プログラム74「狙われし第3の牝」


 プログラム74 最後の獲物 「あれから2週間。二人とも無事なのか・・・?」  お屋敷の窓を拭きながら、今日何度目かの溜息をつく。さやかお嬢様とかすみお嬢 様が行方不明になってから2週間、一向に情報が入ってこない。槻城家の財力を使え ばもっとはやく見つけ出すことができるはずなのに・・・ 「まったく、家の諜報部の連中も役に立たないな・・・」  しかし、一体どこに行ってしまったのかしら、二人とも。誘拐されたのなら身代金 の要求もある。けど、今の所それといった話は聞かない。誰かに監禁されたのかとい えば、かなりの広範囲で、それらしいところを調べたらしいけど、今だに見つかって いないし・・・ 「海外に連れ去られた?」  そうなったらそうなったでFBI等の各国の諜報部が動いてくれているはず。しか し、連中が動いているという話も聞かない。一体何が起こっている? 「二人とも、無事ならいいんだけど・・・」  そして今日何度目かの溜息をつく・・・ 「旦那さま、お呼びでしょうか?」  あれから程なくして、旦那さまから呼び出しを受けた。なにか新しい情報でも入っ たのかしら? 「おぉ、かえでくん、来てくれたね」 「はぁ・・・」  何か、いつもより明るく振舞われている旦那さま。何かいいことでもあったのだろ うか? 「実はね、さやか達の居場所が判明したという情報が入ってね。二人を解放する条件 として、かえで君を何故か要求してきたのだよ」 「私を・・・ですか?」  私に対する私怨? だったら何故今更? 「そこで・・・すまないがかえで君にそこまで赴いてもらいたいのだが・・・」  旦那さまが申し訳なさそうに尋ねてくる。まぁ、向こうに要求が私だというのだか ら仕方がないが、何故こんなにも明るい表情をされるのだ? 私はどうなってもいい ということか? 「はい、構いませんが」 「そうかね、いや、すまないねぇ。何とか君自身の安全を確保出来るよう、最善のこ とはするからね」 「はぁ、ありがとうございます」  やはりどこか変な気がする。何かがおかしい・・・ 「では、早速現地に赴いてもらうがいいかね?」 「え? 今からですか?」 「そうだ。何しろ犯人の素性もはっきり判っていない。遅くなってさやか達の身に何 かあったら大変だ」  それはそうだろう。だが何故? 今まで家族同様に扱ってくださった旦那さまが 軽々と私を身売りに出すような発言をするんだ? 所詮、偽りの家族だからだろう か? 「そういうことでしたら早速準備に取り掛かります」  しかし、ここはあえてその話題に触れるのは止めておこう。今はさやかお嬢様たち を助けるのが第一優先だ。 「うむ、よろしく頼む。案内は下萄がやってくれる。この際だから少しは仲良くなり たまえ」 「え? はぁ・・・」  私と下萄は、まさに犬猿の仲だ。いつも、何かと絡んでくるし、偉そうな態度ばか りしていて、ろくに仕事もしようとしない。その上あいつのあのいやらしく浅ましい 視線にはいつも苦しめられている。しかも、私だけならまだしも、さやかお嬢様や、 まだ○学生のかすみお嬢様にまでその様な視線を送るのだ。まったく、とんでもない 男だ・・・ 「かえで君? どうかしたかね?」  下萄と同行すると聞いて苛立っていたんだろう。私の顔色を見て旦那さまが心配そ うに訪ねてきた。 「あ、いえ、何でもないです。早速準備に取り掛かります。それでは・・・」  そう言って部屋を出る私。と、そこには・・・ 「下萄・・・」  怒りを込めた声で呟く私。そこには下萄が、奴が立っていた。 「くくく、かえでメイド長殿。移動の間だけとはいえ、仲良くしましょうねぇ」 「だ、誰が!!」  貴様などと仲良くするものか!! 「おお怖。わたくしは外でお待ちしておりますので、なるべく早く準備してくださ い」 「くっ・・・」 「そうそう、もっと色っぽい下着を着けた方が犯人も喜びますよ」 「うるさい!! 黙れ!!」 「くくく、まぁ、それでさやかお嬢様の身になにかあったらあなたの責任ですが ねぇ。それでは・・・」 「何をわけのわからない事を・・・」  私は下萄を一瞥して自分の部屋に戻った。 (もっと色っぽい下着を着けた方が犯人も喜びますよ) 「何をバカな事を・・・。それじゃあまるで、犯人の目的が私の身体みたいじゃない か」 (それでさやかお嬢様の身になにかあったらあなたの責任ですがねぇ) 「でも、それでさやかお嬢様たちに何かあったら・・・」  私は衣服を着替えながら、ひとり葛藤していた。クソッ、これも下萄のせいだ。 「ここは・・・あいつの言う通りにするか・・・」  二人の身に何かあったら、旦那さまに申し訳が立たない。今日まで、私の一族を雇 用してくださった恩に報いる為だ、我慢しよう。 「でも、一体どんなのがいいのかしら?」  下着を取り出して色々選ぶ。 「・・・ダメだ。同じようなやつしか無い」  普段から下着とかには拘らないから、同じメーカーの同じ色、味も素っ気もない、 白色の物ばかりある。 「どうしよう・・・あれ?」  悩んでいると、視線に紙袋が入った。・・・こんなものあったかしら? 「何でこんなものが?」  そう言いながら、中身をあさる。一応、危険物ではない。というよりもこの手触り は多分・・・ 「下着? 何故こんな所に?」  中身を出してみる。それは、真っ赤な色で、TバックTフロントと言われる極小の パンティー、そして同じ色のガータベルト、さらにハーフカップ以下のブラジャーま で入っていた。 「一体誰がこんなものを?」  見てるだけで恥ずかしくなりそうな、いやらしくも色っぽい下着に、私は顔を真っ 赤にして考えた。私はこういった事にはかなり疎いのだ、はっきり言って。 「まさか下萄?」  奴ならやりかねない。けど、もしあいつの言う通りのことが起こった場合のことも ある。この際、嫌がってはいられない。とりあえず着るとしよう。 「な、なんか凄く喰い込んでくる・・・」  真っ赤なパンティーを穿いてみたが、あそこの部分に異様に食い込む。しかも、陰 毛が丸見えだ。なんていやらしい・・・ 「これがブラジャー? トップが丸見えじゃない」  今度はブラジャーを着ける。このブラジャーも異様で、本来隠すべき部分を隠さ ず、乳首丸出しの状態になっている。一応、カップが崩れないようにはなっているけ ど、これは凄く恥ずかしい・・・ 「これが・・・私・・・?」  全て着終えて鏡の前に立つ。 「なんて・・・いやらしい・・・」  まず、最初の感想がそれだ。けど、それ以上に不思議な美しさがある気がする。 「でも、これなら犯人にも文句は言われないはず」  そう言って、服を着ようと洋服棚を開ける。 「あれ?」  なんと、そこにも紙袋が入っていたのだ。 「今度は・・・コレに着替えろということ? やはり下萄が・・・?」  そう言いながら中身を出す。真っ黒なストッキングと、同じ色のハイヒール。それ と真っ白なワンピース。これは普通そうだ・・・ 「背に腹は変えられないか・・・」  思い切って着てみる。しかし・・・ 「な、何だこれは・・・?」  着てみて判ったのだが、このワンピースは胸元が大胆にカットされていて、上の房 が丸見えで、スカート部分もタイトにフィットして、膝上20cmというかなり際ど い位置にあった。 「いくらなんでも・・・恥ずかしい・・・」  鏡の前で全てを着込んだ自分を見て、恥ずかしさに身体がどうにかなりそうだっ た。 「ハイヒールも10cm以上ある。こんなんじゃ、下着が・・・パンティが見えちゃ う」  こんな格好で行けと言うのか? いくらなんでも恥ずかし過ぎる・・・ 「でも、早く行かないと二人が・・・」  私は意を決して部屋を出た・・・


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