最終話「女子たちの思うがままに」
「てめぇら〜、また俺たちを騙したなぁぁ〜」
学校に登校してきた1年2組の男子数人が、小嶋春乃(こじま はるの)
の席に集まって怒鳴ってきた。
「って言うか、もしかして昨日、本気で見張ってたの?」
「ぐっ!う、うるせーなっ!ちょっとだけだ!」
「・・・校内見回りの先生に怒られたそうね..金次郎の像を0時近くまで、
みんなで見張ってたって..」
「うぐっ!だって、お前らが..橋野が素っ裸で抱きに行くって言ったか
ら..」「悪いかよ、なかなか諦められなかったんだよっ!」
ふと離れたとこで座っていた菜由子と視線があった男子たちは急に口笛
を吹いて誤魔化しはじめた。
どうやら、小嶋春乃が一部の男子たちに、菜由子が麻央の命令で校庭に
ある金次郎の像を裸で抱きにいくという情報を流したからだ。
「・・・もしかしたら、麻央が気づいて日にちをずらしたとか、今日するか
も知れないよ。うん、今日だね」
「!ふざけんなっ、何度も俺たちが引っかかると思うか!」
「思う!」ズバリッ!
「ちくしょぉぉ〜!俺たちの純真な心、弄びやがってぇぇ〜」
「いや、ただのエロ心でしょ!」
少しも悪びれない春乃に男子たちが諦めて席についた。
けれど、菜由子だけは内心穏やかでなかった。ドキドキしながら何とか
会話を聞こうとしていた。
何故かというと、今日の放課後、麻央の命令で全裸で校庭の金次郎の像
と抱き合うことが決まっていたからだ。
(う、嘘っ!何で例の露出命令のことがばれてるの?今日の放課後..私、
絶対に裸で抱き合わなくちゃいけないのに..)
男子たちに見られないようにする約束だったのに、それがこんなにあっ
さりと情報を流されたことに対して、菜由子は麻央に文句を言ってきた。
「や、約束が違いますっ!小嶋さんが男子たちに例の命令のこと漏らして
ました」「あら?そうなの?」「そうなのじゃありませんっ!」
「・・・橋野さん、その前に自分の立場を理解してる?」「えっ?」
「どうやら、あなたにはお灸が必要みたいね」「お灸って..」
果たして麻央が言ったお灸とはどんなものであろうか?それがはっきり
したのは昼休みのことだった。
再び、男子数人がコソコソと小嶋春乃の席に集まってきた。
「ん?また文句を言いにきたの?しつこいと嫌われるわよ」
呆れる春乃に、男子たちは何故か低姿勢で周りを気にしながら小声で、
ある事を聞いてきた。
「お前が朝話してたことなんだけど..あれ本当か?」
「あれって?今日かも知れないって話?」
「ああ、それそれっ!今日にずれたってのでマジか?」
「・・・・・・」(こいつら懲りないわね..)
昨日、春乃に騙されて金次郎の像をずっと夜中見張って懲りたのをもう
忘れてる。いや、悲しき男子のサガなのだろう。もしかしたら菜由子の恥
ずかしい姿を見れるんじゃないかと諦めきれずにいた。
「なあなあ、本当のこと教えてくれよぉ〜」
「ん、そうね。いっそのこと本人に確かめたら?」
「!ば、馬鹿かっ、お前っ!そんなこと聞けるわけないだろ!」
「そう..なら、私が代わりに聞いてあげるわ」「はあ?」
いやいやいや、隠れて見るから聞いてきたのに本人に聞いたらダメだろ!
と男子たちは心の声でツッこんできた。
だけど、春乃は自分の席で座っていた菜由子に破廉恥な質問をした。
「ねえ、菜由子?ちょっと聞きたいことあるけどいい?」「う、うん」
「今日の放課後、菜由子が全裸で金次郎の像を抱くって本当?」
「・・・は、はい。本当です」
「全裸でだよ?」
「はい、ぜ、全裸で..抱きます」
これを聞いた周りの男子たちの顔は唖然とし、びっくりした。
「もう1度聞くけど、今日の放課後に何をするの?」
「・・・は、裸で金次郎の像を..だ、抱きます..」
「誰が?いつ?」
「私、橋野菜由子が今日の放課後、裸になって金次郎の像を抱きます」
「それって、上から下まで全部脱ぐってことでいいのね?」
「はい、金次郎の像の前で..せ、制服も下着も全部脱ぎます」
「えっと誰が?」
「私、橋野菜由子が制服も下着も全部脱いで金次郎の像を抱きます」
菜由子自身の口から出された露出行為発言に男子たちは動揺を隠せない。
教室のあちらこちらで男子たちのざわめき声が響いてきた。
ぼそぼそ「おい、どういうことだ?橋野さん、マジで脱ぐのか?」
ぼそぼそ「いや、おかしいだろ!普通そんなの聞いて即答するか!」
ぼそぼそ「春乃を見ろよ。あの答えを普通に受け止めてるぞ」
春乃を見ると、まるで「菜由子ってソース派か」っていう程度で日常会
話をする感じで「ふ〜ん、そうなんだ。やっぱ今日だったか」と薄い反応
を返した。
「あ、あの..聞きたいことはそれだけですか?」
「う〜ん、そうね〜。じゃあ、もしも橋野さんが嘘ついたらどうするの?」
「・・・そ、それは..」恥ずかしがる菜由子に男子たちがゴクンと生唾を
飲む。
「それじゃ明日ここで裸で謝罪っていうのはどうかしら?」
「・・・わかりました。裸で謝罪します」
「あら?いいの?」
「はい。それでいいです」
この菜由子の台詞を聞いて男子たちの興奮が止まらない。そして春乃が
追い討ちをかけた。
「じゃあ橋野さん!この場ではっきし言ってちょうだい!」
「はい!わ、私が嘘ついたら..」
「嘘ついたら?」ざわついてた教室が一気に静寂に包まれた。
「次の日、これを聞いた男子が私の代わりに裸で謝罪してくださいっ!」
「はあ?」「何でそうなるの?」
「という事で..あんたたち、明日裸謝罪が決定ね」ズバッ!
「するかよっ!」「ちくしょぉ〜!今度は橋野も巻き込んだなぁぁ」
散々期待させて一気に落とされたことに頭にきた男子たちが去ろうとし
たとき、春乃が呼び止めた。
「ちょっと待って、もう1つだけ仕込んだのあるから、それもやらせて」
「はあ?何だそれっ」「最初に言っちゃ意味ねーだろ!」
「まあまあ、えっと橋野さん、最後にもう1つだけ聞いていい?」
「はい、ど、どうぞ」
「えっと..ちょっと待ってね。メモ確認するから」がさがさっ
「おいっ!」「何だこの茶番は..」
メモらしきものを取り出した春乃は棒読みでこう聞いてきた。
「えっと..橋野さんは今日の放課後の行為に向けて、昼休みにパンツを
脱いできましたか?ですって」「はい..穿いてません」
「穿いてないって何をデスカ?(棒読み)」
「橋野菜由子はさっきパンツを脱いだので..今、ノーパンです」
「という事だけど、あんたたちドキドキした?勃起しちゃったぁ?」
「するかよっ!」「橋野に変なこと言わせんなっ!」
「って言うか橋野も、小嶋や佐賀につきあう必要ねーんだぜ」
「そうだそうだ。俺らの菜由子ちゃんに何てこと言わすんだよっ」
すっかりと呆れた男子たちが去る中、春乃が舌をべぇと出してきた。
(ホント、お馬鹿な連中〜。橋野さんのスカートにパンティライン無いの
に気づかないんだぁ〜。麻央のお灸でさっき本当に脱いだんだよぉ〜)
スケベな男子をからかうのが好きな新聞部の小嶋春乃。皆が驚く校内ス
クープを見つけてくるので、いろんな生徒が情報を求めてやってくる。
そんな春乃にとっては奈由子の露出命令は絶好の大スクープとなるのだ
が、麻央に先手を打たれてしまったらしい。
(麻央のやつ〜、私を巻き込みやがって〜。私が監視役していたので間違
いありませんなんて恥ずかしくて言えないじゃないっ!まあ、当分は馬鹿
男子を弄べるからいいんだけどね♪)
「はあ〜、それにしても菜由子は全然理解してないわね..まあそっちの
方が面白いからいっか!」
そう、春乃がわざと情報をリークしたとは菜由子自身は知らなかった。
男子たちを確実に金次郎の像に来ないようにしたらしく、今日の露出命
令を無事に成功するための策であった。
(スクープっていうのは大きく育つのを待つのも楽しいものよ。ふふ)
その一方、菜由子は生きた心地がしなかった。ノーパンであることを確
認されたらどうしようとドキドキしていた。それも麻央の追加命令で、ス
カートをお尻に敷かずに座り、股は少し開き目にしなくちゃいけなかった。
(ぁぁ..もうすぐで放課後に..放課後になったら、私本当に裸になっ
て金次郎の像と抱き合うんだわ..男子たちに見つかったら..どうすれ
ばいいの?)
ついに運命のチャイムが鳴り、終礼が始まった。まだ未練たらしく何人
かの男子がチラチラと菜由子の動向を伺う。
(うそっ..見張られてる..こ、この状況で..露出命令をするの?)
だが、菜由子には拒否する権限は無く、帰り支度をして、さっさと教室
を出て行った。麻央の命令では、このまま真っ直ぐ金次郎の像がある所ま
で向かい、すぐに裸にならなければいけなかった。
今こっそりと男子たちが後をつけていけば、間違いなく菜由子の恥ずか
しい行為を拝めることが出来るのだ。
(ぁぁ..誰もついてきてないよね?ど、どうしよ..待ち伏せてみると
か?いや、そんなことしたら麻央さんにまたペナルティを与えられちゃう)
いろいろ考えたあげく、菜由子は素直に昇降口に行くことを決めた。靴
を履き替えて校舎を出ると、そのまま金次郎の像に早足で歩いていく。
(どうか誰にも見られませんように!見られませんように..)
「はぁはぁ..着いたわ..この茂みで脱げばいいのね..」
金次郎の像近くの茂みにたどり着いた菜由子はおもむろに服を脱いでい
く。まだ日も暮れてないのに上着を脱ぎ、ブラジャーを外す。おっぱい丸
だしとなったところでスカートを外すとノーパンだった股間も丸見えとな
る。本当に菜由子は麻央の露出命令通りに素っ裸となった。
「ああっ..裸になっちゃったわ..どうして、こんな恥ずかしいことを
受け入れてるの?見つかったら、全て終わりなのに..」
(そ、そうだ..早く報告しなくちゃいけないんだ..)
何と菜由子は露出命令をちゃんと実行している証明として、茂みに隠れ
てる自分の裸体をスマホで撮って、それをLINEのグループトークに写真を
投稿した。
グループ名は<麻央の秘密のお茶会>で、1年2組の女子全員が参加して
おり、男子が居ない教室で女子たちが大爆笑していた。
「あはははは〜、マジですっぽんぽんになってるじゃない!」
「まだ、こんなに外が明るいのに、よくやるわね〜」
「って言うか、この茂みって昨日、男子たちがずっと隠れてたとこよね?」
「そうよ、夕方から0時まで、この茂みから金次郎の像を見張ってたって」
「もしかして男子と鉢合わせしちゃうんじゃない?」
「うわぁ〜、それマジヤバイ。すでに裸の菜由子ちゃんが待ってたなんて」
「そういや今日、男子たち帰るの早くない?これもう絶対ピンチかも」
「あんだけ春乃が頑張ったのに無駄になっちゃったね〜」
「ところで、その大失態の春乃が居ないんだけど、助けに行ったの?」
「ううん、何か屋上に行くって言って、こそこそ上の方へ向かっていった」
「それと何人かの馬鹿男子が春乃のあとをつけていったかも」
「そういうことか..男子たちまた嵌められたんだ..」
「で、こっちはどうする?」
「そうだね、今の教室の写真送ろうよ。男子たちが早く帰っちゃったって」
「!なるほど、それウケル〜。そろそろ淳子と京香も帰ってくるから丁度
いいわね」
女子たちが今の教室の状況を写真で送ると菜由子からいろいろと質問が
きたが、それは誰もが全部既読スルーした。
そして、5分後に淳子と京香が麻央の指示で何かを持ち帰って教室に戻
ってきたようだ。
「麻央さん。ちゃんと菜由子から受け取ってきました」と菜由子の鞄と制
服、ブラジャーを机の上に置いた。
そう、今の菜由子はスマホ以外、全て没収されており、あとは麻央のゴ
ーサインで金次郎の像に抱きつく手はずとなっていた。
「あはははは〜、もうこれじゃ完全な露出狂だわっ。水着姿でも見られる
のを嫌がっていた橋野さんが、ここまでしてくれると大爆笑だわっ」
「裸婦画を台無しにしたときには、どうかしてると思ってたけど、やっぱ
麻央ってすごすぎるわぁ〜」「麻央さんっ、最高ですっ」
「もっと褒めてもいいのよぉ〜、称えてもいいのよぉ〜。あははははは〜」
全てが順調にいってると思う中、とんでもないことが起きていた。屋上
に行っていた男子たちが今度は金次郎の像の所に来てしまったのだ。
菜由子は必死に茂みに隠れて、男子たちの様子を伺うしかなく、見つか
るのも時間の問題だろう。
「なあ、この像にあの橋野さんが裸で抱きつくと思うか?」
「って言うか、高校に金次郎の像っておかしくね?小学校かよっ!」
「校長の趣味だろ?美術室にも立派なダビテ像あるし、他にも像あるし〜」
「しかし、これに裸で抱きつくなんて..やっぱ想像しにくいな」
「そうだよなぁ〜。昨日はまんまと小嶋に騙されたってわけが..」
「そもそも、また騙されたし..像の所に橋野発見って..どう見ても嘘
だし..なんだかんだ言って来てしまったし..」
「で、今日はどうする?信じて待ってみるか?」
「う〜ん、迷うな〜。でも、きっと屋上で小嶋が見てそうだし..」
男子たちの視線が菜由子が隠れてる茂みに集まる。もし近づいたら、誰
かが隠れてるのがばれるはずだ。
(いやぁぁぁ〜!こないで、こないでぇぇ〜!私、素っ裸なのぉぉ〜)
菜由子はただ蹲るだけで精一杯だった。それなのに、とんでもない指示
が麻央から送られてきた。
<10分後に茂みから飛び出して裸で像に抱きつくこと!1秒でも遅れたら、
ペナルティだからね♪>
(そ、そんなぁ〜、男子たちが居るのに..抱きつけっていうの!?)
けれど今の菜由子はスマホの画面だけ、カウントダウンの画面を見るし
か無かった。もう恥ずかしさで頭が真っ白になっていたからだ。
「・・・あ、あと1分..やるしかないのね」
何と菜由子は麻央の指示の通り、カウントがゼロになると同時に茂みか
ら飛び出て一目散に像へ走っていった。
久しぶりに会った恋人に抱きつくように、菜由子が裸で金次郎の像と抱
き合った。だけど周りからはクスクスとした笑い声しか聞こえない。
(この笑い声..女子なの?)少し落ち着いた菜由子が周りを確認すると、
男子たちはとっくに帰ったあとだった。
今は男子の代わりにクラスの女子数人が失笑しながら立っていた。
「うわぁ〜、金次郎の像と裸で抱き合うなんてサイテーかも」
「橋野さん、せっかくの男子お披露目出来なくて残念だったね〜」
「ほら、菜由子ちゃんの制服と下着よ♪返して欲しかったら、もうちょっ
と金ちゃんを誘惑してみてよ〜」
「本ばっか読んでないで、私のおっぱい見てよってしてみてよ〜」
「わ、わかったわ..」
(それで早めに制服と下着を返してくれれば何でもするわ..)
菜由子が金次郎の像相手にいろんなポーズをしていく。が、気づくと女
子たちが近づいてきて、ピッタリ密着しながらの手ほどきを始めた。
「ほらぁ〜、おっぱいを金ちゃんの本にこうして乗せて・・・あん、このぷ
よぷよ感たまらないわね」「ホント、この柔らかさが癖になりそう」
女子たちが菜由子のおっぱいを優しく撫でてくる。股間の方でもツルツ
ルの割れ目に別の女子が顔を押し付けてきた。
「きゃは♪この匂いヤバイ!もしかして濡れた?濡れたのねっ!」
「そ、そんな性癖ありませんっ!」「本当かしら、うりうりぃ〜」
(あれっ?私、イジメられてたんじゃなかったの..何かこれ違う〜)
「ふふっ、可愛いっ」「乳首も固くなってるわよぉ〜。ほれほれ〜」
女子たちに責められ、菜由子が金次郎の像と抱き合いながら身悶えてい
く。
菜由子を辱めてるのは間違いないが、女子たちが甘い声で「もっとして
いい?」「舐めていい?」と囁いて確認してるのをみると、やはり集団イ
ジメとは程遠いものだ。
屋上から様子を伺っていた春乃も「はああ〜」と溜息を吐きながら、ど
うみても集団百合行為になっていく状況に呆れていた。
この一件で分かったことは、女子たちは菜由子を元々嫌っておらず、逆
に素直に弄られる菜由子を可愛くて、いじめてしまう感じだった。
そんな女子たちを悦ばせようと、麻央が次の露出プランを立ててきた。
麻央の大胆プランとして、次の通りであった。
【次からは男子たちにも、良い目に遭ってもらいましょう。地元の時間
帯男女切り替えの温泉へ無防備な素っ裸で菜由子に入ってもらいましょう
♪】と。
<完>
「橋野菜由子はこうして露出されていく」完