第2話 白の終末


「それでは、みんな落ちないように、しっかりつかまってがんばるのじゃぞ。スタート!」 私達を吊るした鉄棒が一斉に上に上がり、ゲームはスタートした。 下には深さも分からない、石鹸で泡立てられた恐怖のホワイトプールが広がっている。 全部で50組のカップル達が一斉にぶら下がっている。 色とりどりのクリスマスカラーのマフラーに身を包み、肌と肌で抱き合う恋人達。 励ましあう声が所々から聞こえ、二人の愛で耐えていた。 ―1分経過― 私はナオの肌に初めて触れた夜だった。肌で抱き合うって、こんなに幸せで、気持ちいいことだったんだ。 ナオの体温と心拍を肌で感じ、何とか耐えていた。 短い巻きスカートのようなマフラーから、私の白くて細い足が彼にしっかりと絡みついている。 「ナオ、大丈夫?」 「ああ。ミカはまだがんばれる?」 「うん・・・ナオ、すきだよ・・・」 「俺も。」 そして、私達は体を抱きしめあったまま、キスをした。何度も何度も。 周りのカップル達も次第に疲労が出てくる中、必死で抱き合い、愛を確かめ合っていた。 どのカップルも彼との励ましで、脱落者は出ていなかった。 しかし、そんなカップル達も終わりを迎えようとしていた。 2分回った頃、私は異変に気付いた。 会場全体がどんどん蒸し暑くなってくる。それも、湿気ではなく体がぬるぬるする感覚であった。 「あれ?なんだかあたし、体が火照ってきた。」 そして、隣のカップルから悲鳴が響いた。 「あ、あたし、もうだめ・・・・」 彼女がズルズルと下へと下がってくる。この湿気は体力を急激に奪うだけでなく、ローションを 気化させたものが混在しており、滑りやすくしていた。 深緑のチェックのマフラーに、黒のオーバーニーの足が既に宙に浮いている状態だった。 『あーっと、12番のカップル、彼女が危ないぞ!おや?マフラーからかわいいお尻が・・・』 「いや、落ちたくない!」 『足をモジモジさせています。カメラさん、下からのアングルをおねがいします。』 すると、巨大モニターには彼女の恥部が映し出され、会場から一斉に歓声が起こる。 「やめてぇ、やだよう」 「がんばれ。もうちょっとだから」 「あぁぁ、ダメ。落ちちゃう!」 イヤアァァァァ!!!会場にひびきわたる悲鳴 ザバオオオォオン! 『残念!12番のカップル、ここで彼女が力尽きてしまいました。ゲームオーバーです』 そして、彼女は白い泡のプールへと消えてしまった。 続いて、別のカップルからも大きな転落する音が響いてきた。 転落した女の子は、白い泡の為、よく下が見えずどこに行ってしまったかわからない。 ―8分経過― 次々と力尽きる女の子たちが出てくる中、私も体力の限界が来ていた。 「ナオ、わたし、もうダメかも」 「あと2分だよ。がんばって。」 「はあ、はあ、熱いよう。」 私は、体が何度も下に下がってくる中、必死に上にのぼろうと彼の体にしがみつく。 ハラッ! しまった! 私の腰から、マフラーが解け、下半身が晒されてしまった。 『おお、18番のカップルをご覧下さい!彼女の下半身が丸見えです!』 いやあああ!そして、私は動揺したあまり、手で下半身を隠そうとした。 ズルッツ! 「ミカ!危ない!」 片手でつかまっていた体は、すぐに滑り落ち、一気に重力にひっぱられる。 「ナオーーーーーーーーーー!」 ドボオオオオオォオオン! ・・・私はついに落ちてしまった。白いプールの中、私は上に顔を出そうとするが、 下から足を引っ張られ、どんどん深くへと連れて行かれてしまう。 『10分経過!おめでとうございます!第一ステージクリアです!』 残ったカップルは、22組。力尽きた彼女を失い、失意の中ぶら下げられた彼氏達。 クリアしたカップル達は次のステージへと進む為、着地して進んでいく。 『それでは、ご覧いただきましょう。失格した彼女たちです!』 正面のカーテンが左右に開かれる。 すると、28人のオーバーニーだけにされた女の子達が、平均台の上に並べられていた。 その中には、私ももちろんいた。 手で胸と恥部を隠し、耐えていた。 『それでは、みなさん失格となってしまいましたので、これで帰って頂きますが、 頭上にあるロープウンテイを伝って彼のところまでたどり着いてください。』 私の頭の上には、ウンテイが設置されており、ナオのところまで伸びていた。 『但し、下に落ちてしまうと、彼氏と一緒に帰ることはできませんよ。』 下はこんどはプールだけではなく、観客も一緒に混じっていた。 『では、スタート!』 一斉にウンテイを渡り始める。しかし、すべてを彼氏の前に晒された彼女達。 体力も奪われてしまった中で、たどり着けるわけが無かった。 次々と転落していく彼女達。下では、観客により彼の前で犯されていく。 助けを求め、彼氏の名前が会場に叫び渡る。 しかし、プールに落ちた女の子は、彼に目もくれず、快楽に堕ちていった。 そう、あのプールには、記憶を消してしまう特殊な薬品が混ざっており、本当に一緒に帰れなく なってしまうのだった。 そして、私にも体力の限界が来ていた。 「ナオ、ごめんね・・・あたし・・一緒に帰りたかったな・・・」 私は静かに力尽き、転落していった。 「ミカーーーーー!」一瞬、彼の声が聞こえた気がした。 そして、犯されていく私。気が遠くなっていく・・・ 私は、会場を出ると、すでに0時を回ったクリスマスイブの夜空の下、一人で帰っていった。 彼への想いは、失意の中、消えていた。 かばんの中では、着信音が何度も何度もむなしく響いていた。 ナオ ミカ  第一関門にて失格 (続)


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