美由紀編 ―ストレイシープー その2


 あれから…『脅迫者』の正体の確証のもてないまましばらくが過ぎた。
 毎日のように『牝犬』への指示として『脅迫者』から連絡は来る。
 最初の内は電話での指示が、今はメールだがどれも顔から火が出るような恥ずかしい指示ばかりなのは変わらない。
(指示が一貫していないのよね……私の正体をわからない様にしているかと思えば……)
 下着を着けないことは当たり前。恥ずかしい衣装を着て街中を闊歩させられたりもしたが、その時は濃い目の化粧とウィッグ、サングラスの着用がわざわざ指示されたと思えば、渡辺美由紀の顔を知るものの多い宮乃森学園内で、男子生徒の前でスカートを捲くらされたりもしたが 今は……、
「夢みたいだ……あの渡辺先輩に……」
 男子生徒の夢見心地な声。
「ふふ……夢だと思っていいわよ? 覚めれば終わってしまう儚い一時も……」
 口内の硬くなった剛直へと舌を絡める。
「んんっ…。 ちゅううう〜っんん…、んふっ…、今こうしている間は現実と同じでしょう?」
 今回の指示は男子生徒のモノを口で慰めることだった。誰でもいい訳でなくある『ある言葉』を言ってきた生徒が対象となる。
(だんだん羞恥攻めみたいな内容でなく、こういう直接的な内容が増えてきたわね)
 切なそうに耐える男子の表情を見詰めながらも美由紀は冷静に考える。それでも奉仕が雑になることは無く、着実に限界へ向けて肉棒を追い詰めていく。
「んんっ んんん〜〜。ちゅっ……ちゅ…はぁ、んんん〜」
 膨らんだ先端を口で包み込み、満遍なく舌を這わせた後に口外に吐き出し肉竿へ何度も柔らかなキスを繰り返す。
「んふっ…ちゅっ、んんんん〜〜」
 気持ちいいが射精に結び付くほどの快感では無いだろう、じれったそうに男子の手が美由紀へと伸ばされた瞬間、いっきに喉奥へと迎え入れる。
「あっ!! あああああ!!」
 背筋を伸ばして仰け反る男子生徒。
(あらら、かわいい反応ね……そんなに経験が無いのかしら?)
 今度は舌を緩めない。身体同様びくんびくんと震える肉棒を一気に追い込んでいく。
「んん〜……じゅ……っ……ちゅっ! ちゅううぅうう…はぁ…うふふ♪ あ〜〜っ」
生温かい息を吹き込みながら、唇で竿をしごき先端の……既に我慢の証しが溢れる鈴口を重点的に責める。
 びくんっと脈動する血管の動きに、先端を唇で挟み固定すると
「んふん? じゅぅ…ずっ! ずそぉっ! ずずぞぞぞぞぞぞぞぞぉ!!」
 頭を動かしながら、落ちてくる前髪を掻き上げ、頬が窪む程、強烈に吸い上げる。
 熱い粘液が口内へと吐き出された。男子は崩れ落ちそうになりながらも、膝を震わせて快感の奔流を堪える腰を、美由紀は手を廻して固定すると喉に叩きつける熱い感触が止まるのを待つ。
 舌先を肉棒の先端に沿え、そのまま幹にそって舌を進ませ、どくどくと脈打つ感触を舌に確認して口から肉棒を抜いた。
 噴出が止まり、力を失ったモノが唇が離れていくのを名残惜しそうに見詰める男子に、見せつけるよう白い喉をゆっくりと上下させどろどろと口内に溜まる感触を喉奥へと運んでいく。
 ごくり…。
 どろりとした粘液の塊が喉奥を過ぎて胃へと伝う。
「ひっぱい……だひたわね……」
 男を見詰めたまま、優しく微笑む。
 男子生徒は絶世の美女が自分の肉棒を咥えたまま微笑んでくれる様に、射精した直後にも関わらず再び力が漲っていく。
「あっ…あの」
 男子の視線が自分の身体を舐め回すように見ている、直情的な、興奮を隠そうとしない無遠慮な視線がなぜか心地いい。
「ふふっ…どうしたの?」
 美由紀は男の腰に手を廻したまま優しく問いかける。
「あ……いえ…その……ありがとうございます」
「ふふっ」
 美由紀は立ち上がり、男子生徒を優しく抱きしめると柔らかな吐息と共に囁く。
「ねぇ…ちょっと…教えてほしい事があるんだけど」
 耳への吐息と、大きく柔らかな膨らみの感触。そして美由紀から立ち上る女の香りに息をするのも忘れて固まる男子。
「はっ!はいぃいい」
 かちかちに硬直する男子の、同じく硬いままの肉棒に指を這わせながら美由紀は耳元で囁く。
「教えてくれるなら…もっと気持ちよくしてあげる……、あなたが誰から『あの言葉』を聞いたのかを……ね」


―*―


「み・ゆ・き・さ〜ん♪」
 廊下を歩いてると突然後ろから抱きつかれた。振り返るまでも無く、声と背中に感じる柔らかな感触で誰かはわかってしまう。
「どうしたの? 相原くん」
 最近、こうしたスキンシップが増えた。女同士なら珍しい事でもないが相原たくやは男である。身体はともかく心は男のままの筈だが……、
「んふふ〜、別にぃ〜」
 美由紀は覗きこむようたくやを見詰める。特にいつもと変わったところは無い、あるとすれば妙に上機嫌な事くらいだ。
(私みたいに…脅されてる……と思いたいのだけど)
 少なくとも『脅迫者』と最初に話したとき、相手は間違いなくたくやだと美由紀は確信している。変声器で声を変えていたが喋り方やイントネーション、雰囲気は隠せていない。
(脅迫者は別にいる……それとも?)
 吉としては、たくやも同様に脅され美由紀との仲介をさせられている、この場合は厄介な事に『脅迫者』はかなり用心深く、既にたくやを巻き込んでいる。
 凶は、『脅迫者』はたくや、この場合は目的がわからない。何故自分にこんな事をさせるのか?
 目の前の少女は普段と変る事無くにこにこと微笑んでいる。
「別にって顔じゃないわよ? 教えなさいよ」
 美由紀も心中を悟られないよう微笑み返す。
 凶はもう一つある――
(……共犯者…なの? ……まさかね、信じていいわよね。相原くん)
 わかりやすいはずのたくやの表情から何も読み取れない。
 あれから何度か指示で男の子を相手にした。
 口だけで無く、何度も胎内に精を注がれた、おそらく初めてであろう少年たちに手ほどきをし、ある時は慣れた男達複数に身体をいい様にされた。
 首謀者が誰か情報を聞き出そうとしたが(色仕掛けも使った)、皆驚くほど口が堅く、有用な情報は得られていない。
(イライラしているわね…私)
 まったく進捗が無く、身体だけを弄ばれる状況はさすがに打開したいが情報が無さすぎてどうしようもない。
(しかも……段々……身体が……ううんっ!)
 悪い考えを振り払うよう頭を振る美由紀。……ちょっとくやしいのでたくやの鼻先を抓んであげた。
「ひたたたた!! なに! なんで!?」
「いじわるのバツ♪」
 美由紀は笑った。大げさなリアクションで痛がるたくやはいつものたくやだ。
 段々と身体が快楽に慣れてきている、気持ち良くないのでは無い、
 ――気持ち良すぎて、目的を忘れそうになるのが怖い。
(でも付き合うしかない、少なくとも今は……。そう、これは演目、私は役者……)
 気持ちを切り替える。今は相手の出方を窺うしかない。
 美由紀はたくやとゆるやかな時を過ごしながら、集中力を高めていく。
 ――そう、私は……『美由紀』。
 役作りをする時のよう、自分を作り上げていく。たくやを守る、それだけは決して忘れぬよう――。


―*―


「んんっ!!」
 埃とカビの匂いが充満する体育用具室で、美由紀は飛び箱に手をついた体勢で後ろから激しく犯されていた。
「こりゃあ…すごいな!! うねうねとオレのモノに絡みついてくるぞ!!」
 体育教師である寺田は緩みきったお腹を美由紀のお尻に押し付けるよう何度も叩きつけてくる。乱暴な抽送に声を押し殺して耐えながらもここ数日で何度も望まぬ絶頂を向かえ、より敏感にいやらしくなった身体は、生理的に受け付けられない中年教師に押し潰されながらも感じてしまう。
(っつぅ! まさか……教師まで…)
 今日の指示も『あの言葉』を言ってきた相手に抱かれること。すっかり馴染んでしまった命令だが、相手が教師とは想像していなかった。
(でも……脅迫者としては有力候補よね)
 寺田は女子生徒のみならず、男子含めて宮乃森学園で評判は悪い。レイプされた娘もいるのではないかと噂があり、美由紀は噂と思い信じてはいなかったが、臆面なく美由紀を倉庫へと引きずりんだ処を見ればあながち嘘では無いのかもしれない。
 たっぷりとした水音を纏い、長さは無いが美由紀の膣には太すぎる肉棒が秘部を何度も抽送を繰り返す。
(いい歳して……力任せのSEXしかできない…うぅっ! ……のかしら)
 獣のように、ただ勢いで何度も繰り返される行為に美由紀は声に出せぬ悪態をつく。
 太すぎる異物を迎え入れ、痛みを感じぬよう、一掻き毎に沸き上がる愛液と、柔軟に広がる膣道。
「!!…ふぅ!! ……!! あぅ! ………はぁッ!! ああっ!!」
 外はいまだサンサンと太陽が輝く真昼間、しかも授業中だ。外に声が漏れぬよう必死に声を抑えるが、容赦ない衝撃が肺の空気を押し出し、堪え切れず濡れた声を漏らしてしまう。
「はぁ! ははは! あのお高く止まった小娘が! オレのチ○ポに必死に食いついてきやがる!!」
 癇に障るしゃがれた声。獣のように…後背位で犯されるのは屈辱的だが、この教師の顔を見なくて済むのであれば我慢できる、不本意ながらも感じてしまう自分の顔を見られるよりマシだ。
「…先生!! お願いです! 早く!! 誰かに気付かれでもしたら… あぅっ!!」
 この調子であればそう時間はかからないだろうが、寺田の嗜虐心を煽る為に憐れみをこう艶の籠った声を上げ、下腹に力を込めて膣を締め付ける。
(こいつより先に……イきたくないっっ!!)
 ぎちぎちに広げられ、その熱い感触に埋め尽くされた膣内。間違い無く寺田は今まで自分が相手にして来た男達の中で一番太い。
 未経験のモノで容赦なく内部を削られ、今まで感じた事の無い感触は快感に変換されて美由紀を追い詰める。
 進む時は敏感な肉襞ごと内部を押し上げられ、腰の下辺りにまでびりびりと震えが走る。
「あぐっ!! ……あはっ!! ……!! あっ! …あぁああああああああああ!!」
 戻る時は巻き込まれたお肉を更に捩られ、ぬるぬると愛液を掻き出しながら、張り出したカリ首に引っ掻かれて背筋に快楽が駆け抜ける。
 どちらかと言えば、美由紀は抜かれる時の方が弱い、寺田の傘の貼った先端はその弱点を攻めるにはうってつけだ。
(だめっ!! だめだめぇえ!! イカされるぅうううううう!!!)
 丸めるように縮こませた身体の下で大きな双乳が激しく弾み、頭の中で必死に快感を拒絶しても、乱暴な腰使いに合わせより深く、より激しく快楽を求めて自ら腰を寺田のお腹にぶつける。
 繰り返される腰の動きに、美由紀は食いしばった歯をかちかちと震わせながら、「寺田にイかされたくない」との思いと「イきたい」と相反する感情が混ざり合い、より鋭敏になった感覚は容赦なく美由紀を蝕む。
「いくぞぉおお!! 渡辺!!」
 背後で野太い声が上がり、膣腔を埋め尽くす肉の塊が限界まで潜り込むと、一際大きく膨れ上がる。
「!! だめぇえ!! あああっぅあああぁあ!! なっ! 膣内は!!!!」
 快楽の中、本能で危険を察知して拒絶の言葉を上げるが野太い指にホールドされて膣内から抜くどころか隙間なく密着してしまう。
「…!! ……!!! !!!!………ッくうぅぅう!!!!!」
 どくんどくんっと胎内で脈動する感覚に美由紀は必死に制服の裾を噛んで喉をわななかせた。
「あっ! …はぁ…ぁぁあああああ……」
 敏感な粘膜が熱い感触にびくびくと打ち震え、その振動が全身へと伝わる。
 望んでもいない男性の精液を直接子宮口に押し付けられて射精されている……。
 あまりの惨めさに堪えていた涙が一筋頬を伝うが、身体は正直に射精を受けた喜びに打ち震えている。
(駄目……まだ…硬いままで……)
 射精を終えても寺田の肉棒は硬いままだ、もしそのまま引き抜かれたら――
「あひゃああああっ! ああっ! あっ! あっ!」
 絶頂を望み、ひくひくと蠢く内部を、恐れていた通りに角の張ったままのエラにごりごりと削られて絶頂を乗り切った美由紀の背中が大きく反り返る。
(イ…かされたぁ………)
「あぅ……はぁ……あぁ……」
 狭い室内に木霊する男女の荒い息使い。
(あふぅ……)
 溢れ出る粘液の感触に声が出てしまう。
「よかったぞ? 渡辺。……しかし、惜しいな。この身体が他のやつの物だとはな……」
(…?)
「アイツによろしくな、次も使わせるよう言っといてくれ」
 さっさと身支度を整え、寺田は用具室を出て行った。
 1人きりになった用具室で息を整えながら、のろのろと乱れた制服を整える。
(あの口振りからすると、残念ながらあの最低教師が『脅迫者』ではないのね……、でも知っている感じだった)
 共犯者ですら無さそうだ。いまだ手かがりも掴めぬ状況に美由紀は苛立ちを感じる、しかも嫌らしい中年教師に結局イかされてしまった。
(牝犬調教……は順調ってとこかしら?)
 自虐的な笑みを浮べる、こうも糸口が掴めない状況に身体だけは相手の望むままに快楽に弱くなっていく、笑うしかないではないか?
(現に今だって……)
 確かに不本意ながら昇りつめたが、美由紀は満足していなかった。
 下腹の奥でまるで物足りないと催促するように疼きが治まらず、内腿を伝う濡れた感触は男の精液なのか、自分の愛液なのか――わからない。
「はふっ……」
 短く熱い吐息が唇を震わせた時、着信を告げるメロディが美由紀の耳へと届き、携帯のディスプレイを見るとメール着信の表示が浮かんでいる。
「次の指示ね……」
 前は1日1度だった指示が、今は数回来るようになった。
「ふふ……終わった瞬間に指示が来るなんていいタイミングね、脅迫者さんはしっかり私の状況を掴んでいるって訳ね」
 寺田との行為が終わって5分もたっていない。寺田が連絡を入れたか、どこかで監視しているのか? 
 美由紀はメールを確認して笑う、いまだ燻ぶる官能に期待を裏切らない指示内容だ。
 どうせ、このままじゃ授業を受けても頭に入らない。指示が来なければこのまま自分を慰めていただろう――それでも、
(まぁ、あと何回かイけば頭もすっきりするでしょう……)


―*―


 普段は使われていない空き教室。
「んんっ!! んぐぅ!! はっ! ふぅ……うぶぅうううううううう!!!」
 本来静寂に包まれていなければならない場所に男女の荒い吐息が木霊している。
 白い裸身を震わせ揺れる双乳は、正面からのしかかった男の腰の動きに合わせて激しく弾む。
 机を組み合わせ、そこにシーツを被せた簡易なベッドに、美由紀は仰向けの体勢で秘所を貫かれながら、大人びた顔を跨ぐよう別の男に艶やかな唇へ醜悪なモノを咥えさせられていた。
(この体勢で口を使うのはつらいわね……)
 男の欲望を丸出しの激しい抽送に、嗚咽を漏らす事も許されずただ男達を受け入れる。
 時に喉奥まで伝わる熱い感触を舌で押し止めながら、お腹から来る力強い振動が奥へと響く度に、喉と膣が収縮しその硬く熱い感触に絡み付く。
「すげぇな! こいつの中……熱くて…絡みついてくる!!」
「こっちも苦しそうにしながらもしっかり舌を絡めて……綺麗な顔してすげぇやらしい顔になってやがる!!」
 男達の批評を耳にしながら、視線の先には散らばる無理やり脱がされた制服。
 呼び出され、事前に指示があったとは言え、まるでレイプのように教室に入った瞬間に剥ぎ取られ、押し倒された。なのに――
(まったく痛みなく入っちゃった……)
 体育用具室でたっぷり注ぎこまれた教師の精液は綺麗に拭き取った。また男に抱かれるとわかっていても、情事の匂いを纏わりつかせたままは嫌なので運動部のシャワーを借りてしっかりと洗ってきた。
(なのに……ここに来るまでにしっかりと……期待してたんだ…私の身体……)
 愛撫もされないまま、押し込まれた肉棒に感じたものは痛みでは無く、気持ちよさだ。
 身体が求めて、予想していただろう。既に濡れていたソコは難なく硬い肉棒を迎え入れた。
 いつの頃からだろう? 一度の絶頂では満足できず、最初は家に帰って自分を慰めた。
 今はオナニーで絶頂では何度絶頂しても満足できない、何か心が満たされない――いや、
(満たされなかったのは……ここ)
 汗の浮かぶお臍から下へとスライドさせた白い指先に、身体の奥で動く振動が伝わる。
 美由紀の子宮に届かそうと内部へと進んで来る肉棒の感触。
「んんんんっ!! ああっ!! はぁ…んんっ!……ちゅ…ぶぶっ……」
 認めよう。満たされないのは『心』なんて綺麗なものではない。貪られるまま、あたえられるまま憶えてしまった『身体』だ。
 だから膣内を乱暴にかき混ぜられながらも、目の前に突き出された肉棒に自ら喰らいついた。
 貪欲な牝犬には相応しい『エサ』ではないだろうか?
 快感に仰け反りながら、お利口な犬は口に咥えたまま、体を揺さぶる。
「あおっ!! おおっ! んむぅ!! あああっ!!! んっ! んっ! んんっ!!!」
 重量感のある乳房それぞれ別の男に揉まれ、タイミングの読めない刺激に身体をくねくねと踊らせ、甘い声を漏らす。
 女性を象徴する柔らかな膨らみを男のいいように遊ばれながら、口と膣を同時に犯されると全身に甘い痺れが走り、ただ目の前の快感を貪ることしか考えられない。
「んぶっ!! んんんっ! ちゅっ ああっ! はぁ!! はぷっ…んぶ…ずっ! ずちゅっ! んぶっう!」
 どんどん激しくなる男達に息が苦しくなり、つい口の中のモノを吐き出す。
 必死に荒い呼吸で空気を取り込むが、視線は目の前でゆらゆらと揺れる硬直を捉えて離さない。
 だらしなく広げた口から赤い舌を伸ばし、自分の唾液に濡れ光るソレに這わせる。
「ぴちゅ…ちゅ…っはぁ……ちゅ…じゅじゅっ…はぁ…はぁ…じゅっ…じゅちゅ……」
 こんな角度から男のモノは見るのは初めてだ。逞しい肉の槌から下がるちょっと間抜けな袋にも舌を這わせ舐めていく。
(あっ……ここはちょっとひんやりしてる……)
「熱い」と感じる竿とは違い、ひんやりとした感触がおもしろい。同じ身体の一部なのに、こんなにも違うものだとは知らない。
「うわっ!! その顔エロい!!」
 男の声がハモる。下腹部に顔を埋めたまま美由紀は男を見詰めて、ころころとした感触を舌で楽しむ。
「なんてうれしそうに舐めるんだ!! こいつ!」
 そんなつもりは無いが、喜んで男に奉仕する自分の姿を思い浮かべると身体が熱くなり、激しい抽送を受け入れる膣内の肉を蠢かせた。
「あふっ! ちゅっ! んべぇえぇ……ぬろ……れる…れろ……あがぅ!!!」
 粘着質な水音を、2本の肉のタクトの動きに合わせて美由紀の身体が淫律を奏で、餌を頬張る事に忙しい口に替わって、美由紀がどれだけ感じているかを雄弁に物語る。
「あっ……がぁっああああああああ!!!」
 足を大きく開かれ、男は更に美由紀の身体に密着してくる。ほんのわずかに密着度が上がっただけで敏感な膣肉は新鮮な快感を受け取り、身体を戦慄かせる。
「あっ! ああっ! あっ!! あ! あ!あ! あ! あが…うぶぅうううう!!!」
 喉を反らせてのけぞった処に、再び口に肉棒が突き入れられる。しかも力強い指に頭を固定され、まるで膣に入れるように男の腰が無軌道に動き、美由紀は喉を犯された。
「ぐぶっ!! んんん!! んぶっ!! んぶぅううう! がぁ…あぶっ!! ぶぶぅ!!」
 上から押される力と、下から突き上げる力が下腹部でぶつかり喉奥、膣奥を蠕動させて衝撃と言う名の快感に応える。
 口の端から唾液を漏らし、膣口から白く泡立った愛液を男の下腹に纏わりつかせ、開いた足がぷらぷらと揺れる。高められた性感に身体からどっと汗が噴き出た。
(イく! イく!! もうすぐ!!!)
 ――イける!! と美由紀が感じた瞬間に、まるで計ったように2人の動きが止まった。
 1人は喉奥に、もう一人は膣奥に熱い感触を残したまま、まるで時間が止まったように動かない。
「んぶぅ!?」
 喋れないので男達に目で訴える――何故? イきそうなのに?
「渡辺さん……いや、渡辺…今イきそうになったよな?」
 ぎらぎらと欲望を滾らせた目で男が美由紀の顔を覗きこんでくる。
(そうよ!! イきそうだったの!! もうすぐイけたの!!!)
 もごもごと言葉にならない声で非難する美由紀。その振動で口内の熱い感触がびくん! と震えた。
(あなた達ももうすぐイくんでしょう!! こんなに熱くなって……先っぽだってびくびさせてぇ!!)
「おっとと…だめだめ……」
 動いてくれないなら…と自分から動こうとしたお尻を、そして頭を強く押さえられてしまう。快感に弛緩しきった美由紀は払いのける事も出来ない。
「んんんんっ!!!!!」
 熱い感触はそのまま、内部を抉られる感覚だけが伝わってこないもどかしさに、媚肉は舐めしゃぶるよう肉棒に絡み付く。
(んんっ!! あつぅいい!!)
 望むものは確かに美由紀の中にある、なのに望む快楽をくれない。
 焦らされ、敏感になった膣肉ははっきりと体内のソレの熱さと硬さ、形まで美由紀に伝えてくるだけに生殺しだ。
 肉棒の脈動に合わせて痙攣し早くイかせろと、心が身体に命令され美由紀はそれに抗えない。
「んん………っ…ん……んんっ……」
(イかせて……よぉ……)
 身体を揺らし、汗に濡れる髪を頬に貼りつかせたまま涙に曇る瞳で男達に哀願する――
「イきたきゃ……こいつにお願いしてな?」
「うまくな? 俺たちも生殺しなのは変わらないんだからよ」
 秘肉を貫く男が携帯で連絡している。
(早く! はやく!! ハヤクゥウウウウウウウ!!!!!)
「よし。さあ渡辺? お願いしてみな?」
 耳元に当てられる電話。しかし口に肉棒を押しこむ男は抜こうとせず、頭を押さえて固定している。
「ほれ、早く?」
 焦れる男が美由紀の張りつめた乳首の先端を指で弾いた。
「んんんっふううううううううううううううう!!!」
 突然の強い刺激に身体が孤を描くよう仰け反る、腰を降ろそうとしても、再び、ぴんっと弾かれブリッジを強要させられる。
(酷い…こんなの……)
 確かに乳首への刺激は強烈だが……イけない、身体が欲しているのは胎内への、
 ――生命の熱さ。
「イイ声デスネ♪ 美由紀サン?」

 ――脅迫者。

 電話越しに聞く声は久々だ、最近はメールでの指示が主だ。
「イイ感ジニ、ジラサレテル?」
「んぐううううううううっ!!!」
 イイ感じどころではない、地獄だ。
 久しぶりの接触はチャンスなのに、それを生かす余裕など微塵も無い。
「ネェ?」
 『脅迫』にでは無く、肉欲への渇望に相手の無邪気なトーンが苛立せる――邪魔しないで! イきたいのに!!
(何がお望みなの? 何かさせたいんでしょ!? 早く言いなさいよぉおお!!)
「ホラ? 御褒美ガ欲シイナラ、飼イ主チャントオネダリシナイト? 」
 おねだり? 私が? 『脅迫者』に? そもそも自分がこんな目にあっているのは『脅迫者』のせいなのに……それを『飼い主』ですって?
(あなたを……『脅迫者』を『飼い主』って認めろってこと!!)
 美由紀は柳眉を逆立て、そのふざけた申し出を断る……つもりが、身体に籠り続ける熱に苛まれ、言葉が出せない。
(断らなきゃ……耐えなきゃ!! ……でも)
 肉欲が開放を求め、奥底で渦巻く。それでも押さえこまれた身体は筈かに身じろぐ事しか出来ない。
「んんっ……んひゃん……もごぉ……」
 元々口が塞がれて声が出せない、そんな事も忘れていた――それでも、
(イかせて……下さい……)
 一筋の涙が頬を伝える。
 認めてしまった、心が身体に屈服してしまった。
 声は出なくとも心が折れた。
 伝わらないとわかっていても、何度もくぐもった声で哀願する。
「もごぉ…んぐっぐぅ……」
「フフッ、モウ限界ミタイネ? ヨクデキマシタ♪」
 上機嫌な声が聞こえて来るが美由紀の耳には届かない。何度も何度も虚ろな瞳でくぐもった声を出す。
 ――認めてしまえば、堕ちるだけ、心の中で「イかせて」と繰り返す。
(イかせて……っ! あぁはあああああああああああああああああああっ!!!)
 いきなりの衝撃に、頭にかかっていたモヤが吹き飛んだ。
「んぐぅううううう!!!!」
 どごん! と大きな塊がお腹の中にぶつかる。同時に懇願を邪魔していた喉奥の肉棒が口内から抜かれる。
「あっはぁああああ! あふっ! はぁ! はぁ! はぁ……」
 大きく口を開けて空気を取り込む。肺の奥に空気が満ちていく。
「んんぐぅううう! ああっ! あっ! はぁ! ひぃいっ! あああんっ!!」
 お腹の奥を押され、嬌声と共にせっかく吸い込んだ空気が押し出される。
「あがっ! あああああっ! んふぅう!!! ぅ! あぅ! ああああああ!!!」
 収縮し閉じた膣内は膨張した肉棒を更に大きなモノとして感じるが、動くのもつらい程に狭くなった膣道は愛液で満ち、きつさをそのままに肉棒の抽送を助ける。
 膣内のぼこぼこした器官を、張り出したカリ首に削られ甘い刺激が美由紀の脳を白く染め上げていく。
「がぁっ!! あっ! ああっ! ああっ! ああああっ!! あひぃいい!!! はぁっ!」
 暴力的な抽送に身を晒し、目の前の肉棒に舌を伸ばすが、寸前で取り上げられてしまった。
「おっと……、舐めて欲しいのはやまやまだけど……、あんたの膣内に御褒美を上げろって言われるんでね」
 ぎんぎんに硬くなった剛直が目の前で扱かれる。
(自分で刺激するくらいなら……舐めさせてくれればいいのに………)
 しかし膣内にくれるなら文句はない。
 1度出されても2回目があるのだ。ならば――
「うおっ!!!」
 膣を抉る男が驚きの声を上げる。
 美由紀は長い足を男の腰に廻し、がっちりと身体を固定すると、こちらから快感を得ようと自らも腰を動かす。
 ――貪ろう。この快感を。
 男の腰に合わせ、僅かにお尻を持ち上げたり、または押しつけるよう密着させる。
「ああああああああああっ!!!」
 開放された喉奥から迸る歓喜の声。再開して2分もたたずにきゅんきゅんと下腹の奥から快感が渦巻く――絶頂の前兆。
「イく!!」
 先に限界を告げたのは男の方だ。あと一押しを求める美由紀は意識して膣内を締め上げ、絡めた足で男を引き寄せる。
「出して!! 早く!! 私も!!! ああっ!! わた…しもぉおおおおおおお!!!」
 亀頭が膨張するのを内で感じ、射精の衝撃に備えて身体を委縮させる。
「くそっ!! 出る!! 出すぞ!!!」
 獣の咆哮と同時に、
「ああああっ!!! あっ!! あつ…い!! いぃいいい! イくううぅうううううう!!!」
 身体の奥底で快感が爆発する。
 灼熱の熱さを纏った砲弾が膣の奥底に間隙無く打ちこまれ、白い喉を、柔らかな膨らみを、汗で濡れ光るお腹を、そして快楽に浮き上がったお尻を、その熱さに合わせて震わせた。
「あふぅっ…あふっ! あはっ! はぁっ! ああっ!! あああぁ………」
 びくんっ!と何度か痙攣を繰り返し、浮き上がった腰を力無く落とす。
 身体に熱を残したまま、荒い息を吐きながらぐったりと身体を弛緩させた。
 ――イった、満ち足りた。
 意識せずに顔に満足気に笑みを浮かべ、呼吸に合わせ上下する自らの乳房に手を置く。
 どくんどくんっと鼓動を刻む胸、これ以上は指一本動かしたくない程脱力しているが、
 ――まだ……終わらないでしょ?
 上気した瞳をまだ出していない男に向け、合わせた視線は誘うように艶を含んでいる。
「……ごくっ」
 男の喉が鳴る音が聞こえた。
「…来て………」
 自分でも信じられないくらいに媚びを含んだ声、しかし身体は連続して絶頂する喜びを知っている――求めている。
「……まったく、あの子が言ったように……こりゃ牝犬の素質有りって言うか、完全に牝犬だわ、こりゃ」
 呆れたように呟きながらも、肉棒は雄々しく突き立ったままで、男の方も我慢ができないのが丸わかりだ。
(そう……そうなのね?)
 ――牝犬? そう、それを望むのならば……
 艶やかな舌で唇を舐める――男に見せつけるように。
 慌ただしく足の間へと移動する剛直から視線をそらさず、美由紀は見詰める。
 男達の背後にいるであろう、このおかしな出来事の首謀者を、電話の向こうの相手を。
(望むのなら、なりましょう? 牝犬に)
 舌をまるで犬のように口元から大きく伸ばし、美由紀が微笑む。


「……わん♪」


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