23・お見合いは人生墓場だなんて言ってみる!?(XC3)-後編


「はッ、あッ、アッ……! 雄介、さん、もう…許して……それ以上は…ふ、ふやけて、おマ○コ、おかしくなって……はアァ、ン、はぁ……んアああぁ………!」
 縁側に仰向けになり、庭園へとさらけ出している恥丘へ雄介さんの舌が執拗に這い回る。膝の裏を持ち上げられ、まるで赤ちゃんがオムツを変えられる時のような恥ずかしい体制を強いられているのに、もう十分すぎるほど準備の整っている割れ目を細く尖らせた舌先になぞられると、言葉では拒みながらも鼻に抜けるような甘い声を上げて帯に締め付けられている腰を揺さぶってしまう。
 ―――犯すんなら……もうこれ以上焦らさないで、早く、早くぅ〜〜〜!
 雄介さんの舌先は秘裂だけでなく、着物の裾を割り開いて白い肌をむき出しにしているあたしの下腹部の至る場所へと滑る。秘所から伝い落ちた淫液をたっぷりとすったアナルを不意に突付いたかと思うと、右の太股へ唇を吸いつかせながら這い上がり、たっぷりと時間をかけて膝までの距離を往復すると、今度は左の太股へ。あまりのくすぐったさに上半身を左によじって逃れようとしても、あたしの両脚をしっかりと抱えて固定されていて、むしろ雄介さんはこちらの反応に嬉々として愛撫の激しさだけを加速させ、あたしが拒みながらも望んでしまっている次の段階へ一向に進もうとしてくれなかった。
「まだだよ……孕ませるにはキミの子宮がパックリと口を開くぐらいに濡らしておかないと」
 ………だ、だったら、イかせて、お願いだから、一度でいいからイかせてェ………!
 あまりに焦らされすぎて、頭がくるって締まったかのように絶頂を求めてしまう。今まで一度として雄介さんはあたしの身体を満たしてくれようとせず、昇りつめようとした瞬間には舌を離し、別の場所をくすぐって決してオルガズムを味合わせてはくれなかった。今もまた、体を緊縮させて全身が痙攣を襲い始めたのを見計らって、膣口を押し開いて内側を嘗め回していた舌は名残惜しさも感じさせずにためらいなく秘所から離れ、太股の付け根のラインをなぞって、帯と股間との間でせわしなく上下運動を繰り返している腹部へと吸い付いてくる。その場所もくすぐったくて感じてしまい、奥歯を噛み締めながらヴァギナを震わせてしまうけれど、今一歩、あとほんの少し後押しされるだけで男である過去も何もかも忘れて昇りつめてしまいそうなのに……雄介さんはその一線だけは絶対に踏み越えてはくれない。どれだけあたしが股間をしとどに濡らそうとも、どれだけ淫靡にヴァギナを震わせても、ヒクヒクと物欲しげに収縮を繰り返すおマ○コはイかせてもらえず、あたしは悔しささえ覚えながら咽ぶように涙を流してしまう。
「ふぅ……物凄く濡れるんだね。入り口の締め付けは強そうだけど、これなら大丈夫かな?」
「ゆ……雄…介……さ…んゥ………」
 雄介さんがあたしの脚から手を離して立ち上がると、湯気立つほどにはしたなく濡れ火照った股間を夜風が撫でる。もうビンビンに充血しきったクリトリスが、ただそれだけでビリビリと痛いぐらいに激しく疼き、両足を縁側から外へと投げ出して濡れそぼった秘所を隠せずにいる恥ずかしさに目を閉じながらビュクッと愛液を打ち放ってしまう。
「スゴいね。こんなに感じやすい女の子は初めてだよ。―――そんなにイきたいの?」
 問われて、あたしは開く目寸前で放置された身体から込み上げる震えを噛み締めながら、小さく頷く。
「―――そんなに僕に抱かれたい?」
 無数に折り重なる肉ヒダの隅々にまで愛液が染み渡り、やっと抱いてもらえると思った途端に恥ずかしいぐらいにヴァギナが蠢動するのを感じながら……また、あたしは頷いた。
「―――そんなにボクの子供が欲しい?」
 なんとなく、最後にそう問われると思っていた。―――ただ、あたしはその問いにだけは答えられなかった。
 痙攣を伴う全身のこわばりが収まってやっと大きく息を吐き出せるようになると、あたしはさらしに締め付けられている胸の内側でわだかまっている空気を大きく吐き出す。そしてあたしたちの間に目に見えない距離をひとまず作ると、潤んだ瞳で夜空に浮かぶ月を背にして立つ雄介さんを改めて見つめながら、あたしは自分の手で、自分の意思で、先ほどまで強いられていたMの字の姿勢で脚を抱え、肉棒に刺し貫かれる事を待ち望んでいる膣口をさらけ出して見せた。
「――――――――――」
 ジッとあたしを見下ろしていた雄介さんの喉が、大きく動く。そして、ネクタイに指をかけると襟から一気に引き抜き、背広とシャツ、そしてズボンにパンツまで、まるで慌てる子供ものように庭園の上で脱ぎ散らかすと、最後に靴や靴下まで脱いで本当に一糸まとわぬ姿であたしとの距離を詰める。
「ぁ………♪」
 股間にそそり立つペ○ス……いきり立つその雄々しい姿に、思わずあたしの口から小さいながらも喜びの声が漏れてしまう。お腹を打ちそうな勃起角度に、大きさだって外人に負けないぐらいに物凄い。しかも太く、エラばったカリ首は、挿入される時の事を想像しただけでヴァギナが怯えそうなほどの張り出し具合だ。
 ………あんなのを挿れるから……ここまで濡らしたんだ……
 突き出された腰にマジマジと視線を向け、否が応でも期待が昂ぶっていく。ペ○スを追う視線は雄介さんの動きにあわせ、あたしの股間へと向かい、そこであたしは一度視線を切ると、覆いかぶさろうとしている雄介さんの顔を見上げて………コクンと、最後の問い掛けへ答えを返した。
「んッ……んはぁあぁぁぁ〜〜〜………!」
 太い肉棒がドロドロに濡れている膣壁を擦りながら、狭いヴァギナを押し広げる。
 ここまでの圧迫感は久しぶり……ドーピングした弘二の巨根に貫かれた時にさえ感じた事のない圧力に、あたしの膣は内側から変形し、子宮口に到達しようとしている雄介さんの肉棒にしがみ付くように締め上げ、絡み付いてしまう。
 そして……
「ああ、あああああああああ―――――――――ッ!!!」
 熱く潤った子宮口と太く逞しい亀頭とが触れ合った瞬間、あたしは背中を反らせてガクガクと打ち震えながら、その一突きで今まで体験した事もないようなオルガズムへと押し上げられてしまっていた。結合部からは熱湯のような愛液が噴き出し、ヒクヒクと痙攣している肉壁が力強く脈動しているペ○スと一つになる。
 それでも何度もイく寸前で“お預け”を食っていたヴァギナだからこそ、こうもすんなり飲み込めたのだと思う。まだ挿入されただけなのに、雄介さんの男根の破壊力に呼吸すらままにならないほどの快感を覚えてしまっていて、繋がったままゆっくりとお互いの性器を味わう時間の流れの中で、あたしは愛液を煮詰めさせられた蜜壷をわななかせながら深い陶酔に陥ってしまう。
「あ…あぁ………」
 次第にヴァギナの痙攣が収まって余裕が生まれてくると、あたしは甘い息を吐き、ゆっくりと下腹部に力を込める。
「う………ッ!」
 雄介さんの口から苦しげに快感を堪える声が漏れるのを聞くと、あたしは抱えた膝をすり寄せるように近づけ、ヴァギナをさらに締め付ける。激しく蠢動してペ○スを嘗め回す肉ヒダに圧迫感が加わると、途端に雄介さんのペ○スが膣内で跳ね上がり、子宮口を射精口で抉られるようにお互いの大切な場所が擦れ合ってしまう。
「ん…ふぅ………うごいて…雄介さんの、好きなように……あたしのことは構わずに、ね?」
 膝の裏から両手を離し、自由になった両脚を雄介さんの腰へ絡み付ける。そのままあたしから引き寄せると、子宮を圧迫するように肉棒が狭い膣内へとズブズブと押し込まれ、痛みを伴う強烈な挿入感にあたしの腰は震えが収まらない。それと同じように、雄介さんのペ○スも根元から先端へと駆け上る脈動が次第に激しくなっていく。
「あっ……はぁぁ……♪ もっと…もっと深く…ゥ……♪」
 月明かりの中、あたしの膣内で肉棒がビクビクと震えるだけで快感が込み上げる。あたしと雄介さんの鼓動が重なり合い、緩やかな嬌声を唇から溢れさせる。二人の性器が本当に蕩けて一つになってしまうかのような感覚にただただ身体を震わせ、表情までうっとりと蕩けさせてしまう。
「たくやさん……もう耐えられない」
 あたしの体の横に手を付いて体を支えていた雄介さんが、引き締まった胸板を沈み込ませ、結合部に体重を掛けながらあたしの唇との距離を詰めてくる。
「キミと会える日を、キミを孕ませる日を夢にまで見て精液を溜め込んできたんだ。分かるかい、ボクのチ○ポがたくやさんを妊娠させたがっているのが」
「………うん。あたしのおマ○コも……雄介さんになら、いいって……」
 言って、すぐに頬が熱くなる。だけどあたしは雄介さんの今にも泣き出しそうなほどに射精を堪えている顔をまっすぐ見つめ、その首に両腕を絡ませる。
「あッ……雄介さ、中で、あたしの中でおチ○チンが太く、ああっ…ああっ……なんか、また…はあああッ!」
 ビクンッと大きくヴァギナが震える。二度目のアクメを迎えようとして収縮した肉壁は根元からカリ首にかけてペ○スを絞り上げ、一気に膨張した亀頭が子宮口を刺し貫かんばかりに押し付けられてくる。
「あ、ああぁ、たくやさん、こんな、動かずにイかされるなんて、あ、あアアアッ!」
「あたしも、また、イく、イくゥ! 雄介さん、動いて、出すまで動いてェェェ!!!」
 こんな中途半端なアクメはイヤ……その気持ちが伝わったのか、どちらからともなく唇を重ねて涎が溢れるのも気にせず舌を絡めあわせながら、雄介さんは腰を激しく振りたて始める。完全に密着していたあたしたちの性器の間に隙間はなく、引き抜かれ、めくりあがった肉ヒダごとペ○スを押し込まれるたびに、愛液が掻き出されて結合部から卑猥な音が打ち鳴らされる。
「孕む、孕んじゃう…あたしが…男の人の赤ちゃんを…なのに、こんなに、こんなに感じて、イッ…イっちゃう、雄介さんに抱かれて、あたし、あはぁあああぁぁぁ―――――――――ッ!!!」
 着物にシワが出来る事も、愛液が飛び散って汚れる事も、今は何も考えられない。膣奥にガツンガツンと激しく亀頭を叩きつけられて、太い肉棒で前後左右にヴァギナをかき回されると、あたしは自ら腰を蠢かせて肉棒を迎え、肉棒を締め付ける。広い庭園の隅々にまで響きそうな嬌声を迸らせ、どんな男性に抱かれても味わえなかった幸福感に満たされながら、抑える事の出来ないオルガズムに震えるヴァギナで雄介さんのペ○スを扱き、絶頂へと導いてゆく。
「―――もう限界だ。これ以上耐えられない。ボクの子供…孕んでもらうよ!」
「あたしも、いいのォ! 赤ちゃん産むから、いっぱい産むから、だから中で、中でぇぇぇッ!!!」
 膣内の肉棒の痙攣からずっと“あたしのため”に溜め込まれていた精液が噴き出そうになっているのを察すると、あたしは涙を流しながら手足に力を込め、激しいスパートをかける雄介さんを抱きしめる。子宮に亀頭を叩きつける腰の動きはあたしの脚に制限され、子宮口を広げて受精されるのを待っている胎内目掛けて短いストロークで精液がカリ首にまで込み上げてきているペ○スを小刻みに、連続して捻じ込まれる。
「たくや、射精するよ、こんなに、ボクを欲しがってるおマ○コを、孕ませるんだ、も、もう……アアアアアッ!!!」
 獣のように叫び声を上げながら、雄介さんもまたあたしに覆いかぶさり、抱きしめながら滅茶苦茶に腰を振りたくる。そのあまりの激しさにあたしの体は板敷きの縁側の上を押し上げられ、和室との境界の敷居に頭を擦り付けて髪留めを弾き飛ばしてしまう。うなじが見えるように整えていた髪が乱れて普段の髪型に戻ると、“女”の本能の命じるままにヴァギナを締め上げ、着物をまとった全身をガクガクと打ち振るわせる。
「奥…に……クる、キ、ちゃうゥ、スゴいのが…キながら、あたし、あ…赤ちゃん、が…出来るのに、止まん…ないィイイイイイイッ!!!」
「ア……出ッ……た…くやァ―――――――――!!!
「出してぇ!!! あたしの、膣内(なか)で、あはぁあああぁぁあぁぁぁ―――――――――!!!」
 蜜まみれの膣をグチャグチャと掻き回していた肉棒が、最後の一突きとばかりに射精口を子宮口へ叩きつけ、減り込ませた。もう歯の根もあわない程のオルガズムに目の前が野外の庭園である事も忘れて長く延びる声を放ち、続く膣内射精で火傷しそうなほど熱い精液を子宮の内側へ撒き散らされ、続けざまに二度目の絶頂があたしの意識へ襲い掛かる。
 ―――イく、受精しながらあたし……赤ちゃん作りながら、イっちゃってるゥ……!!!
 内側にたっぷりと雄介さんとの“子供の素”を溜め込んだまま、ビクンッビクンッと子宮とヴァギナが跳ね上がる。何日にも渡って溜め込まれていた精液はたちまち子宮内から外へと逆流し、飽く事無く脈動を繰り返して白濁液を迸らせるペ○スと、最大限に広げられたままイきっぱなしのあたしのヴァギナとがドロドロになって……プツンと、あたしの中で何かが弾けた。
「うあッ!?」
 ようやく雄介さんの射精が収まりかけたそのタイミングで……弛緩していたあたしのアソコがグチュリと大きく音を響かせながら雄介さんのを圧迫する。二人でゆったりと絶頂の余韻を味わっていた時間は突然終わりを告げ、腰のうごめきに合わせてお互いの性器の粘膜がゼリーに近い精液に満たされた隙間のない空間で淫らに擦れあう。
「出来ちゃったん…だよね……雄介さんとの赤ちゃん。あたしの…ここに……」
 そう言って、あたしは自分の手ではなく、雄介さんのおチ○チンに子宮口を押し付けて言葉にした場所を指し示す。
 うれしい……欲望のままに犯されたんじゃない。“女”として愛されたのだと言う実感と、あれほど忌み嫌っていた妊娠を遂にやってしまった喜びにも似た開放感に、あたしは雄介さんの頭を引き寄せて何度もキスを重ね、唾液を絡ませあう。
「………驚いたな。急にこんなに淫乱になるなんて。猫をかぶってたわけじゃないんだろ?」
「わかんない………けど、“愛されるの”がこれだけで終わるのは……ヤダ。こんなんじゃ、結婚して子供産んだって、すぐに浮気しちゃうんだから」
 まだ、雄介さんと一度身体を重ねただけなのに、それだけでお互いを知り合えたとは思っていない。だから今は……何回でもいい。出来ればいっぱい、あたしがもう男に戻りたいと思わなくぐらいに愛して欲しかった。
 男に戻るのを諦めて、ポッカリと胸に飽いた大きな穴を、今すぐ雄介さんに埋めて欲しくて仕方がない。………いつの間にかあたしは、そんなエッチな“女の子”になってしまっていた。二十年以上の男として過ごした時間を失ってしまった寂しさを癒してくれるのは、忘れさせてくれるのは、男の人の腕の中しか考えられないから……
「分かってるよ。たくやさんが寂しくならないように、今夜はずっと離さないから………」
「『たくや』でいい。さっき、イく寸前の時みたいに呼んでくれれば……ね、ご主人様♪」
 今日のこのお見合いに対する答えを最後の一言に込める。
 雄介さんの射精は収まったけれど、生気は依然として固いまま、あたしのヴァギナを押し広げている。そんなうっとりするほど凶悪なペ○スを挿し入れたまま、雄介さんはあたしの背中に腕を回して抱え上げ、庭から縁側へ上がり、そのまま和室へと入っていく。
「んあぁぁぁ! ダメ、ゆっくり、歩いてェ! おマ○コに、ズンズン来ちゃう、また、イっちゃうゥゥゥ!!!」
 一歩歩かれるごとに、あたしの体重が結合部に全部掛かる。しかも雄介さんはわざとあたしの身体を揺さぶって大きく上下させ、落ちないように両手両足で必死にしがみ付いているあたしの秘所を深々と突き上げる。先ほど中出しされた精液も含め、たちまちあたしのおマ○コからは大量の白濁液が溢れ出し、妊娠したばかりの胎内が“子育て”を放棄して女の悦びにまたもや目覚めてしまう。
「今日からここが僕らの寝室だ」
 そう言って、お見合いの席だった和室と続きになっている隣室への襖(ふすま)に雄介さんが手をかける。背中を向けているあたしには隣室がどうなっているかは見えないけれど、薄暗い室内ですぐに雄介さんが跪き、あたしの体が畳の上に敷かれた布団へと横たえられる。
 ―――これからここで、ずっと雄介さんと……
 先ほど受精したことも忘れ、あたしの身体が期待と興奮に震えてしまう。
 もう着物が邪魔だ。一糸まとわぬ姿で雄介さんに抱かれて、二人でも三人でもいいから、中出しされて赤ちゃんを孕んでしまいたかった。
「雄介さん……あたしを愛して。何もかも、全部忘れさせて……」
 男性に愛される悦びを知った今、もう過去へは戻れない。
 いきなり激しく、子宮を押しつぶすような腰使いに、あたしは呼吸も忘れて快感へと溺れていく。
 もう、今のあたしには何も見えない。―――感じるのは、雄介さんの温もりと、お腹の中に確かに感じるあたしの赤ちゃんの存在だけだった………





「とまあ、そんな感じにできちゃった婚でさ。二年で三人……いや〜、結構大変だったんだから」
「………笑い話なの、それ?」
 留学先から明日香が帰ってきた時には、すっかりあたしも一流料亭の美人若女将が板についていた。そんな姿に驚きを隠せない明日香を客間に通し、庭園を眺めながら何があったかを説明し終えると、あたしは和菓子を切り分けて上品に口元へと運び入れた。
「はぁ……帰ってくる前まで、どうやって顔をあわせればいいのかって悩んでた馬鹿らしいぐらいにノロっけぷりね……」
「何言ってるのよ。そもそも明日香があたしを振って外国で男を作ったりしなかったら、今でもあたしは明日香の事を待ってたんだから。それがなに? 新しい男友達を作るたびに写真同封で手紙を送ってきたのは誰?」
「いや、だけどまさか、たくやが男に戻るのを諦めてるとは思わなかったから……」
「ううん、別に諦めてないよ?」
 あたしは今もまだ、麻美先輩や千里に薬の研究をお願いして続けてもらっている。明日香が誤解して苦悩しているようなので説明すると、机を挟んで座布団に座る昔の恋人は困惑の表情を浮かべた。
「な、なんでよ。だって結婚してるんでしょ? 旦那さんがいるんでしょ? 子供まで産んじゃったんでしょ? それなのにどうして!?」
「だって、それとこれとは話は別だもん。―――あの時のあたしには、雄介さんと結婚するしか道がなかったんだから」
 だから、今からでもいいので男に戻る方法を手に入れて、考えてみたいのだ。
 ―――新しく歩んでいる人生を捨ててまで、男に戻りたいのか。
 ―――男に戻ることよりも、愛されている女の人生を守りたいのか。
 この事を雄介さんに相談したら、さすがに困った顔をされた。それでもあたしが女のままでいると言う自身があるのか、それとも選ぶ事さえ出来なかったあたしを想ってくれてか、最後には笑って了承してくれたけれど。
「………そのあたりは、私にはよく分からないな。たくやには、もっと自分の人生を考えて欲しいとは思ってたけど……だからって嫁いでから男に戻ろうなんて、ねぇ……」
 話の最中に明日香は何度ため息を突いただろう。こめかみに指を当てたり、眉間にシワを寄せたり、それでも理解できないあたしの人生を理解しようとして、「これだけは聞かせて」と机に身を乗り出し、あたしの顔を正面から覗きこみながら口を開いた。
「たくや、あんたは今、幸せじゃないなの?」
 どうなんだろう……改めて問われて答えに窮してしまう。
 愛される人生はあたしに悦びと新しい人生を与えてくれた。だけど同時に、男である事を捨て去った寂しさも心の穴は、まだ名残りとして胸に残っている。
 だからあたしは、
「どうなんだろうね?」
 二年ぶりに会う幼なじみにイタズラっぽく微笑んで、大事な答えをはぐらかした。


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