中編@


し〜〜ん。放課後の誰もいないはずの教室…3年の教室の並びの廊下で耳をすます俺と弘二…静かじゃないか。 「なんだよ〜何もないじゃないか。まったく…な、弘二。千里の作ったもんなんてこんなもんだよ。あてにな ん――むぐ、むぐぐ」 いきなり俺の口を塞ぐ弘二。 「むぐぅ、ふぉ」「し!黙って!静かに、先輩。…あの教室から、何か音がしますよ」 ふ?……確かに、何やら時々小さい声と物音がする。それはどうやら俺のクラスのようだ。 だが…いったい誰が。 「――や――やめて―――あ、やだ…こんな…助け…」ん?あの声は…あ、明日香!? 「明日香ぁ〜!」「あ、ちょっと待って先ぱ…」 俺は弘二の制止を振り切って駆け出していた。明日香!待ってろ!明日香!俺が。 ガラッ!!「明日香ぁ!」「拓也!?た、助けて、拓也ぁ〜〜」 見れば教卓に座らされた明日香が、胸や股間を弄られている。首筋を舐めまわしてる男は…寺田だ! 「寺田ぁ!貴様ぁ、よくも明日香を!」 バキッ!俺のパンチが寺田の顔面にヒットする。倒れる寺田。思い知ったか…イテ、イテテテ、拳が痛いよぉ。 「いたた…明日香!大丈夫か?何かされた?」 「ぐすっ、すん、すん…だいじょぶ…ちょっと触られただけだから…」涙を拭きながら俺に凭れ掛かる明日香… 乱れたブラウスからブラが…おお! 「…拓也?どこ見てるの…」「うわ!見てない!見てません、明日香様」 「もうスケベなんだから!…でも今日は許す」そう云いながら服の乱れを直す明日香。 良かった…ありがとう千里。お前のおかげで明日香を助けられたよ。 「先輩…寺田どうします?」後から来た弘二が伸びてる寺田を指差している。 「明日、担任の大村先生に相談しよう…それでいいよね明日香?」「うん」 「帰ろう…くそ、殴った拳がまだ痛いよ」三人で教室を出ようとしたその時である。 「待て…くくく。もう少し…もう少し遅ければ片桐も――なったのにな…その方が幸せだったかもしれんのに… ぐふふ」 「何!寺田ぁ!お前こんな事しといて何云ってんのか判ってんのか!」 「判ってるよ…」 そう云いながら立ちあがる寺田…先ほどは気付かなかったが頭につばの無い帽子のようなものを被っている。 なんだあれは?…かっこわりぃ。 「ぐふふふうぅ…ぬぅおおおおおおおおおお!!!」いきなり叫びだした寺田。 すると寺田の背中から10本近い触手のようなものが飛び出してうにょうにょと不規則な動きを見せた。それ はさながら千手観音のように寺田の周りで漂っている。 「きゃぁ〜〜〜〜!!!」叫ぶ明日香。…当たり前だ。男の僕でも叫びたい。なんなんだこれは…と、とにか く逃げなきゃ。 「明日香。逃げよう!」明日香の手を握り教室から出ようとする俺。しかし弘二が待ったをかけた。 「待ってください!先輩!僕らはエックスレンジャーですよ!」 「じゃあお前が倒せ!俺は明日香を安全な場所へ…」 「明日香さん!誰か呼んできてください!ここは僕と先輩でなんとかします!」 「だけど…拓也…」「…大丈夫。弘二の云う通りにして。俺と弘二でなんとかするから」 …仕方ない。とりあえず変身してみるか。ダメなら…いや、とりあえず明日香を助けられたのは千里のおかげ だ。ここは千里の顔を立てて… 「明日香!早く逃げて!それで誰か呼んできてくれ!」「わかった!弘二くん、拓也を助けてね!頼むわよ!」 そういって走っていく明日香。 良かった…明日香にはピンクに変身するところなんか見せられないしな。 「先輩!変身しましょう!」「あぁ…とりあえずお前、先にやってくれ」 「いいですよ。…『ちぇ〜〜んじ、エックスレーッド!』」どうせ、こんなの…うお!? キラ〜ン!一瞬にして弘二の身体が光に包まれる。やがて光が晴れ…ん? 「どうです!先輩」「いや、レッドはレッドだけど…なぁ」 首筋には紅いバンダナがたなびく…全身も紅い…けど、それは着ていた制服が真っ赤になっただけであった。 顔も素顔晒してるし… 「いや、弘二。それでポーズ決められても…」 「まぁ…こんなもんですよ。なんたって千里ですから」 『失礼ね、先輩がた!』「わ!聞いてたのか、千里?」 『ちゃんとブレスレット越しに交信できるんですから。その変身後の制服は特殊繊維で出来ていて耐熱800 ℃から絶対零度まで。完全防弾仕様になってますから。安心して戦ってください!』 「ほんとかよ…」「先輩!早く先輩も変身してください」 「ああ…」 「お〜い、早くしてくれよぉ〜このままの態勢で待ってんの大変なんだぞ!」寺田が叫ぶ。 「判ってますって…じゃあ先輩。お願いします」 …何?「何だ?弘二…今のやりとりは…」「何でもないです。さ、先輩…」 何か壮大な嘘に飲みこまれてる気がする…えぇ〜い! 「行くぞ!『ちぇ〜んじ、エックスピ〜ンク』」キラ〜ン! うわ!なんか凄ぇ!包まれてる感じ…こんなのどうやって発明するんだ? 身体が浮いていって、あぁあ、細胞が…身体がバラバラに…うああああああ!!!


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