コスプレ風紀症候群 前編(原案:甘栗さん)


 居残って生徒会提出の書類を書いている風紀委員会長の可南子。  ほとんどの書類は委員達で製作し終わっていたが、最終まとめを書いて いたのだ。  ふと、軽率な発言をしたことを思い出して溜息をはいた。 「・・・あいつらに完全に嵌められたわ..こうなったら何としても絶対に 廃部に追いこんでやるわっ!こんなもの本当なら処分したかったのに」  ドカッ!近くに置いてあった大箱を蹴る可南子。  この大箱は校則違反物として、アニマンPC研究開発部から没収した大量 のコスプレ衣装が詰まっていた。  アニマンPC研究開発部はアニメ同好会・漫画研究会[マン研]・PCソフト 開発部、それら文化部の集合体であり、人員不足で合併し、部に昇進した (部予算獲得のため)ところだ。  没収物の大量のコスプレ衣装は懸賞で当てたり、知り合いから譲り受け た使用済み衣装との事で過激なものが含んでいたのを知らなかったと言う が、可南子にとっては全てが如何わしく見えたので校則違反物として全て 没収することを決めた。 「おい、全て没収なんて横暴だ!過激なのだけ持っていってくれよ」 「はあ?私にっては全部如何わしいけど!文句があるなら明日の全体集会 で抗議してきなさい!」「こんなのただの偏見だ!コスプレの何が悪いっ」 「コスプレ?こんなの男を喜ばせる汚らわしいものでしかないわっ!私が 風紀委員会長をやってる内は、こんないやらしいものは校内から全部一掃 してやるんだからっ!」  こうしてアニマンPC研究開発部から大量の校則違反物を没収した可南子 は次の全体集会では廃部に追いやるつもりでいたのだ。  風紀委員会長の可南子は昔から、いやらしい事が全く受け付けない真面 目な生徒で、校内の風紀の取り締まりに全力を尽くしている。  あまりにも厳しい取締りに生徒・教師から、かなり反感が出てるが、正 しいことをしてるのは可南子なので何1つ文句を言えない。  ただ非常に残念なのは無駄にスタイルが抜群である。制服を着ていても 目立つ推定Dカップのロケットパイ。ブラウスをあり得んほど押し上げ、 けしからんラインが浮かぶので男子たちにはたまらない。  もちろん、このロケットパイを可南子が披露することは絶対ないだろう。  それが、校内のエッチを撲滅する鬼の風紀委員会長様だからだ。  まさか、そんな可南子がたった1つの失言で堕ちていくことになるとは 誰もが予想だにしなかった。  大量のコスプレ衣装を没収した翌日、可南子はいつものように全体集会 で風紀取締りでの生徒の不満解消するための質疑応答を始めた。  幾つかの質問を答えたあとで新聞部の女部長から「個人的な質問となり ますが、風紀委員会長自身はコスプレってどう思いますか?」の質問に対 して「あなたは恥ずかしい姿を見せたい露出狂ですか?」とアニマンPC研 究開発部への不満をこめて回答してしまう。続いて「あんなのを着て喜ぶ なんてどうかしてるわ。馬鹿なの?」と失笑をこめて発言した。  この偏見な言葉を聞いて、直ちに演劇部や映画研究部が猛烈に批判し、 コスプレに対して好意的な生徒たちからも「偏見だ!」「横暴だ!」と怒 号が飛び交った。  可南子も自分が失言したことに気づき、頭を下げ続けることになり、こ の騒動を解決すべく、「コスプレのことをよく知らず回答してしまったこ とには深く反省しています」と何度も謝罪し、相手が納得する案として没 収したコスプレが世間的にアウトかどうかを可南子本人が全て着て生徒に 判断してもらうことが全体集会で決まった。 「だからって..どうして私が毎日、風紀見回りで着ていかなくちゃいけ ないのよぉぉぉ〜!でも、これが破廉恥だと認められれば即廃部にしてや るんだからっ!」  そう、没収したコスプレを毎日生徒たちに見てもらって、どちらの主張 か正しいかを決めることになった。  破廉恥だと思う意見が多かった段階でアニマンPC研究開発部は即廃部。  問題ないという意見が多い場合、その衣装はセーフで違う衣装を翌日に 着るというものだった。 「こんなことになるなら、全て没収するんじゃなかったわ。早めに決着つ けて廃部に追い込まなくちゃ!」  可南子は、いつでも廃部にできるように廃部資料を揃えてから、没収し たコスプレ衣装箱から本日着るものを選んで取り出した。 「どれもこれも破廉恥だわっ!破廉恥、破廉恥、破廉恥っ!こんなの着て 何か楽しいのかしら..それなのにまだ誰も文句言ってこないなんて..」  すでに3回ほどコスプレ姿で風紀見回りをしたが、今のところ生徒たち の回答は「没収するほどでもない」という結果となった。  いや、正確には可南子がなるべく大胆じゃないのを選んで着た為であり、 過激なのを着ていけば生徒たちから没収が正しいと判断されたはずだ。 「・・・だ、だからって..いきなり大胆な衣装なんて着れる訳ないじゃな い..今日も..なるべく派手じゃないのを選ばなくちゃ」  この可南子の行動が裏目に出た。可愛く着込んだコスプレは評判が良く、 女子たちは「可愛い」と褒め、男子たちからも「最高」と称えられると心 地よい興奮が可南子の中に沸いてくる。 (全て没収っていうのは..私の偏見だったのかも..そ、そんなに悪い ものでもないし..うん)  その日の夜、可南子は日課にしていたジョギングをしないで、ぼーと天 井を見ていた。 「そんなに可愛くて最高なんだ..えへへ」  厳しい風紀取締りで常に影口を叩かれ、舌打ちをされる日々を過ごした 可南子にとって、大勢の生徒に褒め称えれるのはかなり気持ち良かった。 「って私は何であんなものに心を奪われてるのよっ!あ、明日こそは廃部 に追い込まなくちゃ!コスプレなんて言語道断なんだからっ!」  だからって大胆な衣装を着ることができない可南子は、それから3日間 生徒から褒め称えてもらえるコスプレで見回りを続けてしまう。  いつもは「うるせえな!風紀バカ」とヤンキー座りで舌打ちしていた男 子すらも、コスプレ姿の可南子の前では何故か直立不動で股間を両手で押 さえて「見回り御苦労様です」と頭を下げてくる。それが可南子には快感 となってたまんなかった。 (※実は、ロケットパイがより目立ったことで、それを直視した男子が見 事な股間テントとなったので、ばれないように必死で隠していた)  こうして、廃部に追い込むことが出来ず来週も引き続きコスプレ見回り をすることになった可南子の休日は倦怠感がひどく、ベットの上でぼーと していた。 「・・・結局、今週も廃部に出来なかったなんて..来週こそは絶対に..」  廃部に意欲を燃やす可南子だったが、何故か身体がぐったりとしてだる い。せっかくの休みなのに外に出る気が一切なかった。 「いつもなら近所の見回りに行くのに..ちっともやる気が出ない..ま あどうせ口煩い私がこないってことで喜ぶだけよね..褒められる行いを してるはずなのに..」  ボソッ「コスプレしてるときは..あんなに褒めてくれるのに..」  何かだんだんと可南子の中でコスプレで受ける称賛が忘れられなくなっ てきたようで、休み明けの月曜日は廃部など、どうでもいい感じで衣装を 選んでいた。  だが1度着た衣装は生徒たちの判断済みで再度着れず、おとなしめの衣 装が水曜日を過ぎた段階で無くなった。  こうなると、少し派手なコスプレをしなければならず、衣装を手にとっ た可南子の顔は真っ赤になった。まだまだ世間的には大したことがないコ スプレでも頬が赤くなってしまった可南子は誰かに見られてないかを1度 確認した。 (ホッ、誰にも見られてなかったよね..まさか下着含みのコスプレもあ ったなんて..)  見せパンとしてのコスプレだが、何か見ていく内に少し身体が火照って くる気がした.. 「・・・まさか私の好きなアニメのコスプレまで、あったなんて..」  可南子が持っているコスプレ衣装は、地球の平和を乱す悪を変身ヒロイ ンが倒していくアニメのヒロインが着ていたもので、ミニスカート以外は 普通のカッコイイヒーローコスプレであった。  ただ、毎回ヒロインがパンチラ(見せパン)しながら闘うのが売りだっ た。 「・・・べ、別に見せパンなんだから..チアガールみたいなものよね」  何とか自分自身を納得させて、コスプレ衣装を身に着けた。 「!!・・・こ・これは..なかなか」  自分の姿に「なるほど」と意外にもその気持ち良さを感じてしまう。 「何時もとは違う自分の姿に浸るってことなのね..子供の頃あったお姫 様願望とかヒーロー願望とか..そんな感じよね?まあ、見せパンさえ無 ければ良かったんだけど..」  顔を赤らめ、そういいつつも満更ではでは無い気分の可南子。  この教室には取り締まる側として服装チェック用に姿見鏡が有ったため、 それを使って可南子は自分を見ていた 「ちょっと..ポーズをとってみようかしら..」  幾つかのポーズを鏡の前で取ると、この日は何か惹かれるものを感じた。 「・・・むぅ〜、こうして見ると、私が知ってるものも幾つかあったのね」  週末となり、この日も可南子が好きだったアニメのコスプレを選んだが 1つだけ問題があった。 「やっぱ、これはブラ(見せブラ)もセットなんだ..何とか重ね着出来 ないかしら..」  見せパンの時は重ね着で問題なかったが、ブラの場合は上手くいかず、 「このブラ高かったのよね..お気にだし..」とブラが衣装と擦れて痛 んでしまうので、外すかどうかを悩んでしまう。 「見せブラだし..み、水着だと思えば..だ、大丈夫よね?」  透けてるわけでもないし、普通の水着と大差ないと判断した可南子は、 ブラを外して衣装のブラを直につけることを決めた。 「!!これって..通気性がすごい..よく見たら生地も薄いし..」  いざ見回りに廊下に出ると、可南子の両胸にそよ吹く風の感触が響く。  透けてるわけじゃないし、周りからは普通の水着にしか見えないコスプ レだが、可南子自身はノーブラの感触が強くなってくる。 (私のおっぱいじゃ..衣装にしまっても、すぐに飛び出しちゃう..出 しやすい衣装だから見せブラ付きだけど..しまった方がいいの?)  普通だとアクションシーンでこぼれて見える見せブラだが、可南子の水 平おっぱいじゃ歩いただけで飛び出てしまうのだった。  当然、生徒たちの視線が可南子の胸に集まるのだが、あまりの水平ぶり に驚きを隠せない生徒もいたようだ。 「おい、あれって本物かよ..何か詰めているんじゃ」「どっちにしても すげーよ」「うおおっ、あれが噂のロケットパイかぁぁ」  そう、作り物か詰め物かと勘違いされそうなほど、水平に突き出しだロ ケットパイは紛うことなき、可南子のおっぱいであり、生徒たちの注目度 も半端なかった。  けれど、この姿を破廉恥と叫ぶものは居らず、羨望と感動の眼差しで見 られ、称賛を浴びて見回りを終えたのであった。 (もしかして..私だけ自意識が高いだけなの?こ、これはまだセーフな んだ..そうよね..水着みたいなものだし..)  結局、来週もコスプレ見回りが続くことになり、休日は先週よりもひど い倦怠感に襲われ、1日中ベットの上でぼーと天井を見ていた。 「はああ〜、何でこんなにやる気が出ないの?これって、なかなか廃部に できないせいなのかしら?来週こそは廃部に追い込まなくちゃ..」  とりあえず近くにあった雑誌を寝ながら見てると、懐かし特撮ヒロイン の特集記事が載っていた。 「・・・この雑誌、真面目なものばかりだと思ってたけど、こういう特集も やるんだ..そういえば同じようなのが幾つかあったよね..」  頭の中に、コスプレした自分が褒め称えられるシーンがよぎってくる。 この本に載っていた悪の女幹部コスプレも何かゾクゾクしてたまらない。 布面積はかなりやばいけど、番組自体は子供向けだし、母親が夢中になる ものなら、これは破廉恥ではないのだろう。 「そもそも、破廉恥だったら、子供に見せるわけないし、これはきっと問 題ないんだわ」  こうして翌週から、更に過激度が増したコスプレをしていく可南子。  日に日にコスプレ姿の風紀見回りにも慣れてきている。  前までは下着のラインが見えて不恰好に見えようが見せ下着が無いコス プレでは下着を絶対に外さなかったのに、最近では下着が邪魔くさくなり 全て脱いでからコスプレするようになった。  別に露出癖に目覚めたわけじゃない。このあたりのコスプレになってか ら下着がなくても恥部をしっかりガードしているもが多く、変に自分の下 着をつけていやらしく見られるのが嫌だと思ったからだ。  何だがコスプレにハマりつつある可南子。それには生徒たちとのコミュ ニケーションの変化が影響していた。  以前の風紀見回りでは可南子を見ると嫌な顔を見せるのが当たり前で、 逃げてしまう生徒も居たが、コスプレ見回りをしてからは相手の方から声 を掛けられ、楽しくお喋りしてくる生徒も出てきた。  しかも未だに称賛されているので、コスプレが恥ずかしいからって着る のをやめるのも出来なくなってきた。  結局、週末になっても教師・生徒からの判断は問題なしと決まり、誰も 可南子のコスプレ姿を破廉恥だと言ってこない。  翌週も引き続きコスプレ見回りとなり、「これはさすがに破廉恥よね」 と思うギリギリアウト的なものがあってもクレームは一切こなかった。  そもそも風紀委員会長の硬すぎる考えに誰もが不満を洩らしていた。他 校では問題視しないものも如何わしいものとしてバンバン取り締まってた らしい。  その硬すぎる考えが和らげばいいと、可南子がどんなコスプレをしても 喝采して受け入れていたらしい。  可南子も自分がどんどん過激なコスプレをしていることには気づいてい たが、周りから褒め称えられる高揚感を忘れることが出来ず、衣装を見る とタガが外れて着てしまうようになった。  昨日なんて乳首ギリギリの下乳丸出しのビキニアーマーで、いつ人前で 乳首がポロリしてもおかしくなかった。 (※補足:通常だと透明樹脂の下乳支えがあるのだが、可南子がそれを着 けていなかった)  ロケットパイの可南子だから助かったのであり、普通の女子なら、歩く たびにおっぱいがこぼれまくったはずだ。  よく考えれば着てない衣装は、今よりも過激なものばかりで、最終的に は恥部だけを隠してる、いや恥部自体もコスプレの一部として出されてし まうことになるだろう。


後編へ