その1B


落ちつけ。僕は教師…ふ〜。そう…教師なんだ。こんな事を許していてはだめだ。しかも相原は直接の教え子 だし、三人組も部に所属する生徒だ。原因は僕だ。考え無しに狼の群れに女の子を一人差し出してしまった ようなものだ。たぶんあの時、なんかあったんだろう。相原はそれで三人に脅されて、こんな事をしてるんだ。 だから男に戻らないんだ。 よし、相原。今助けてやるからな… ガラッ「おい!お前達っ!」 「あ!」「やべっ!」「うわっ」 皆、一様に身体を制服やシャツなどで隠しながらこちらを窺っている。僕はとりあえず相原の方へ行き傍に あった下着や制服を渡した。 「早く向こうで着替えてきなさい…話しはそれからだ」そう云って、相原を隣の準備室へ入れる。さて、こ いつらだが… 「早くお前らも服を着ろ!いつまで粗末なもの見せてるつもりだ!」 「…粗末だって」「ひでぇ云われ様」「あ〜あどうすんだよぉ」三人は愚痴をこぼしながら服を着始めた。 「お前ら、自分達が何をしたか判ってるのか?」 「…確かに学校でやるのはまずかったかなぁ、と」 「それだけか?女の子に拠ってたかって…」 「そんな!これはあくまで合意の上で」「そう、そう」「お互い楽しんで…」 「ふざけるな!」久々に頭に血が上る。 「この間のデッサンの時だろ!あの後から急に相原が科学部辞めて美術部に入ってきて、おかしいな、と思 ったんだ。僕がいなくなったのをいい事に…無理やりやったんだろ!」 「最初はそうだったけ…うぐ、むぐ」「馬鹿!余計な事云うな!」 ほら、やはりそうだ。…すまん、相原。僕が悪かった。 「お前らの処分は…」「処分ってなんかあるんですか?」「酷いですよぉ」「何?」 睨みつけると身を竦ませ黙る三人。佐藤、鈴木、田中…まったく3馬鹿だ。 「…先生」気付くといつのまにか、相原が着終わって中に入って来ていた。「あたしも…処分されるんでし ょうか?」「お前は…まぁ大丈夫だろ。無理やりだったんだ。事情を話せば…」「他の先生に話すんですか? 」「…仕方ないだろう。学園内でこういった行為をしていたんだ。これは大問題だ。それにこの三人の行為 は犯罪だ。学園内だけの問題じゃ…」 「止めて下さい!!」突然の相原の叫びに皆、驚く。 「そんな事になったら…恥ずかしくて、もう学園に居れません。あたし…何もなかった事にしますから…だから」 「しかし、相原がそう云っても僕はこの三人を許す事は出来ないぞ。大事な教え子に手を出したんだ。それ相応 の…」 「いいんです。あたしが…いいって云ってるんですから。この三人に罰は与えないで…あたしも同罪なんです から」そう云って俯く相原。三人組は皆、神妙な顔をして相原を見ている。 「先生。ここだけの、先生だけの秘密にしてください。お願いします」相原が涙ながらに懇願する。 「…先生。すいませんでした。俺達がとんでもないことを」と佐藤。 「もう、こんな事しません。誓います」鈴木は涙声だ。 「すいません」田中もうな垂れている。 …確かに、事を公にすれば相原はさらしものだ。万が一マスコミにでもばれたら… 「…お前ら、反省してるな」 「はい」 「相原…本当にいいんだな」 「…はい。お願いします」 「判った…お前ら、今度相原に何かしたらただじゃすまないぞ!」 「判ってます!もうしません!」「すいませんでした!」「ご、ごめんなさい!」 「…もういい。もう下校しろ」 「はい」「さようなら」「…」三人はそそくさと視聴覚室から出ていった… 「先生。すいませんでした。あたしも帰ります…」 「待て!もうだいぶ暗くなってきたからな。今日は送ってってやる」 「そんな…悪いですよ」 「いや…僕が悪かった。すまない、相原。モデルなんか頼まなければ…」 「…もう、いいんです」俯く相原…うなじが…妙に… 「あ!…う〜〜〜、じゃ、じゃあ帰るか。すまないけど職員室前に来てくれ。帰る準備してくるから」 女子生徒など年中見ている。可愛いと思う子も毎年何人かは居る。だが、それ以上の思いにはなる事はない。 そんなのは教師失格だ…だが、女になってしまった相原に、妙な色気を… ブンブン…首を振る。あ、あんな場面を見てしまったんだ。誰だって多少はそういう感じになるさ。僕だって 男だしな… そう思いながら職員室へと早足で向かっていた。


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