサリ姉さまのクラスに凛さまが居て、きっと凛さまに頼まれて調べた
と思う。それと、ルン先輩は忍者おたくだから本物の忍者の家系だと知っ
て、興味本位で徹底的に調べてきているようだ」
「はぁぁ〜忍者おたくか..情報元がTVや本からだから、変な勘違いを
してるのよね〜。ほとんどの流派は地味な隠密中心って知らないのかしら?」
「知ってはいるが、期待もあるのだろう。大体、ルン先輩の方が忍者らし
いかも。身体中に数多くの暗器を隠し持ってるようだし」
「危ない子ね..そんなの江戸時代にもいなかったわよ。武器は最小限に
持ち、平民になりきることが必要なのよ〜」
「まあ、ミサリ姉さまを幾ら調べても問題ないから、そのままにするつも
りだ。凛さまの手伝いが出来るなんて、さすが私のミサリ姉さまです〜」
「来崎凛..確か同じ伝説の先輩の1人で明日葉の憧れの君だったわね..
あんな正義ヒーロー丸出しの子のどこがいいのかしら?」
「いいじゃないか。それじゃ、私もそろそろ遅刻するから先にいくぞ」
「明日葉、引き続き美紗里ちゃんの周りを調べておいてね〜♪」
「そんなの言われるまでない。ちゃんと調べておく」
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まさか明日葉がちゃんとした十四代目継承者とは、この時の私は全然思
っていなかったわよ。
まあ、今の私は沙智菜ちゃんのことで頭いっぱいだから、構わないんだ
けど..
とりあえず、変なトラブルだけは起こさないで欲しいわ。
私、これでもクラス委員なんだから。
(終わり)
「美紗里の沙智菜日記」完