33・夏の暑さで暴走してます・その2


 夏休み目前。今日は最後の体育の授業……待ちに待った水泳の日だ!
 だが……うちの学園では、なぜか水泳の授業は男女別々に行われる。間違いを起こさせないため? 仕方ないじゃないか、俺たち、有料健康児な青少年なんだぜ!? 女子たちの競泳水着姿に反応しないのは人生を間違えてるヤツだけだ。ドキッ男だらけの水泳授業でモッコリしてるようなヤツがいたら、そいつにゃ恐くて近づけないぜ!
 だが…まあ……「このプールの水には女子のエキスがたっぷりと!」てな妄想ぐらいじゃ理性が抵抗してモッコリガードしてくれていたんだけれど……だけど……

 −*−

「み、みんなしてジロジロ見ないでよ。仕方ないじゃない、貸してくれたの松永先生なんだから!」
 水泳はプールで泳げるからって遊びじゃない。あくまで授業の一環なんだ。それなのになんだ、相原のヤツのあの格好は!
 黄色のビキニ……地味な競泳水着なんかよりも何倍も素晴らしい! 競泳水着のあの濡れたフィット感も嫌いじゃないが、直接的過ぎるほどに女体の素晴らしさを曝け出してくれるビキニは、クラス男子一同の股間を見事にストライクしてくれている!
 けど、なんなんだよ、あの相原のスタイルのよさは! む、胸なんて丸々としてて、太陽の下で汗がにじんで妙に艶かましいし、ボトムに包まれたヒップだって今にも張り裂けんばかりにプリンプリン。いやいや、よく見ろ、細くくびれたウエストだってスゴいぞ、お前。まさにドーン、キュッ、ボーン! 誰か写真とってないか? 畜生、親友の写真を撮るカメラも携帯も海パン一丁じゃ持ち合わせてね―――!!!
「男子の水泳の授業はこれで最後だし、あの……この水着じゃダメですか?」
 体育の成績の悪い相原にとって、意地悪の寺田から単位をとるには出席点しかないわけだ。特に相原が女になったと聞いて、鼻息荒くしてたってのがずいぶん噂になってたし、もし休んだなら、夏休みにマンツーマンのいけない体育補習授業をさせられたり……つまり色仕掛けか、相原!?
「むふっ、むふっ、むふっ♪……あ〜、ゴホン、事情が事情だから仕方がないな。だがこんなけしからん格好で授業を受けるなど―――」
 とか言いながら寺田先生の手が……“もにゅん”と相原の胸を鷲掴みにしていた。
 ドカバキガスボコゲシゲシベキバキグシャベシボケカスゲシゲシボコバキゲシベキャ!!!
「よーし、寺田先生は急病で病院送りになったら、今日の水泳の授業は全部自由時間だ、喜べお前らー!」
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ! 俺たちの勝利だ、ガンホー!ガンホー!ガンホー!!!』
 てゆーか寺田先生よォ……あんた、俺らより一応大人なんだから、公然猥褻はマズいだろうが!
「みんな……助けてくれてありがとう……♪」
 よ、よせよ、友達を助けるのは当然のことじゃないか……なあ、みんな!?
「ふふ、そうだよね……じゃあ」
 って……お、おい、何でビキニの紐に手をかけてるんだ!? ま、まさか、お前、ここで、ここでェ!?
「だって……あたしたち、親友でしょ? 一人だけ胸にも水着してるのっておかしいもの……隠し事、したく無いから」
 やめろ相原! そんなことしなくていい。だって、だってここには―――
「男同士なんだし……あ、あたしは…はずかしく……なんて……」
 ここには俺以外の男もいるんだぞ―――――――――!?

 −*−

「よーし、ボールはカットした。せめあがるぞォ!」
「ふはははは、お前らの攻撃なんて生温いぜ!」
「見せてやるぜ、俺の必殺シュート! ファイヤー!」
「口で言うだけかよ!?」
 ……あ、やべ。あまりの暑さに脳みそがどっか飛んでた。
 一学期最後の体育の授業。授業内容は照り返しのキツいグラウンドでサッカーだ。気温……50度ぐらいありそうなのに、何であいつらあんなにテンション高いんだよ?
 ため息をついて汗を拭うと、俺の視線は相原に吸い寄せられる。
 残念なことに、非常に残念なことに、相原が履いているのはブルマでもスパッツでもない。俺らと同じ短パンで、綺麗な曲線が出ているけれどいまいちエロくない。ああ、誰だよブルマをブルマしたスパッツァ!!!
 そもそもどうしてこんなに暑いのに男子には水泳の授業がないんだ? 女子優先? 知ったことかよこんちくしょ―――!!!
「相原、パース!」
「おっけー、まっかせといて!」
 最近世界的サッカー大会があったせいでサッカー熱にみんな浮かれてんのかな……今ごろキャッキャッウフフとプールではしゃいでる女子のことなんか誰も考えずにサッカーに熱中しやがって暑苦しい連中め。
 ……とまあ、そんなことを考えている俺の目の前で、
 ―――ボヨォン
「うわ、こら、相原のヘタクソぉ!」
 相原が胸でトラップしたはずのボールが、明後日の方向へと飛んで行ってしまった。
 ……あれ、もしかして俺、錯覚見てんのかな?
 何か今、物凄い光景が見えた気がしたんだけど……自分の目の性能を疑っていたそのとき、集団競技でこいつにボールを回すとマズいやつとして知られる相原に、またしてもパスが送られてきた。
「よーし、今度こそ!」
 ちょっと高めのパスされたボールに、ジャンプして胸に高さをあわせ、見事にトラップして見せた……かと思いきや、
 ―――ボヨヨォ〜ン
「きゃあっ!?」
 あろう事か……相原のヤツ、巨乳のせいでトラップが上手く出来ないのか!?
 ボールでひしゃげたオッパイ。ボールを押し返すオッパイ。その余韻の振動でプルンプルンと悩ましく揺れ弾むオッパイ。ああ、超スローカメラ並でオッパイを捉える俺の目万歳!!!
「ふえぇ〜ん、こんなはずじゃなかったのにぃ〜〜〜!!!」
 体操服の上から両手でおっぱいを押さえてしゃがみ込んでる相原……おいおい、いいのか? そんなとこで胸押さえてたら、トラップミスの原因がばれちゃうぞ?
「みんな、俺たちの勝利のために相原へボールを集めるんだ!」
「へ……?」
「もう俺たちは敵味方に分かれて争わない。俺たちは今、真の目的を共有し合える戦友となったのだ!」
「へ……? へ……!?」
「お。俺は尻を狙うぞ―――!!!」
「よーしダブルおぱ―――いで二点ゲ―――ット!!!」
「顔には傷つけるなよ、わかってんだろうな、お前ら!!!」
『ガンホー! ガンホー! ガンガンホ―――!!!』
 あらら……サッカーっていつから人にボールをぶつければ点の入るスポーツになったんだか。
「うわぁ〜〜〜〜〜ん! 鬼だ、悪魔だ、友達なんかじゃない、あんたら全員絶好だ―――――――――!!!」
 まあ泣きたい気持ちも判るけどさ……ごめん、相原。お……俺はその谷間のゴールに向けてシュートどわァァァ!!!


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