宮野森学園体育祭 アフター保健室ED −1


『さあ、ついに始まりました宮野森学園秋期恒例大体育祭! 実況は宮野森の全ての情報を握る美少女乙女、八塚由美子と』
『自由にさせてたら盗撮し放題とか言ってたら放送席に拉致られた未だ名字は未判明、大介でお送りさせていただきます!』
 ―――はぁ…あの二人の生声、スタートラインまで聞こえてくるよ。スピーカなんてなくてもいいんじゃないのかな……
 女の体のままで出場する体育祭……もともと運動が得意じゃないあたしにとっては体育祭は憂鬱なイベントだ。その上でムチムチのいやらしい体に体操服姿、しかもラインがくっきり浮かび上がりぴちぴちのブルマでの参加が義務付けられていて、どうしたって気分は盛り下がる一方。
 おかげで元々男である事が知れ渡っている宮野森学園の男子生徒からだけではなくビデオカメラ片手のお父さんたちや来賓の視線までもが、男に混じって百メートル走のスタートラインに立つあたしへと注がれている。……やる気なんて、起こるわけがない。出来るなら今すぐここから逃げ出して隠れてしまいたい気分だ。
『注目の第一種目、百メートル走ですが解説の大介さん、この競技の注目はなんですか?』
『それはもうなんと言っても我がクラスに彗星の如く現われた訳あり美少女たくやちゃんのおみ足を拝める事でしょう。なんでも体育教師のT先生のごり押しで女子ではなく男子扱いとされてしまい、欠席の多かった体育の補習代わりに多くの種目にも出場してくれる……いや〜、やってくれたぞ寺田先生! 俺たちゃあんたを尊敬するゼグフォ!』
 ―――あ〜…由美子、大介には容赦ないなぁ……
 放送席のマイクが大介を殴打する音をスピーカーから垂れ流す。このぐらいならバイタリティー溢れる宮野森学園の生徒なら誰も気にしないし、喝采を送っちゃうぐらいのことはするだろう。
 そんな突発的なトラブルで開始の遅れた第一種目の百メートル走。
 右に白の鉢巻の男子が三人。左に赤の鉢巻きの男子が二人。そして運動部の精鋭が参加するこの百メートル走に一人だけ文化部で出場しているあたしは赤い鉢巻きを締めている。
 ―――やっぱり…みんなから見られてる気がする……
 左右の男子を含め、第二走に走るために後ろで待機しているみんなの視線があたしの体に纏わりついているような気がする。特に下半身……緑色のブルマは学園側で用意されたものだ。余すところなんてないぐらいにサイズが小さめの伸縮性のある記事に全身を包まれているあたしは、何人もの男の人に抱かれてしまった女のからだのイヤらしいラインを運動場の真ん中でさらけ出しているようなものだ。
 揉まれすぎてFカップでもキツくなるぐらいに発育した胸の膨らみには左右から、その張り出し具合や形のよさを立体的に見つめられている。
 後ろからはブルマのラインが食い込む丸々としたヒップに熱い視線がそそがれ、奥のほうからジィンと熱いモノがこみ上げてしまいそうになる。
 ―――女になった。
 一年前のあたしと比べ、今のあたしの体は何人もの男を知っていやらしく発育を続けている。震える吐息を吐きながら視線を落とせば、全体的に引き締まっているのにそこだけ柔らかいものが詰まっている豊満な乳房が否応無しに目に入る。
 90センチオーバーのバストとは裏腹にウエストには余分な脂肪がほとんどついていない。キュッと引き締まったくびれから太股へと続くラインは、それなのに日々色気を増して理想的な下半身の曲線を描き出している。
 ―――大人の女に…なったのかな……
 だけどあたしの心は女としてはまだ一歳にもなっていない。女として生きていく事を決めた、あの時から……
「位置について!」
 ―――いけない。走ることに集中しなくちゃ。どうせ予選だけ……恥ずかしいのは、たった十数秒の間の事なんだから……
 スタートの合図をならす銃を上へ向けた先生の声に従い、スタートライン居並んだあたしを含めた六名がその場にひざまずく。
 ―――恥ずかしいのは……ほんの少しの間だけ………でも……でもこんなのって……!
 短距離走のスタートは当然クラウチングスタート……地面に手を突いて腰を上げ、重心を前にかけて勢いよく走り出すスタート方式だ。
 当然、前かがみになってお尻を突き出せば、それだけ股間は丸見えになり、大勢の人の視線があたしの股間へそそがれる。ブルマが左右から食い込んで膨らみを強調された恥丘へ……そしてその中央にうっすらと浮かび上がる、割れ目の縦筋に……
 ―――松永先生……やっぱりこんなの…恥ずかしすぎます!
 スタートの姿勢のまま目を走らせるけれど、こんな事を命令した張本人の姿は見つけられない。
 ほんのわずかな時間……それでもあたしの下半身の異変に気づかれるのに十分な時間。あたしは赤く火照った顔を羞恥心で大きく歪め、歯を噛み締める。
 ―――気付かれてる……あたしがノーパンだって、絶対に気づかれてる!!!
 パンッ、と火薬が打ち鳴らされる。……その瞬間、この恥ずかしさから逃れたい一心で、あたしは下半身をキツく収縮させながら、他の誰よりも最高のスタートを切って走り出してしまっていた……



 それは昨日、体育祭の準備中を終えた後に保健室へ呼ばれた時のことだった―――
「松永先生……どういうことですか? 体育祭にノーパンで出ろって……」
 不安げに質問するあたしに松永先生が告げる。
「相原くん、私の言う事が聞けないのかしら?」
 そう言われてしまうと、あたしは何も言い返せなくなってしまう。
 あれは一年前の事……男から女へと体も心も変わりきってしまったあたしは、松永先生に誘われるがままに、学園の保健室で何人もの男子と淫らな行為を繰り返し、やがては快楽の虜……いや、松永先生の下僕に成り果てていた。
 決して強要されているわけじゃない。松永先生自身も、イヤならしなくていいと常々言っているのだから、あたしが拒めば無理強いはしないはずだ。だけど……女の体がもたらしてくれる快感に正直になりすぎている今のあたしには、もし松永先生の機嫌を損ねるなんてこと……
 この保健室では、もう何度も……それこそ数え切れないほどSEXを繰り返してきている。
 相手はいつも同じとは限らない。松永先生が全校生徒の中から選んで連れてくる男子は、みんなハンサムであっちの方も逞しいけど、その人数が問題だ。最低でも三人。多いときにはそれこそ十人以上。学園中の生徒に慕われている松永先生の裏の顔をそばで見てきたあたしは、その恩恵とも言うべき快感を骨の髄まで擦り込まれてしまっている。今では保健室に足を踏み入れるだけで下腹部の奥から痺れるような疼きが込み上げるぐらい淫らな女になってしまっている。
 ―――だからあたしは、もう男には戻れない……
「わかり…ました。下だけで、いいんですよね……」
 松永先生へ確認の言葉を向ける間、あたしはブルマから出していた体操服を両手で下へ引っ張っていた。
 まだ体育祭は始まっていない。明日はまだ来ていないのに……あたしの割れ目からは熱い液体が染み出し始めていたから……



 ―――ああぁ……どうしてあそこできちんと言えなかったんだろ。そしたらこんな恥ずかしい思いをしなくてもすんだのに……
 百メートル走を終え、自分のクラスが陣取る場所へ肩を落としてとぼとぼ戻る。あたしが出場する次の種目は棒倒しだから、十分ぐらいは休めるはずだ。
「赤点取るような運動音痴に何種目も出させるなんて……そこまでして勝ちたいのかな、白組は……」
 寺田先生が担任を勤めるクラスは白組だ。宮野森の体育祭では張り切る先生も多く、裏ではあれこれ陰謀が張り巡らされているらしい……もっとも今回に関して言えば、松永先生があたしを辱めるために寺田先生をそそのかしたと考えられなくもない。
 けど、そんな事はあたしの知ったことじゃない。下半身はブルマ一枚……すれ違う男子の視線は学生とは思えないほどメリハリのあるあたしの体へとそそがれていて、どうしても股間が気になってしまう。
 ―――平静を装ってればばれないと思うんだけど……歩き方とかがおかしいのかな……
 意識するほどぎこちなくなるのはわかってるんだけど、足を動かすたびにブルマがダイレクトにアソコやお尻と擦れてしまう。下半身にフィットしたブルマはそれなりに履き心地もいいんだけど、百メートル走で大勢の人の目の前で走った火照りが体の内側にまだ残っているせいで、普段以上に敏感になってしまっていた。
 ―――こんなので次の競技、大丈夫かな……
 人一倍敏感な体を疎ましく思いながらため息を突く。その一瞬、あたしの視線が地面を向いた隙を見計らったかのように、タイミングよくすれ違った男子から手の中へ固い感触の「何か」を押し込まれた。
「――――――!!」
「次はこれ挿れて出るようにって先生から」
 ずっと男子の手に握られていた「それ」は温もりを帯び、あたしの手の中に収まってしまう。振り返り、相手の顔を確認したかったけれど、跳ね上がった心臓の鼓動を抑えるのに精一杯で、硬直した体は首どころか指一本さえまともに動かせない。
 ……もう男子はあたしの横にはいない。すれ違ってから時間も経っているはずなのに、手の中をのものを握り締めるだけで何も出来ないまま立ち尽くしてしまう。
「あ、そんなところで何してるのよ。早くしないと次の競技が始まっちゃうわよ」
 グラウンドの周囲は人の通りも多い。その向こう側から、いつまでも戻らなかったあたしを心配した明日香が手を振りながら駆け寄ってくる。
「たくや、どうかしたの? もしかして、やっと始まっちゃった?」
「そんなわけないじゃない。ただ…そう、ちょっと疲れちゃって。まさか今になって男子と一緒に走るとは思わなかったから」
 明日香には心配をかけられない……それは女になっても変わらない。この体になってから明日香の想いを聞かされたけれど、それに応えられない以上、あたしたちはも恋人でもなんでもない。それでも幼馴染として、今は女の自分に戸惑うあたしをいつも心配してくれる優しい明日香に松永先生や保健室の事へ関わらせたくないと思っている。
「さ、早く戻ろ。少しでも休んでおかなくちゃ午後まで体力持たないわよ」
 そう言ってもといた自分たちのクラスの方へと歩き出す明日香へ付いて行きながら、あたしは手の中の感触をもう一度確かめる。
 卵のように丸く、そして手の平を押し返すプラスチックの感触。これに松永先生からと言うメッセージを合わせて考えれば、これの正体に一瞬で思い当たる。
 卵ローター……しかもかなり大きく、コードレスの無線型。
 ―――ああぁ……こんなものまで使わされる羽目になるとわかってれば、あの時絶対に断ってたのに……
 今更悔やんでもしかたがないし、命令に逆らうことも出来はしない。あたしはせめて明日香には気づかれないようにと、ローターを握り締めた手を胸の前でギュッと握り締めた。


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