第25話


裸のまま土下座をして、足をなめさせられた私。 私はしばらく、土下座をした体勢のまま、動くことができませんでした。 しかしショックを感じているまもなく、背筋にかけて、ものすごい激痛が走りました。 「ぎゃっ!」 一瞬、何があったのか分かりませんでした。 「やったー!」 「すっげー!」 私の後ろで、小学生くらいの子供が、左右の人差し指を合わせて、高らかに叫んでいました。 「もっかいやれよー!」 「いいぜー!」 その声と同時に、私のおしりから背筋にかけて、信じられない衝撃を感じました。 「んぎゃっ!」 私は声にならない叫びを上げました。 間違いありません。 そうです。 私は……… 「カンチョー、大成功!」 「あははは! すっげー!」 小学生がよくやる遊びです。 私も小さな頃、冗談でやられそうになりました。 今私は、言葉にするのも情けないですが、おしりに指を入れられたのです。 指を入れた子供は、その指に鼻を近づけると、大声で言いました。 「うわっ! くっせーーーー!」 「ぎゃははは! ニオイかいでるよー!」 「やっ! や………!」 私はあわててそれを止めようとしますが、おしりの激痛で、言葉が出せません。 「エンガチョー!」 子供はそう言いながら、私のお尻の肉で自分の指を拭きました。 それと同時に、周囲から大爆笑が起こりました。 屈辱。 そんな言葉すらも思いつかないくらいの気持ちが、分かりますでしょうか。 私の頭の中に、真っ暗な闇が広がりました。 「こらぁっ!」 その中に、突然女性の声が響き渡りました。 ヤクザの女性です。 「何、勝手にしてるのよ、ボク?」 「え………。あう………」 子供はその迫力に気圧されます。 「ふざけるんじゃないわよ?」 「そうよ…。このお姉さんの顔、見えないの?」 女性は子供たちをにらみながら言います。 「あ、ご…。ごめんなさ…」 私は、ほんの少しだけ安心してしまいました。 でも、私が悪かったと思います。 さんざん、その期待を裏切られたと思ったのに。 「ほらっ!」 その瞬間です。 女性は私のおしりに手をかけて、左右から思い切り力を込めて広げました。 「うあっ!」 ただでさえ感じている痛みが、広げられることで、さらに強くなります。 「どうせやるなら、このくらい広げてから入れないと」 「そうそう! カンチョーの衝撃は、最大級でドカンとね」 私の顔は、真っ青になりました。 「や、やめて…。やめてください…」 私は懇願して、おしりにある女性の手を握ろうとします。 「あらあら? ここで土下座、やめるの?」 「いいよー。やめたって。やめたら全員の前で、陰毛全部抜き抜きの刑ね」 その言葉は、すでに絶対的な力を持っていました。 私はおずおずと手を前に持って行き、再び土下座の体勢をしました。 「そうそう! いい子ねぇ♪」 「ほら、みなさんもシャッターチャンスですよー!」 「花の女子大生が、おケツの穴、広げてるんですからー!」 その言葉に、再び周囲の携帯カメラから、シャッターの音がしました。 「やだ…。やだぁ…」 私は恥ずかしさと悲しさで、ただ下を向いていました。 「ほーら、もっかい行ったら? ボク」 その言葉に、子供は少しだけ気圧されしました。 「い、いや、も、もう…」 「やるよね?」 「あんだけ楽しそうだったしねぇ」 「う、うん!」 子供はその迫力に負けるように、私の後ろに立ちました。 「やめて…。やめてください…」 もう、私には哀願するしかできません。 「往生際が悪いなぁ…」 「うん。真っ裸で、自分よりずっと小さい子供にお願いするなんて、 大人の女のすることとは思えないわよ」 「それに、あまり動かない方がいいよー?」 「うんうん。おしりじゃないところに刺さったら、目も当てられないよ?」 私はその言葉に動きが止まります。 「さっきは一本指だけだったけど、二本の指を重ねてたら、大事な膜が、破れちゃうかもねぇ」 「意味、分かるよねぇ」 私は、どうしていいのか分からず、ただ泣きました。 「うっ…。うっ…。もう、許して…。許してください…」 子供は私の表情に罪悪感を感じたかのように、女性の方を見ます。 しかし女性は、ニヤッと笑うと、再び私の方に顔で合図しました。 子供はそれを見ると、再び私の方に向き直ります。 「いいコ。じゃあ、ちょっと数を数えてみましょうか」 「え?」 「ほら、お尻の穴に、シワがあるでしょう? これを一本ずつ、数えてみるの」 「何本あるカナー?」 女性はにやにやと笑います。 「やめて…。やめて…」 「いーち! にーい!」 子供はそれを聞いて、無意識に声を重ねます。 「さーん! よーん!」 「全部数え終わったら、それが死刑執行の合図よ」 私は、背筋が凍りました。 「ごー! ろーく!」 群衆からも、一緒に声が上がります。 私の足が、ガクガクとふるえ始めました。 「なーに? 期待してるの?」 「変態じゃん!」 「なーな! はーち!」 お願い。もっと続いて。もっともっと、続いて。 私は無意識に、そんなことを願っていました。 「きゅーう!」 その瞬間、周囲の動きが止まります。 ごくっという音が、聞こえたような気がします。 まさか。 私の足のふるえが、極限まで大きくなりました。 「じゅ…」 その言葉に、私が安心した瞬間。 ほぼ同時に、子供の指先が、私のおしりにめり込みました。 「ぎゃああああああああああああ!!!!」 その瞬間、私の感覚のすべてが、「恐怖」と「激痛」に変わりました。 「はぁっ………! んぎっ………!」 私は、歯をカチカチと鳴らしたまま、ただその感覚に耐えていました。 「すんごい! 見事に貫通!」 「ほーら! 見せてあげるー!」 女性は、その言葉と同時に観客からデジタルカメラをひったくると、その画面を 私に向けました。 私はそれを見て、卒倒しかけました。 「人差し指が、ぜんぶ入っちゃってるよー!」 「広がるんだねー! 肛門って!」 「あがっ………!」 私は、ただひたすらその感触に耐えていました。 「うわ…。いたっ…」 子供が、そんな声をあげました。 「あらっ? どうしたの?」 「指が…しめつけられる…」 子供はそんなことを言いました。 おそらく私の体が、無意識に指を拒絶しようと、必死に力を込めているのでしょう。 「あーら? 何考えてるのよ」 「そうそう。この子の指が骨折なんかしちゃったら、あなた、どうなると思ってるの?」 「力、ゆるめなさい」 私はその言葉に、とにかく力を抜こうとしました。 しかし、体はそれを拒みます。 「仕方ないなぁ…」 「せーの…。それっ!」 女性はその言葉と同時に、指を勢いよく抜きました。 「んぎゃあっ!」 先ほどと同じ、いえそれ以上の激痛が、私の体を突き抜けました。 「うわっ! きったねー!」 子供は指を見て、声を上げます。 「あら…。この赤茶色なのは、何かしら?」 私はその言葉に、身を固くします。 「まぁ…。おそらく、血でしょうね…。あっちかもしれないけど…」 「きたねー! きたねー!」 子供たちは騒ぎます。 そしてその指を、再び私の体になすりつけました。 私は、歯をカチカチと鳴らしたまま、ただその行為に耐えていました。 「もっかいやりたい人ーーーーーー!」 女性は子供たちに言います。 「や、やめて…! もう、もう、やめてください…!」 「え?」 「ひ…ひぐっ…。もう、もぉ、やだよぉ…。やだ、やだァ………!」 私は泣きじゃくりながら、言葉にならない声をあげました。 「どうする?」 「うーん…」 女性たちは、にやにやと笑いながら言います。 「じゃあね」 「うん」 「あんた、屁こきなよ」 「え?」 「オナラよ、オナラ」 「………」 「みんなの前で、オナラしたら、許してあげる」 「そ、そんな………」 「その瞬間、ちゃんとカメラでとってあげるからねー!」 そして女性は、ビデオカメラを持っている男性を、私のちょうど後ろに座らせました。 カメラのレンズが、私のおしりを真っ正面にあります。 「そんな…。そんな…!」 「いやなら、いいんだよ。次の人はー?」 「ま、まって…。待ってください…」 私には、選択権はありませんでした。 「う、うううっ…」 私は下腹部に力を込めます。 「ぐう…っ」 「…えー?」 「まさかこのコ、本気でやるのぉー?」 「あー! ほらほら、お尻の穴、ぴくんぴくん、動いてるよー!」 私はただ、耐えながら同じ行為をします。 そして、しばらくの沈黙の後。 ばすぅっ。 そんな音が響きました。 その瞬間、大爆笑があがりました。 「あはははははははははははははっ!」 「さいあくーー!」 「みんなの前で、オナラするなんてさー!」 「しかも自分からよ、自分からーー!」 「カメラ、ちゃんと撮ったーー!?」 「はいっ! 穴、ばっちり広がってました!」 「あははははははははははははははは!」 「どうする? このビデオ!」 「学校や家族に、送りつけちゃうでしょー!」 ………………。 これは夢。 これは夢なんだ。 私は、ただ、水着を着てお風呂に入った、だけだったのに。 私は、空を見つめたまま、今の自分の状況を感じていました。 (つづく)


次話へ続く