プログラム75「最後の生贄(前編)」


 プログラム75 第3の恥辱(前編) 「や・・・だ・・・擦れちゃう・・・」  部屋を出て、通路を歩いていると、高いピンヒールの影響でバランスがとれず、か つ、見えないように工夫して歩こうとすると、下着の食い込みが私の恥部に擦れて、 痛みに似た何かが走った。 「こんな・・・恥知らずな格好、やっぱり止めとけば良かった」  こう見えても貞操概念は強いほうだ。と言うより少し潔癖すぎると自分でも自覚し ている。だから今までこういった派手な格好をした事が無い。目立つのが嫌いだと言 うのもあるが、一応、女らしい羞恥心も持っている。でも、二人が自立するまで色恋 沙汰に首を突っ込まないと決めた以上、こんな事でいきなり屈したりしない。しかし ・・・ 「犯人の目的は本当に私なの? それ以前に警察は・・・?」  富豪の令嬢二人が行方不明になったのだ。TVや各種報道にも色々話題が溢れてい るはずだ。なのに、今日まで何事も無いかのように時が過ぎた。何かがおかしい・・ ・ 「く・・・だめ・・・」  そんな考えを浮かべて気を紛らわせようとするが、下着が擦れる感覚につい気が いってしまう。まったく、一体誰がこんな物を? 「メイド長、そのような格好で一体どこへ?」 「え?」  突然話し掛けられた。下半身に気をやりすぎて周りに気を配るのを忘れてた。 「これは・・・その・・・」  話し掛けてきたのは、旦那さまの付き人の女性だった。 「すごく大胆な格好ですね? これからデートですか?」 「これは、その・・・違うんです。色々と事情があって・・・」  この付き人の女性は凄く美人で、同性の私ですら見入ってしまいそうになる。それ に、秘書としても有能らしく、色々と自由が利くと聞いている。全く、羨ましい限り だ。 「事情・・・ですか?」  怪訝な表情と視線で私の身体を舐め回す秘書の女性。そういえば、この人の名前を よく知らない。 「はい・・・ですから・・・その・・・失礼します!!」  そう言ってダッシュでその場から立ち去ろうとする。これ以上こんな姿を見られる のは辛い。 「きゃっ!?」  ドスンッ!!  しかし、慣れないヒールを履いているものだから、脚が縺れ、こけてしまった。 「あら? 下着も随分艶っぽいのを着けているのね? ふふふ、男の人が喜びそうな いい下着」  どういう意味? この人何を言ってる・・・? 「あぁ・・・見ないで下さい!!」  咄嗟にスカートを抑える。見られたくないものを見られてしまった・・・ 「あの・・・この事は他の誰にも・・・」 「えぇ、言わないでおきます。さすがに恥ずかしいでしょうしね」 「す、すみません・・・」  衣服を整えながら、秘書の女性にお願いする。さすがにこんな姿をしていたと言う 噂を広げられたくない。何しろ、各メイド達にも男嫌いの、何と言うか宝塚の男性役 のような存在として見られてきたのだ。それを実は、恥知らずな格好をする変態など という誤解を招きたくない。けど、黙っていてくれると聞いて少し安心した・・・ 「それでは、先を急ぎますので・・・」 「えぇ。それじゃあね・・・」  それだけ話すと、踵を返して下萄のいる場所へと向かった。 「はやく目覚めるといいわね・・・」 「え?」 「いえ、何でもないの」 「そうですか?」  一瞬、秘書の女性が何か呟いたようだが、気のせいだったか? 「ふふふ・・・」  彼女は意味深な笑みを零し、踵を返してその場を去っていった。 「何だったの? ・・・それより早くしないと・・・」  でないと、また、いつ誰に見られるか・・・ 「行こう・・・」  そう言って玄関の方へと移動していった・・・ 「おやおや? 随分と艶っぽい格好をされてきましたねぇ? 犯人が見たらさぞかし 喜ぶでしょうねぇ」  結局、秘書の女性意外は誰とも遭わずに済んだ。だが、玄関に着くなり、下萄は淫 猥な表情を浮かべて指摘してきた。 「貴様を喜ばせるために着たんじゃないぞ」 「くくく、解っていますよ」 「何がおかしい?」  私の姿を見てから、ニヤニヤと意味深な笑みを浮かべ続ける下萄。一体何を考えて いる? 「別に何でもありませんよ。それよりも早速案内しますので車に乗ってください」  そう言って助手席側のドアを開ける。 「全く。なぜ貴様などと一緒に・・・」  私は文句を言いながら助手席に座った。 「あ、そうそう。キチンとシートベルトを締めて下さいね?」 「そんな事、言われなくてもわかってる!!」  声を荒げて答える私。 「おー怖」  下萄がおどけた顔をして言う。こいつ、私を侮辱しているのか? 「いいから早くしろ!! こうしてる間にもさやかお嬢様たちが・・・」 「くくく、解りましたよ・・・」  その言葉と同時にエンジンがかかる。 「さぁ、いきますよ」  発進する車の中、私は呟いた。 「二人とも、無事でいて・・・」  私自身に降りかかる恥辱に気付かずに・・・


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