第1話 聖夜の審判


2003年12月24日クリスマスイブの夜、私達は渋谷でデートをしていた。 お気に入りのベージュのコートに赤いミニスカート、そして黒いオーバーニーで彼氏の手をつないで歩いていた。 人ごみの中、突然一人の女性が話しかけてきた。 「東京中央テレビです。今夜、カップル限定のゲーム大会の収録があるのですが、参加しませんか?賞金は  100万円ですよ」 私の名前は宮島美佳17歳。彼氏は同じ高校の同級生で、藤村直哉。付き合い始めてまだ3ヶ月で、最近キス までいったところ。 「ねえねえ、ナオ、100万円だって。やってみようよ。」 「うーん、俺、あんまりこういうお金の掛かった勝負って弱いんだよな」 「いいから、いいから、やってみようよ、ね?ね?」 私は半ば強引に、彼に甘い声で説得して、参加することになった。 私達の参加する番組は、東京中央テレビという最近開局となったローカル局の特番で、 『クリスマスイブスペシャル LoveLoveカップルチャレンジ』というコーナーだった。 すると、私達は黒いワゴン車に乗り、都内から湾岸の方向へと走っていった。 1時間ほどして、時間は夜の7時を回ったところ。私達は海岸に設置された広場へと案内された。 そこには、50組近いカップルが集められ、海風の寒い中、番組収録を待っていたのだった。 「ナオ、ごめんね、わがまま言って。でも、絶対がんばるから、100万円持って帰ろう!」 「ああ、わかった。」 私は彼の手を握り、初々しいカップルを満喫していた。 『みなさん、お待たせいたしました!これから収録を始めますので、こちらの方へどうぞ!』 すると、大型の旅客バスが3台待っており、ここから更に移動するらしい。 バスに乗り込む私達。バスの中は、正にラブラブなカップルでいっぱいになり、おしゃれをした二人組みが 仲良く話をしている。 「それでは、これから出発しますが、このアイマスクを付けてください。」 え?これって・・・ ・・・・・ 私は、アイマスクをつけたまま眠ってしまっていた。 起きると、なんだか体がむずむずしている。 はっ!下着が・・・はずされている! 裸の上から直に服を着ており、はだけた姿になっていた。そして、ナオが目を覚ました。 「あ、見ないで!」 私はとっさに胸を隠し、顔を赤くした。だって、まだキスまでしかした事無いのに・・・ 「それでは、みなさん、バスから降りてください。」 私達はバスから降りると、そこには湾岸の超高級ホテルがそびえ立っていた。 中へと進んでいく私達。ここで係員から説明があった。 「それでは、ここで皆さんにはこれに着替えていただきます。」 私達に渡されたものは、緑のチェックの入ったマフラーが3本だった。 長さはまちまちで、長いものは2m近くあった。 「みなさんは、このマフラーと靴下のみ身に着けていただいて結構です。」 どういうこと?これって、まさか・・・ 「この番組は、言い忘れましたが深夜番組のスペシャル企画です。すこしお色気がありますが、賞金はきちんと  支払いますから」 私は、まんまとはめられてしまった。しかし、このマフラー3本でどうしろっていうの? 「ミカ、俺はこの一番短いマフラーだけでいいから、あとこの2本はミカが使えよ」 え・・・? 私は彼の優しさに、つい「いいよ、私、この短いマフラー使うから。」と、遠慮しながらおもむろに2本取り、 更衣室へと向かった。 でも、このマフラーは思ったより短く、腰に巻くのが精一杯だった。 ちょっと大きくなり始めた胸を隠す為、マフラーでうまく隠した。 余った部分は、前と後ろに垂れるようにし、万が一腰が取れてしまっても見えにくいようにした。 私は長い2mのマフラーで胸を隠し、短いマフラーを腰に巻きマフラーとオーバーニーだけの格好で会場へむかった。 会場には、彼が腰にマフラーを巻き、まるでターザンのような格好で待っていた。 「わたし、恥ずかしいよぅ・・・」 「大丈夫、絶対最後までがんばろうな。」 「うん!」 私は彼氏と手を繋ぎ、ゲーム会場へ向かった。 すると、目の前のステージにサンタクロースの格好をした司会者が現れた。 「みなさん、こんばんわ!これから100万円を手に入れるためのカップルへ試練を与えるぞ! 最初のゲームはこれじゃ!」 すると、目の前の壁が左右に開き、一つ目のアトラクションが現れた。 見ると、5mほど上の天井には鉄棒が下がっており、その下には泡のプールが広がっていた。 「このゲームは、二人の愛を確かめ合うゲーム、『ギュッと抱いて!サバイバルバトル』じゃ。 彼氏はこの鉄棒から吊るされ、その彼氏に彼女が抱きついて耐えるゲームじゃ。耐える時間は10分間じゃ」 このゲームの説明に、一斉に悲鳴が上がる。10分も耐えられるわけがない。 だって、これって、女の子が抱きつくんだから、そんなに力ないよ。 「これは、カップルの愛を試す関門、愛の力があれば、何でもできるはずじゃ、がんばってなー!」 すると、彼氏は男性スタート地点へと案内され、スタンバイを始めた。 ナオは体に特製のベルトを身につけ、ロープ一本で空中に吊るされる格好となった。 「では、女の子達は、こちらへどうぞ」 私達は、泡のプールから4mほどある平均台を通り、彼氏の前へとむかった。 私はナオの前に立ち、ドキドキする胸に手を当てていた。 彼氏は手を後ろで結ばれ、彼氏のほうから抱きつけないようになっていた。 「大丈夫、がんばろう。」 「あたし、絶対落ちない。ナオから離れないよ」 「それでは、みなさん、彼氏に抱きついてください。」 いよいよ始まる。私は、ナオの体に手を回し、体と体を接した。 初めて触れる肌と肌。「あっ・・」思わず声が出る私。 お腹とお腹が触れ、そしてマフラー越しに私の胸が彼の胸に・・・ そして、足をナオの体に巻きつけて、しっかりと抱きつく。 周りのカップルも、彼氏に抱きついてスタンバイした。 「それでは、みんな落ちないように、しっかりつかまってがんばるのじゃぞ。スタート!」 すると、鉄棒が一斉に上に上がり、ゲームがスタートした。 下には深さも分からない、石鹸で泡立てられた恐怖のプールが広がっている。 そして、私達の戦いが始まった。 (続)


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