・深夜にご主人様に呼び出され……
それはたくやがルーミットとして奉公し始めてから間もない頃の事。
まだ仕事も覚え切れておらず、いくら器量がよくてもご主人様からお声のかかるはずのない新人メイドでしかないルーミット。けれどある夜、自分の部屋でシャワーでも浴びて寝ようかと思っていると、館の外から持ち込んだ携帯が急になり始める。
外部からの電波は届かないはずなのに……不審に思いながら電話に出ると、相手はなんとご主人様。今日は仕事が忙しく、気晴らしに誰かと喋りたくて、新入りのルーミットに連絡を入れてきたのだった。
どうやって電波の届かない場所で携帯に……不思議に思わないでもないけれど、この数日で叩き込まれたご主人様への敬語や忠誠などを思い出してあたふた。電話越しに聞こえるドタバタにご主人様も苦笑を漏らすと、今日のところは無礼講でルーミットの「外での暮らし」の話を聞かせて欲しいと頼まれてしまう。
大学での事、バイトの事、友達の…そして大切な人の事……
突然この館にやってきて、その事実を未だに受け入れきれないでいるたくやの心が、一つ一つ思い出して電話口に向けて語る言葉へ乗せられる。
決してご主人様を非難するわけではなく、それでも元いた場所への未練は絶ち難く……改めて自分が望んでここにいるわけではない事を自覚したルーミットだが、今度はご主人様が自分の事を話し始め、その言葉に自然と耳を傾ける。
それは外の世界への憧れにも似た想いが込められた言葉だった。
情報でしか知らない薄っぺらなイメージで構築された外の世界……館から外へ出る事はほとんどなく、毎日をメイドと執事に囲まれて何不自由なく暮らしていても物足りなさを覚える日々。それは館の外へと逃げる事を望む意味ではルーミットと同じ考えだった。
だけど二人の思いはどちらも叶えられる事はない。それでも思いもかけずご主人様と共感を得たルーミットは、ほんの少しだけ心に安らぎが生まれたのを感じていた。
――と、不意に部屋の扉をノックされる。話口から聞こえたのだろう、「出てもいいよ」と言われ、一旦携帯をベッドの上に置いて扉を開けるルーミット。そして扉の前には今まで離していたご主人様が立っていた。
「入ってもいいかな?」と聞かれても、ルーミットはただ黙ってうなずく事しか出来ない。なぜか頬は勝手に熱を帯び、隣をご主人様が通り抜けていくのを感じただけで心臓がドクンドクンと早鐘を打つように鼓動してしまう。
もう……二人は十分すぎるほど言葉を交わしていた。同じ部屋にいるルーミットたちにはもう言葉は必要なく、扉を閉めた姿勢のまま立ち尽くしていたルーミットの肩に手を置かれると、そのままご主人様の胸にもたれかかってしまう。
「あたし……男なんですよ?」
「君は君じゃないか……今の君が全てだよ」
拒む……いや、拒まれるための言葉は、それだけしか口に出来ない。言葉を放とうにもご主人様の口付けでルーミットの唇はふさがれてしまい、ルーミットもまた差し込まれる舌に舌を絡めて応えてしまう。
愛されている……と、そう思う。弘二のように肉欲をぶつけてくるのではなく、ルーミットの身体と一緒に心まで重ねるような心地よい愛撫に、次第にルーミットの抵抗も弱々しくなり、いつしか二人は倒れこむようにベッドへと倒れこむ。
だが、一度始まってしまうと二人の性欲は納まらなくなった。お互いに求める心が強すぎるのか、服を着たまま局部だけ露出させて繋がりあうと、どんなに気をやっても、どれだけ出されても、ルーミットとご主人様は動きを止められず、止めよともせず、いつ果てる事無くお互いを求め合ってしまう。
(あたしの居場所は……ここなのかもしれない)
気付けば窓からは朝日が差し込み、ルーミットはご主人様の腕の中で眠りに落ちてしまっていた。もうしばらくすれば朝のお勤めが始まる時間……その時間に起きてこなければ誰かがこの部屋にまでやってきて、ルーミットたちの姿を見つけて大騒ぎになることだろう。
けれど目を覚ましたご主人様は、すぐまたルーミットを求め始める。そしてルーミットもまた……メイドとしてではなく、一人の“女”として、ご主人様に愛される事に喜びを覚えてしまうのだった……
この後もエロエロラブラブな展開が続くんだろうな。
お屋敷にはプールもあるだろうから水着メイドとか、お風呂メイドとか、ワンワンメイドとか、ノーパンメイドとか……!