B)明日香・ケイトルート 2


 ホテルまで戻ってきた明日香は、赤面しながらエレベーターに飛び乗った。
 今は周囲の誰の目にも見られたくない。
 心臓が胸を突き破りそうなほどドクンドクンと大きく脈を打っている。エレベーターの扉が閉まり、狭い密室の中でただ独りになると、明日香は大きく息を吐き出し、壁にもたれながらズルズルとその場に尻餅をついた。
(あんなレストランで、どうしてああいうことが出来るのよ……)
 エレベーターがリゾートビーチを一望できる高さの階に止まる。扉が開き、まっすぐ正面に伸びる廊下に誰もいないのを確かめると、緊張から開放された明日香は思い手足を動かして自室へと戻り、扉に背中を押し付けるとパタンと小さな音を立てて閉める。
 水着に締め付けられた乳房が荒い呼吸のリズムに合わせて激しく上下している。
 まだ興奮が収まっていない……後頭部を扉へ押し付け、均整の取れたプロポーションを数分扉にもたれかからせて息を整えると、フラフラとした足取りで室内に入り、旅行バッグから取り出された荷物が散乱したベッドへ濡れていない体を倒れこませた。
「なんなのよ、ここ……頭痛いわ……」
 うつ伏せの体を回転させて仰向けになると、天井を見つめる腕で覆って視界を塞ぐ。暗くなったまぶたの裏で思い浮かべるのは、ケイトとナンパ男が岩陰でSEXしている光景や、レストランで見た男女の絡み合いだ。――忘れようと思っても、忘れられるものじゃない。
 以前、たくやが準備室で後輩の男子とSEXしているのを目撃した事はあったけれど、今回はまた別だ。最初から最後まで、岩場でのSEXを見続けてしまった明日香の脳裏には、ケイトが長大なペ○スに刺し貫かれる様が克明に焼きついている。白いビキニを身につけただけの白いケイトの裸身が男に犯されて揺れ動く様は、明日香がどんなに忘れようとしても何度でも記憶から再生され、いつしか記憶の中のケイトとシンクロしながら明日香のヴァギナはジンジンと疼いてしまっていた。
「私……そんなつもりじゃなかったのに……」
 感じ始めているのを誤魔化すように、太股に力を入れてキュッと閉じ合わせる。膝をよじり、寝返りを打つけれど、この旅行のために新調したワンピースの股間は、明日香が見ていない間にシミの大きさを少しずつ広げていた。
「ダメ…私にはたくやがいるの……」
 想像はますます鮮明に、そして過激に変わって行く。いつの間にか犯されているのはケイトではなく明日香自身へとすり替わり、時折「ンッ…」と短く鼻を鳴らしては胸を反らして両脚をすり合わせる。
「恐いよ……たくや……どこにいるのよ…たくやぁ……」
 恋人がいると言う思いが、外人に犯される想像をするたびに明日香の心を強く締め付ける。
 違うと、自分は違うと、再びベッドに仰向けになってワンピースに包まれた体を抱きしめながら苦悩する。
 けれどなぜか、拓也に見られる事を意識しながら外人の腕に抱かれている自分の姿をイメージすればするほど、明日香の声は上ずり、水着の上から秘所へあてがう手の動きを抑えることが出来なくなっていた。
「はウッ!」
 太股の付け根の三角形の隙間へ指を差し入れ、ぷっくりとしたふくらみに指を滑らせる。ベッドからお尻が浮き上がるぐらい腰を跳ね上げてしまうけれど、一度秘所に触れてしまった指は動きを止められない。横向きに体を丸めた明日香はそのまま何度も恥丘へと指を滑らせ、あふれ出る愛液を擦り込むように縦筋に沿って指を往復させる。
「くうッ……!」
 唇に歯をつきたて、声を噛み殺す。けれどそんな理性をあざ笑うように、熱気がこもり始めた股間を揉みしだき、ワンピースに切れ目を入れようともがくように布地の上から指を走らせる。それでも次第に物足りなくなり、空いた左手をウエストからバストの膨らみへと滑らせると、他のみんなに大きさでは負けても形では負けてないと自負している乳房を下から上へ寄せあげる様に揉み始める。
「んっ……んんん……!」
 ズクンッと重たい疼きが明日香の全身を硬直させる。
 次第に昂ぶる興奮が明日香の心の奥にしまいこまれた性欲の扉を一つ一つ開いていく。
 旅行前、松永先生の自宅に呼ばれていた明日香を待っていた「特別授業」での経験が、まだ未熟だった明日香の性感を開花させてしまっていた。男の拓也がいかに上手くても、所詮は学生レベルでのSEX。女性同士で、しかも教師の手で快楽の奈落へ落とされ、それまで知らなかった自分の中にある肉欲にオルガズムが収まらず、半ば気を失いながら一晩中オルガズムを味あわされ続けた。
 普段の明日香なら、いくら松永先生に肉体関係を迫られても気丈に抵抗しただろう。けれど、何ヶ月もたくやとの男女の性交渉がなく、無意識下に性欲を溜め込んでいた明日香は、松永啓子と言う保健医にとっては絶好の獲物でしかない。決して拓也としか結ばれないとの貞操の決意もあっさり破られ、感じれば感じるほどに全身を這い回った舌と指の動きを思い起こし、乱れ、以前にも増して激しく身悶えてしまう。
「私…は、たくやが、たくやが欲しいのぉ……たくやの……お…おチ○…チン……ンンンッ!!」
 男性器の呼び名を口にした途端、明日香の膣口から愛液が大量にあふれ出した。恥丘が震え、今までオナニーでは漏らした事がないほどの量のいやらしい汁が股布をぐっしょり濡らすほど噴出する。
「他の、人じゃ…いや……拓也のおチ○チンが…欲しい…今すぐ欲しいぃ……!」
 うつ伏せになってジンジンと疼いている乳首をベッドのシーツに押し付ける。水着の中で柔らかい膨らみが押しつぶされて形を変える感触さえ心地よく、震える唇をだらしなく開いてしまいそうになっている明日香は左腕を伸ばすと、ベッドの上に放り投げられていた自分のカバンへと差し入れた。
 そして取り出したのは一本のディルドー……明日香が自分から望んで手に入れたものではない。松永先生に与えられ、捨てる事を許されなかった、明日香にとってはおぞましい形をした性玩具だった。
「拓也の……おチ○チン……これ…拓也のと…拓也のと同じ……♪」
 大きさも太さも、それに形もそり具合も、たくやが男の時の勃起したペ○スと同じぐらい……いや、ほとんど同じだった。それを松永先生が持っていたことは問題なのだが、明日香にその事を気にしている余裕はない。外人のペ○スと松永先生の性技で満たされた頭の中を、ディルドーを握り締めて頬擦りすることで拓也一色に塗り替えた明日香は、そのまま涎まみれの唇へ飲み込んでしまう。
「んむぅ、ん、んっ、はァ、はァ、おチ○チンが…拓也のおチ○チンが……ああァ……♪」
 喉の壁で先端を包むように深くディルドーを飲み込むと、その表面に下を絡みつかせてタップリと唾液を絡みつかせた。
「今すぐ…ここに挿れて……なにもかも、忘れさせてェ!」
 股布を横へずらし、水着を着たまま自分の手でディルドーを挿入した。
「ああああぁぁぁ―――――――――ッッッ!!!」
 もしこの場にたくやがいたら、今まで一度も聞いたことのない明日香の声に耳を疑っただろう。
 ベッドに膝を突き、後ろへヒップを突き出した姿は、水着を着ていなければなにもかもさらけ出した格好だ。九十度以上に開かれた股間には明日香の両手があてがわれ、伸縮性の布地を左手で引っ張り、露出させた陰唇へ愛する男のぺにすをっくりのディルドーを突き入れる。まるでレイプのような激しい前後運動で、たくやを欲している肉壁に擦り付け、傘を張ったエラで折り重なる肉ヒダを乱暴にめくりあげる。
 シーツへ鼻を押し付けて目を閉じれば、背後から拓也が圧し掛かってくるのを感じる。イメージでしかないのに、水着姿で組み伏せられているかと思うと激しい快感を知ってしまった若い肉体がもっともっとと腰を揺すってしまう。
「拓也が……たくやが私をこんなにしたのに!」
 ごろりと仰向けになり、天井へ向けて膝を開く。
 興奮を重ねた自分の表情がどんな風になっているか、明日香には想像もできない。けれど拓也の前でも見せたことがないほど下半身を開いてオナニーにふける自分を想像すると、顔から火が出そうなぐらいに恥ずかしさが込み上げ、膣へ押し込んだディルドーがより大きくなったと感じるぐらい締め付けてしまう。
「あうっ……!」
 重たくも甘い快感に包まれ、表情を蕩かせる明日香。
 腰をバウンドさせながらディルドーを動かし、片手で乳房をこねながらヌラ突いた粘膜を擦りあげる。膣内で音を鳴らすほどに粘液はヴァギナの隅々にまで行き渡り、指だけでは味わえない太い挿入感に全身から汗を噴きだし、全身を震わせる。
「拓也……イっちゃうよ。こんなにはしたなく…拓也のおチ○チンで、私……私………!」
 もうシーツが汚れる事なんて気にしない。
 愛だけのセックスでは感じられなかったアクメに向け、明日香の手の動きが一層激しくなる。ディルドーを使った初オナニーで意識が飛び、全身がばらばらになるような感覚に全身が包まれ、拓也の精液を子宮の奥に受け止める自分をイメージしてしまう。
 想像の中だけででも、それは幸せだった。喉を仰け反らせ、大きく開いた股間にディルドーを差し入れ、焦点のぼやけた瞳を開いた明日香は……次の瞬間、腰を大きく浮かせて仰け反っていた。
「―――――――――ッ!!!」
 今更キツく目を閉じても、一度見えてしまったものは忘れられない。溺れそうなほどの快感の中に見えた自分と結ばれている相手……それはいつの間にか拓也から、ケイトを犯していた巨根の外人へと摩り替わってしまっていた。
「違う…こんなの違う!……違うのにィィィ!!!」
 拓也の腕に抱かれて果てる自分を想像していた。―――けれど外人の逞しい腕に組み伏せられ、あの巨大なペ○スを押し込まれていると想像した途端、明日香の膣口からは収縮したヴァギナから押し出された淫蜜がベッドの端を越えて床にまで飛び散っていた。
「んはぁぁぁ! いっ…や…助けて、拓也、拓也ぁぁぁ!!!」
 完全に思考が狂っていた。自分のイメージさえ制御できず、岩場でケイトを刺し貫いていた巨根が自分を刺し貫いている想像をコントロールできず、明日香はガクガク腰を揺さぶりながらディルドーを子宮の入り口へ叩きつける。無機質なディルドーが往復するたび、拓也に抱かれている時よりも大量の愛液が穴の入り口から押し出され、水着に染み込んでいく。
「あはぁぁぁ!! イ…イイッ……んっ、あ……拓也……いい、いいぃ……!!!」
 ディルドーを握り手が愛液まみれになっていた。強烈な快感に全身を支配された明日香は、長い髪をベッドの上で振り乱し、ディルドーを根元まで突き入れて肉壁を擦りたてる。先ほどまでの拓也のイメージではどんなに激しくしても加減が効いていたのに、イメージが摩り替わってからは自分の手で動かしているのにまったく容赦がない。ディルドーの抽送はストロークの幅を大きくし、抜け落ちる寸前から淫らにくねる明日香の腰の中心へ深々と突き刺さる。
「イイッ! イイのぉ!! わた…わたし…すごく……ンッ、拓也……拓也、ごめんなさい、わたし、もう、もう……!!!」
 単純なピストン運動だけではなく、膣内でディルドーの先端が円を描く。それはもう掻き回すと言う言葉がぴったり当てはまるほどの乱れたオナニーにふけりながら、明日香は一瞬だけ見てしまったレストランでの女性を思い浮かべていた。
「んっ―――――――――!!!」
 胸を揉んでいた手を伸ばし、ベッドの端に置いてあった大きな枕を引き寄せて顔を押し付ける。想像の中だけの外人の男の視線からはしたなく乱れた顔を隠そうとする行為だけれど、体をよじった拍子に右ひざが浮き上がると、不意に明日香の脳裏にレストランでの光景が描き出されてしまう。
(私も…彼女と同じ………!)
 姿勢が全て同じだったわけではない。ただ、その一瞬だけは明日香の想像の中にいるのが男一人だけではなく、あの開けたレストランを取り囲んでいた何十人もの男たちまで現われ、鼻息が掛かりそうな近距離からベッドの上で悶える自分を見つめているような、そんな錯覚に陥ってしまう。
(見ないで……こんなところを見られたら、恥ずかしくて、私……どうにかなっちゃいそう……!)
「んんっ、んんうっ、んムゥ〜〜〜〜〜!!!」
 甘い香りのする枕で喘ぎ声を漏らしそうな鼻と口を押さえ込み、拓也を裏切った感情と快楽に溺れる行為に没頭していく明日香。他の男に抱かれるところを想像しながら快感に身を震わせるたびに、拓也が自分から離れてしまいそうなのに手の動きも、そして外人の逞しい肉体に組み伏せられている自分を思い浮かべる事もやめられない。その罪悪感を紛らわせたくて滅茶苦茶にディルドーを動かし、喜び蠢く肉壁を乱暴にかき回す。
「あっ…あっあああっ!!!」
 明日香の目に涙が込み上げる。けれどそれを拭わずに大きく口を開くと、枕を抑えていた手を股間へと伸ばし、ディルドーが出入りを繰り返す膣口のすぐ上で膨れ上がっている肉芽をキュッと摘み上げる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 わずかな痛みと、それ以上の強烈な快感。股間で爆発した快感に指を離そうかと一瞬ためらうけれど、明日香はそのまま淫核を摘み、濡れた指先で恐る恐る撫で回す。
 それは甘美な刺激だった。拓也に訓にされている記憶が一瞬蘇り、幸せな気分に包まれはしたけれど、すぐに明日香の股間をまさぐるのはSEXの事しか考えていないような外人の男性へと置き換えられる。
 もう声も出せない。
 激しく、わざと音を立て、ドロドロに濡れそぼったヴァギナをディルドーがかき回す。その快感にクリトリスを捻る快感が加わると、水着の包まれた若々しい肉体がベッドの上で跳ね回る。
「はあああッ! くッ、んぁああああああああっ!!!」
 普段ならもう我を忘れて達しているような快感なのに、今日はまだオルガズムを迎えられない。
 たくやが女になってから蓄積された性欲。そして今、自分の手で蓄積している快感。ディルドーが抜き出されるたびにのぞき見える粘膜が真っ赤になるほど充血したヴァギナは何度も熱いうねりを繰り返す。
 そして……溜めに溜めた官能を、ついに明日香は一気に吐き出した。
「イクッ、イクッ、イクゥゥゥ!!! あああああっ!!! ああああああああああっ!!!」
 明日香の背中が大きく反り返り、ベッドから浮き上がる。見事な弧を描く体は痙攣を繰り返し、ディルドーを両手でヴァギナへ押し込みながら粘りの強い愛液を勢いよく撃ち放つ。
 明日香の射精……白く濁った絶頂の証、本気汁だ。
「あウッ、ア――――――ッッッ!!! 熱い…熱いの…アァアアアァア――――――!!!」
 今までずっと……松永先生に目覚めさせられ、それからずっと満たされていなかった性欲が一気に満たされ、あふれ出していく。同時に十回ぐらい絶頂を迎えたようなアクメに硬直し続けていた明日香の体は不意に脱力してベッドの上へと落下し、汗にまみれた水着以外の肌を拭いも洗いもせずに広いベッドの上へと投げ出した。
「…………私……どうして……」
 ディルドーを掴んでいた手を眼前にかざすと、臭いのキツい粘液に覆われていた。生まれて始めてオナニーで噴くほど達した明日香はそのまま手を投げ出し、引き寄せていた枕へ顔をうずめる。
(ごめん……たくや……)
 枕から立ち上る甘い香りに包まれながら、明日香は脳裏で微笑んでいる恋人に謝りの言葉を告げる。
 その言葉を向けているのは男の拓也か女のたくやかはっきりしない。どっちだろうと軽い酸欠で鈍った頭で考えていると、カチャッと、小さな金属音が聞こえてきたような気がした。
 ―――けれど気にはしても意識を向けられない。
 明日香は拓也への罪悪感に胸を締め付けられながらも絶頂の余韻に満たされてしまっている。もし今すぐに拓也に抱かれても、別の男に襲われたとしても、何一つ抵抗できないぐらいに疲れ果て、性感が昂ぶりすぎて頭の中が真っ白になっている。
 もうどうだっていい……荒い呼吸を繰り返しながら考える事を放棄してまぶたを閉じた明日香は、枕から立ち上る甘い香りを胸いっぱいに吸い込むと、そのまま眠りに落ちてしまった……


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