第2話 帰宅


「お疲れ様です、はるかお嬢様」  運転席に座っているめぐみさん。私が車内に入ると同時に、そう挨拶してきた。 「はぁ・・・・・・まさか今日に限ってマラソンがあるなんて・・・・・・本当に疲れました ・・・・・・」 「それは大変でしたね」  そう言って車を進め始めるめぐみさん。相変わらず凄く綺麗な人・・・・・・ 「はぁ・・・・・・今日は早く帰ってお風呂に入りたいな・・・・・・」 「でしたら、今日はお屋敷に直行という事でよろしいですか?」 「それでよろしいです・・・・・・」  心底疲れきった声でそう返事をする。だって、今日のマラソン、5キロも走らせる んだもの・・・・・・ 「それにしても、相変わらず綺麗ですね? めぐみさん」 「え? そうですか?」 「私も、めぐみさんみたいに良いプロポーションだった良いのに・・・・・・」 「はるかお嬢様も十分美しいとは思いますが・・・・・・」 「ん?・・・・・・でも、めぐみさんみたいに大人っぽくないし・・・・・・」  実際、めぐみさんは凄くスタイルが良いし、落ち着きがあって、才色兼備っていう 感じの人。それに引き換え・・・・・・ 「めぐみさんは綺麗って言ってくれるけど・・・・・・やっぱり私はまだまだ子供っぽいし なぁ・・・・・・」 「あら? そんなこと無いですよ?」 「まぁ、実際16歳だから子供なんだけどね」  正確には大人と子供の中間だって自負してるのだけど。 「でも、私がはるか様に仕えるようになって2年経ちますが、お会いした時と比べれ ば遥かに女性らしくなられましたよ?」  そりゃあ、その頃はまだ中学生なわけだし、子供っぽかったのは解るけど。 「でも、やっぱりめぐみさんって綺麗だと思う。女の私から見ても、凄く魅力的だし ・・・・・・何かコツでもあるの?」 「ん?・・・・・・どうでしょう? 特に何かやっているわけではないのですが・・・・・・」 「そうなんだ・・・・・・やっぱり、元が良いと違うんだ・・・・・・」 「元の良さなら、はるかお嬢様の方が良いと思いますけど・・・・・・」 「またぁ、お世辞言って」 「お世辞じゃありませんよ」 「だったら、綺麗になる方法、教えて」  だって、絶対に何もしてないなんていう風には見えない。それぐらい、めぐみさん は綺麗だから。 「ん?・・・・・・どうなんですかねぇ? まぁ、強いて言うなら、良き人との付き合いが あるから・・・・・・ですかね?」 「え?」  ウソ? ウソウソウソ!? めぐみさん、付き合ってる人いるの!? 「めぐみさんいつの間に!?」 「あら? お屋敷に仕える前からですけど?」 「あ、そうなんだ・・・・・・」  そ、そうよね、これだけ綺麗なんだし、恋人がいてもおかしくないよね・・・・・ 「はるかお嬢様はそういったお相手はおられないのですか?」 「う?・・・・・・めぐみさんイジワルだ」  私の通う学校は、幼稚園から大学までの一貫制である。が、それだけなら全く問題 が無いけれど、問題は女子高だという事・・・・・・ 「男の人と接触するなんて、お父様やお母様の交流の場ぐらいだし」 「その中で・・・・・・というのは?」 「色目ばっかり使ってくる、性根無しの人ばかりだからバツ」 「では、どういった方が好みなのですか?」 「え? 言わないとダメ?」 「嫌なら別に構いませんが・・・・・・」  どうしよう・・・・・・でも、めぐみさん、自分に彼氏がいるっていうのを教えてくれた し・・・・・・めぐみさんだけっていうのも・・・・・・ 「んと・・・・・・芯がしっかりしていて、チャラチャラしてない。かといってがり勉とか スポーツマンとかじゃなくても良くて・・・・・・とにかく、そんな人が理想・・・・・・か な?」  自分で言ってて良く解らないよ? まぁ、いっか。 「はるかお嬢様って面食いなのか、そうじゃないのか良く解りませんね?」  クスリと笑ってそう呟くめぐみさん。それって誉め言葉? 「でも、とりあえず今は家のお風呂が恋しいなぁ・・・・・・」  色気も何もあったものじゃないけど。 「では、急ぎますね?」 「お願いします」  そう言って身体を横に倒す。いつもだったらここで外堂さんが怒ってくるんだけ ど、いないからゆったりしよう。 「あら? はしたないですよ? はるかお嬢様」  また、クスリと笑ってそんな事を言うめぐみさん。一応、外堂さんに代わっての発 言だけど、めぐみさんって優しいから、キツク言うような事はない。ホント、外堂さ んがいなくて良かった・・・・・・ 「は?い」  で、そんなめぐみさんに、横になったまま返事をする。これも外堂さんに怒られそ う。あ、因みに外堂さん、何か用があるとかで今日はお屋敷に居残ってるらしい。何 をしてるのかしら? 「はぁ・・・・・・ホント今日は疲れた・・・・・・」  早くお風呂・・・・・・入りたい・・・・・・


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