49 - 「幸いの夢」


 男は電気もつけずに部屋を横切ると、大型テレビの電源を入れ、DVDプレイヤーを起動させる。
 手にしているのは、表面にマジックでタイトルが殴り書きされたDVD−R。それをセットすると、冷蔵庫に缶ビールを取りに行き、プルタブを開けながらソファーに腰を下ろす。
 そして、そうしている間にテレビに映し出されたのは、全裸の“相原たくや”がフェラチオをしている姿だった―――


 −*−


「たくやちゃん、しゃぶるの上手だね。今までに何本ぐらい咥えてきたんだい?」
「んむっ、はむっ、んんぅ……はあっ、んっ、…う……んんっ……」
「ははっ、チ○ポをしゃぶるのに夢中だってか。借金作った彼氏のよりもデカいだろ。どうだい、そんなヤツとさっさと別れて俺と付き合わない?」
「そ、そんなこと言わないでください。あたしだって……好きでこういう事してるんじゃ……」
 見下ろすような画面の向こうで、困惑しつつもたくやが顔を上げる。その顔や存在感のある胸には、もう何度も精液を浴びせかけられており、ドロリとした白濁液が今にも目蓋を塞ぎそうになっていた。
「お金のためだよね。たくやちゃんの彼氏、仕事をクビになって大変なんだろう?―――だったらもっと美味しそうにしゃぶりなよ」
 そんなたくやを背後から一人の男が抱きかかえる。
 胡坐をかく男の腰の上へと引き寄せられ、チ○ポをほおばって鼻を鳴らしながら、ひざまずいた姿勢から膝を開く事を強要される。そこで唇からズルリとペ○スを引きずり出されると、Mの字に開いたたくやの股間の中心へと使い込まれて浅黒くなった凶悪な男根が深々とねじ込まれた。
「くあああァん! あっ! あっ!あっ! あっ!あっ! あァアアアッ!」
「入り口はキツキツなのに、奥の方はものすごいな。どうだい、俺のチ○ポは太いだろ。これだけ具合のいいおマ○コしてたら、彼氏のチ○ポ一本じゃ物足りなかったんじゃない?」
「そんなこ……ひっ! あっ、んぁぁぁあああああァ―――――――――っ!!!」
 男が腰を跳ね上げれば、何人もの女性を泣かせて来たに違いない巨大な肉棒がヴァギナの奥を突き上げ、遅れてたくやの身体が跳ね上がる。そして汗に濡れて艶かましく輝いている裸体を抱きしめられ、引き寄せられれば、結合部からあわ立つ体液を溢れさせながら、たくやのノドから長く響く悲鳴が迸る。
「そ、そんな、突いちゃ、んんゥ! アァ、アンぅ、ダメ、ダメ、んあァ!!!」
 小刻みに激しく膣奥を攪拌され始めると、それまで懸命に堪えていたのに淫蕩の表情が覗きだす。
「それにしてもおっぱい大きいよね。Gカップって言ってたけど、もしかしてそれ以上あるんじゃない?」
「そんなこ……んんんゥ! ち、乳首、乳首離してェ! ダメなの、む、胸は感じるからァ……!!!」
「最初はおっぱいいじられただけでイっちゃったよね。胸を揉まれるの、好きなのかな? 彼氏にもこういう風に後ろから揉まれたりしてるの?」
「いやァ! 聞かないで、お願い、だから……今は、思い出させないでぇ……!」
「そうかい、今は彼氏のことなんて忘れて俺たちのチ○ポに集中したいんだね。いいぜ、忘れられないぐらい気持ちよくしてあげるよ」
「やだ、ちが、そんな意味じゃないの! あたしは、ああっ! もう許して、そんな、ふあっ! んァあああっ!!!」
 白濁液にまみれた乳房が抽送のリズムにわずかに遅れて重たげに弾む。そこで上半身へとよったカメラは硬く尖ったピンク色の乳首を捉えて、そのまま舐めるようにして下腹部へと移動する。そこでは輪郭がぶれるほどに高速で男のペ○スがたくやの膣内へ突き立てられていて、グチャグチャと粘つく音を連続して響かせていた。
「っあああああ! ま、また、イク、イっちゃう、んあァっっっ! あたし、こんなの、んあ、やァァ!!!」
「んじゃそろそろ例のアレ、使ってみよっか」
「えっ? えっ? な…なにっ!? なんなのォ!?」
 不意にテレビのスピーカーから重たい振動音が聞こえてくる。
 そして画面に現れたのは、やむ事なく振動する按摩用のマッサージ器だ。バイブなどよりも強力な振動を発するそれが三本、別々の男の手に握られ、たくやのたわわな乳房と愛液にまみれたクリトリスへと近づいていく。
「いっ…いやぁああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 敏感な三箇所の突起に丸みを帯びたマッサージ器の先端が触れた瞬間、頭がガクンと真後ろに跳ねる。
 待ちぼうけを食わされていただけに、三人の男は押し付けるようにしてマッサージ器でたくやを弄んだ。オルガズムを目前にして感度が極限に昂ぶっていたために抑えの利かなくなっていたたくやは、乳首ごと先端を押しつぶされた乳房を振動に合わせて小刻みに波打たせ、股間からは間欠泉のように大量の射精液を迸らせる。
「くァアアアアアアアアアッ! イッ……イク、イクイクイクイグイグくぅぅぅぅぅぅ!!! んアッ! もうやめ、お…おマ○コが! とまんない! あっ、ああッ! あッ、あァ、ア―――――――――ッッッ!!!」
「うっ……! おォ……! チ○ポが蕩けそォ……! このマ○コ、最高すぎる……か、彼氏さん悪いね、今から、オレのチ○ポでたくやちゃんに種付けして、俺の女にしちゃうから……!!!」
「ひ、な、中はイヤ、外に出してェ! 約束、違う、違うのにぃぃぃ!!!」
「自分からマ○コ押し付けてきてるくせに、よく言うぜ。ほら、彼女が他の男に抱かれて悔しがってる彼氏さんに何か言ってやれよ。ほら、イってんだろ。潮吹きながらチ○ポハメられてよがってる女なんか捨てられるに決まってんだからよォ、膣出しして欲しかったらきちんと言えェ!!!」
「ひあァ! あっ、ご、ごめんなひゃいィ! 健二さん、あたひ、気持ちよひゅぎて、け…健二さんじゃないひとのチ○ポで、イってるぅ、イってるのォ……生SEXしてイってるのぉぉぉ!!!」
 マッサージ器とチ○ポの二重の責め苦に、たくやの裸体には細かい汗がビッシリと滲んでいた。恋人同士の甘い幸せに包まれた愛し方では決して味わえない激しい快感に腰をくねらせ、恥丘をペ○スの根元へ擦り付けながら、唾液にまみれた唇から堰を切ったように卑猥な言葉を紡ぎだし続ける。
「このチ○ポがすっごく気持ちいいのォ! もうこのチ○ポの事しか考えられなくて、あたし、あたしのおマ○コすっごく喜んでるぅぅぅ!!!」
「最低の女だなァ。彼氏のチ○ポだけじゃ満足できないチ○ポ狂いの変態淫乱女が!」
「そう、なの、あたしは、チ○ポ大好きの、チ○ポ狂いです、チ○ポがなかったら満足できない変態女なのぉぉぉ! 許して、くれなくていいから、あたしは、あたしは、し…幸せだっからぁぁぁ!!!」
 言葉の最後でしたが回らなくなり、「幸せ」なのか「幸せだった」のか良くわからない。そして言い直す暇もなく、男が連続して勢いよく腰を突き上げると、たくやは唇を大きく開いて涎を滴らせ、健二の、それ以外の誰の目にも晒した事のないイき悶絶する表情をカメラの前に晒していた。
「それじゃあ、ご褒美、だッ……! これから毎日、カメラの前で、俺たちのチ○ポが忘れられなくなるぐらい、ハメ倒して、妊娠させて、立派なAV女優にしてやるからな……ァ!!!」
「早く、早く精液ィ! もう、ダメ、ひうううううっ! あんっ、ああああ、キ、タァ! おマ○コに、熱いの、熱いの、がぁぁぁ―――――――――――――――!!!!!」
 たくやが獣のように叫び、男が身体を大きく震わせる。その直後、たくやの胎内に収まりきらなかった精液が逆流し、チ○ポの根元を食い締める淫唇から溢れ出してくる。
 けれど、まだ終わりではない。カメラに撮影している事も忘れ、欲望をむき出しにした男は、床にたくやをうつ伏せに押さえ込むと、まだまだ迸る濃厚なザーメンをたくやのヴァギナに刷り込むように抽送を繰り返し続ける。
「孕ませてやる、絶対に俺の子供を孕ませてやるからなァ!!!」
「――――――――、ッ―――――――――――…………ッ!!!」


 −*−


「―――なに人の部屋でAV鑑賞なんてしてるんですか。しかもオレの“彼女”のじゃないですか。趣味悪いですよ」
 部屋の電気を付けると、自室はに先客がいてビールまで飲んでいたのだが、健二はさして咎めもしなかった。
「悪いな、俺の部屋のデッキ、こないだ踏んづけてから調子が悪くてな。それよりどうだった。撮影が終わった後のたくやのマ○コは」
「もーたまらないッスよ。丸一日犯し抜くまで、オレも興奮収まりませんでしたもん。今はオレの借金の相手〜ってことで、変態親父に押し付けてきたッス。その様子も全部撮影してるんで、第二段で発売予定ですよ」
 第二弾といっても、れっきとしたアダルトビデオではない。ただヤリたい男がお金に困った女性を好きなように犯しているだけの映像なのだが、それだけにリアルさが
「くっくっく、あいつ、学生の頃からちっとも変わらんなァ」
「“先生”のお勧めどおり、手をつけて正解でしたよ。いまどきいませんよ、あんなにチョロい女」
 そう言って健二が取り出したのは、一万円札がぎっしり入った封筒だった。それを受け取った“先生”と呼ばれた男は中身を確認すると、それをズボンのポケットへとねじ込んだ。
「またいい女がいたら紹介してくださいよ。紹介料は弾みますから」
「悪いな。たくやのオンナは、こないだオレのガキを孕んじまった。お前がたくやを手篭めにしてる間、オレの部屋に監禁して生で毎日やってたからな」
「え〜、あの子もすっごい美人じゃないですか。俺にも貸してくださいよ〜」
 男二人の談笑をよそに、画面に再生されるたくやの膣内に、二人目の男が射精をする。
 床に仰向けになったたくやは、豊満な乳房を緩やかに上下させながら、満ち足りた表情を浮かべていた。半ば放心した表情を浮かべて手の平を当てている下腹部からは、吐き出された大量の精液が膣肉からこぼれ出し、床に滴り落ちている。
 ―――ゴクリと、画面の向こうで誰かがツバを飲む。
 たくやの妖艶さに、誰もが思わず息を呑んでいた。
 画面越しでは判らない。
 うっすらと朱色に染まった肌の艶かましさが。
 吐息に含まれる欲情の香りとぬくもりが。
『あっ……んああァ! いいぃいいいっ、気持ちイッ、アアッ、ふぁアアアアアッ! スゴい、どのおチ○ポも、スゴく、スゴく感じるのぉぉぉ!!!』
 男の一人残しの上に跨り、恥丘の膨らみが潰れるほどに腰を押し付けてチ○ポを膣肉に咥え込むたくや。
 そして背後から別の男が覆いかぶさり、愛液にまみれた菊門へと肉棒を深々とねじ込む。
 さらに、下腹部の圧迫感から開いた唇にも三本目のペ○スが突き込まれた。
『んんんっ、も、もうイくぅ! お尻とおマ○コ、両方一緒にイっちゃうのォ! イクゥ! イクゥ! イっ、イクゥウウウウウゥゥウウウウウウッ!!』
 男たちが腰を突き出し、たくやの身体をむさぼるほどに、たくやは女としての快感に目覚めながら、心に深い傷を負っていく―――その傷に流し込むように、男たちは大量の精液を、弓のように反り返るたくやの肢体に撒き散らした……


 −*−


 ヒビの入ったカップに紅茶を注いでも、少しずつこぼれていく。
 ヒビを直そうとして無理に力をこめて押さえつけても、また別のヒビが入ってしまう。
 そうしてヒビだらけになったカップは、いつか粉々に砕けてしまい、二度とは元に戻らない。
 だけど砕けるまでは、少しでも幸せという名の紅茶を注ぐ事ができる。
 元には戻せないけれど、幸せの味を少しでも味わう事ができたから、少しでも長く何とかしようとし続けた。



 だから、ずっと目を背けていた。―――カップの底には、最初から穴が開いていたことから。
 けれどそれさえも、たくやの得た幸せの一部に違いはなかった。
 愛する人さえも、その穴から零れ落ちていったとしても……たくやはきっと、自分の行いに「幸い」を感じていた。


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