『その1、誘惑。寺田』


《も、もっとぉ、もっと突いてぇ》 (はぁ…あ、あいは、ら…) 《止めないで…》 う!…またあの時の事を思い出しちまった。…いい…女だったなぁ… パラレルXC1.5「寺田EndAfter1」 『その1、誘惑。寺田』 冬休みも近くなったある日の放課後。俺は科学教室に来ていた。 科学部部長の佐藤に、昼間声を掛けられたからだ。 (先生。放課後、科学教室に来てもらえます?お話があるんですけど…) 女子生徒に声を掛けられる事など授業以外ではほとんど、いや、まったく無い。 しかも相原との体育教官室での一件以来、男子女子問わず生徒に避けられている状態なのだ。 佐藤が何を考えて俺に声をかけたのか…不安もあったが、結局好奇心がそれに勝った。 「…と、いうわけで、この性転換薬の実験体を探してるんです」 「まぁ、製造過程の話はよく判らんが…しかし俺はイヤだぞ、女になるのは!」 「だ・れ・が!そんな気持ち悪い事頼みますかぁ!」 おいおい、そんなイヤそうな顔すんなよ。傷つくなぁ… 「じゃあ、何で俺に声を掛けた?」「…相原くん」「っ!?」 その名前に思わず反応してしまう。「あ、相原がどうした?あいつは科学部辞めたんだろ?」 「そうなんですけど…相原君。冬休みに特別授業受けるんですよね?」「あ、あぁ…」 そうだ。相原はあの件の直後、俺の授業で級友にからかわれて以来、俺の授業にほとんど出ていない。 そのせいで来春の進級が危うい状態になってしまったのだ。 俺も多少責任を感じていたので、学年主任や担任と相談したところ、冬休みの三日間、学園で体育の 特別合宿を行い、それに出れば単位を与えるという事に決まったのだ。 相原は当初、俺がその授業を受け持つ事に抵抗を感じていたようなのだが、 『あの時の事はすまなかった』と素直に頭を下げると、代えって恐縮し、合宿に出る事を承諾した。 …三日間、男と二人きりで授業なんて、拷問だなァ…教師は大変だ、などと思っていたのだが… 「その初日に相原君を女にして、最終日に男に戻してください」 「佐藤!お前、な、何考えてんだ!?」 「で、このビデオに変わる瞬間と戻る瞬間を撮ってほしいんです」 「…おい」 「手頃な実験体がいないんですよ。相原君も辞めちゃったし…それに相原君にはちょっと“おしおき” を…いえ、どちらかといえば“復讐”かな…」 「復讐?」 「いえ、それはこっちの話。…ねえ、どうです?学園内で可愛い女の子とふたりっきり。しかも男に 戻るんだから後腐れ無し!」 それは…いや…しかし… 魔女の誘惑。選択権は…ひとつしかないじゃないか!もう一度、あの、あの身体を俺の思いのままに! 「判った!その話乗ったぁ!」「そういうと思ってました。じゃあ、これ…」 そう云って、小さな瓶二つとビデオカメラを差し出した。 「この赤いラベルが転換薬。青いのが戻る方です。在庫これだけなんで気をつけて下さい。飲み物に 混ぜてOKです。 で、ビデオです。何撮ってもかまいませんけど、変身の瞬間は確実に撮って下さいね」 「あぁ…判ってる」何を撮っても、か…面白そうだな。 「それじゃ、三学期の始業式の日に…イイ結果着期待してますから」 科学教室を後にした俺は、もう気分が高揚している。 三日間どう過ごそうか…それしか頭にない状態だった。 続く


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