たくやちゃんと赤ちゃんパニック −6


「あっ…ふぁ……や…シャワー…浴びたばっかりなのに……ああァ……!」
「男の前にタオル一枚で出てくるのが悪いんだって」
「そんなこと、言ったって…し…知らなかった…のに……あたしの部屋に…い、いるって……」
 全身に浴びせかけられた大量の精液を丹念に洗い流して自分の部屋へ戻ったあたしは、また別の男の人にベッドへ組み伏せられ、荒れ狂う怒張で狭い肉穴を無理やり押し広げられていた。
 肉棒が三日三晩犯され続けたヴァギナの一番深い場所を突き上げると、いくらシャワーを当てても洗い流せなかった精液の残滓がグチャッグチャッと音を立てては愛液と共に潤滑液となり、最初から乱暴な抽送で捻じ込まれてくるペ○スとあたしのヴァギナとを程よく馴染ませ、湿った肌に汗がにじむほど急速に体の奥から火照った快感が呼び戻されてくる。
 赤ちゃんを連れて家に帰ってきたあたしを待っていたのは、急に旅行に出かけて留守にしている両親と、昔のセフレ全員を順番に呼び出す夏美との果て無きSEX漬けの日々だった。ただでさえ女になれば美少女なのに、今のあたしはバストが三桁を軽く越える巨乳に母乳のおまけつき。どんなに拒んでも、性欲を昂ぶらせて家を訪れる男たちは無理やりにでもあたしの胸を弄び、白いミルクを乳房から絞り飲んでいく。
 花弁は乾く暇がなく、子宮の中には男の人たちの精液が今もまだタップリと残っている……女になってしまった事を後悔するほどに、あたしの肉体は数え切れないアクメを迎えて痙攣を繰り返し、ほとんど会った事の無い男の人たちに囲まれて白く濁った愛液と母乳とを絶頂の中で噴き続けたのだ……
「たまらねェま……他の野郎どもにマワされたとは思えない締まりだ、なっ……とォ!」
「あああああっ!」
 精液の溜まった子宮を押し込まれ、ヒクつく子宮の入り口から熱い液体があふれ出る感触に、背筋が震える。それに苦しみとも喜びとも言えない声を上げてしまうと、膣内に根元まで捻じ込まれたペ○スがビクンッと大きく震え、直後、あたしのヒップへ腰を叩きつけるような荒々しい腰使いで男の人はあたしの膣内を蹂躙し始めた。
 ―――そんなにかき回されたら……声が…赤ちゃんに聞こえるぐらいに大きな声が……ダメ、口から出ちゃうゥ……!
 もう妊娠の可能性に怯えるほどにまともな神経は残っていない。破裂寸前に肉棒が子宮口に触れ、淫猥な水音を響かせても、粘液をまとった腫れ上がった肉ヒダは喜ぶだけ……あたしの意思がどんなに拒んでも、ペ○スをもっと奥へといざなう様な蠢動をするだけだ。
 そして、そんなあたしを延々と辱めてきた言葉が……ただ預かっているだけの「赤ちゃん」だった。
 その言葉を耳元で囁かれるだけで、どんなに意識が混濁していても、あたしの中に恥ずかしさが芽生えてしまう。イき過ぎて滑りがよくなり過ぎたヴァギナがペ○スに絡みつき、それに応じてますます強くなる快感と困惑、そして恥ずかしさの中で、意識を失う事も快感に溺れる事も許されないまま、あたしはよがり狂わされる。
「くっ……あ…もういいでしょ…? あたし…もうこんなの……」
「お前がどんだけ犯されてようと、俺はまだ一発目なんだよ」
「そん…な……」
「へへへ……だったら今、お前の欲しがってるものをくれてやるよ。タップリ集めて俺を満足させてみな!」
 初めて顔をあわせ、録に言葉も交わさなかった男は乱暴にそう言い放つと、肉棒を根元まで埋め込んで、今にも亀頭が押し込まれてしまいそうなほど子宮口に強く押し付けられる。
「あッ、あッ、あッ、いや、こんなの、もう、あたし…い…イヤァァァアアアアアアッ!」
 ベッドに顔を押し付け、何本も肉棒を握らされた手でシーツを握り締める。同じ手で赤ちゃんを抱いていたとは思えない……軽いショックに涙が溢れ、そんな心とは裏腹に、ヴァギナは脈打つ肉棒を締め上げ、射精を促すように収縮する。
「うッ………!」
 ―――あたしの膣内へ、男の精液がぶちまけられる。
「……………!」
 歯を食いしばっても、子宮の中に熱い体液が注ぎこまれるおぞましさと、同時に、胎内が満たされていく狂おしいまでの心地のよさにうつ伏せの身体が何度も何度も打ち震える。
 よほど快感が強かったのだろう、長い射精を終えて引き抜かれたペ○スは、洗い立てのあたしのお尻や背中へ精液の残滓を撃ち放ち、肌がネットリとした体液に汚されてしまう。
「んっ…………はぁ……熱ゥ……いィ………」
「なんだ、終わるの随分早かったじゃないか」
 気だるさに何とか抗い、視線を部屋の入り口へ向ける。そこに立つ夏美の姿を確かめると、全裸の胸に抱く赤ちゃんの姿に残った全ての意識が集中してしまう。
「こいつがたくやのおっぱいを欲しいってさ。せっかくミルクまで買ってきたって言うのに、そっちはちっとも飲みゃしない」
「う…ん……わかっ…た……ちょっと待って…すぐ起きるから……」
 もう北ノ都学園に向かう時間までそうないけれど、母乳を上げるぐらいに時間と体力ならある。体を起こし、股間から精液を溢れさせる義姉の姿に驚きながらも、手を伸ばして赤ちゃんを受け取ろうとして……いきなり背後から男の人に抱きすくめられ、今さっき膣内射精されて痙攣もまだ収まっていないヴァギナの入り口へ、ペ○スの先端が押し当てられる。
「あッ、アアアアアッ!」
 濡れそぼり、湯気が立ちそうなほど発情しきっているヴァギナにはペ○スを拒むだけの力が無い。キュッと窄まった膣口で一瞬だけ男の人の動きは止まったものの、強引に亀頭を押し込まれれた後はあたしの腰が男の人の股間の上へと座らされてしまう、自分の体重でペ○スを自分の膣内へ深々と貫かせてしまう。
「やめっ……赤ちゃんの前で……ンあァ!!!」
 小刻みな律動で敏感になっている子宮口の周辺をかき回しながら、男の手はあたしの乳房をゴムまりのように揉みしだく。大きな手の動きにあわせて揺れ動く乳首からは搾り出された母乳が痙攣に合わせるように赤ちゃんへ向けて飛び散ると、あたしのしている行為の意味を知らない赤ちゃんは無邪気な笑顔を浮かべ、こちらへ手を伸ばす。
「ふゥ……んッ……おねが…い…後で何でもするから……少しの間だけ…あ…あむぅうぅぅぅ………!」
 せめて声を出すまいと自分の指を咥えるけれど、太い肉棒が子宮をすりつぶすように動くたびに快感の大波が襲いかかってくる。広げられ捩れている膣口からは白く濁った体液が押し出され、細かく速い突き上げに膣壁がゴリゴリと擦られると、赤ちゃんを前にしているというのに快感と興奮はより一層と明確になり、乳首とクリの三つの突起がますます膨らんだかのように強く疼いてしまう。
「そのままたくやの胸を押さえてなよ。せっかく楽しんでるのを邪魔しちゃ悪いから、あたしが飲ませてやるよ」
「義姉さん…やめっ……こ、こないで……」
 自分の使っていた部屋で楽しんだ名残を太股の付け根から滴らせ、汗ばむ肌を隠そうともせずに夏美が近づいてくる。そして一向にやめてもらえない突き上げに震えるあたしの乳房へ赤ちゃんを差し出すと、目の前で母乳を滴らせながら揺れる乳首へ赤ちゃんが口を―――
「ンゥウウウウウッ!」
 咥えた指に歯を突きたてながら、あたしの首が大きく仰け反る。蜜穴を肉茎に擦り上げられながらだというのに、赤ちゃんに胸を吸われ始めると、ただそれだけであたしは喜びを感じてしまい、膨れ上がった幸福感が快感を幾重にも倍増させる。ヴァギナが収縮した分だけ肉棒から受ける圧迫感はさらに増し、下から上へ重たい衝撃が打ち上げられるたびに、赤ちゃんがむせ返りそうなほど大量の母乳が乳首の内側を勢いよく突き抜けていく。
「ダ…メ……そんなに吸っちゃ……ん…ぁ……はぁあぁぁぁ………!」
 口を開いた途端、自分では絶叫が迸るかと思っていたのに……漏れこぼれたのは蕩けるような甘い声だった。うなじに荒い息を吐きかける男に繰り返し深いつきこみをされているというのに、激しい歯型の突いた指でそのまま赤ちゃんの頭を優しく撫で、もっと…と夢心地の中で吸乳をねだってしまう。
「あたし……やだ……赤ちゃんに…感じる……こんなの…ダメって…ああ、はぁ、胸が…胸が震えるぅぅぅ……♪」
 唾液で濡れた唇が意思とは無関係に笑みを形作る。どんなに辱めを受けても、この三日であたしは赤ちゃんに胸を吸われるだけで喜ぶようになってしまい、噴乳すればするほど動きが活発になる乳腺が乳房をますます張り詰めさせていく。そしてそんな乳房を背後から伸びる手が容赦なく揉みしだくと、見るからに先ほどより噴出量が増した母乳が義姉の身体目掛けて勢いよく飛び散り、精液を浴びせかけるのにも似た興奮を覚えながら、うっとりとした表情を浮かべてしまう。
「い…いい……いいよ……いっぱい…飲んで……好きなだけ…赤ちゃんが飲みたいだけ……いっぱい…飲んでいいからね……あ、あああッッ!!!」
 ――う、後ろの人が……急に乱暴に……
 あたしの意識が赤ちゃんにばかり向いていることに怒りを覚えた男の人は、柔らかいお持ちのように膨らみ、張り詰めたあたしの胸に指を食い込ませる。乳房を内側から刺激する指は腫れ上がった乳腺に容易く触れ、雷に打たれたような刺激が乳房中に駆け巡る。そして激しくなればなるほどに、あたしの股間から響くグチュグチュと言う音が窓を閉め切った部屋の中に響き渡る。
 けれど、赤ちゃんに吸われている胸だけは揺れが小さい。その小さな口からは信じられないような吸引であたしの乳首を咥えて離さず、今にも折れそうな細い喉をコクコクと鳴らして、あたしの胸から放たれる母乳を飲み干していく。唾液と混ざり合った母乳が唇からトロッとこぼれ、何滴も下に落としながらそれでも口を離さずに、あたしの胸に溜まったミルクを吸いだしていく。
「あ…あぁ……♪」
「ふふ、いい顔してるよ、たくや。母親は母親でも子供に手を出されて悦んでる淫母ってところだよ、今のあんた」
 ―――それでもいい。この気持ちよさを味わえるなら……いくら赤ちゃんに胸を吸われたって……♪
 母乳を赤ちゃんに吸ってもらうたびに込み上げる喜び……それが母性なのか、それとも別の興奮なのかは分からない。けれど鼻から抜ける様な喘ぎ声を漏らし、おっぱいをたゆませながら突き上げられると、男の人に抱かれるだけでは到底味わえない恍惚感身も心も満たされてしまう。
「あ…ああぁ……いっぱい、出ちゃうぅ…だから、いっぱい、いっぱい飲んで、ああ、あああぁっ!!!」
 下からも見上げられる男の人の手にあわせ、あたしも両手を自分の胸の上側に当て、上下から挟みこむように乳房を圧迫する。感じて、ますます濃厚になったミルクがいきなり大量に溢れて赤ちゃんも軽くむせたけれど、口の中のミルクがなくなると小さな下であたしの乳首を刺激して、また母乳を溢れさせる。――そうしていつしか、あたしの胸から下は溢れた母乳でベトベトに汚れ、周囲に漂う甘いミルクの香りに包まれながら、連続して子宮へ叩きつけられる亀頭をうねるヴァギナで締め付けてしまう。
「あああっ、胸も、おマ○コも、気持ちよくて、あたし、もう、頭、おかしいの、んっ、くふぁ、ああ、ふっ……あ、ああああああああああっ! イッ、イクゥ、イクゥウウウウウウッ!!!」
 自分からお尻を男の人の体へ擦りつけ、亀頭を膣の一番奥深くで食い締めた瞬間、最後の一突きで子宮口へめり込んだ亀頭から濃厚な精液ミルクが撃ち放たれた。背中を男の人の胸と密着させ、柔らかい胸に赤ちゃんに顔をうずめさせながら、あたしの膣は注ぎ込まれたミルクと一滴も逃すまいとギュッ…と収縮してペ○スを咥えて離さない……まるで、乳首をしゃぶる赤ちゃんの口みたいに。
「あたしの……お腹に……溢れてる………いっぱい…んッ……熱い…ミルクが………♪」
 肉壁の収縮を受け、ドピュ、ドピュ、と断続的に射精が続く。あたしは全身を激しく硬直させ、その全てを子宮で受け止めきると、義姉と赤ちゃんが見ている前で大きく息を吐き出した。
「は…ぁぁぁ………」
 二回連続であたしの中に放ったペ○スもさすがに限界だ。あたしの体に抱き付いて乱れた呼吸を繰り返していた男性はそのまま仰向けにベッドへ倒れこみ、あたしの膣内で脈動を繰り返していたペ○スも精液を搾り取られあっという間に小さくなっていく。
「たくや、あんた激しすぎよ。そいつはあたしが次に楽しもうと思ってたのに」
「そんな…事…言われたって……」
 ――あたしも、学園に行かなきゃいけないのに身体が言う事を聞かない。赤ちゃんが胸から口を離した途端、男の人の隣りへと倒れこむと、ヒクヒクと蠢く膣口から垂れ落ちる精液をどうしようも出来ないほどの脱力感に襲われ、グッタリと動けなくなってしまう。
「ったく、しょうがない。ほら、車で送ってやるから、もう一回シャワー浴びてきな。ザーメン臭いヤツをあたしの車の助手席には乗せないからね」
 ……そうなるようにしたのは…義姉さんのくせに………
 けれど絶頂の余韻が抜けきらないままではベッドから動くことなんて出来ない。もうしばらく休憩をしてから……と思っていると、先に準備をしに部屋を出た夏美にベッドの上へ取り残された赤ちゃんが、すぐ傍にあるあたしの顔へ手を伸ばす。
「だぁ…だぁ……♪」
「んっ……」
 小さな手があたしの唇に触れる。……それがなんとなく親愛の情のように感じられ、じゃあお返しにと、あたしは首を伸ばし、赤ちゃんの唇へ触れるようなキスをする。
「今日でお別れなんだね……」
「あぶぅ」
「寂しくなるけど……んんゥ!」
 ――やっ、後ろの男の人……まだする気なの!?
 よほどあたしが赤ちゃんにばかり意識を向けているのが気に食わないのだろう、二回もしたばかりだと言うのに、あたしのうなじに顔をうずめて右手を胸へ這わせ、白濁液を溢れさせるヴァギナを左手でまさぐり始める。
「ダメ、もうあたしは……んっ、んぁ……ぁあああ………!」
 敏感な場所を巧みな指使いで刺激されると、ヒクッと収縮した膣内から生暖かい精液があふれ出し、反り返りそうなほど勃起している乳首からも白いミルクが滲み出してくる。
 ――もう……こんな生活、ヤダァ!
 出来る事なら赤ちゃんと二人っきりがよかったのにィ!……と今更言っても始まらないような事を心の中で叫びながら、あたしはまたしても赤ちゃんの目の前で甘く切なく鼻を鳴らし始めていた―――




「………なんて言うか……ご愁傷様、相原くん」
「なんて倫理観の欠如した……ま、まあ、この三日、一度も顔を見せなかったことは許してあげましょう」
 ―――シクシクシクシクシク……ゴメン、二人とも。ぜんぜん協力できなくて……
 大幅に遅刻して北ノ都学園のゼミ室に辿り着くものの、待ち構えていた麻美先輩と千里の二人がかりで問い詰められ、あたしは泣く泣く夏美にされた肉欲地獄の赤裸々体験を告白させられる事に……が、当然そんな事は信じてもらえるはずもなく、仕方ないから次第に克明に、そして鮮明に、机に突っ伏して泣きながらドロドロでグチョグチョの三日間を説明しなければならなくなり、話し終えた今、麻美先輩はしきりに太股をもぞもぞと擦り合わせ、あの千里ですか顔を赤くして俯き気味だ。
「………それで、薬の方はどうなったんですか? まさか、一日も赤ちゃん連れて手伝いにこなかったから、データがどれなくて、やっぱりダメでしたとか!?」
「先輩、どうしてそう悪いほうばかりに考えるんですか。ちゃんと薬は完成しています。ほら、赤ちゃんにも飲み易いようにと、これこの通り」
 あたしと顔を会わせようとしてくれない麻美先輩に代わり、千里は液体状の薬の入った哺乳瓶を差し出す。……う〜む、あまり飲みたくない原色形の色なのは相変わらずか。赤ちゃん、飲むかな?
「はい、それじゃこれ飲んで早く男の子に戻りましょうね。今日にはお父さんとお母さんが迎えに来てくれるから……」
 そう、これでこの子とはさよならだ。もう少しだけ時間があるとは言え、別れの時間が迫っている事を考えると、つい言葉が湿っぽくなってしまう。
「あぶぅ……」
 あたしが哺乳瓶のちくび――先端の柔らかい部分を“ちくび”と言うらしい――を差し出すと、少しだけ戸惑いながら、赤ちゃんはそれを口に含み、インクのような性転換の薬を吸いだしていく。
 そして……変化は何も現われなかった
「―――千里、ちょっと聞いていい?」
「いえ、言わなくても質問は予測できているんですが……おかしいですね。もう十五分経過しましたが男の子に戻る気配が全然……」
 あたしが最初に女の子になったときのように、ゆっくり効いて来るのかな〜…とも思っていたが、どうもそうでは無いらしい。確認のため、赤ちゃんのオムツを剥いでみるけれど、股間には物凄く小さな縦筋があるだけで、チンもタマも影も形も見えはしない。いつまでたっても縦筋は縦筋のままだった。
「な、なんで!? これじゃまるで、こないだあたしが女になった時とまるっきり一緒じゃない!」
「そんなはずはありません! だってこの幼児はどう考えてもこれが最初の性転換のはずです。そんな子が先輩と同じような抗体を持つ可能性、あるあずないんです!」
「………そうとも言えないわよ」
 顔を上げた麻美先輩は、赤ちゃんの口内から唾液と粘膜を採取して、あわててゼミ室を飛び出していく。
 そしてさらに二十分後……
「言いにくいんだけど……結果は黒。このこの唾液から相原くんと同じ性転換抗体が見つかったわ……」
 と、本来なら言いにくい事のはずなのに、麻美先輩はどこか違和感のある笑みでそう答えた。
「先輩……もしかして、原因わかったんですか?」
「え〜と……分かったって言うよりも、まだ推測の段階でしかないんだけど〜……言わなきゃダメ?」
「言わなきゃどうしようもないじゃないですか! あたしに出来ることがあったらなんでもしますから、とりあえず原因をはっきりさせてください!」
「でも済んだことだし、世の中にはどうしようもないことってあるものだし」
「麻美先輩!」
 あたしが強く問い詰めると、視線を逸らしてとぼけぬけようとしていた麻美先輩が小さくため息を突く。そして、まだタップリ母乳の詰まっている即席ホルスタインのあたしの胸を指でツンッと突っついた。
「――原因はこれ。相原くんのおっぱい」
「……は?」
「だからね、相原くんの母乳に含まれていた抗体を摂取した赤ちゃんにも、やっぱり抗体が出来たわけで……母乳ってね、汗とかと一緒で血液が変化したものなのよ。まさか天才の私も相原くんの抗体が映っちゃうって考えもしなくって……えへっ♪」
「え……「えへッ♪」じゃないですってぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!!! んじゃなんですか? あたしが母乳をあげたから赤ちゃんが元に戻れないって、そう言うことですか!?」
「はっきり言うとそうかな〜……うん、私は悪く無いわよ。相原くんが母乳じゃなくてミルクを買ってくればよかったんだから」
 くぬぅ! この期に及んでいい訳ですか!? だったらあたしも言わせて貰おうじゃないの!
「面白半分で母乳が出るようにしたのは麻美先輩じゃないですか! そもそも、爆弾を爆発させてミルクとか哺乳瓶とかダメにしたのは千里だし!」
「わ、私は関係ありません。悪いのは佐藤先輩と相原先輩の二人だけです!」
「一人だけ逃げようなんて、そうはいかないわよ。あなただって相原くんが授乳してるところをデータだって言って記録してたじゃない。同罪よ同罪。それにあの薬を作ったのは私じゃないし」
「その出所の怪しい薬が原因でしょ! そんな薬を最初に持ち出した麻美先輩も十分責任重大です!」
「それよりこの子はどうするんです? ご両親はともかく、五条先生が戻ってくる時間までには何とかしないと」
「そ、そーですよ、先輩。急いで男に戻る薬第二弾を!」
「簡単に言うけど簡単には作れないんだから。せめて一日は待ってもらわないと……」
「ふっふっふ……ここで私のクイックレボリューションミニマムエクスプロージョンの出番ですね!?」
「名前の後ろに“爆発”なんてつけてる危ないもんを赤ちゃんに使えるはず無いでしょうが! それより他に何とか誤魔化せる薬は無いんですか!?」
「ええっと……ヒゲの生える薬とか若返る薬とか骨が丈夫になる薬とかならあるけど……」
「全部ダメじゃないですかぁぁぁ!!!」
「わ、若返る薬とかはかなりスゴいんだから! 一時的だけどちゃんと赤ちゃんにまでなっちゃうし、後は相原くんで人体実験するだけ!」
「あたしたちの誰が赤ちゃんになっても女の子じゃないですか!」
「待ってください! 相原先輩を人体実験するのは私の方が先ですよ。この機会に試したいものがいくつもあるんですから」
「先輩、千里、二人して人体実験とか物騒なこと言わないでよ〜〜〜!!!」
 うああああっ! こうして言いあってても時間が過ぎて行くだけで、赤ちゃんは全然男の子に戻ってくれないし、留美先生が帰ってくる時間が刻一刻と迫ってくるぅ!
 こうなればもう、留美先生に怒られるのを覚悟で全部説明した方がいいかな……と、一番正しくて一番無難な正解が頭によぎったその直後―――ゼミ室の扉が開いた。
「相原せんぱ〜い♪ もう、三日も私を放ったらかしにして、ひどいですよォ!」
「こ……弘二?」
 ―――ああ、そういえば。弘二を女の子にしたままで放置してたんだっけ。どうせこいつならいつでも男に戻せるんだし、女の子になってたら研究の邪魔したり、あたしに面倒かけたりしないだろうし。
 でもまぁ、久しぶりに見たら、女の子になっている弘二はこれはこれでかわいい。けど今は、赤ちゃんを元に戻せ無い罪を誰に押し付けるか……もとい、どうやって元に戻すかと言う議論で神経が昂ぶっているのだ。そんなところへ能天気な弘二が乱入してきたら―――
「………待てよ」
 ふと、閃いた。
「千里、今、爆弾は持ってる?」
「クイックレボリューションミニマムエクスプロージョンと言ってください。威力を2.27倍に強化した最新型ですが……それなら肌身離さずここに」
 同じ事を思いついたのだろう、白衣の内側からパイナップル型手榴弾……もとい、性転換爆弾を取り出す千里。
「先輩、若返りの薬の人体実験って、あたしじゃなくてもいいんですよね?」
「ん〜…相原くんを赤ちゃんにして抱っこしてみたかったんだけど、しょうがないわね……すぐに研究室から持ってくるわ」
 麻美先輩も同様だ。あたしの言わんとしている事を理解してくれている。
 ―――で、この場で理解していないのは、憐れな子羊一匹だけ。
「と言うわけで、弘二」
「は、はい?」
 弘二の方を両手でつかみ、何故か赤らめた顔を真正面から覗き込む。
「………あんた、赤ちゃんの身代わりになりなさい」
「え……?」
「何も言わなくていい。あたしとエッチがしたいなら後払いでさせてあげる。だから今は、とにもかくにも赤ん坊になって身代わりになりなさい、て言うか、なれ!」
「あの、話の内容がよく分からないんですけど……」
「赤ん坊になるあんたに理解は求めてない! 千里、やっちゃいなさい!」
「わかりました♪ 最新型ですからあっという間ですよ〜♪」
 そういえば爆発させないと性転換できないのか?……と言う突っ込みはさておき、爆発力のアップした手榴弾片手にニコニコ笑顔で千里は弘二を引っ張って行く。
「よし、これにて万事解決!」
「一番滅茶苦茶な選択肢を選んだような気もするけどね」
 麻美先輩の突っ込みは気にしない。
 何しろ元をただせば、弘二が最初に赤ちゃんを見て怒り出したりしなければ、ここまで騒動が大きくならずにすんだのだ。これも自業自得として諦めてもらうしか無いだろう。………ま、その代わり、あたしもサービスだけはしてあげないと。



 そして数分後、学園の裏庭の方から盛大な爆発音が聞こえてきたけれど……とりあえずあたしは耳を塞いで聞かなかったことにした。


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