12月。
大学を卒業して働き始めた明は、もうひ弱な少年ではなかった。会社では一年目ながら優秀な結果を出し、エリート候補と言われている。そして私生活はと言うと、明け方までベッドの上で恋人と何度も愛し合った後だ。その彼女は明が先にシャワーを浴びて着替えてもまだ目を覚まさない。完全に腰が抜けていて、何度もアクメを迎えたせいで体力も残っていない。恋人がそばを離れても立ち上がれないSEXを何度も夢の中で反芻し、そのたびにぴくりと体を震わせる。
――人生、うまく行ってると思うんだけどな……
ベッドの上の恋人はショートカットが良く似合う、どことなく男の子っぽい雰囲気の漂う巨乳の女性だった。ベランダに出て手すりにもたれかかり、時折震える恋人の様子を見つめていると、未だに自分の胸から離れない未練にため息を吐いてしまう。
明が本当に愛している女性はただ一人、今も昔も彼に女性と言うものを教えてくれたタクヤだけだった。付き合っている恋人はあくまで代理……タクヤのいない寂しさを少しでも埋めるために付き合っている。その事を話した時には思いっきりビンタされた。それでも明から離れられなくなっていた彼女は、肉体だけの関係と割り切って付き合ってくれている。……その事も、明にとっては幸運なのだろう。
――先生、今はどこにいるのかな……
タクヤは結婚し、生まれ育った街を離れていた。
相手は一つ年下の後輩だったはずだ。女になったタクヤの一番傍で支え、一番愛した男性だ。だからタクヤも彼と結ばれることを望み、明との関係を断ち切るように姿を消したのだ。
――僕が先生の体のことを知ったのは、その時だったんだよね……
謝られた。
世間の目から見れば“非道い”と言われるような事を何度もタクヤにされた。
今も友人として付き合いのある翔と共に何人もの女性を肉体的に満足させるためだけの哀願動物のような扱いを受けた。
胸を嬲られ、アナルを穿られ、思い返すだけでも背筋が震えるような責め苦を何度も味合わされた。
けれど、明はそのどれもが本当にイヤだと思ったことは一度もない。恥ずかしくて「イヤ」と口走ったことはあっても、タクヤにされるのならたとえ殺される事だって受け入れていた……
それほどにタクヤと言う“女性”を愛していると気付いたのは、体の秘密を告げられ、別れの言葉が紡がれた後だった。
子供心の「好き」ではなく、一人の男として「好き」だったのだ。初めての恋は他の誰が経験するものよりも激しく燃え上がり、それが愛に変わったと気づいた途端にあっけなく消えてしまったのだ。
――……どうしよう、勃ってきた。あれから何年経ったと思ってるんだよ〜!
タクヤが忘れられない……忘れようとも思わない。タクヤとの事を思い出しながら手でしごけば、ベッドの上の恋人とするよりも何倍もの快感が押し寄せてくるだろうが……それはできない。ズボンの下で節操をどこかに忘れてきた息子が激しく脈打つけれど、タクヤを思い出すのなら、その気持ちを恋人にぶつけてあげなければ、事情を知っても付き合ってくれている彼女に悪い気がするからだ。
――はぁ…やっぱり先生にフェミニストになるように仕込まれてるのかな、僕……
頭からタクヤの影が消えないから、股間は猛る一方だ。けれどベッドの上の恋人が目を覚ましてくれないと、どうすることも出来ない。出来るのはただ、すっかり冷え込んできた朝の空気に向かって、情けなく黄昏れるだけだった。
そんな明の目が向かいのマンションの前に停まっているトラックへ吸い寄せられる。新しい入居者が来たらしい。
――いっそ手伝いで体を動かして、性欲を発散させようかな……
そんなことを考えていたせいか、明の目は引越し業者とは違う服装をした、長い三つ編みを背中で揺らしてトラックとマンションを往復している女性を自然と見つめていた。
セーターにジーンズ、体にぴったりフィットした服装のおかげで上層階の明の部屋から見ても彼女のスタイルのよさは簡単に見て取れた。
けれど明の好みはタクヤと同じショートカットだ。本人にそのつもりはないけれど、つい短い髪の毛にタクヤの面影を求めてしまう。
――ううっ……なんだろう。今日に限って反応してしまう……ああもう、限界だよこれ!
引越しの荷物は少ないようだし、少し手伝わせてもらおう。目を覚まさない恋人を起こさないように外へ出ると、エレベーターで一階へ。降りる間に深呼吸して興奮の火照りを吐き出して平静を取り戻すと、明は引越し会社のロゴの入ったトラックへ近づいていく。
「よかったら手伝いましょうか? 今日は休日だし、少し体を動かしたい気分なんですよ」
「え?……ああ、それはありがたいんですけど……荷物はあたし一人分でそんなに多くないし、その……色々と見られたくないものもありますし」
明よりも年齢は少し上だろうか。そんな女性がメガネをかけた顔に困った笑みを浮かべて頬をかく仕草はかわいらしい。
――見られたくないもの……はは、確かに男の僕じゃマズいよね。
見れば、三つ編みの女性の代わりに荷物を運んでいる業者の人間も全員女性だ。それが依頼主の女性への配慮……服や下着など男性に見られるのも触られるのもちょっと困るものを扱わなければならないからだと、明はようやく合点がいった。
「す、すみません。気が回らなくて」
「ふふ、別にいいわよ。明君ってばそういう所は昔とちっとも変わってないんだから」
「そうなのかな。自分じゃ解らなくて」
「……む、あたしは一目で気付いたのに明君はわかってくれないの? う〜ん…髪型とメガネがいけないのかな? 顔は昔と変わってないと思うんだけどな〜」
「え……………えええええっ!?」
「おひさしっ♪ こんなところ出会うのも偶然……と言うより運命かしらね?」
女性がメガネをはずすと、そこには明が何年も想い続けた憧れの人が立っていた。
「せ、先生!?」
間違いなくタクヤだった。髪が伸び、メガネを掛けているせいで印象が変わってしまっているけれど、明が見間違えるはずもない。
「いや〜、離婚してこっちに戻ってきちゃった。解消なしの旦那といろいろ会ってね〜♪」
「く、暗い話題を平気な顔して話すんですね……」
「だからこそ気分が暗くならないように明るく行かなきゃ♪ それに、明君と再会できたのは喜ばしいことだもんね♪」
「先生……」
「けど、ごめんね。いくら明君でも散らかってる部屋には上げたくないって言うか……明日も日曜だからお休みでしょ? 今日の夜にでも連絡するから」
「あ…わかりました。じゃあ僕の携帯と部屋の番号を――」
お互いの連絡先を教えあうと、タクヤは方目を瞑って謝りながらに運び作業に戻って行く。三つ編みの揺れるその後姿を見つめていると、明の心に二つの感情がこみ上げてくる。
一つは、昔、タクヤと分かれた時にはっきりと自覚した彼女への愛だ。メガネを取れば記憶の中の笑顔と変わらない顔……それだけで明の胸は張り裂けんほど高鳴ってしまう。
そしてもう一つは、いぜにょりもよりいっそう乳房やヒップのボリュームを増していやらしくなった体を思う存分蹂躙したいと思う劣情だ。年齢は三十前後だと思うけれど、重力に逆らうように前へと突き出された胸のふくらみには垂れている様子などまったくない。その体を後ろから抱きしめ、セーターの上から胸をこね回したいと思うのは、何も明だけではあるまい。
タクヤの姿がマンションに入って消えると、明も引越しの邪魔にならないように自分の部屋へ戻る。
落ち着いている。平静でいる。焦ることなんて何もない。むしろ普段よりもゆっくりとした足取りでタクヤとの再会を反芻しながら自室に戻ると、明は服を全て脱ぎ捨て、未だまどろみの中にいる恋人の上へ覆いかぶさり、もう限界を迎えそうなペ○スを乾ききっていないヴァギナへと強引にねじ込んだ。
これが最後だ……夜、タクヤから電話がかかってくるまで待ちきれない。だから彼女との関係をこれで最後にする代わりに、タクヤに全てぶつけたい性欲を全部叩きつけるつもりで犯すと決めた。
絶頂は早い……半分眠っていた彼女の膣が痙攣し、新たな愛液があふれ出してくる。その中心めがけて肉棒を打ち込んだ明は、心の中で恋人にタクヤの姿を重ね合わせて信じられないほどの量を射精した――
別れ話は、意外なほどあっさり終わってしまった。
彼女のほうも明とのSEXについていけず、分かれることを考えていたらしい。
そうして元・恋人が腰を抑えながら出て行くと、部屋が急に広くなる。もともと彼女の私物なんてほとんどなかったのに、人が一人いなくなっただけで、明の部屋にはがらんどうのような空白感が広がっていた。
――でも先生が来てくれれば……
そう考えただけなのに、立たなくなるほど射精した肉棒は元気に立ち上がってくる。
――先生……我慢できないよ!
今まで禁じていたオナニーを始めてしまうと、手の動きはどんどん速くなる。鮮明に覚えているタクヤの膣内を突き上げた感触に今朝見た現在のタクヤのイメージを重ね合わせると、ペ○スは元気になっただけではなく、今にもフローリングに精液を撒き散らしてしまいそうなほどビクビクと脈打ってしまう。
けれど出してしまうのはもったいない……何年も待ち続けたのに、明日、タクヤに想いをぶつけるつもりの明は、服を着込むとすっかり夜も深けたベランダから外に出る。
タクヤの部屋は眼下だ。広場をはさんでいるけれど、お互いの部屋のベランダが向かい合わせになっていて、きっと表情も読み取れるに違いない。朝、このベランダからタクヤと挨拶を交わすことにでもなったらどうしようか……そんな甘い妄想を思い浮かべていると、ベッドの上に投げ出していた携帯が鳴り始める。
相手はもちろんタクヤだ。慌てて電話に出ながら再びベランダに出ると、タクヤの顔見たさに視線を想い人の部屋へと向ける。
だが……先ほどまで閉まっていたカーテンが開いている。そしてガラス戸の前には全裸のタクヤが立っているではないか。
慌てて頭を引っ込める明……だが電話口ではタクヤは普通に、けれど少し疲れた様子で話している。
明の股間は痛いほどに張り詰め、ズボンを突っ張らせる。
だが、まだこれからだった。
離婚して性欲をもてあましているタクヤは……まだ明と肌を重ねていないのだから……
なんか色々書き足してみたいので鶴用掲示板から移設。
クリスマスから始まるネタなので、今年のクリスマスネタはこれじゃダメかなー(汗