僕の会社−ピンク社員を暴き出せ− 後編
「ひゅー、文句を言うのはいいけどボタン外し過ぎじゃないか〜」
「こ、これは、暖房が暑かったせいよ」
ノーブラで第2ボタンまで外した渡部さんの姿を見て男子社員たちがは
やし立ててきた。
「もしかして渡部さんもノーブラなのかよ」「太田さんと同じかよ」
冷やかしが飛んでくるのは当然のことかもしれない。本来なら、もっと
過激な言葉も飛んできてもおかしくないからだ。
渡部さんの立ち位置は皮肉にも窓から差し込んだ逆光で、かなりの透け
具合になってしまう。白いブラウスから、はっきりとピンク色の乳首が
透けていて、バスの中は騒然となってきた。
本当なら僕も立ち上がって、男子社員たちに文句を言って、渡部さんを
必死に擁護するべきであろう。
でもそれは、ピンク会社に入社してない男ならできる行為であり、僕も
さっきの度胸試しで携帯で破廉恥な姿を撮っていたエロい奴なのだ。
そうさ、僕はこうやって心の中で叫ぶだけのズルい奴なのさ。たとえ、
このまま渡部さんがストリップを始めても、僕は皆と一緒に拍手を送る方
なのさ。そんな僕だからピンク会社と知ってて入れるのだ。
実に惨めな僕の心の叫びが続く中、男子社員たちの罵声がますます響い
てきた。
「渡部さん、今の状況わかってんのかよ?」
「そうそう、太田さんを否定したら、渡部さんがピンク社員なんだけど〜」
「まさか自分がピンク社員でしたと言うのかい?」
「!わ・私が..ピンク社員であるわけないでしょ!・・・私はただ..」
(不味い!みんなの疑惑が渡部さんに集まってる..)
「って言うかよく見たら、渡部のおっぱいの方がそっくりじゃねーか」
「そうだな。揺れ方も似てるし、渡部の方が怪しいかも」
「な・何を言ってるの!?太田さんも私もピンク社員なんかじゃないわ」
(渡部さん、どっちも否定は不味いったら!ああ、僕はどうしたら..)
言うまでもなく、渡部さんの方へピンク社員の容疑がかかることになり、
渡部さんの全身が震え始めている。
下手な助け舟なのは渡部さん自身も分かってるはずなのに、何で自分か
ら窮地に陥ってしまうんだよ。
それも、この後で楠木が余計なことを言ったせいで渡部さんは更なる窮
地に追い込まれるになった。
「おい、お前らっ!渡部さんがピンク社員であるわけないだろ!あんな破
廉恥なこと出来ると思うのかっ!みんな、もう1度考えてみてくれ」
「何だ楠木、渡部の肩を持つのかよ」
「ああ、持つさ!俺は渡部さんがそんな女で無い事を信じてるし、渡部さ
んも早くピンク社員でないことを証明して欲しいんだ!」
(?証明って..楠木、お前何を言うつもりだ..)
楠木の言葉に今度は女子社員の吉永がとんでもないことを提案してきた。
「そうね。私みたいにパンツを見せればいいんじゃない?いくら何でもノ
ーパンでバス乗る奴はいないんだし〜」
(吉永さん、何て事を..)
吉永さんは誰かピンク社員であるかを知ってるはずだから、これは善意
か悪意かのどちらかで言っているのだ。
ただ僕には何となく嘲笑気味に聞こえるので、わざと渡部さんに向かっ
て”さっさとノーパンであるのを晒せよ!ピンク社員のくせにいつまでも
周りに迷惑かけんなよっ!”と言ってるようだった。
しかしながら、これがきっかけで女性の嫉妬が爆発するとは、僕は思い
もしなかった。渡部さんの味方をする楠木はスケベだけど、女性にモテる
イケメン金持ち野郎だからだ。
「さすが渡部さんね。あの楠木くんをとっくに落としてたんだぁ〜」
「ってムカつくよね。男たちに清楚な扱いされちゃって、乳首なんて透け
てるんだから、もうトップレスと同じじゃない..」
「いやいや、第2ボタンぐらいじゃ、ノーブラって分からないんじゃない
かなぁ〜。渡部さん、太田さんと同じノーブラ証明するんなら、もっとボ
タンを外しなさいよ」
「それいいね。第3ボタンも外しなさいよ」「うんうん、外せはずせ!」
暖房のかかったバスの中で寒気がきた。僕の背筋がゾクッとした。これ
が女性の妬みってやつなのか。いつまでも煮え切らない男たちに頭がきて、
男が言えないひどい言葉を渡部さんに投げかけてくるのだ。
「第2ボタンまで外して、今度は誰を落とすのかしら?」
「ほら、早く外しなさいよ!」
「…ノーブラであることを証明すればいいのね。わ、わかったわ」
(えっ?渡部さん、まさか本当に第3ボタンを外す気なのか?)
何と渡部さんは素直にボタンを外し始めた。けれども、それは第3ボタ
ンだけの話ではなかった。
パチン、パチン、パチン。何と渡部さんはブラウスのボタンを全て外し
てしまい、あげくにはブラウスの裾をスカートから引っ張り出してきた。
「こ、これでいいかしら。これでもノーブラじゃないと言えますか..」
いやいやいや、渡部さん何か論点ずれてるよぉぉ〜。こんなあっさりと
挑発に乗ってしまうとは思わなかったよ。
ブラウスの前を全開にしてしまったことで、渡部さんのおっぱいは透け
てる乳首をギリギリ隠す程度になり、ノーブラの証明以前にDカップのま
んまるなおっぱいが丸わかりだった。
「うおおおぉぉ〜、渡部さんがここまで見せてくるとは!」
「これはもうスカートも捲ってもらうしかないな!」
「ああ、これはあくまでもピンク社員でない証明なんだし!」
(これはまずい!まずいって!渡部さんが変な刺激与えるから、みんな暴
走してるよ)
どうやら、男子社員たちの理性の枷が外れてしまったらしく「捲れ!捲
れ!」と喚いてきた。その提案に僕だけが激しく動揺していた。
「・・・わ・わかったわ..けど捲ったぐらいで分かるの?」
(???えっ、渡部さん、何を..)
身体を震わしながらも渡部さんが、この提案に更なる辱めを加えてきた。
「おい、捲る以外に何があるんだよ」と疑問に思った男子社員が問う。
「・・・お・下ろします..そ・それで..いいかしら..」と渡部さんが
スカートのホックをパチンと外して言ってきた。
(わ・渡部さんっ!それは駄目だっ)
ホックを外したからってスカートは急に落ちることはないが、男子社員
たちは歓声をあげながら渡部さんの下半身に視線を向けてきた。
ここまで過激なことをしたのに、それを見ていた吉永さんはとんでもな
い注文をしてきた。
「ねえ、渡部さん。まだスカートは落ちないようだから、自分がピンク社
員だった時の落とし前も宣言してくれないかしら?」
「えっ?宣言って..そんなの何を言えば..」
急な注文に渡部さんが困っていると横に居た園部さんが近づいて耳打ち
してきた。
「!!わ、私にそれを言えと..」渡部さんの問いに園部さんが笑顔で頷
いてきた。
「あ、あの..ここで私、渡部結樹子より大事な宣言をさせて頂きます。
今、見ての通り、渡部結樹子はピンク社員の真偽を確かめる為に下着の有
無を皆に判断しております。上の方は見ての通り、の、ノーブラでした..
もし下の方がノーパンだった場合、私は..ピンク社員として認めます!」
園部さんから耳打ちされたことをいう間にもスカートが徐々に下がって
きた。もう通常のショーツなら見えるラインまで落ちているのに、下着の
存在が確認できなかった。
「おい、これマジで穿いてねーんじゃねーか?」「普通見えるよな?下着」
「いや、ローライズやTバックなら、まだ見えない位置だぞ」
まだ男子社員たちの中には僕と同じ、穿いていることを願っている者が
居て、そんな中で渡部さんの宣言の続きが始まった。
「もうすぐスカートが落ちますが、ノーパンだった場合は..ピンク社員
として..わ、私、渡部結樹子は、ずっと全裸のままでいることをここに
宣言いたします」ついに渡部さんが辱めの宣言をしてしまった。
スカートが更に落ちていく中、渡部さんは何か観念したかのように身体
の力を抜くと、前開きのブラウスまでもが肩から滑り落ちてきた。
この時、渡部さんのおっぱいは思い切りこぼれて見えてしまったが、男
子社員たちの視線は股間のみに集中していた。
(やっぱり、こんなのはピンク会社でも異常すぎる!!)
これには僕もさすがに慌てて言葉を出してきた。遅すぎるのは重々わか
っているさ。でも、これ以上は洒落じゃ済まないだろう。
「みんなっ!こんなことやめよう!ピンク社員とか関係なく、これは度を
越しているんじゃないか!これじゃピンク社員は性奴隷じゃないか!」
「・・・たっくん..」
「おいおい平田〜、正義ぶるなよぉ〜」「そーだ、そーだ」
「正義とかじゃない!もう人間としてどうかしているよ!この状況は!」
「ふ、ふざけやがって!」「みんな、平田をやっちまおうぜ」
僕の態度に男子社員たちが頭にきたらしく、このままだと乱闘になって
しまうかも知れない。いや、それでも構わない。
僕だってスケベな奴だけど、ここまで傍観していた情けない奴だけど、
こんなことしちゃいけない!ピンク会社だからって何もかも許されると思
ったら大間違いだ!
この時の僕は本気だった。バスの中は一触即発的な雰囲気が漂っており
危険な状況だったんだけど..
「ぷぷっ!バッカじゃないのぉ〜。君たちは本当に愚か者ばかりだね〜」
「あはははっ。んもぉ〜、可笑しくて腹がよじれちゃうんですけど〜」
殺伐とした雰囲気の中で佐々木と園部の笑い声が響いた。
この笑い声で、先ほどまでの危険な空気は一瞬にして吹き飛んでしまい、
誰もが2人の次の言葉を待っていた。
「えっと〜、君たちは5人ぐらいに絞ってたようだけど、私たちより胸の
大きい子は居るわよ。スーツですごく着やせしてるから分からないけど」
「そうそう、あとノーブラで判断するなら私もノーブラなんだけどぉ〜」
何と園部がブラウスを軽く引っ張って胸の谷間を思い切り見せてきた。
この2人の発言によって男子社員たちは何も言えなくなり、更にはトド
メと言わんばかりの発言までしてきた。
「まさか、君たちがここまで暴走するなんてね。実は先輩OLにピンク社
員がばれたらどうなるかを探って欲しいと言われてね。やっぱ、危惧した
展開になるとはね〜。これだから君たちには秘密にしてんのよ」
「佐々木の言うとおりだね〜。あと実は私がノーパンでした。これ、私の
下着なので、きっと太田さんと渡部さんはバス酔いがひどくてブラを外し
ただけだよ〜」
「君たちって、もしかして渡部さんみたいな女性が清楚な下着着けてると
思ってるんじゃないの?こういう子は逆に過激なTバックを穿いてんのよ」
「それ同感、きっとお尻が丸出しの下着なんかじゃない。あはは」
まさかの2人の言葉に男子社員たちがブーイングを起こしてきた。
「ちくしょぉ〜、ふざけやがって!下着没収が嘘だったなんて酷いぜ」
「よく考えたら渡部がピンク社員であるわけねーよな..ぅぅ」
「すまねー、太田、渡部。変な目で見てしまって..」
男子社員たちが謝罪したことにより、これで一件落着だと思った矢先に
忘れてたハプニングが起こった。
バスが急ブレーキを掛けた途端、ホックを外したままの渡部さんのスカ
ートが落ち始めた。僕は慌てながらも身を乗り出して、渡部さんの股間を
隠すように覆い被ったのだ。
一瞬の出来事なので、前の方は誰にも見られてないが、急いでスカート
を持ち上げる際に渡部さんのお尻は少し覗かれてしまったようだ。
「うおっ、もしかして渡部さん。マジでTバック?」「マジかよ」
渡部さんの生尻の部分が多く見れたことから、男子社員たちは渡部さん
が生地の面積が少ないパンティを穿いていると勝手に決め付けて喜んでい
る。だけど、一番間近で見た僕の目には何も穿いてない様にしか見えなか
った。
(そ・そんなはずはないっ!渡部さんがノーパンであるはずないっ!ない
と思わせてくれぇぇ〜)
僕の脳裏に渡部さんがバスに乗りこむ時にスカート越しにパンティライ
ンが浮き出ていたことが再生される。
それはTバックみたいな面積の少ないものではなく、ごく普通のパンテ
ィであったことは間違いなかった。
更に僕は見てはいけないものを見てしまう。剥き出しになった渡部さん
のお尻全体は真っ赤に腫れていたのだ。
それはまるで大勢の人に叩かれたようだった。
(ち・違うっ!これはきっと恥ずかしい目に遭ったから全身が真っ赤にな
ってるだけだし、バスの座席が熱かったから赤くなっただけだ)
次々と僕だけが知っている事実が増えてくる。とりあえず渡部さんがノ
ーパンであるのは間違いない事実だ。何で脱いだかは分からないけど、確
か水色のパンティを穿いていたのだろう。
そう、園部さんが持っている下着は99%渡部さんのものだからだ。
これも僕だけが証明できる事実だけど、あの時バスの前で通せんぼして
いた園部さんは僕に向かってパンチラしており、ピンク色のパンティを穿
いていたのを見たからだ。
あの後で脱ぐのはおかしいし、そもそも下着の色が違うんだから、園部
さんが嘘を言ってるのは間違いないのであろう。
(もう何だかわからなくなってきた..僕は渡部さんがピンク社員であっ
て欲しいのか?いや、そんなつもりは毛頭ないのに!)
ともかくバスの中は元通りの雰囲気になっているし、男子社員たちもピ
ンク社員が誰かを追及しなくなった。
僕もこれ以上、何も聞かないことにして渡部さんと楽しくお喋りするこ
とを選んだ。
(そうだ。渡部さんは絶対にピンク社員じゃない。じゃないんだから)
でも..ブラは着けて欲しい。僕だって男なんだから目のやり場に困っ
てしまう。
「クスッ。たっくんったら、また私の胸見てるでしょ?」
「そ・そんなことは..な・ないから」
「クスッ。恥ずかしいけど、ブラしてない方が悪いから..」
「・・・えっと、何でブラを?」
「園部さんが言ったとおり、バス酔いが酷かったので外しただけだけど、
外すと結構楽になるのよ。知らなかった?」
「いや、僕は男だから..その辺りはちょっと..」
「まあ透けちゃうけど..バスの中で吐くよりはマシかなと..」
「そうだよね..」(本当は下の方も聞きたいけど..)
そう、この時の僕は事実を求めてはいけないと感じた。
事実というものは時には残酷な結果を呼ぶこともある..そんな結果を
僕は求めてはいないし、求めたくもない。
それに今の曖昧な状況が1番いいことを僕だけじゃなく皆が求めている
気もするのだ。
「たっくん?どうかしたの?」
「いや、何でもない。それよりも、もう旅館に到着だね。近場に足湯があ
るって聞いたから、渡部さん一緒にどうかな?」
「うん、ちょうど足がパンパンで痛かったから、すぐに浸かりにいこ」
「それなら部屋に荷物置いたら足湯で合流ってことで」
「うん、待ってるね、たっくん」
いろいろあったけど、ようやくバスは旅館に到着した。先に到着した先
輩社員たちは旅館のラウンジでビールを飲んでくつろいでいた。
僕は部屋に荷物を置いて足湯の方へ向かうと予想外の光景が待っていた。
すでに大勢の先輩社員たちが足湯へ浸かっており、渡部さんの姿が見当
たらなかった。
いや、正確には人が多過ぎて、先輩社員をかきわけて探すわけにもいか
なかったのだ。
「さすがに、この人混みの中で渡部さんが浸かるわけないか..」
この時の僕はバカだった、マヌケの大馬鹿者だ。と言うのも、ここの社
員が足湯に殺到するほど温泉好きではないだろう。きっと男たちが集まる
ものが足湯に存在していたから、この人混みが出来たのだろう。
どうやら、渡部さんは何とバスから降りたあと、そのままの服装で足湯
に行ったらしく、ノーブラの渡部さんを見かけた先輩社員たちが殺到した
のであった。
「渡部さん、どこに行ったんだろう。旅館の方に戻ったのかな」
バカな僕はその事実に気づかずに旅館の方へ行ってしまい、足湯の人だ
かりの輪からは2つの衣服が外へ放り出された。
それは汗だくになった女子社員のブラウスとスカートだった。
しばらくの間、足湯に浸かる男性が次々とやってきて、黒山の人だかり
となった。
しかも、足湯の中心からは女性の喘ぎ声が絶えず聞こえてたようだった。
<完>
「僕の会社−ピンク社員を暴き出せ−」完