明日香編 _後編―アケナイヨル―(IF)


※読む前に――
 XC5周年記念小説です。
 あま――――いお話ではなく、悪酔いする話です!
 甘党の方はお勧めできません! 明日香編 _後編―ヨアケ―(IF)へをどうぞ〜♪

 設定は滅茶苦茶です(1R・2Rの設定がごちゃ混ぜなので)、『IF』であることをご了承ください。

 by aki烏賊



明日香 ――アケナイヨル――

 ――脳裏に浮かんだ優しい微笑みに、

「っくぅうううううううう!!!」

 必死に――込み上げる絶頂へ至った――声を噛みつぶし、明日香は自分を抱きしめ、白いシーツの上で身体を丸める。
「っう! はっ! はぁ! はぁ! はぁあ! ああ……」
 押し縮まる身体を――
 秘唇に沈めた指を――
 声を押し殺す為に歯を突き立てた指を――

 その全てを、優しくに微笑む拓也の表情に重ねて――

「イっちゃ…た……」
 頭から被ったタオルケットの中で、響く自分の吐息と鼓動。
 快楽を、繭の中で反芻しびくびくと余韻に浸る。

 ――なにやってんだろう、私。

 震える身体をそのままに、どこか冷静になった頭で考える。
(だって……今日は……)
 正直、気合いを入れていた。
 服は脱がせやすいものにして、下着だって下ろし立ての可愛い奴で――

 間違いなく、拓也は今日、自分を求めてくれただろう。

 ――ううん、求めてくれると、期待していた。

 でも、風邪で――

 小さく痙攣を続ける身体は――一度、絶頂を向かえたのに――火は燻り、消えない。

「んんっ……」
 熱を含んだ吐息が漏れる。
 
 ちゅく……

 閉め切られた――閉鎖された明日香だけの――空間に響く水音。
 濡れたソコに触れたわけではない、ただ太ももを擦り合わせただけ。
 たっぷりと潤いに満ちたソコは、未だ快感を求めてじんじんと疼く。

 ――拓也。

 先ほど、絶頂の瞬間に拓也の顔が浮かんで――イった。
 愛しい人の顔が浮かび――快感が一気に押し上げられて――我慢が出来なかった。

 ――なにやってるんだろう? 私。拓也が風邪で苦しんでるのに。
 でも――
「……っふ……」
 
 ――止められない。

 沸き出る愛液で潤む秘唇に、再び指を潜らせる。
(夏美さんが……あんなの見せつけるから――)
 別に見せつけられたわけではない、明日香が勝手に見てしまったのだ。

 その情交の残るベッドと、二人きりの状況――今は違う部屋に居るけど――に、拓也や夏美に悪いと、頭ではわかっているのに止められない。
 絶頂し、ヒクつく膣内は指に吸いつき、締め付ける。
「あふぅっ! ……んっ……」
 残りの手で声の漏れる口元を押さえ、絡みつく秘肉を振りほどき、指を前後させる。
 奥は刺激せず、膣内の中ほどで指を曲げて膣肉をこりこりと引っ掻く。
「あっくぅ! はぁ! はっ!」
 中間から入り口までを何度も擦り、溜まった愛液を掻きだすよう激しく動かす。
「っく! ふぅ!! はぅふ!! はぁ! ああっ! あっ! はぁ!!」
 指の腹に感じる、だんだんとした感触に爪を当てて擦ると、じんじんと快感が湧き出し、明日香を再び絶頂へと押し上げていく。
(んんっ! あっ! ああん! いい! んんぅ!!)
 身体が求めるまま、指を動かす。
 気持ちいい――のに、何かが足りないと、そう感じながらも快楽を、絶頂を欲して自ら慰める。
(拓也……たくやぁ! たくやぁああ!!!)

 愛しい人を思い浮かべて、再度絶頂へ昇りつめようと明日香の指が激しくなる。

 ――突然、
「わひゃぁあっ!」

 足先にひんやりとした空気を感じて――
(タオル……誰かが捲くってる……)

 ――でも、誰が?

 顔を覆っているので確認できないが、今この家には明日香と――あとは、

 拓也――

(ダメよ……拓也。病み上がりなんだから……)
 制止しようにも、一人で慰めていたのを見られてしまった――その恥ずかしさに顔も、声も出せない。
 腰まで捲くり上げたスカートから覗く太ももに、熱い――自分とは違う、たくましい指の――感触を感じる。

 ――頭隠して尻隠さず。

 正にその言葉どおり、上半身以外は――邪魔だったので、ずらして片足に残したショーツまで――全て晒している。
 身体は予想外の事態に固まったよう動かない。
(あっ……ああっ…指が……もうすぐ……)
 太ももを這う指先は、ゆっくりと――いまだ、明日香の指が沈んだままの――ソコを目指してくる。
 焦らされるよう、昂らせるよう進む指の動き一つ一つを鋭敏に感じて、必死に声を噛み殺す。

 ――どうすればいいの?

 何が正解なのか、わからない。
 拓也を止めるべきか、このまま身を任せるべきか――

「ひゃうぅうううんんっ!!」
 逡巡している間に、たっぷりと――自分の頭の中まで、じゅぶぅううと――水音を響かせて指が入ってくる。
 いつもの――明日香が憶えている拓也の優しい――指使いではなく、膣肉を確認するような荒々しい指の動き、その度にじゅぶじゅぶと――はしたない――音が聞こえる。
「ああっ! あっ! ああはぁ!!」
 容赦ない愛撫なのに、耳に飛び込んでくる音は、予想以上に水っぽい。
(わた……しぃっ! こんなにぃ!! ひぃっ! 濡れてたんだぁ……あひぃ!!)
 膣壁に、まるで愛液を馴染ませるよう執拗に擦りこまれて――
 自分でも――拓也にも――こんなに、念入りに秘所を弄られたことは無い。

 荒々しく感じる指の動きは、激しくではあるが、決して性急ではなく――

「はひぃい!!」
 声を上げる度に、「見つけた」とばかりに感じるポイントを憶え、何度も、知らない性感に嬌声を上げさせられ、少し慣れた――受け入れる余裕ができた――頃に次のポイントを探して動き出す。
(なんでぇ!!! こんなに上手くなっているのよぉおお!!!)
 明日香の知っている拓也の愛撫ではない――上手すぎて――文句を言おうにも、快感を受け止めるだけで精いっぱいだ。

 くすり――と、笑われた?
 でも気持ち良くて――

 羞恥で頬が真っ赤に染まる。
 顔を覆っているので、見られないのがせめてもの救い。

「はぅ! っ! はぁあああ!!」
 指が引き抜かれる――敏感なポイントを、がりがりと引っ掻きながら――その感覚に、
 ぶしゅうぅうう……と、飛沫を撒き散らし、何度も何度も腰が踊る。
「ひゃ……はぁ……!?」

 自覚できなかった――
 ステップを2、3個飛び越えて、突然、絶頂へ――
(なん……でぇ………あひぃ……わたし…イっちゃったのぉ?)
 身体を走り抜けた感覚は、絶頂した時に感じるモノ。

 なのに――

 一足跳びの絶頂感は、覚悟の出来ていなかった頭では『追いつけない』。
 確かに余韻は在るが――突然すぎて――『気持ちいい』を感じれたのは身体だけで、頭は理解しきれていない。
 心と切り離された身体は、びくびくと、小刻みな痙攣を繰り返すが、味わえる筈の絶頂感に追いつけない明日香は、違和感を感じて――

 ――もっと。

 足りない。
 我慢していたのだ――今日だけじゃない、拓也が女になって、男に戻ってからもずっと――

「はぁ……はっ……あああぁ……はっ…はっ…」 
 乱れる呼吸の中――いつの間にか涙が溢れて頬を濡らしているが――気にする余裕も無い。

 自分で慰めた時よりもずっと強い快感を反芻し、跳ねる腰はまだ止まらない。
 余韻は、疼きとなって貪欲に――まだまだ、気持ち良くなりたいと――明日香を突き動かす。

 ――欲しい。

 拓也が欲しくて、拓也に欲されたい。

 このままでは、おかしくなりそうで――

「お願ぃい……たくやぁ……」
「すげぇな……メチャクチャ感じてるだろ? 夏美」

 聞き慣れない声と、予想外の名前。
「ええ!?」
 一つの部屋の中、男と女の声が重なった――

 ―*―


 世界が反転して見える――

 自分には似つかわしくない、頭の良さそう? な一文が頭に浮かぶ。

 突然の衝撃と共に――おそらく、ケリ?――ベッドから転げ落ちていた。

 何がおこったのだろう?
 
 夏美と、たっぷり楽しんだ後、シャワーに行くついでに、こっそりと用意していた『道具』を取り、部屋に戻ると夏美がさっさと一人で始めていたので――

 この日の為に買っておいた『薬』をたっぷり指に塗って――

 ――イカセタ、あの夏美を!!! と、思ったら、

「君……誰?」
 ベッドによりかかるよう、上半身だけを乗せて目の前の少女を見る。
 気の強そうな瞳で――おいしそうな身体はタオルケットに隠し――こちらを睨む女の
コ。
 いきなり足が出るところを見ると、見た目どおり気が強そうだ。
 全体的に華奢で、『女』と言うよりはまだ、『女のコ』の印象。
 充分、女性らしいのだが、先ほどの『反応』、痛いくらいに、自分の指を締め付ける――逆に言えば、ただきついだけの反応――を見ると、まだ『こういうこと』に慣れていない、『初心さ』がそう見せるのだろう。
(嫌いじゃないけどね〜♪)
 反応もいいし、目の前の少女は、文句無し、間違いなくかわいい。

 あまり経験は多くないだろう。開発中? 感度は申し分ない、今が一番おいしい時期な訳で――

(まぁ、その警戒心丸出しの瞳を見ると、あまり好かれていない事はわかるけどさ……)
 少女は時折しか視線を合わせず、こちらをあきらかに警戒している。
「あなた……夏美さんの?」
「そう……夏美の彼氏で……誠司って言うんだけど――って、夏美は?」
 夏美の姿が見当たらない――また、嫌な予感がする。
「出かけましたけど……?」
「出かけたぁ! あの女……人がシャワーにいってる隙に……」
 まぁ、夏美の行動だ、驚きはしないが――ため息は出る。
「とにかく……その、早く服を着てくれません? そして帰って……」
 ――服? ああ、そうか。考えてみればバスタオル一枚だった――って、その一枚もベッドから蹴り落とされたときに外れてしまっている。
 顔を朱に染めた少女は、ちらちらとこちらを見ては真っ赤になって自然を外す。
(男の裸に慣れていない? そのくせ、興味アリアリ? って感じだな)
「おっと……ごめんね」
 表情を観察しながら――ワザと――見せつけるようにタオルを探すと、少女は、やはり――気付かれていないと思って――こちらへ視線を向けている。
(しかし――どうしようかねぇ……)
 ぐっしょりと濡れた膣内の感触と、少女のきついくらいの締め付けは、まだ指に残っている。

 まだまだ、幼い感触だが――

(好きなんだよねぇ……そういうの)
 夏美では――上手すぎて――もう味わえない感触。
(夏美のアレは、間違いなく気持ちいいんだけど……)
 『女』を自分の色に染め上げる、得も知れない快感は味わえない。
(そう言えば……たくやちゃんも、そんな感じだったよなぁ……)
 男に戻った――そう聞いた時(……勿体ない)と、誠司は心底思った。
 自分の彼女の妹が「実は弟でした♪」と知った時は――しかも、しっかりヤらせてもらったし―――驚いたが、後悔していない。
 夏美に知られたら『殺される』だろうが、あれは間違いなく――少なくとも誠司が味わった中で最高に――良かった。
 できれば、誠司好みにしてやりたかったが――
(ホント……勿体ない)
 誠司が知る限りでは――容姿も、身体の感触も――間違いなく最高の『女』だった。

 目の前の、名前は知らない少女はその拓也の彼女らしい。

(義姉喰って……弟だけど、妹喰って……その彼女かぁ)
 たまらないシチュエーションだ。

 ぺろっと、これからに備えて唇を湿らせる。
 先ほど――ケリを入れられて、ベッドから蹴り落とされる前――たっぷりと塗りつけた『薬』。
 ホントは夏美用に用意した『媚薬』。
 仲間内で評判がよく、誠司も購入して見た。
 夏美の前に他の女――強引にナンパした、大人しめのコ――に試してみたが、効果は誠司の想像以上。
 通販でしか購入できず、しかもとんでもない金額だったが、効き目は実証済み。

 その『薬』を、さっきこの少女にたっぷり塗り込んだ。
(さあて、どうしようかねぇ……)と、もう一度考える。
 効果が出るまで時間の問題――

 こちらを興味シンシンに見詰める少女。
 既に『薬』は効き始めているのだろう、頬は紅潮し、落ちつきなく身体をゆすっている。

 ――完全に、廻るまで時間の問題、そうなれば、ゆっくりと、大好物を味わえる。

 ――問題は、どうすれば一番おいしく食べられる?

 もう一度――薬の効果が出るまでの時間を稼ぐために――唇を湿らせ、誠司はゆっくりと――目の前の御馳走の一番おいしい食べ方を想像しながら――タオルを探すのだった。


 ―*―


 ――あつい。

 ごくりと――目の前の男……誠司さん? から身体を隠すように丸め――喉奥に唾液が送り込む。
 見ず知らずの人間に肌を晒した、その恥ずかしさで死にそうになるのに、目の前の『男』から視線が外せない。

 拓也とは違う――鍛えられ、引きしまった日に焼けた身体。
 軽薄そうに――色を抜きすぎて――金色に見える髪。
 甘い――明日香に言わせれば軽薄な――容姿は、年上の余裕を感じさせて――
 真面目な――優等生として生きてきた――明日香の知らない世界の人種。

 裸を晒す事に慣れているのか、初対面の明日香の前でも隠さず、平然としている。
 その身体を見ていると、つい思い浮かぶのは、夏美との獣のような交わりの情景。

(すごかったなぁ……私と、拓也のとは違って……)」

 まるで獣のように――

 つい、思い出してしまって、慌てて頭からその考えを追い出す。
(やっぱり……興奮していないと、あんな大きさなんだ――って! 私!! ドコ見てるのよ!!)
 いつの間にかこっそりと誠司のモノへと視線を送ってしまい、慌てて外す。が、気付けば――盗み見るように――また戻ってる。

 明日香にとって、新鮮な――見た事あるのは拓也だけ――誠司の身体は、いかにも『雄の肉食獣』を連想してしまう程にたくましい。

 ――ごくり。

 こうして見ると――間抜けそうにぷらぷらと揺れる――柔らかそうなアレが、いざ女を求める時に熱く、硬く――頼もしく――なるとは、身をもって知った今でも信じられない。

「ん? 何」
「えっ!! いえ……なんでもないですっ!!!」
 視線を感じたのか、誠司がふり向く。
(大人……だなぁ……私はこんなにドキドキしてるのに……)
 誠司の態度は普通だ――もう少し、隠して欲しいが――自分よりずっと大人なのだろう。
 昂りの冷めぬ身体は――初対面の人に触られて絶頂まで向かえたのに――ずっと官能を燻ぶらせ、疼き明日香を苛む。
 自分がこんなにドキドキしているのに、相手は普通――それが、何故か悔しくて――
 拓也も――そうだった、ずっと、ドギマギさせられて、
 
 ――でも結局、明日香は蚊帳の外。

 知らないトコロで、全ては進み、終わった――

(私に……魅力がないのかなぁ? だから……子供扱い……される?)
 何故か――こんあ状況で――そんな事を考えてしまう。

 自分はまだ、精神的に子供なのだろうか?

 いまだ、拓也に素直に慣れない自分。
 つい、意地を張ってしまい、結局いつもドタバタして終わる――

 ――もう、そんなのは、嫌だ。

 自分一人だけどきどきしている現状に、焦りが募る。

 男と女が2人きりで――
 しかも、女は――明日香は――自分を慰めている状況を見られていたのだ。
(何も……感じないの?)

 ――そんなに、私は女として魅力が無いのかなぁ……

 何故か? 悲しくなる。

「どしたの?」
 心配そうに聞いてくる誠司に、
「いっ……いえ!! 何も!!!」
 慌てて――思ったより、顔が近くに来る――少し身体を離そうとするが、

 ――動けない。

「顔……赤いよ? そう言えば、拓也君……風邪って言ってたよね? 伝染っちゃった?」
 男性の『匂い』――雰囲気?――を感じて、頬が紅潮し胸が早打つ。

 鼓動が聞こえてしまわないか? そんな不安がよぎるが――

 ――あつい。

 じゅん……と、下腹に濡れた感触が広がり、鋭敏になった肌は、ざらざらした生地の感触まで刺激に感じて――
(私は……こんなに…どきどきしてるのにぃ……)
「あ……ふぅ……」
 落ちつかせようと、ゆっくり息を吸う――が、
(ヤダ……)
 火照り続ける――より、疼きが強くなる――身体。
 
 ベッドの上に、男と、女。
(拓也――)
 すぐ隣の部屋には拓也が寝ているのに――興奮している自分がいる。
(もし……今…襲われたら……)
「ひゃぁあっ!」
 短い嬌声、一瞬とはいえ自分の想像に鳥肌がたち、唇から――まるで喜ぶような――声が漏れた。

 ――なんで?

 鼓動が速くなり、全身が紅潮し、感覚は張りつめる。
 つぅ――と、流れた汗に首筋を擽られ、それだけで快感を得て身体は震える。
「んくぅ……はぁ……」
 火照りは頭を犯し、考えがまとまらない。

「大丈夫?」
 熱く――大きな――手が額に触れた。
「あふっ!」
 優しげな――安心する――声に耳を擽られ、伸びてきた手に抗えない。
 触れられている、知らない人なのに――甘くて――背中がぞくぞくする。
「う〜ん、熱はない……みたいだね?」
「だ……大丈夫ですか…らっ……」
 上ずる声。
 見上げるような視線の先――すぐ近く――に誠司が心配そうに覗きこんでいる。
 おでこに感じる熱さと、その感触が心地よく――
(あっ……はぁっ!! 背中……むずむずする……)
 おもわず――身を任せるよう――その手に身体を預ける。
 感じていた嫌悪感は薄れて、安心感すら芽生え安心していると、
「わひゃぁ!!」
 耳たぶを摘ままれて、声を上げてしまう。
「う〜ん、ここは熱いね……」
 誠司の真面目な表情と、耳をくすぐる指の動きに、たまらないモノを感じてしまう。
(大きな……手…頼もしい……)
 こうやって、男性の手の大きさを感じるのは久しぶりだ。
(誠司……さん…は、私の事を心配してくれてるのに……)
 明日香の意識は鍛えられた逞しい――拓也とは違う――身体に吸い寄せられる。
 閉じた足の隙間にぬるぬるした感触。
 心配してくれている人の前で欲情している――その浅ましさに胸が潰れそうになるが、

 ――ごくり。

 喉がからからで、唾液を嚥下するのもつらい。
「あ……名前、教えてもらってもイイ?」
 言われてみれば、まだ名乗っていない――
「あす…か……明日香です……」
 熱い吐息を漏らし――潤んだ瞳を誠司に向け――反射的に名乗る。
(熱い……身体……はぁ……)
「ふぅ〜ん、明日香ちゃんかぁ……いい響きだね」
 さりげなく――いつの間にか肩に置かれた手に――引き寄せられて――まるで、キスをするような距離まで――顔が近づく。
(なんで……こんなにぃいい)
 全身がピリピリする。
 下腹を――いまだ、愛液を溢れさせる秘唇を――中心に、どんどんと熱く火照っていく。
 吐息は荒く、視線は誠司の身体から放せない。
(あ……大きくなってる)
 わずかに角度を変え始めた、たくましい男性の象徴。
(誠司さんも……興奮している?)

 ――私の身体で?

 不思議と、嫌悪感はない。
 それどころか『女』であることを認められた――そう感じて、明日香の胸に誇らし気な気持ちが湧き上がってくる。
(私の身体で……興奮してる……)

 ――ごくり。

 何かを期待するように、白い喉が震えた――


 ――あつい、身体が……

 背中に置かれた手が熱い。

 だけど――安心する。
 拓也じゃないのに……
 触れられている部分から、ぴりぴりした感覚が全身を駆け巡る。
「明日香ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫……です…けど」
 視線は、誠司の――屹立した――モノから外せない。
「あの……その……」
(すごい……大きくなって……拓也のと形が少し違う……って、何を考えてるの!? 私……)
「なんか……明日香ちゃん、かわいいなぁ…すごい色っぽい」
(色っぽい!? 私が?)
 普段であれば、初対面の男の人にそんな事を言われても――誠司のようなタイプなら特に――きつい一撃をお見舞いして終わり。
 なのに――
(私……喜んでる!?)

 この状況がすでに『普段』ではない。

 彼氏の家で、その義姉の彼氏とベッドの上に――
 許されるはずのない状況、なのに――

 明日香は――真正面から、視線を外す事無く見詰めてくる――誠司から目をそらす。

 ――頭が……ぼーっとする…。

 熱に浮かされたように、考えがまとまらない。
 呆けた思考の中で、『駄目!』と必死に叫んでいる自分がいる。
(でも……何が駄目なんだっけ?)
 考えようとしても、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
 うつむいた視線の先に、はっきちと屹立する誠司の肉棒。
(すごい……)
 その存在感に、明日香はまじまじと見詰めてしまう。
「……気になるの? コレが?」
 誠司は視線に気付いたのか、明日香の手を取り、硬くなった股間へと導く。
「ひやあっ!」
 指から感じる熱さと、硬さ。
 思わず、驚きの声を上げてしまうが、導かれるまま屹立したモノに指を絡める。
(すごい……熱くて…血管がごつごつしてて……びくん…って…)

 その感触は、明日香に甘美な――拓也に教えられた絶頂と言う――あの感覚を思い出させて、身体の奥を疼かせる。

 拓也のモノとは少し形が――大きさも――違う事を確認するよう、手を上下に動かすと、
「おおぅ!」
 切なそうな誠司の声と同時に、手の中のモノがびくびくと震えた。
(……あ……はぁ…まだ大きく……)
 どくん、と指先に感じる脈動を確かめるよう、きゅっと……指の輪を作って締め付ける。
 明日香の指を押し返すよう硬く、大きくなっていくソレの感触。

「こんなの……だめ………なのに…」
 ――何が、『駄目』なのか?
「そうだね……拓也くんに悪いね」
 ――そうだ、拓也に申し訳ない、だから『駄目』……

「でも……このままじゃ、オレもつらいなぁ。明日香ちゃんのせいでこんなになったのに……」

 指に伝わってくる男の興奮。
(私の……私のせいで……誠司さんが……つらい?)
 腕から昇ってくる『あつさ』は、下腹への熱に加わり、ますます頭をぼうっとさせる。
 身体は鋭敏に、理性は重く沈んでいく。
(私のせい……私の……どうしよう……はぁ……)

 思考だけでなく、現実感自体がぼやけて、考えはまとまらない。夏美にそそのかされて、アルコールを口にした時のように、頭は火照り、現実感を感じられなくなっている。
 ふわふわと、足が地についていない感覚に、よろけた身体を誠司に預ける。
 まるで恋人同士のよう、ベッドの上で誠司の肩に寄り添う明日香。

 接触してる部分が熱い。鈍くなっている筈の感覚は、相手の温もりだけは過敏に伝わってくる。

 ――私の……せい?

 問いかけを乗せた瞳を、誠司に見つめ返される。
「こうなったらさあ、つらいんだよね、わかる?」
「はい……そうなっちゃうと…つらいのは……わかります…」
 男性の生理に、頬を染めながらも応える。

 ――そう、つらい。

 明日香自身、身を焦がすような火照りに苛まれている。
(誠司さんも…つらいんだ……だったら……)

 この、身体を蝕む『疼き』を誠司さんも感じているのならば――

 本格的に――男の人を気持ち良くする為に――手を誠司のモノに刺激を与えようと動かす。
「うはっ♪」
 嬉しそうな声に、明日香は安堵を感じながら、先端から根元まで大きくストロークを繰り返す。
(あ……気持ちいいんだ)
 指を上下させていると、だんだん指先に湿った感触がまとわりついてきた。
 亀頭の真ん中にある割れ目は、滴の玉を作り、それを明日香の指が拭い潰しても、どんどんと溢れてくる。
(私とおんなじ……)
 くちゅ…と、濡れた音は、もじもじと揺れる明日香の下腹部からも微かに聞こえる。

 ――私、上手く出来てるんだよね?

 初対面の男性を慰めている――
 胸の奥でざわざわとした感覚が湧き上がる――が、それが何かわからない。
(つらそうにしている誠司さんを慰めている……)
 それは、悪い事ではない――はず。

 ――なのに。
 ちくちくと、違和感が胸を締め付ける。
 思い出さなければいけない事があると、理性が何かを訴えているが――
「うん、明日香ちゃん。じょうず♪ じょうず♪」
 手の中に感じる膨張した感触と、気持ちよさそうに自分の名を呼んでくれる声に、身体が反応してしまう。
 違和感は何か? 気付けないまま、ただ今自分にして上げられる事を精一杯しよう――もっと、気持ち良くなってもらおう――と、その事しか考えられない。

 部屋の中に響く、互いの呼吸と水音に、夏美と誠司の姿が脳裏に浮かぶ。
 気持ちよさそうに、必死で快楽に耐える――誠司の貌。

(あの時と、おんなじ……顔だ)

 ――喜んでくれてる。

 誰かに尽くす事に――胸に何とも言えない暖かいものが広がり――明日香は嬉しさを感じていた。
(……私、何もしてあげられなかったから……)

 たくやに――拓也が女になった時――何も出来なかった自分を思い出すだけ度に、惨めになる。
 今、目の前にいるのは拓也ではない事はわかっている。が、誰かに――あの時とは違い――何かをしてあげられる。
 その事を喜びに感じて、ぐちゅぐちゅと、誠司のモノから出た粘液が、指先を汚す事も構わず、明日香は自らその液体を手の平に絡め、塗り広げていく。
 こうしてぬるぬるにした方が滑りやすく、相手もより気持ち良くなってくれる筈だ。
 手の平で、幹の部分を擦りながら、親指と人差し指で先っぽも刺激する。
(すごい……手がねちゃねちゃする)
「ああっ! すごい……気持ちイイよ? 明日香ちゃんのおかげで……」
(気持ち良くなってくれてる、私で――)
 そう考えると、胸がじんっと、熱くなり――明日香と誠司の呼吸が重なっていく。
 求められる事が嬉しく、胸の奥が充実感に満たされる。
「はぁ……あっ……はぁ、はぁ…・…ああ…」
 ただ、誠司に気持ち良くなってもらう為に、ひたすら指を、手を動かす。
「はぁ……ああっ……ひゃあっ!?」
 明日香の胸元に誠司の手腕が滑り込む。
 胸の形を確かめるように動く誠司の指の感触に、身体を硬くしてしまうが、抗わない。
(んんっ…はぅ……あっ…んあっ……)
 肉竿を扱く腕を止めぬまま、 じんわりと湧き上がってくる甘い刺激に、うっとりと愛撫に身を任せる。
「気持ちいい?」
 ふにふにと、片手で乳房を揉みつぶしながらの問いかけに、考える暇も無くこくりと頷く。
 鋭敏になった感覚は、待ちわびていた刺激を何倍にも増幅し、明日香のお腹の下を震わせる。
 自身の熱と、胸に置かれた手の熱さ、そして明日香の手の中から感じる男性の熱さに、確かなモノを感じながらも、現実感はますます薄れていく。

 服の上からとはいえ、胸を揉まれ――拓也の家だからと、ブラもしていないので――時折、布越しにころころと特に敏感な乳房の先端を転がされて、
「ああふっ! はぁっ! あっ……」
 胸に走った強めの刺激に、歯止めが利かず、身体が応えるまま素直に声を出し、おもわず手の中のモノをぎゅっと握りしめてしまう。
(あ……先っぽ…震えてる)
 伝わってくる感触は、男性の絶頂を教えるよう脈打ち、膨張していく。
(もうすぐ……精液……出るんだ……)
 射精の予兆を感じ、誠司を満足させようと、手の動きは強く、早くなっていく。
 時折、跳ねるように動く誠司のモノを必死で押さえる為に、きつめに握ると、それが以外な刺激となるのか? 気持ちよさそうに震えが大きくなる。
 根元を手で押さえ、動かないよう固定して、残った方の手を肉棒に粘液を絡めて動かす。
 胸への刺激を感じながら、手の中の感触を確かめるようしっかりと握って上下に擦る。
 手の中に感じる脈動の間隔はどんどん、大きく、短くなっていく。
「はぁ……ふっ…あっ……はぁ……イっていい? 明日香ちゃん」
 甘えるような誠司の声に、
(気持ち良く……んんっ…私でイくんだ……)
 たまらないモノを感じて明日香は応えた。
「はい……イってください!! 気持ち良くなってください!!!」
 丸みを帯びた先端が――スローモーションに――ぷくぅと、膨らみ爆ぜる。

 ――あつい。

 明日香の腕に、薄い黄色のワンピースに、そして、視線を外さなかった顔まで熱く、熱い飛沫が舞う。
(すごい……)
 拓也のすら見た事のない、男性の絶頂の瞬間を目の前に、明日香は得も知れぬ達成感を感じた。
 びたびたと、肌を叩く感触に嫌悪感はなく、いまだ止まらぬ――手の中でびくんっと震えて――迸りに身を預ける。
 一際大きな塊に頬を打たれ、つーんとくる濃厚な性臭が鼻腔を抜ける。
(イったんだ……手で……私の手だけで……)

 目の前で射精を見て、その勢いに驚く。
(こんなのが……私の中で……)

 身体の奥に感じる熱い衝撃と、それを受ける絶頂感を思い出す。
 そう、何度も、拓也の精を受け入れたあの充足感。
 そう――明日香はもう知っている。最奥へ、この熱い塊が届いた時の快感を。

 だが――

 この熱さと、勢いは明日香の知る――拓也ただ一人だけど――モノよりも、強く、
 手の中に感じる存在感は、大きく、硬い。

 何故か――喉がごくり。

 最後まで気持ち良くなってもらおうと、柔らかくなり始めた誠司のモノから絞り出すように根元から先端へと扱きあげる。
(私も……気持ち良く……だめ…これ以上は……)

 ――これ以上は……何?

 大事な事が頭にひっかかるが――考えたくない。
 この、くすぶり続ける火照りに、このまま身を任せたい。

 最後の一滴まで、出しきったのか、手の中のモノが――ひどく頼りなく――柔らかくなっていく。
「ああ……」
 おもわず、残念そうに呟く。

 ――欲しい。

 濃厚な精の匂いを嗅いで、身体は完全に発情している。
 このまま、誠司を押し倒したく――はしたないと頭では思いつつ――なるが、これでは、

 ――気持ち良くして……もらえない。

 突然――感情のコントロールが出来ず――悲しくて、
「ありがとう。すごい気持ち良かったよ? ……んっ? どうしたの」
 わかっている筈なのに――こりこりと、硬くなった乳首を摘ままれ――にこにこと微笑む誠司を恨めしそうに明日香は見る。

「あの……」
 今日から素直になる。そう決めた――

 でも――何に? 誰に?
 
 熱で思考がまとまらない。

 ぐっしょりと、汗に濡れたワンピースは重く感じて――
 お尻に触れるシーツもびしょびしょに濡れて――

「お願い……です………私に――」

 精液の感触と、匂いに酔ったよう頬を真っ赤に染めながら、明日香は、素直に自分が望んでいる事を口にした。


 ―*―


 ベッドに腰掛けた誠司の足の間に潜り、明日香は――ついさっきまで、かちんかちんだった――誠司のモノに舌を這わせている。
 大好物を与えられた犬のよう、男の前に膝を揃えてお行儀よく座る明日香。
 彼氏である拓也にも数えるほどしかした事のない口腔での愛撫。
 硬度を失ったモノを含み、残滓を舌で舐めあげ、唾液と共に喉へと落とす。
 青い――すごく濃い――匂いが口内から鼻腔へ抜ける。
「んんっ…ちゅぅ……はぁ……んん……ずっ……ちゅぶぅううう……っぷ…ぅ」
 一度、口を離し先端を咥え直すと、先の割れ目に舌を突き立て、そのまま頬がへこむ程の吸引で、中に残っていた精液まで吸い出す。
 決して好ましい味ではないのに、喉元を通る粘液状の物体の感触に、身体は益々火照り、汗が滲む。
(やだ……)
 耳元に響く、濡れた――下品な――音を自分が口内でたてている、その恥ずかしさに全体の肌を朱に染めながらも、這わせる舌を止められない。
(私……きっと、ひどい顔してる……のに)
 上目遣いで表情を見ながらの奉仕――誠司に要求された――にやにやと頬を緩ませる誠司と目が合う。
 恥ずかしい――のに、熱が回りきった頭は、この行為を優先させてしまう。
「あぷぅ…んんぅ…ちゅう……ちゅ…じゅぶぅ……じゅぞっ……じゅぞっ……うぷっ!」
 硬さを取り戻す誠司の硬いモノに、口角を広げられてむせそうになる。

 ――大きい。

 手で感じていた感触で、充分大きいのはわかっていたが、こうして目の前、口内で感じると――明日香に知る唯一のソレよりも――ずっとたくましく感じてしまう。
 歯が当たらぬよう、出来る限り口を大きく開く。
「うぶぅ……んぶぅ……はふっ……んんぅ……ちゅ…んぶぅ……」
 時折、喉奥を突かれて吐き出しそうになるが、何とか堪えて舌を動かす。
 頭の中に響くぐちゃぐちゃした音と、息苦しさ、そして口内の熱さに頭がぼーっとしてくる。
(んんぅ……ちゅ……ん…硬い……)

 ――もうすぐ、気持ち良くしてもらえる……そう考えれば、少しの苦しさなんてなんでもない。

「うん……いいよ、気持ち良くなってきた♪」
 誠司の手が髪と頬をくすぐる。
 気持ちよさげな誠司の様子に明日香は肉棒を咥えたまま、微笑む。

 ――うれしい。

 喜んでくれる姿に、胸が熱くなり、ぞくぞくした感覚が背中を駆け抜けた。
「んんんっぅ!! んぶっ! んぶぅうう!! ちゅぶぅ! じゅずっ…ずずぅ…あ…はぁ……」
 舌を、ごつごつした段差に這わせて、口内奥まで進ませると、頬がへこむほど吸引する。
 教えられたとおり、ワザと唾液の音をたてるのも忘れない。
「あの……」
 上目遣いで誠司を見詰めたまま、恥ずかしそうに口ごもる明日香。
 もう口腔に感じるモノは完全に大きくなっている。その感触が自分の中に入ってくるのを想像して、明日香の背筋に期待と歓喜の震えが走る。
「欲しいの?」
 誠司の問いに――答えはわかっている筈なのに――頬を朱に染めながら、小さく頷く。
 実際、もう我慢できそうにない。太ももに伝わる熱い感触は、シーツの吸収量を超えて水溜りになっていた。
 歓喜に身体を震わすたびにくちゅ…っとした音が足元から聞こえる。
「でも……飲んでほしいなぁ……オレの♪」
 ずん! と、衝撃が食道まで突き抜けた。
 誠司が自ら腰を動かし、明日香の口を蹂躙する。
「んぐぅ!! んむぅ! んッ! ぶぅうう!! んぐ! ぐぅう!!」
 頭を固定され、容赦なく喉を犯す男のモノに、苦しさに涙が滲む――が、
 その腰の荒々しさに、自分の秘所が貫かれる事を――その時に得られる快楽を――想像するし、恍惚した表情を浮かべてしまう。
 歯に当たらぬよう、口を大きく広げながら必死に、誠司が満足するよう耐える。
(早く……これで……私も気持ち良くしてほしい……)
 誠司に満足してもらえば、次は自分を気持ち良くしてもらえる。
「げふんぅ!! んっ! んぶぅ……! はぶっ! はっ! んぶぶうぅううう!」
 がぽっ……がぽっ…と、空気の抜ける音を室内に響かせながら、誠司の腰の動きが引いた時に、舌でつるつるとした先端の感触を確かめるよう舐め回す。再び奥に進んできたら裏筋に舌を添えて喉へと導く。
「すごい……いいよ……明日香ちゃん」
「ちゅぴ……んん……あっ?」
 突然、肉棒の感触が口内から消えた。
 目の前で揺れる――ちょっと可愛く見える? のに、とてもたくましい――モノに、思わず舌を伸ばすが、頭を誠司に押さえられているので舌は届かない。
「そろそろ……入れてあげないと可哀想だしね」
「ああ……ん」
 誠司の言葉を、否定出来ず――でも、相手を気持ち良くさせてない事が申し訳なく――明日香は早まりそうな『待ち望んだ瞬間』に、ただうつむくことしか出来なかった――


 ―*―


 恥ずかしそうに、けれども、欲情しきった『牝』の貌を見せ、うつむく少女。
(もう…気持ちいい事しか考えられないみたいだな)
 作りモノの笑顔の下に、男の欲望を隠し――もっとも、そんな必要、もう無さそうだが――誠司は――まるでペットにそうするよう――明日香の頭を撫でてやると、心地よさそうに身じろぐ。
 触られる嫌悪感はとっくに消え失せ、もう誰に触れられているかわからないのだろう。
(かなり、貞操観念の強そうなコだったのに……)
 改めて自分の用意した『媚薬』の効果に感心する、これならば夏美でも耐えられないのではないか――? 
 まあ、こう言っては何だが、目の前にはそれ以上においしい御馳走が待っている。
 結構、夏美とも仲よさそうにしていた少女。しかも弟さんの彼女――バレたら、間違い無く殺されるだろうが――
(要は、バレなければいい訳で)
 小動物の用に震える少女を撫でながら、先ほどまで熱心に奉仕してくれていた唇を見つめる。
 ちょっと無理をさせたせいか、荒い呼吸を繰り返す明日香の白く、きめ細かい肌の胸元から覗く膨らみに指を沈ませ、その柔らかさと、先っぽの弾力を確かめる。
「ひゃうぅ!!」
 ちょっとの刺激で、大げさに悶える少女の姿に誠司は嗜虐心をそそられ、胸を弄る手を止めぬまま耳元へと顔を寄せる。
「じゃぁ……入れてあげる前に――」

 もっと、気持ち良く、恥ずかしくしてあげよう――


 ―*―


「服……脱いでよ? オレに良く見えるよう」
 じゃないと、入れさせてあげないよ?――と、誠司に言われて、明日香はゆっくりと着ている服を――ブラもショーツも――男の目の前で脱いだ。
 一糸まとわぬ姿を誠司に晒し、恥ずかしさに全身が熱くなるが、隠す事は出来ない。
「じゃあ……」
 ベッドにごろん、と横になる誠司。
 誠司の視線が、明日香の身体から離れぬよう、明日香の視線もまた、誠司から離せない。
(……あれが…もうすぐ…)
 引きしまった身体と、たくましくそそり立つソレに、無意識に喉がごくりと鳴った。
 横柄に手招きする誠司に、望んでいる事を察知し、明日香は誘われるままその身体の上へと跨る。
(自分で……入れなきゃ…いけないんだ)
 そんな事、したことない――でも、
 たくましい胸板に片手を置き、もう片方の手を自らの秘唇へと伸ばす。
(……んんっ…熱い…ひくひくしてる)
 とっくに男性を受け入れる準備は出来ているが、やはり――大きすぎて――怖い。
 馴染ませるよう指を軽く動かすと、ねっとりとした愛液が溢れてくる。
(これだけ濡れてれば……入る…よね?)
 くちゅくちゅと音をさせて、腰の位置を誠司のモノに合わせると、その硬い感触がわずかに秘唇に触れて、
「ひゃううんぅ!!」
 それだけで――これから中に入ってくる事を想像して――声を出してしまう。
「うん、もう少し下じゃない?」
「くぅう! んっ…はい……」
 自ら男のモノを入れようとしてる姿を見られて、身体は火照りっぱなしだ。
 恥ずかしさに逃げ出したくなるが、それ以上に、

 気持ち良くなりたい、のに――
(早く……んん! ダメぇ…入ら……ないぃい…)
 自分で入れる……その経験がないので、上手くいかない。
 考えてみれば、今までずっとリードして来てもらっていた。
 焦れて腰を動かす度に、熱い感触が秘唇に擦れて、気持ちいい――もどかしい――感触に我慢できなくなる。
「ほら、よく見ないと……ちゃんと手はオレのに添えて…」
 誠司の言葉に操られるよう視線を落とすと、たくましくそそり立つ男性のモノをあてがった自分の秘所が映る。
 茂りの奥に、ぱっくりと口を開いた秘唇を押し広げるよう、男性器の先端が当たっている――のに、
(なんで……入らないぃ…のお?)
 また――敏感な粘膜を刺激しながら――ぬるり、と腰を沈めようとした瞬間に、逃げていく。
「ははは、明日香ちゃん。濡らしすぎだ」
 誠司の言うとおり、何度やっても、濡れすぎてソコは、熱い感触をするりと滑らせ、もどかしい刺激が生まれるだけ。
「何……でぁ……ひゃあぁあん!!」
 尖りきった――充血し、膨張した――クリトリスに刺激が走りがくん、と腰の力が抜けた。
「はぁ……っ…ああ…はぁ……あ……はぁ…」
 誠司の身体に体重を預けながら、明日香は発情しきった荒い息を吐く。
「だめぇ……入らない……入ら…ないのぉ……」
 幼子のよう、泣きじゃくる明日香。
 腰を上げようにも力が入らず、ただひくひくと身体を震わせる。
「ひっく……ん…ぐす…」
「しょうがないなぁ……よいしょ…っとぉ!!」
 誠司に下から両足を抱えられ、大きく開かれる。
「あふぅ……」
 後ろに倒れない様、腰を前に突き出し、背中側に体重を預ける。

 ――この格好……

 夏美がしていたのと同じ格好。
「いやぁ……」
 その光景を――羨ましく思っていた自分を――思い出し力なく呟く。
「嫌……なの? ホントに?」
「ひぃいいん!」
 硬い感触が、秘唇を上下になぞっていく。
 ヌルつく粘膜ごと、敏感な突起を擦られ、悶える足に力が入るが、誠司の腕に閉じる事を許されない。
「いや…じゃ……ないですぅ! …ああっ!」
 何度も往復する刺激と、粘着質な水音に何も考えられず、素直に気持ちを言う。
「良く出来まし……たぁっと!!!」
「あぐうぅああああ!!!」
 身体の内を押し広げる感触に、明日香の口から苦痛とも、歓喜とも取れる声が上がった。
 先ほど――指と口、そして舌で――確認した感触は、今、自分の中に入っている。
(すごいぃ! すごい! すごいぃいいい!!!)
 ようやく、ありつけた快楽に、ただ頭の中で『すごい』を繰り返す。
「はぁ……ああぐぅ……」
 お腹の下、お臍まで届いたんじゃないかと思わせる衝撃。
 小さめの明日香の膣をぎゅうぎゅうに押し開き、誠司のモノが最奥を突き上げる。
「ああ……あっ……ぐぅ………すご……ぃいい…」
 飛んでしまった。
 身体の中からの圧力に、歯を食いしばって耐える。
 意識はONとOFFを繰り返し、視界は輪郭を失っていく。

 ――こんなの、知らない。

「はひぃ! ひぃ! ひっ! ひぃ! ふぅうう!! はぁ……」
 壊れた人形のよう、首ががくん、と後ろへ傾く。
 細い喉を震わせ、乱れた呼吸を繰り返す。
(いっ……入れらただけで……ぇええ…イっちゃ……たぁ……)
 ただの、一突き。
 入ってくる感触だけで明日香は――飛んだ。
 お腹に感じる熱い感触は、その大きさと硬さを誇ったままだ。
「ああ……あ…」
「大丈夫?」
 心配そうな誠司の声に、応えようにも全身が弛緩して声も出せない。
(だめぇ……休ませ……ひぃいい!!!)
 ずん、と衝撃が下から昇ってくる。
「あがっ!! はぁあああ!!」
 身体が弾むほどの強い衝撃を受け、浮かんだ腰は、重力と、己の自重で再び最奥へと肉棒を届かせた。
「どう? 気持ちいいでしょ?」
「あああぃいい!!! いぎぃ!! ああぅ! まっ……へぇえええ!!!!」
(気持ちぃ!! 良すぎてぇ!!……快感が……だめぇええええ!!!)
 がくがくと身体を揺さぶられて、長い髪が舞う。
 下からの衝撃に、触られてもいない両胸の膨らみが柔らかそうに震え、それすらも気持ちいい。
 何をされても、気持ちいい――ただ、乱暴な――まるで、性欲の処理をするような――突き上げに悶える明日香。

 乱暴にされてもいい――自分を必要として――気持ち良くなってくれれば……それでいい――のに、

「ひぃいいいいいいん!!」

 ――気持ち良くなっているのは自分の方、いや、良すぎて――

「とめ! とめぇてへぇえ!!! はひぃ!! はぅ! あはぁああ!!」
 媚びを含んだ哀願の声。
 断続的に突き上げられ、気持ち良さに身体をよじると、膣内の当たる場所が変わり、快楽の波は引かずに明日香を次々と絶頂に押し上げる。
(なんでぇ!! こんなっ! はぁああ! 感じぃ……いひぃい!! るのぉお!!!)

 ――止まらない絶頂感。

 全身の神経がむき出しになった――いや、全身が性感帯になったように、触れられている個所がぴりぴりしている。
 脳が焼き切れそうな快楽に、心は限界を告げるが、身体は誠司の動きに合わせて腰を回す。
「ダメぇえ!! もうっ! もぉおお!! イった! イきましたぁああ!!」
 口から涎が零れるのもかまわずに叫ぶ。
「イきまし……ひぎぃいいい!!! がはぁ!! イかうっ! イかひゃないでぇえ!!!」
 泣き咽び、絶頂を拒否するが誠司の腰の動き――イき続ける身体――は止まらない。
「駄目だよ? 明日香ちゃん。 我が侭言っちゃあ? オレはまだイってないし」

 ――笑ってる……

 涙と、絶頂感に視界が歪み、誠司の表情が確認できないが、笑っている――喜んでいるの?――のはわかる。
(わが…まま……っひゃああああぅん!!)
 膣内のモノが更に大きく、硬く膨張した。
 強くなる圧迫感に悶えながらも、明日香は誠司からあたえられる快感を享受するしかない。
「ひゃあぃいい!! わが……まぁま! ごめんなぁさひぃいい!!! ご……めんひゃぁあぃいい!!」
 ばらばらになりそうな衝撃を受けながら、気持ち良くしようと、必死に歯を食いしばって下腹に力を込める。
(うぎぃいいい!! きついいぃいい!!!)
 きゅううう、と膣肉を収縮させ、誠司のモノをまるで押さえつけるよう締め付ける。
 また訪れる絶頂、それでも――
「ひゃああああ!! はぐぅ!! これぇ!! これでぇえ!! いいでっ! ひゃああんっ! いいぃいでぇすかぁあ!!」
「うわぁ!! すげぇ!!」
 聞こえてくる気持ちよさそうな声に嬉しくなるが、隙間なく密着させた膣ヒダを擦られる甘い苦痛に快感は沸き上がり、また絶頂してしまう。
「ぐぅうう!! かはっ!! ああ……いぎぃいいい!!!」
 ちかちかと、目の奥で光が瞬く。
 視界は白く染まり、外からの音も匂いも感じない、ただ、自分が奏でる淫靡なメロディだけが身体の奥から頭の中に鳴り響く。
 絶頂を繰り返し、朦朧としてきた意識の中で明日香はただ、条件反射的に――相手に気持ち良くなってもらおうと――腰を揺らす。
「あがぁ……あはぁ……あぅ……あぅ……ああ……」
 くぐもった――まるで獣のような――声が喉奥から漏れる。
(ひぐぅうううううう! また………ヒったぁあ………)

 止まらない絶頂感に、明日香は何度も何度も――
 
 絶頂して意識を失い――絶頂して意識を取り戻す。

(あはぁ……はぁ、はぁ……あはは……きもひいぃい……ひぃいいい!! またぁああ!!!)

 何が何だか分からない。
 はっきりしているのは、気持ちいい、否、良すぎると言うことだけ。

 より深く、腰を沈めて奥へ、気持ち良くなる場所へと硬い感触をぶつけると、ぎしぎしと、ベッドの軋む耳触りな音が鳴り響き、スプリングの作用で激しく身体が上下に踊る。

 理性ではなく、むき出しにされた本能でどうすれば気持ちいいか、気持ちよく出来るかを感じて明日香はひたすら腰を動かす。

「っう!! ぐうう! 明日香ちゃん!! 出るよ!!!」
 誠司の声。

 その瞬間――
 子宮に叩きつけられる熱い感触は、脳を熱く、焦がし、焼き尽くした。

「あはあぁああああああああぁああ!!!」

 咆哮。
 自分の口から出たとは思えない――絶頂を告げる声。
 下から上へと、そして全身に漂う――愉悦と安堵。

「あぅ……は……ああ……」

 お腹の中に、じんわりと広がる熱い感触を受けながら、明日香は完全に意識を失くした――


 ―*―


「ほら、明日香ちゃん? さっき見たいに残ったのも全部吸い出して」
「ひゃぁい……」
 口内にたった今出されたばかりの精液を含んだまま、力なくうなだれた肉棒の先端にキスをし、割れ目からストローのように残った精液も吸い出す。
 青臭い匂いが鼻腔に溢れるが、もう慣れたのか麻痺して感じない。
 力なく弛緩したまま、口元に添えられた誠司のモノを綺麗にするよう舌を這わせると、口角から少しずつ精液が筋となって流れ落ちる。
「あっ! もったいないから溢さないでね。そのまま、まだ飲まずに……」
「…あふ……ひゃあい」
 舌を動かす度にぴちゃぴちゃと口内で粘液が踊る。

 何回……イっただろう――
 開ききった秘唇から、膣内に出された精液がどろり、と溢れた。

 ――お腹の中に……2回、受け止めた。
 ――最後にお口の中に1回……

 誠司が3回イくまでに、明日香は数えきれないほど絶頂した。
 全身にねっとりとした汗が張り付き重い。
(夏美さんの……ベッド……ぐっしょり……)

 混濁する意識の内でぼんやりと、たわいのない事を考えていると、
「ねぇ……明日香ちゃん。写メとって欲しくない? 今の明日香ちゃんかわいいからさぁ、記録していた方がいいと思うけど?」
(写真……かわいい?)
 口腔に溜まった精液の――全身から、いや、部屋全体に広がる『性』の――匂いに意識を浸食されて、連続した絶頂に頭の中は真っ白だ。
「ひゃひん……とりたいんでふか?」
「いや、オレじゃなくてさぁ、明日香ちゃん……『明日香』がお願いすれば取ってやるよ?」
 誠司の口調が馴れ馴れしいモノに変わる。

 ――まるで、明日香を自分のモノとして扱うように。

(はふ……んっ……)
 私は……この人の『モノ』――
 その被虐的な発想に奥からぞくぞくとしたが込み上げてくる。
 写メなんてどうでもいい――が、誠司がそれを望んでいると何となく感じて――
 力なく身体を震わせ、衝動に身を任せる。
「ひゃい……ひゃひん……お願いひまふ……」
「よし、明日香。こっち向けよ?」
 携帯を構える誠司。
「うん、よく見えるようにお口を開けて?」
「ひゃわい……」
 かしゃ! と、シャッターの落ちる音。
「かわいいねぇ……そうだ、下も見せて…そう、両手で広げて……いいねぇ♪」
 大きく足を開き、自らの指で精液の溢れる秘唇を開く。
「こう……でふかぁ……?」
 精液を波打たせ、もごもごと誠司に問いかける。
「すごいねぇ……ちょっと…全部じゃなくて少しだけお口のを溢して……うん、いいねぇ。あ……ほら、すまいる♪ すまいる♪」
「あぷぅ……ひゃあい……」
 誠司に言われるまま、口内に精液を溜めたまま、自らの秘所を両手で開いた姿で微笑む明日香。

 夢見心地の中でシャッターの音を聞く。

「ほんと……すげぇなぁ。あの薬……『T-フエロモン』だっけ? ネットでしか買えない上に、馬鹿みたいに高かったけど……」

 白濁した意識の底に沈む明日香は、ぽつりと呟いた誠司の言葉を、理解することは出来なかった。

 全身を包む疲労と、満ち足りた充足を胸に、明日香は微笑みながら――誠司を許しを得て――口内に溜まった精液を、ごくりと、聞こえるように音を立てながら嚥下した――


 ―*―

「ほら……明日香、起きなよ?」

 ――あれ?

 聞きなれた、安心する声に明日香は目覚める。
(私……昨日の夜――)
 思い出される――信じられない――昨日の痴態。
 何故? あんなことになったかはわからない、が――
 昨日の自分はおかしかった。

(拓也以外の人に……身体を)
 ぶるり、と身体が震えた。
 取り返しのつかない事をしてしまった――どんな顔をして拓也に会えばいいのだろう?
「私……なんて事を……」
 じわりと、涙が滲む。
「明日香!? どうしたの?」
 慌てたような――拓也の――声。
「へ……!?」
 目の前に、心配そうに覗きこむ――見慣れた――拓也の顔。
 見れば、2人、同じベッドの上。
 しかも、互いに一糸まとわぬ姿だ。
 窓から差し込む陽は高い、もう昼なのだろう。
「たく……や?」
 何故? 今の状況がわからない。自分は確か昨日は――
「おはよう……って、もう昼だけどね」
 拓也のキス――柔らかな感触がおでこに触れる。

 風邪で寝ていた筈の拓也は、随分元気そうで――
 他の男に抱かれていた筈の自分は、拓也と一緒のベッドに寝ている――

「あ……やだ…」
 どろり、とした感触が足の間に広がる。
 もじもじと太ももを擦り寄せる明日香に、拓也が勘付いたのか、
「あ……昨日の……ごめん。明日香が激しくて……終わったら2人ともすぐに寝ちゃったんだっけ……」
 頬を染めながら、拓也が呟く。
「昨日の夜……私……」
 確かに、誰かに抱かれた感触は残っている。 
 しかし、それは――

 ――拓也だった!? じゃあ……あれは……夢?

 思い出すだけで、背筋にぞくぞくとしたモノが走るあの『夜』は夢――だった!?
 生々しさが身体に残っているが――

 ――良かった……

 ほっ、と胸を撫で下ろす。
「ひゃあんっ!」
 手の平が胸の先端に当たり、甘い声を上げてしまう。
「あ……」
 拓也が――じーっと――こちらを見ている。
「なんか……昨日もそうだったけど……明日香、えっちだぁ………もしかして…」
「なっ!?」
 何かを探るような視線。
 夢見? が悪かったせいか、拓也の顔を直視できない。

「明日香……溜まってた?」


 ―*―


 デリカシーの無い彼氏に一発入れて、明日香は相原邸を後にした。
 病み上がりなので心配もあったが、ケイトと美由紀が来たので心配ないだろう。

 ――相変わらず、おモテになることで……

 悪態の一つでも突きたかったが、緊張の糸が切れたのか、全身を覆う虚脱感に後は――不安ではあるが、彼氏を信じて――まかせて先に引き上げた。

 ――ホントに、夢だったのだろうか……

 今でも、身体が火照っている気がする。
(だけど……昨日の夜は…拓也と――)
 うっすらと、拓也に抱かれていた記憶は――ある。
 しかし、それ以上にはっきりと、他の男に抱かれていた夢? の方が思い出せる。
(ううん、あれは夢……私が……拓也以外の人と何て……)
 ぶんぶんと、頭を振って嫌な想像を追い出す。

 ――とにかく、今日は眠ろう。

 お昼すぎまで寝ていた筈なのに、身体は疲労を残している。

 ――そう、あれは悪い夢、ぐっすり寝て忘れなきゃ……ね?

(でも……あんな夢見るなんで……)

 ――もしかして、あんなのが私の密かな願望……とか?

(拓也の言うとおり…私、溜まってたのかなぁ?)
 何しろ、本当に気が狂うかと思う程に感じていたのだ――

 ………でも、気持ち良かった。
 もしかしたら、拓也よりも――って、私何考えてるのよ、あれは夢……夢なんだから……

 疲れているから、こんな馬鹿な事を考えてしまうのだろう。
 とにかく、休もう。拓也はもう、女のコではないのだ、明日からたっぷり甘えればいい。

 明日香は気付かなかったが、ぽろ〜ん♪ と、小物入れの中で、携帯がメールの着信を告げて震えていた。

 登録した憶えのないアドレスから届く画像付きのメール。
 送信者は――

 『夜』がまだ明けていない事を、片桐明日香は――まだ、気付いていない。


<完>